さて、前回に引き続き、バックロードホーン箱のお話です。
12cmのFOSTEX FE126E用に作製した(まだ仮組み状態ですが…)、S-042エンクロージュアに対して、
様々な口径のユニットを装着してみる・・・という試みです。
前回は、TangBandの8cmユニットを装着しましたが、
今回はFOSTEXの16cm口径フルレンジ「FE168EΣ」を装着してみました。
まずは、基本の開放系でのインピーダンス特性です。
12cm口径のFE126Eと比較して、
16cm口径のFE168EΣが、よりf0が低く(グラフの凸部が左にシフト)していることが分かりますね。
さて、このFE168EΣをバックロードホーン箱に入れてみます。
箱は前回の時と同じですが、
空気室容量を2.7Lと大きくしています。(168EΣを入れるための処置です…)
---------
空気室容量:2.7L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:43%、Fx=181Hz)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
----------
ここで注目は、スロート絞り率(スロート面積/振動板面積)です。
W3-582SC(8cmフルレンジ、前回日記)の場合は、151%。
FE126E(12cmフルレンジ、3/8日記など)の場合は、74%。
FE168EΣ(16cmフルレンジ、今回)の場合は、43%。
このように、今回は16cmフルレンジを小さなBH箱に入れ、
スロート絞り率が極端に小さい場合を検証してみます。
さて、それではインピーダンス特性です。
FE168EΣ由来のインピーダンスは、空気室に入れたことでf0は高くシフトし(青線)、
そこにホーンロードが加わることで、ピークの開裂が起こっている(緑線)ことが分かります。
このホーンロード(正しくは音響管の共鳴)によるピーク開裂は、
FE126Eのデータを並べてみると理解しやすいです。
FE126E(2.7L空気室として条件を揃えた)のインピーダンス特性を、黄色線として表記しています。
FE168EΣとほぼピークの凹凸は一致しており、
バックロードホーンのインピーダンス特性は箱に由来するファクターが大きいと考えられます。
さらに、8cmフルレンジ(W3-532SC)の特性も合わせるとこんな感じになります。
特に、インピーダンスの凹は、
ユニットを変えても、ほぼ不変であることが分かります。
一方で、インピーダンスの凸、とくに一番周波数の低い凸は、
ユニットによって大きく変化することが確認できます。
それぞれのユニットごとに、一番周波数の低い凸のピークを読んでいくと、次のようになります。
W3-582SC(8cmフルレンジ)の場合は、50Hz。
FE126E(12cmフルレンジ)の場合は、38Hz。
FE168EΣ(16cmフルレンジ)の場合は、28Hz。
どれも、ユニット単体のf0より低いところにピークが出ており、
おそらく、ホーン内部の空気が「ユサユサ」と揺れている状態になっているのでは?と思います。
ホーン内部の空気は、約1Lで1g程度あり、
ユニットの振動板重量にそれが加算されることで、f0の低下(低い周波数の凸)となると考えています。
ちなみに、このインピーダンスからホーン内部の空気がどの程度ユニットと一緒に動いているか計算してみたところ、
全体積の1/3ぐらいだという結論になっています。
さて、細かい話はさておき、
周波数特性を見ていきましょう。
まずは、ユニット直前特性。(5cm)
大面積振動板だけあって、ディップ(50Hz、150Hz)の出方がキレイですね。
しっかりホーンロード(というかホーン共鳴による負荷)がかかっている証拠です。
次は、ホーン出口の特性です。
本来は、50Hzにもピークが出てくるはずですが、
殆どピークとして確認できません。
今回は、強力な磁気回路を使った大口径ユニットを使用しており、
ホーン内部の共鳴(50Hzの凸)を抑える力が強かったのかもしれません。
BHは過制動になると、むしろ低音が出にくくなる・・・ということかもしれません。
(まあ、セオリー通りに十分な断面積をもつホーンを使ってやれば、ちゃんと低音も出てくるでしょう。)
次は、部屋の中央にSPを設置しての周波数特性です。(軸上0.5m)
やはり壁の効果は大切なようで、
低音もかなり寂しい感じです。
軸上から30°ずれた状態での評価では、こんな感じ。(距離は0.5cm)
16cmフルレンジとしては指向性も頑張っているところでしょうか。
高域のピークディップは、FE168EΣらしいところですね(汗
さて、ラストは箱を壁際に設置しての周波数特性です。
全体的に右肩上がりで、低音域は70Hz付近まで・・・といったところでしょうか。
16cmフルレンジのBHとしてはお寒い特性ですが、箱のサイズからして致し方ないところでしょう。
<聴感特性>
ホーンが小さいためか、低音の引き締まり感は見事なものです。オーケストラのグランカッサは、早く打ち手の様子が明白です。
チェロ四重奏は等身大の表現で、口径からくるゆとりを感じさせるものでした。
和太鼓の低音は、強烈なパワーを感じ、他のスピーカーを圧倒させるものがりました。
周波数特性上は、70hzまでですが、それを感じさせない魅力のある低音が得られました。(FE168EΣの実力が発揮できているとは言い難いですが…)
中高音は、ややオンマイクで歪っぽさを感じさせるものでした。ボーカルは刺激的ではないのが救いですが、やや開放感が足りないのかな?と感じさせるところもありました。
ただ、情報量は圧倒的に多く、流石の高級ユニットだなぁ〜と感じさせる一面もありました。
ちなみに、このFE168EΣを2.7Lの密閉箱に入れた時の音は、最悪の一言でしたw
中高域が潰れていて、中域だけが妙に目立ってしまうのです。
もちろん、BHに入れたFE168EΣはそんな音はしないので、完全に箱との相性…という話なのでしょう。
今回は、前回の8cmとは正反対で、
16cmの大型ユニットを、12cm用の筐体に入れている状態での視聴となりました。
試聴・測定編5〜6でやってきたように、
箱とユニットの関係は奥が深いと感じています。
次回は、そのまとめを書きたいと思います。
12cmのFOSTEX FE126E用に作製した(まだ仮組み状態ですが…)、S-042エンクロージュアに対して、
様々な口径のユニットを装着してみる・・・という試みです。
前回は、TangBandの8cmユニットを装着しましたが、
今回はFOSTEXの16cm口径フルレンジ「FE168EΣ」を装着してみました。
まずは、基本の開放系でのインピーダンス特性です。
12cm口径のFE126Eと比較して、
16cm口径のFE168EΣが、よりf0が低く(グラフの凸部が左にシフト)していることが分かりますね。
さて、このFE168EΣをバックロードホーン箱に入れてみます。
箱は前回の時と同じですが、
空気室容量を2.7Lと大きくしています。(168EΣを入れるための処置です…)
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空気室容量:2.7L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:43%、Fx=181Hz)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
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ここで注目は、スロート絞り率(スロート面積/振動板面積)です。
W3-582SC(8cmフルレンジ、前回日記)の場合は、151%。
FE126E(12cmフルレンジ、3/8日記など)の場合は、74%。
FE168EΣ(16cmフルレンジ、今回)の場合は、43%。
このように、今回は16cmフルレンジを小さなBH箱に入れ、
スロート絞り率が極端に小さい場合を検証してみます。
さて、それではインピーダンス特性です。
FE168EΣ由来のインピーダンスは、空気室に入れたことでf0は高くシフトし(青線)、
そこにホーンロードが加わることで、ピークの開裂が起こっている(緑線)ことが分かります。
このホーンロード(正しくは音響管の共鳴)によるピーク開裂は、
FE126Eのデータを並べてみると理解しやすいです。
FE126E(2.7L空気室として条件を揃えた)のインピーダンス特性を、黄色線として表記しています。
FE168EΣとほぼピークの凹凸は一致しており、
バックロードホーンのインピーダンス特性は箱に由来するファクターが大きいと考えられます。
さらに、8cmフルレンジ(W3-532SC)の特性も合わせるとこんな感じになります。
特に、インピーダンスの凹は、
ユニットを変えても、ほぼ不変であることが分かります。
一方で、インピーダンスの凸、とくに一番周波数の低い凸は、
ユニットによって大きく変化することが確認できます。
それぞれのユニットごとに、一番周波数の低い凸のピークを読んでいくと、次のようになります。
W3-582SC(8cmフルレンジ)の場合は、50Hz。
FE126E(12cmフルレンジ)の場合は、38Hz。
FE168EΣ(16cmフルレンジ)の場合は、28Hz。
どれも、ユニット単体のf0より低いところにピークが出ており、
おそらく、ホーン内部の空気が「ユサユサ」と揺れている状態になっているのでは?と思います。
ホーン内部の空気は、約1Lで1g程度あり、
ユニットの振動板重量にそれが加算されることで、f0の低下(低い周波数の凸)となると考えています。
ちなみに、このインピーダンスからホーン内部の空気がどの程度ユニットと一緒に動いているか計算してみたところ、
全体積の1/3ぐらいだという結論になっています。
さて、細かい話はさておき、
周波数特性を見ていきましょう。
まずは、ユニット直前特性。(5cm)
大面積振動板だけあって、ディップ(50Hz、150Hz)の出方がキレイですね。
しっかりホーンロード(というかホーン共鳴による負荷)がかかっている証拠です。
次は、ホーン出口の特性です。
本来は、50Hzにもピークが出てくるはずですが、
殆どピークとして確認できません。
今回は、強力な磁気回路を使った大口径ユニットを使用しており、
ホーン内部の共鳴(50Hzの凸)を抑える力が強かったのかもしれません。
BHは過制動になると、むしろ低音が出にくくなる・・・ということかもしれません。
(まあ、セオリー通りに十分な断面積をもつホーンを使ってやれば、ちゃんと低音も出てくるでしょう。)
次は、部屋の中央にSPを設置しての周波数特性です。(軸上0.5m)
やはり壁の効果は大切なようで、
低音もかなり寂しい感じです。
軸上から30°ずれた状態での評価では、こんな感じ。(距離は0.5cm)
16cmフルレンジとしては指向性も頑張っているところでしょうか。
高域のピークディップは、FE168EΣらしいところですね(汗
さて、ラストは箱を壁際に設置しての周波数特性です。
全体的に右肩上がりで、低音域は70Hz付近まで・・・といったところでしょうか。
16cmフルレンジのBHとしてはお寒い特性ですが、箱のサイズからして致し方ないところでしょう。
<聴感特性>
ホーンが小さいためか、低音の引き締まり感は見事なものです。オーケストラのグランカッサは、早く打ち手の様子が明白です。
チェロ四重奏は等身大の表現で、口径からくるゆとりを感じさせるものでした。
和太鼓の低音は、強烈なパワーを感じ、他のスピーカーを圧倒させるものがりました。
周波数特性上は、70hzまでですが、それを感じさせない魅力のある低音が得られました。(FE168EΣの実力が発揮できているとは言い難いですが…)
中高音は、ややオンマイクで歪っぽさを感じさせるものでした。ボーカルは刺激的ではないのが救いですが、やや開放感が足りないのかな?と感じさせるところもありました。
ただ、情報量は圧倒的に多く、流石の高級ユニットだなぁ〜と感じさせる一面もありました。
ちなみに、このFE168EΣを2.7Lの密閉箱に入れた時の音は、最悪の一言でしたw
中高域が潰れていて、中域だけが妙に目立ってしまうのです。
もちろん、BHに入れたFE168EΣはそんな音はしないので、完全に箱との相性…という話なのでしょう。
今回は、前回の8cmとは正反対で、
16cmの大型ユニットを、12cm用の筐体に入れている状態での視聴となりました。
試聴・測定編5〜6でやってきたように、
箱とユニットの関係は奥が深いと感じています。
次回は、そのまとめを書きたいと思います。