対向配置のメリットは、スピーカーユニットの振動を打ち消せることにあります。
フロントバッフルに固定するだけの方法では、ユニットが音を出そうとしたときに、その反作用で少しだけ箱が後ろに動きます。これがどの程度問題なのかは後程お話ししますが、理想的な振動板の動きを妨げるものといえます。
同じスピーカーユニットを2本対向で使うと、それぞれのユニットの反作用を打ち消しあうことができます。
理論的には、これで箱の振動が無くなるはずです。
しかし、現実には箱の剛性(固さ)は限られており、スピーカーユニットの振動に負けて変形してしまいます。たとえば、両側から押されるような力が加わると、中央部が膨れ上がるように変形します。(下図、左)
そこで、右に示したように、左右のユニットを硬い材料(金属など)で接合し、箱への負荷を減らす方法がとられます。
私もいくつか実例を試聴しているなかで、この接合する効果は非常に大きいと感じています。2つのユニットを単に左右対称に配置した場合(図中、左)は、正直目立った改善効果がないのですが、ユニットを強固に接合することで強力でダンピングの効いた低音になるのです。おそらく、先に挙げた箱振動の抑制効果や、細かい振動になる中低音域もしっかり抑制できるためと思われます。
こうした構造を実際に製品に導入している有名な例が、デンソーテン社のサブウーハーです。
<デンソーテン社のサブウーハーTD520SW>
https://www.eclipse-td.com/products/td520sw/index.html
このサブウーハーでは、フローティング構造を採用しており、連結部された2つのユニットをそのまま抜くことができる構造になっています。
こうした構造は、サブウーハーだけでなくKEF社の「Blade」、ViVidAudio社の「GIYA」といったハイエンドスピーカーにも用いられています。また、最近ではSONY社の「SA-Z1」も有名です。
<ViVid Audio社のGIYAシリーズに搭載されるウーハー構造>
https://www.stella-inc.com/vivid/download/GIYA-S2.pdf
同じユニットが2本必要であったり、ユニットがリスナー側に向かないことによる指向性の問題はありますが、効果的に振動を低減できる方法として注目することができます。
次回は、床から伸ばした支柱にスピーカーユニットを固定する方法を見ていこうと思います。
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