4月1日から試行錯誤を続けていた「共鳴管付きバスレフ」も、いよいよまとめです!
[名称]
「共鳴管付きバスレフ」
もしくは「共鳴管バスレフ」「管付き」など。
他方式に『バックロードバスレフ』などがあり、それと混同しない名称が望ましい。
[設計の狙い]
共鳴管方式は、超低音の伸びや軽やかな低音質感など魅力的な点が多い。
しかし、この方式により好ましい低音量感が得られるユニットは非常に限られている。
特に、一般的に「ウーハー」と呼ばれるユニットや、低音域が豊かなフルレンジユニットは、共鳴管方式の箱と組み合わせると低音過多となる。
これらのユニットには「バスレフ方式」の箱がマッチするが、バスレフ方式は
?超低音の伸びが悪い
?聴感上の低音質感が好ましくない
といった短所がある。
(もちろん、バスレフ型も設計次第でこれらの欠点を最小限に抑える事は可能)
?は、ユニット背面から出た音がダクトを通り、ユニット正面の音と干渉するためである。ダクトの共振周波数以下の音域では顕著である。
?は、ダクトの放射面積が小さい(概して振動板の半分以下)ことが原因と考えている。音波は放射面積が大きいほど効率よく放射でき、聴感的な質感が向上される。各種『ホーン』はこれを期待した構造である。
[具体的な構造]
本方式は、「バスレフ箱」と「共鳴管」、そしてそれを接合する「ダクト」によって構成される。
下記の図を見ると分かりやすい。
バスレフ箱の先に、長い共鳴管を付けたことで、
上記欠点?の干渉を軽減することが可能だと考えられる。
また、欠点?においても、共鳴管の断面積は振動板の1.5倍〜3倍程度ある(詳細は後述)ために、低音の質感向上を期待できる。
[設計のポイント]
「バスレフ箱」は、ある一定の容量を持つ箱である。形状は問わないが、ユニット背面の音波の流れを妨げないような構造が望ましい。
容量は、バックロードホーンの空気室に近い容量が好ましい。
具体的には、8cm口径 1L、 10cm口径 2L、 12cm口径 3L、 16cm口径 5L 程度だろうか。
この容量が大きすぎると共鳴管を十分に駆動できなくなる。小さすぎると一般的な共鳴管に近くなると考えられる。
「共鳴管」は、ある程度の太さと長さを持つ管である。
共鳴管の太さは、一般的な共鳴管と同じく、振動板面積の1.5〜3倍程度が好ましいであろう。
共鳴管の長さは比較的自由に決定できる。しかし、共鳴管が長くなると概して低音質感や量感が乏しくなる。
そこで、より高品位な低音質感を追求するために、共鳴管の長さは1.3〜2m 程度に抑えることが望ましい。
共鳴管の形状は、余り折り曲げが多くない方が好ましい。折り曲げは共鳴効率の低下を招くので、「U字型」もしくは「W字型」程度が限界と思われる。管の断面は正方形(もしくは円形)に近い形状のほうが共鳴効率において好ましく、扁平率が高いものは不適だと考えられる。
「ダクト」は、ある程度の太さと長さを持つ管である。
断面積は振動板の20%〜50%の範囲で問題なく動作することが確認できている。
ダクトの長さは、10cm〜20cm程度が良さそうだ。
このダクトの設計は、上記の箱容量、共鳴管長さと関係があり、ダクトの共振周波数は共鳴管の両開口共鳴周波数と同じにするのが良さそうである。
例えば、共鳴管長さが1.7mの場合、音速は340[m/s]より、両開口共鳴時の共鳴周波数は、
340÷1.7÷2=100[Hz]
となる。
上記より、箱容量はユニット口径に従って決定できる(10cm口径なら2Lなど)ので、
後はバスレフ共振が100[Hz]となるよう、
一般的に知られているバスレフダクトの共振周波数算出式でダクト面積・長さを決定すればよい。
ダクトの長さを現実的な寸法に収めると、自ずとダクト断面積も決まるだろう。
「バスレフ部」と「ダクト」の位置的関係は比較的自由度があるが、
「共鳴管」と「ダクト」は、好ましい位置関係が存在する。
まず、共鳴管の効果的な動作を考えると、共鳴管の端(閉じている側)にダクトを設ける必要がある。
また、ダクトは共鳴管と同軸上でも構わないが、90°や180°の折り返しをつけた方が共鳴管の動作を阻害しにくいように感じる。スピーカー技術研究会の小沢氏のレポートにも、同様の記述がある。参考リンク
[本方式の効果]
まず、一般的な共鳴管方式における管開口部の周波数特性を示す。
(断面積255cm^2、管の長さ 2.4m ,ユニット ALPINE DLS-108X)
このように、200Hz付近にピークをもち、500Hz前後まで低音増幅が確認される。
軸上1mでも180Hzに鋭いピークが確認されるなど、共鳴管方式の箱に低音が出やすいウーハー向けユニットを組み合わせると、ブーミーな響きとなることが測定結果からも確認できた。
(この特性は、やや低音が出にくいフルレンジユニットには好適となる)
次に、本方式における管開口部の周波数特性を示す。
(バスレフ部容量 約2L、ダクト断面積18cm2、 ダクト長さ18cm、
共鳴管部断面積80cm2〜120cm2、 共鳴管部長さ 180cm
使用ユニット ALPINE DLS-108X)
やや中低域のモレが多いものの、単純な共鳴管に比べて100Hz付近の増大が確認できた。
軸上1m特性でも、鋭いピークが無く、素直な特性が得られている。
[結論]
本方式は、バスレフ方式に適合するユニットに対して良好な提案になるといえる。
<過去の関連日記一覧>
4/1「共鳴管付きバスレフ」の設計と作製
4/14「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (1)
4/15「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (2)
4/29「共鳴管付きバスレフ」の魅力再発見??
5/1「共鳴管付きバスレフ」× TangBand W4-927SC
5/3 バスレフ箱部分の「容量」について (共鳴管付きバスレフ)
5/4 バスレフ箱部分の「ダクト断面積」について (共鳴管付きバスレフ)
[名称]
「共鳴管付きバスレフ」
もしくは「共鳴管バスレフ」「管付き」など。
他方式に『バックロードバスレフ』などがあり、それと混同しない名称が望ましい。
[設計の狙い]
共鳴管方式は、超低音の伸びや軽やかな低音質感など魅力的な点が多い。
しかし、この方式により好ましい低音量感が得られるユニットは非常に限られている。
特に、一般的に「ウーハー」と呼ばれるユニットや、低音域が豊かなフルレンジユニットは、共鳴管方式の箱と組み合わせると低音過多となる。
これらのユニットには「バスレフ方式」の箱がマッチするが、バスレフ方式は
?超低音の伸びが悪い
?聴感上の低音質感が好ましくない
といった短所がある。
(もちろん、バスレフ型も設計次第でこれらの欠点を最小限に抑える事は可能)
?は、ユニット背面から出た音がダクトを通り、ユニット正面の音と干渉するためである。ダクトの共振周波数以下の音域では顕著である。
?は、ダクトの放射面積が小さい(概して振動板の半分以下)ことが原因と考えている。音波は放射面積が大きいほど効率よく放射でき、聴感的な質感が向上される。各種『ホーン』はこれを期待した構造である。
[具体的な構造]
本方式は、「バスレフ箱」と「共鳴管」、そしてそれを接合する「ダクト」によって構成される。
下記の図を見ると分かりやすい。
バスレフ箱の先に、長い共鳴管を付けたことで、
上記欠点?の干渉を軽減することが可能だと考えられる。
また、欠点?においても、共鳴管の断面積は振動板の1.5倍〜3倍程度ある(詳細は後述)ために、低音の質感向上を期待できる。
[設計のポイント]
「バスレフ箱」は、ある一定の容量を持つ箱である。形状は問わないが、ユニット背面の音波の流れを妨げないような構造が望ましい。
容量は、バックロードホーンの空気室に近い容量が好ましい。
具体的には、8cm口径 1L、 10cm口径 2L、 12cm口径 3L、 16cm口径 5L 程度だろうか。
この容量が大きすぎると共鳴管を十分に駆動できなくなる。小さすぎると一般的な共鳴管に近くなると考えられる。
「共鳴管」は、ある程度の太さと長さを持つ管である。
共鳴管の太さは、一般的な共鳴管と同じく、振動板面積の1.5〜3倍程度が好ましいであろう。
共鳴管の長さは比較的自由に決定できる。しかし、共鳴管が長くなると概して低音質感や量感が乏しくなる。
そこで、より高品位な低音質感を追求するために、共鳴管の長さは1.3〜2m 程度に抑えることが望ましい。
共鳴管の形状は、余り折り曲げが多くない方が好ましい。折り曲げは共鳴効率の低下を招くので、「U字型」もしくは「W字型」程度が限界と思われる。管の断面は正方形(もしくは円形)に近い形状のほうが共鳴効率において好ましく、扁平率が高いものは不適だと考えられる。
「ダクト」は、ある程度の太さと長さを持つ管である。
断面積は振動板の20%〜50%の範囲で問題なく動作することが確認できている。
ダクトの長さは、10cm〜20cm程度が良さそうだ。
このダクトの設計は、上記の箱容量、共鳴管長さと関係があり、ダクトの共振周波数は共鳴管の両開口共鳴周波数と同じにするのが良さそうである。
例えば、共鳴管長さが1.7mの場合、音速は340[m/s]より、両開口共鳴時の共鳴周波数は、
340÷1.7÷2=100[Hz]
となる。
上記より、箱容量はユニット口径に従って決定できる(10cm口径なら2Lなど)ので、
後はバスレフ共振が100[Hz]となるよう、
一般的に知られているバスレフダクトの共振周波数算出式でダクト面積・長さを決定すればよい。
ダクトの長さを現実的な寸法に収めると、自ずとダクト断面積も決まるだろう。
「バスレフ部」と「ダクト」の位置的関係は比較的自由度があるが、
「共鳴管」と「ダクト」は、好ましい位置関係が存在する。
まず、共鳴管の効果的な動作を考えると、共鳴管の端(閉じている側)にダクトを設ける必要がある。
また、ダクトは共鳴管と同軸上でも構わないが、90°や180°の折り返しをつけた方が共鳴管の動作を阻害しにくいように感じる。スピーカー技術研究会の小沢氏のレポートにも、同様の記述がある。参考リンク
[本方式の効果]
まず、一般的な共鳴管方式における管開口部の周波数特性を示す。
(断面積255cm^2、管の長さ 2.4m ,ユニット ALPINE DLS-108X)
このように、200Hz付近にピークをもち、500Hz前後まで低音増幅が確認される。
軸上1mでも180Hzに鋭いピークが確認されるなど、共鳴管方式の箱に低音が出やすいウーハー向けユニットを組み合わせると、ブーミーな響きとなることが測定結果からも確認できた。
(この特性は、やや低音が出にくいフルレンジユニットには好適となる)
次に、本方式における管開口部の周波数特性を示す。
(バスレフ部容量 約2L、ダクト断面積18cm2、 ダクト長さ18cm、
共鳴管部断面積80cm2〜120cm2、 共鳴管部長さ 180cm
使用ユニット ALPINE DLS-108X)
やや中低域のモレが多いものの、単純な共鳴管に比べて100Hz付近の増大が確認できた。
軸上1m特性でも、鋭いピークが無く、素直な特性が得られている。
[結論]
本方式は、バスレフ方式に適合するユニットに対して良好な提案になるといえる。
<過去の関連日記一覧>
4/1「共鳴管付きバスレフ」の設計と作製
4/14「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (1)
4/15「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (2)
4/29「共鳴管付きバスレフ」の魅力再発見??
5/1「共鳴管付きバスレフ」× TangBand W4-927SC
5/3 バスレフ箱部分の「容量」について (共鳴管付きバスレフ)
5/4 バスレフ箱部分の「ダクト断面積」について (共鳴管付きバスレフ)