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[S-073] ウーハーを自作する意義

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皆さんこんにちは。

最近は、新作「SOLA Mk2」に搭載するウーハーユニットの試作を進めていまして、
かなり良い線まできましたので、ブログに書き留めておこうと思います。




ウーハーを自作する意義

スピーカーユニットは、自作スピーカーの世界では、ユニットメーカーが供給しているものを使うのが主流です。

新作のユニットが出たから、それに合わせて箱を作る…という製作パターンが多くあります。


しかし、「大手メーカーのスピーカーを超えるものを」と考えた場合、
一般に手に入るものでは不満が出てくるのです。






求めたウーハーの姿

オーディフィルが実現したいのは、
「低音表現」と「小型化」の両立です。


一般的には、大きなウーハーを使えば、良い低音が出せることが知られています。

それは低音の音波が長いことに加え、
ウーハーの周波数特性を決めるTSパラメーターを考えれば、
大口径のウーハー、大型のスピーカーが有利であることは明白です。


でも、それではダメなのです。

どんなに38cm口径ウーハーの音が良かったり、
大型のバックロードホーンの音が良くても、
自分の生活に溶け込むようなサイズのスピーカーを作りたいのです。


近年では、ブックシェルフ型として16cm口径、
さらに小さい口径のウーハーを搭載した高級スピーカーも多くなりました。

しかし、これらの低音の「深み」「質感」はどうでしょうか。

求められるのは単に出ているだけの低音ではなく、
低音に【表現力】があることが、
気持ちよく音楽を聴くためには大切だと考えています。




理想のウーハーへの突破口

コーン型ウーハーに潜む問題点を指摘しているのは、
A&Cオーディオ社の島津代表です。

コーンが横方向に変形する「釣鐘動変形」、
それに伴う非軸対称モードの共振が問題であるとし、
独自構造をもつスピーカーユニットの研究を進められています。

A&Cオーディオ社ブログ
「最新版・超硬振動板 その5 本当の問題点」(2020年05月11日)




ここでいう「釣鐘動変形」とは、コーン紙の横方向の変形のことです。
コーン型の構造上、横方向からの剛性は、どうしても弱くなってしまうのです。



私も後を追う形で実験をしており、
「釣鐘動変形」を抑制することの大切さを確認することができています。

★「釣鐘動変形」についての実験はこちら★
「[S-072] サブウーハー試作2号機(FE166Enの改造)」


A&Cオーディオ社の島津代表は、さらに良い音を追求したスピーカーユニットの新作を開発しており、その進捗は同社のブログを読んでみると良いでしょう。
A&Cオーディオ社ブログ「Hippo日記」






3Dプリンターでのウーハー振動板製作

この「釣鐘動変形」を抑え、低音質感を改善する手法を、
より簡便に実現し、より多くの人に届けられないか。

そうした想いをもとに、私カノン5Dが実験を続けているのが、
3Dプリンターによるウーハー振動板の補強部材製作です。


3Dプリンターで造形した物が、
振動板として、本当に実用的な強度が出るかは半信半疑でした。

しかし、3Dプリンターで製作する補強部材で、
低音領域の質感改善を実現できることが分かってきています。
(この辺は、超硬振動板を標榜するA&Cオーディオ社とは、方向性が分かれる所だと思います)


★3Dプリンターでの振動板製作についてはこちら★
「[S-072] サブウーハー試作4号機(3Dプリンターでの振動板製作)」






この技術を元に世に送り出したのが
2021年夏発売のサブウーハー「SW-1」です。



お客様からは、
「16cmウーハーとしては信じられないスピード感のある低音がでます。」
とご好評を頂くなど、その優位性は確かなものだと確信しています。


新作SOLAに搭載するのは、より小さな12cm口径ウーハーです。
SW-1からさらに進んだ振動板構造については、次回の日記に記そうと思います。











[S-073] 自作ウーハーの試行錯誤①

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前回更新から2ヶ月近く経ってしまいましたが、ウーハー作りの試行錯誤をしていました。

3Dプリンタを用いたウーハー作りのコツがつかめてきたので、記しておきます。


ベースとなるユニット

当初、DaytonAudio「DSA-115-8」をベースユニットにしていました。



アルミニウムの振動板をもつユニットで、シンプルながら十分な基本性能をもつハイCP比モデルです。10cmの口径もSOLAにはピッタリです。

このスピーカーユニットの振動板に、立体的な補強部材を貼り付けることで、
振動板の剛性の飛躍的な向上を狙います。




3Dプリンタで成型した補強材で振動板を強化しているため、
振動板重量の増大は避けられません。

そこで、ベースとなるユニットには、
少し重くなった振動板をも軽々と動かせる駆動力が求められます。


スピーカーユニットの駆動力の指標

駆動力の指標になるのが、「Qts」と「BL」です。

Qtsは、振動板がどれだけ制動されているかを示す値です。この値が小さいほど制動力が高まります。

BLは、コーンを押し出す力の強さです。この値が大きいほど、同じ電流であっても力強く振動板を動かすことができます。

ちなみに、当初ベースユニットとして予定していた
DSA-115-8は、BL=5.4N/A Qts=0.42です。

有名なFostexのFE103NVは、 BL=4.7N/A Qts=0.46。

 FE103NV

この2つの値に着目して見ると、フルレンジユニットは思っているほど駆動力が大きいわけではないことが分かります。

フルレンジは最高域まで再生するために振動板を可能な限り軽く作りますが、それとバランスをとるために、磁気回路はそこまで強くしません。車で例えるなら小型軽量を持ち味とする「ライトウェイトスポーツカー」でしょうか。


例外は、FOSTEXのバックロードホーン向けユニットです。
軽量な振動板に、可能な限り強力な磁気回路を搭載しています。音のバランスはハイ上がりになり、使う用途が限定されるユニットに仕上がります。
それでも、ボイスコイルの重さに制約があるため、BL値はそこまで高くありません。

FE108SS-HPは、BL=5.3N/A Qts=0.39です。
先のDSA-115-8はBL=5.4N/Aでしたので、殆ど差がありません。

FE108SS-HP

BL値は、磁気回路の物理的な大きさにほぼ支配されるので、大口径ウーハーが大きなBL値を持っていることになります。大口径ウーハーの駆動力は侮れないものがあります。

20cm口径ウーハー:FW208HS BL=10.6N/A Qts=0.40
40cm口径ウーハー:FW405N BL=15.7N/A Qts=0.45


ユニット選びの決定打
今回は、デスクトップに使えるサイズ感を目指しているので、あまり大きなウーハーを搭載することはできません。
10〜13cm口径の中で当初目をつけていたのが、DaytonAudioの「DSA-115-8」でした。

このウーハーも悪くはなかったのですが、鉄板プレスで作られたフレームが少し頼りなさを感じてしまいます。



また、TSパラメーターを使ったシミュレーションで、5gを超える補強部材の貼り付けでは低域にピークが生じ、ダンピングが極端に悪くなることが分かってきました。




次の選択

そこで次に目をつけたのが、SEASの「Prestige L12RCY/P」です。



ベースユニット単体でも、高剛性に作られた金属コーンを装備し、ダンパー周りも開放的な構造になっているなど、現代的な性能の高さを感じさせます。



このSEAS 「L12RCY/P」は、
BL=6.1N/A、Qts=0.29と驚異的なスペックを誇ります。

試聴でも、歪の少なさに秀でており、ベースユニットに十分な実力の持ち主だと考えました。


このユニットを「構造剛性」verに改造するのは、次回にお話ししようと思います。

2021年を振り返って

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いよいよ年の瀬ですね。
2021年のオーディフィル活動を振り替えてみようと思います。




オーディフィル5周年!



今年の4月で、オーディフィルは5周年を迎えました。

ブログ記事「オーディフィル 5周年!」21.04.04

これからも活動を続けていこうと思っていますので、どうぞ宜しくお願い致します!




サブウーハーSW-1

4月17日には、「サブウーハー使いこなし術」というpdf資料を公開しました。



Twitterでも好評を頂き、作った甲斐があったなと思っています。

資料「サブウーハー使いこなし術」、完成しました!自分の知っている限りのノウハウを書いていたら、いつの間にか40ページ近くに…(´∀`;)読んで損のない内容だと思いますので、ぜひ。https://t.co/JLlkEYK6z8 pic.twitter.com/0eMucUO6a9

— カノン5D @オーディフィル (@audifill) April 17, 2021

そして、6月にはサブウーハー「SW-1」を発売。
25Hzのクリアな超低音を出してくれる、頼もしい存在です。





FOSTEX FE168SS-HP発売

これはFostexの新製品ですが、非常にエポックメーキングな出来事でしたね。
私も全力でBH作りました! バックロードホーンは、マイペースに研究を続けていこうと思っています。


バックロードホーン型スピーカー「S-076」

設計詳細は、ブログ記事「[S-076] FE168SS-HPを使った新型バックロードの設計コンセプト」をどうぞ。




スピノラマ

最新の測定手法「スピノラマ」について勉強をしました。



Twitterでも一時期話題になってましたね。

勉強したことをまとめました...φ(・ω・*)最新スピーカー測定技術「スピノラマ」 -技術ノート-評論/情報-AudiFill(オーディフィル) https://t.co/SSk68mQjEz

— カノン5D @オーディフィル (@audifill) August 16, 2021

スピノラマって何?という方は、ぜひこちらをご覧ください♪
最新スピーカー測定技術「スピノラマ」




楽器の物理学

Twitterをやっていて、初めてバズりましたw 
(※バズる=短期間に多くの反響を集めること。)

今も少しづつ読み進めています。

Amazonで買った「楽器の物理学」。思った以上に物理学な内容です :( ;˙꒳˙;): pic.twitter.com/Qqmrtu2UKU

— カノン5D @オーディフィル (@audifill) May 28, 2021




アニソンオーディオフェス2021

自主開催イベントのアニソンオーディオフェス。
今年も多くの方にご参加いただき、大賑わいのイベントになりました。

【告知】 アニソンオーディオフェス2021、12月19日(日)に開催予定です。自作のオーディオ機器で、アニソンを鳴らしましょう!!#アニソンオーディオフェス#アニソンオーディオフェス2021#アニオフェスhttps://t.co/Qlc0zAuuo3 pic.twitter.com/0RMQm8QuN7

— カノン5D @オーディフィル (@audifill) July 23, 2021

<当日の様子>









アニソンオーディオフェス2021開催報告ページはこちら




振り返ってみると、盛りだくさんの2021年でしたね。
また来年も、新しいことにチャレンジする一年にしたいと思っています。


それでは、良い年をお迎えください♪

謹賀新年

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あけましておめでとうございます。
2022年、始まりましたね!

オーディフィルは、より良い音を届けられるよう、
これからも頑張って参ります。


さて、写真のスピーカーですが、
新製品の「SOLA Mk2」です。

発売は、今年の6月を予定していますが、
webページも、それに合わせてリニューアルしました!

↓ webページはこちら ↓
「ひのきスピーカー」の オーディフィル


日本が世界に誇る素材「ひのき」のポテンシャルを今まで以上に引き出し、
私の好きなボーカル再生を、より極めていく所存です。





今年もどうぞ宜しくお願い致します。


[S-073] 自作ウーハーの試行錯誤②

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今日は連載している自作ウーハーについての話です。

前回、ベースに使うウーハーとして、
「SEAS L12RCY/P」が良さそうというところまでお話ししましたが、
試行錯誤はまだまだ続きます。




まず作ってみたのは、シンプルな形のもの。(ver.1.6)


先の写真の左上にあった、ものです。
しかし、これは全然ダメダメ。

低音の質感が悪く、ドロンとした低音になってしまいました。
重量付加が優勢で、構造剛性が不足ているものと思われます。


次は、ver.2.6。


ウーハー全面を覆うような、大きなサイズにしつつ、
梁を中央から伸ばし、剛性と軽量化を狙います。

こちらはかなり改善がみられました。
欲を言えば、もう少し力強い低音感が欲しいところです。


こちらは、ver.2.7


全体の形状は、ver2.6を踏襲しつつ、
中央部分の厚みを上げています。

これはかなり良い感じです。
前から感じていましたが、コーン中央付近の剛性を上げることが、
低音の力感に効いてきている印象です。


ふと気になって、前面側の形状を変えてみたのが、
このver.2.8。


中心部分をテーパー形状にしてみました。
低音より、中音域の質感が大きくup。

良質なホーンのような、実在感のある濃い音が出てきました。


思い切って、剛性重視に振ってみたのが、
ver.2.10。



中央部はかなり肉厚になり、補強材の重量は13g。
手で持っても、ずっしり来る重量感があります。

さすがにここまでやると、能率の低下が大きく、
低音の質感を確保するのが困難になってしまいました。

しかし、深みのある低音感は今までの中でベスト。
バランスをとりつつ、最適化を進めていきます。





前側形状はver.2.10と同じとしつつ、
全体的に軽量化を施したのが、ver.3.2。



今までの中でベストの、低音質感。
深みがありつつ、ゴリッとくる低音になってきました。

ベースギターのグリグリいうような質感は格別です。


軽量化が重要ならと、
軽量化を極限まで推し進めたver.4.1。



余り違いが無いように見えますが、
外径を5mm小さくして、各部も薄くしています。

重量はver.3.2の半分になりましたが、
剛性が出ません(泣)

ユニットのTSパラメーターとの相性も悪く、
今回は見送りです。


ラストは、ダメ押しのver4.5(笑)



ちょっと分かりにくいですが、
ver.4.1の各部に曲線を入れて剛性upを狙います。

...剛性は上がったような...?
よく分かりませんでした(笑)

細かな構造より、構造材の厚み・配置が重要なようです。



さて、色々やってみて、
ver3.2が良さそうという結果になりました。





さて、次回はver3.2ウーハーを組み込む「箱」についてのお話です。

[S-073] 無垢材で作るスピーカー

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(写真:オーディフィル SOLA MK2

皆さん こんにちは。

今日は、ひのきスピーカーの特長でもある
「無垢材」について説明しようと思います。


先日発表した「SOLA Mk2」は、
ひのきの無垢材を使っているのが大きな特徴になります。

この「無垢材」とは何か。

意外と知られていないことも多いので、
一般的な「MDF」との違いも併せて説明します。




無垢材

木材は、樹木を切った丸太の状態から作られます。
丸太をそのまま直方体の形にカットしたのが「無垢材」と呼ばれるものです。



基本的には、丸太を切り出すだけなので、
何も手を加えない「無垢な」状態の木ということで、無垢材と呼ばれているのだと思います。

無垢材の一番の特徴は、木の表面に見える木目模様でしょう。
一年ごとに刻まれる年輪が、そのままの美しさをもって現れます。



アコースティック楽器で使われる木材も、(基本的には)この無垢材です。

美しい響き、意匠性を備えているため、
長い年月をかけて演奏される楽器には最適な材料なのです。





集成材

無垢材は、先ほどの図にあるように、丸太からそのまま切り出すことが特徴です。
逆に言うと、無垢材は「小さな丸太からは、小さな板しか作ることができない」という欠点も併せ持っています。

そこで「集成材」の登場です。



無垢材のような生の木の風合いをもちながらも、
原材料の選択肢や、作れる板材の種類は格段に広がります。

無垢材と比べると、木目の美しさは一歩劣りますが、
木の響きは比較的残っており、板の反りが少なく扱いやすいので、
自作スピーカーにオススメの材料です。

(※横方向だけを貼り合わせた「幅はぎ材」は、無垢材として扱われることが一般的です)




MDF

MDFの製造方法は、先程と大きく異なります。


参考:https://jfpma.jp/seihin/koutei-index.html

一度、原料を繊維まで解きほぐし、そこに接着剤などを加えて成型して作られます。

原材料の姿は全く分からなくなりますので、
木質廃材の再利用も可能になります。

このように、極めて合理的な板材がMDFだと言えるでしょう。
無垢材や集成材のような、縦横の力学的な区別もありません。


他に、パーティクルボードや、合板もありますが、
いずれも木材を細かく裁断して、再成型したものになります。




スピーカーに無垢材を使う理由

現代のスピーカーではMDFが最も多く使われる材料になっていますが、
あえて無垢材を使う理由として、木材の繊維構造が挙げられます。


参考:https://www.shinrin-ringyou.com/mokuzai/kouzou_micro.php


木材には、「道管」という水を通すための構造があります。
(写真はアカマツの顕微鏡写真なので正確には「仮道管」です)

これが、「軽くて強靭」という特徴をもつハニカム構造をとっており、
木材固有の特性の源になっています。


特に、この構造を構成するセルロース成分は、極めて高い強度があり、
それが寸断されずに直線的に繋がっていることは、
音のヌケ感、鮮度感にも好ましい影響があるのではないかと考えています。


参考:http://www.audifill.com/essay/eng/0_10.html

無垢材で作ったスピーカーは、濁りのない鮮度の高い音が得られ、
音色の描写に優れているという印象をもっています。

楽器の素材感、ボーカルの体温が伝わってくるスピーカー作りには、
この無垢材が欠かせない材料になっています。




こうして、利点欠点がそれぞれの材料になりますが、
全て手作業でスピーカーを作るオーディフィルにとっては、
木材の魅力を最大限に発揮できる無垢材を愛用しています!

一方で、スピーカーを大量生産するメーカーにとっては、
均質で安定的な供給が可能な、MDF材が好ましいという結論になると思います。

エンクロージュア(箱)の素材選択は、スピーカーの性能を決める無数の項目の一つでしかありません。
「MDFで作ったスピーカーだからダメ」なんてことはないと思っています。

どういう手段で、何を目的にスピーカーを作るのかという、
メーカー側のスピーカー作りに対する考え方が、
材料の選択に現れると思うと、スピーカー選びが少しだけ面白くなるのではないでしょうか。



次回は、SOLA Mk2のエンクロージュア設計について、説明しようと思います。
どうぞお楽しみに!





ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。



[S-073] ひのきでスピーカーを作る理由(その1)

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皆さんこんにちは。
ひのきスピーカー工房、オーディフィルのカノン5Dです。

さて、連載で紹介している最新作[S-073] SOLA Mk2は、
無垢材のなかでも、「ひのき」の無垢材を使っているのが特徴です。

 無垢材とは?についてはこちら



私が「ひのき」を使ってスピーカーを作る理由については、2016年にもブログに書きましたが、
あれから5年近くたっているので、改めて思っていることを書こうと思います。

 2016年の日記はこちら




素材にまつわる音色変化の原因

そもそも、木材の音質・音色は何によって決まるのか。
私は2つの原因があると思っています。


①板鳴り、箱鳴り (横波)

ギターの胴鳴りなどで知られるように、
スピーカーも多かれ少なかれ振動しています。

スピーカーの箱をたたけば「コンコン」という響きがありますが、
その大半は、この影響です。

図解すると、このような板の変形挙動です。



まるで、両端を固定した糸のように板が振動するので、
私は「横波」と呼んでいます。

補強材の追加などで、この変形挙動を抑えることができるのは、皆さんご存じのとおりです。


②素材固有の音色 (縦波)

先ほどの横波に対して、こちらは「縦波」です。
図解するほうが分かりやすいでしょう。



素材の中を伝搬する、定在波のようなイメージです。

「横波」は、板を厚くすることで消えていきますが、
この「縦波」は、板厚や補強材では殆どコントロールできません。


この縦波の影響を簡単に判別できるのが、
インシュレーターとしての音質評価です。

インシュレーターのようなブロック形状では、
横波(本体が大きく歪むような変形)は殆ど起こりません。

しかし、金属、木材、石、カーボン、ガラス…
それぞれのインシュレーターに特徴的な音色があることは、よく知られています。
これを「縦波」特性の違いとして考えると、すんなり解釈できるのではないでしょうか。

たまに "コンクリート素材" が理想的である、という話を聴きますが、
コンクリートの強度が効くのは「横波」に対してであって、
コンクリートのもつ「縦波」の音色は、お世辞にも良いものではありません。

オーディオルームの床の施工例では、コンクリート基礎の上に、音色感のよい無垢材フローリングを敷く例が多くありますが、
これは、コンクリートの強度と無垢材の音色感、双方のメリットを活かすことができる合理的な選択だといえるでしょう。




まとめ

「〇〇材の音色は、□□だ」という議論を聞きますが、
それは素材のどういう挙動に対して言っているのか?を考えると、
も少し深い洞察が得られるのではないかと思っています。

とは言っても、
そもそも「横波」と「縦波」をキッチリ分けて評価することも難しかったりするので、この考え方を広めようとは思っていません。
...まあ、賛同してくれる方がいらっしゃれば嬉しいですが(笑)

私自身、ひのきスピーカーを5年間作ってきて、
「こうした考え方をもって、無垢材のスピーカー作りを進めていくと良い結果が得られそうだ」と考えるに至ったというレベルの話です。



本当は、木材固有の音色についてもお話ししようと思ったのですが、
序章が思った以上に長くなってしまったので、その話はまた次回。





ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。





[S-073] SOLA Mk2の 試聴動画を作りました♪

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皆さんにこんにちは。
SOLA Mk2の試作機が完成しましたので、試聴動画を作成しました。


ひのきスピーカー SOLA Mk2 試聴動画(女性Vo.&ベースギター)



ひのきスピーカー SOLA Mk2 試聴動画(ベートーヴェン交響曲第5番)




動画では伝わりづらいところも多いかとは思いますが、
ぜひご覧ください♪






ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。







[S-073] ひのきでスピーカーを作る理由(その2)

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(写真)SOLA Mk2の試作機とメインシステム

いよいよ春を感じることが多くなりましたでしょうか。
ひのきスピーカー「SOLA Mk2」は<試作機>が完成し、
さらに各部の精度を上げた<製品ver.>の組み立てに入っています。




さて、スピーカー用材料には様々なものがありまして、
それぞれ特徴があります。

木の響きによる「音質」はもちろん、
「加工」や「塗装」のしやすさなども、選択するうえで重要なファクターになります。

ここでは、ざっくりとした区分に基づいて、
各材料の特長を書いていこうと思います。




MDF

最も有名な材料ですね。
20年以上前は、パーティクルボードも多かったのですが、より目が密なMDFにスピーカー市場は置き換わっています。

何といっても、寸法安定性や加工のしやすさは抜群。
さらに、そのコストの低さも魅力です。

音質も、言うほど悪くありません。
(今までずっと無垢材のメリットを連呼しておきながら言うのも、何ですが...笑)

なぜかというと、確かにホームセンターで買ってきた材料をそのまま聞くとイマイチなのですが、
MDFには塗料を沢山吸い込む性質もあって、塗装されたMDFはまた別の音を聴かせてくれるためです。

響きの傾向は、低音と高音が強調されたドンシャリだというと安っぽく感じますが、
木材っぽくない音で、キッチリとした音作りには良い材料だったりします。




ラワン合板

自作スピーカー派の人にとってはお馴染みの板材です。
主に南洋のラワン材を積層した合板で、密度と硬さを併せ持つのが特徴です。

近年はラワンに近い見た目をもつ他の木材も原材料に含まれており、
同じラワン合板といえど、比重が安定しない印象があります。

音は暖色系で、ふっくらとした質感が魅力。
他の板材に比べると雑味を感じますが、これもまた一興。

建築用途で使われる「コンパネ」は、もう少し硬い響き。若干カンカンした音が気になることも。

また「針葉樹合板」は、逆に柔らかくモッサリとした音に感じることが多いですね。
こちらは激安であることに加え、ダイナミックな木目を生かした使い方を心掛けたいものです。

もう少し上質なものでは、表面にシナ材を貼った「シナ合板」もあります。
こちらは、比較的素直な音で使いやすいですね。
ただ、値段も高めなので、それだけの値段をかけられるなら「フィンランドバーチ」を使いたくなることも多かったりします。




フィンランドバーチ(樺)合板

自作スピーカー派だけでなく、一部の市販高級スピーカーにも使われています。

硬い樺の木材を積層した合板で、
入手しやすい木材の中では最強クラスの硬度があるのではないでしょうか。

表面、断面ともに整っており、見た目の美しさがあります。

合板の中では高価ですが、無垢材と比べると安く、
コストパフォーマンスは良好だと思います。

響きも合板の中では良質ですが、
その硬度に由来する甲高い響きが気になることもあります。

この響きを "ハイスピードな音" と称するこもあるようなので、
その辺は好みの問題かもしれません。

また、響きが良いだけに合板構造特融の<籠り感>も気になってきます。
まあ、無垢の樺と比較しなければ気になることは無いレベルなので、先ほど述べたようにコストパフォーマンスに優れる材料だと言えます。

なお「ブナ合板」もあり、こちらはよりHi-Fi調。
透明度が高くワイドレンジで、MDFと方向性が近いと思います。
ただ、ボーカルのサ行が刺さりやすい傾向があるので、使いこなしには注意が必要です。




米松合板

ビンテージ派にとって知名度の高い合板です。
WE等の名機も、この材料で作られていました。

直接聴き比べた経験はないのですが、カラッとした音の響きがあるような気がします。
(完成品を聴いているだけなので、何とも言えませんが...)

ちなみに、ホームセンターで見かける「パイン(松)集成材」も、
サッパリとした高音域が特徴で、同じ松らしい特徴を感じることができます。




無垢材(木材)

樹種により大きく特徴や音質が異なりますが、
音ヌケの良さは共通する特徴です。

音ヌケが良いとは、音が籠らずに、音の切れ目がスッと美しく立ち消える様子が聴けるということ。木材固有の道管の構造による、振動伝搬特性ゆえの特長だと考えています。

一方で、樹種よる材料の癖(音色だけでなく、加工や塗装も)はそれぞれが持っており、その癖とどう向き合うかが、スピーカーとして成功するかのカギになります。

単に「〇〇材で作りました!」というだけの話であれば、
その材料の音が再生音に乗るだけです。

それでは、過度に彩度を強調した写真のように、
すぐに飽きてしまいます。

何年、何十年も音楽を聴くためのスピーカーとしての音を出すには、
樹種固有の癖を巧みに消化する、知識と技術が求められるでしょう。




樹脂・ポリマー材料

いわゆるプラスチック素材なので、あまり高品位な印象を持たれませんが、
ハイエンドスピーカーでの採用例もでてきました。

人工素材で、物性も多種多様なので一概には言えませんが、
癖のなさは随一といっても良いでしょう。

ポリプロピレン(PP)などは古くから振動板に使われますし、
独自ポリマー素材のインシュレーターも定番商品として存在しています。

また、小口径フルレンジのフレームに樹脂材料が使われることもあるので、
強度をもつ構造に成型できれば、侮り難い材料だといえるでしょう。




金属

金属でいえば、アルミ系素材が一番人気。その次は、鉄系・銅系素材でしょうか。

現代では強度シミュレーションや加工技術、制振技術が進化し、
その非常に高い強度や硬度の恩恵を享受しながらも、
かつてのように盛大に金属音が鳴るような筐体は無くなりました。

重量や工作技術のハードルはありますが、
使いこなすことができれば、強い武器になるアイテムです。





こうして見てきましたが、
どの材料も特徴的なんですよね。

ここでは分かりやすいように書きましたが、
「スピーカーの音に対する材料の支配力」としては、
感覚的に言って10~15%程度ではないでしょうか。

ただ、その小さな違いが、高品位スピーカーの中では埋められない差になったりするので、
決して侮ることができないポイントでもあります。


次回は、「ひのき無垢材の使いこなし」として、
新たに導入した補強技術のことについてお話ししようと思います。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。






ひのきスピーカー設計 ~第一世代~

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表題写真(左)「[S-063] PR-10」、(右)「[S-060] PR-83Sol」

ひのき材でスピーカーを作っているオーディフィルは、
今までに様々な ひのきスピーカーを製作しています。

一見、同じように見える ひのきスピーカーですが、
実は少しずつ設計のノウハウが積みあがっているのです。


今回は、第一世代と呼べる「PR-83Sol」と「PR-10」をピックアップして説明ます!

※PR-83Sol. PR-10は、生産を終了しています。




PR-83Sol

ひのきスピーカー最初の作品であるPR-83Solは、極めて板厚が厚いのが特徴です。



こちらにPR-83Solの組み立て途中の写真を載せます。

PR-83Solは8cmフルレンジを搭載する小型スピーカーですが、
フロントバッフルは、50mmの厚さを誇るものでした。




7インチ液晶のタブレット端末と比較しても、
その厚みが伝わると思います。



外観は、ひのき材の重厚さを感じられるもので、
大胆な45°カットが目を引きます。




PR-10

PR-10は、より小型なフルレンジスピーカーです。
内容量は、約1.5L。デスクトップ向けに作ったスピーカーでした。



こちらも、板厚は25mmを確保。
十分な剛性を狙っての選択でした。








箱作りのポイント

十分な板厚のおかげで、双方とも十分な箱強度を得ることが出来ました。

45°カットと相まって、見た目もスマートに収めることができたと思います。


(写真:45°カット工程の前後)




当初、塗装はウレタン仕上げでしたが、最終的にはワックス仕上げに落ち着きました。
ダイナミックな木目が楽しめるのも、ひのきスピーカーの特長ですね。




板厚の功罪

一番の問題は、中高域のピーキーさでした。

小音量で聴く限りには全く問題ないのですが、
板が盛大に振動をはじめる大音量域では、かなりキツい中高音になってしまいました。

厚い板は、それ自身の質量が大きく、
一度振動を始めると制御が極めて難しいのです。







自室で聴く環境では、ひのきならではの美しい響きを聴かせてくれましたが、
オーディオショウなどのデモ会場で、苦戦したことを思い出します。





ひのき材の魅力を前面に打ち出した2台でしたが、
数年の販売の後、PR-83SolとPR-10は生産終了になりました。

そこで得られた経験は、【第二世代】と呼べる「Concept-SOLA」と「TOYONE」に引き継がれていくのでした。

(続く)





ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。



ひのきスピーカー SOLA Mk2 試聴動画(女性Vo.&ベースギター)





ひのきスピーカー設計 ~第二世代~

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前回に引き続き、ひのきスピーカーの歴史を振り返ってみます。

今回紹介するのは、「第二世代」と呼べる設計になっている
「Concept-SOLA」と「TOYONE」です。

※Concept-SOLA、TOYONEは生産終了しています。
 現在の「ひのきスピーカー」のラインナップはこちら




Concept-SOLA "コンセプト ソラ"



Concept-SOLAは、小型の2wayスピーカー。
ブックシェルフ型ですが少し縦長の本体が特徴です。

様々な特徴がある本作ですが、
ここでは、ひのき材の扱いにフォーカスしてお話しします。



Concept-SOLAのスピーカー箱には、
15mm厚の ひのき材を使っています。

これは、25mm以上の板厚を誇る「第一世代」と比べると、
控えめともいえる値です。


(写真)15mm厚の側面板を接着している様子

前回の日記で説明したように、
「第一世代」のひのきスピーカーでは、
板を厚くしすぎたため、中高音域に「キンキン」としたクセがありました。

特にエレキギターが耳障りに聞こえてしまい、
様々なジャンルの音楽を大音量で鳴らせるとは言えないものでした。。


そこで、このConcept-SOLAでは
あえて板厚を薄くし、硬質な響きが無くなるように設計しています。



しかしながら、単に板厚を薄くするだけでは強度不足になってしまいます。

音が出ているスピーカーの内部には、音による非常に大きな応力がかかっており、
強度が不足すると、スピーカーが過度に振動してしまい、濁った音になってしまうです。


そこで、Concept-SOLAでは、左右の板にアルミの部材を通し、
箱を補強する設計にしています。

  


この補強部材の効果は抜群でした。
強度を高めつつも、全体が厚い板材で構成されていた第一世代のような癖は感じられず、強度アップの恩恵でもある「透明度の高さ」「明確な低音音域の表現」が手に入ったのです。


こうしてConcept-SOLAは、音の透明度が高く、音場が広がりが綺麗な音でありながら、深々とした低音も奏でられるスピーカーになったのです。





もちろん、無垢ひのき材による豊かな響きも健在です。
女性ボーカル曲では、澱みのない凛としたボーカルが逸品だったのを思い出します。



(2018年の真空管オーディオフェアにて)


カーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」では、
甘美な音色のギターイントロに始まり、艶やかなボーカルが心地よいと評判でした。



※Concept-SOLA、TOYONEは生産終了しています。
 現在の「ひのきスピーカー」のラインナップはこちら




TOYONE "トヨネ"



「TOYONE」は、少し大きめの10cmフルレンジを搭載した ひのきスピーカーです。

先ほど紹介した「Concept-SOLA」が定価20万円を超える価格かつやや縦長のフォルムであったので、より安価でコンパクトなモデルとして「TOYONE」は設計されました。






この「TOYONE」も、第二世代ひのきスピーカーの特長である、比較的薄い「15mm厚」の ひのき板で作られています。

そして、スピーカー内部に金属の補強フレームを装備していることも、先ほどのConcept-SOLAと同様です。




「TOYONE」は、ひのきスピーカー史上、最も豊かな響きをもつスピーカーだと思います。

全ての部材が15mm厚(※背面は12mm厚のフィンランドバーチ合板)で構成されており、芳醇なひのきの響きの源になっていました。



(製作中のTOYONE)


しかし、「TOYONE」の芳醇な響きは、試作機の段階では欠点も併せ持つものでした。

特に、中低域の響きが特定のポイントで制動できなくなり、
ボンついた音が出てしまったのです。


これは「第一世代」で悩まされたキンついた中高音の響きではなく、
チェロの帯域、つまり中低域の過剰な響きとして現れてきました。

板厚を薄くしたことにより、共振周波数が中高域から中低域にシフトしましたが、その「共振の制御」という点では、まだまだ未熟だったのです。


この中低域の付帯音の対策には、相当苦労しました。
「響きを殺さずに、付帯音を減らす」ために、試行錯誤が続いたことを思い出します。


(箱の一部分に荷重をかけ、振動特性を変える実験)


(電気的なフィルターで改善を図る実験)



最終的には、補強構造の見直しをすることになりました。
まずは、箱の開口部から手の届く範囲を変化させてみます。




どんな部材が効果があるのかが分かってきたところで、新たな構造を設計図におこしていきました。(製品版は、こちらの構造です)








スマートな外観の「TOYONE」でしたが、箱の響きという点では難易度が高く、非常に苦戦した作品でした。

無数の試行錯誤が必要な開発でしたが、今から思うと振動特性について多くのノウハウが手に入ったのは収穫だったといえるでしょう。




豊かな響きと、フルレンジの点音源を併せ持つ「TOYONE」。
クラシックはもとより、J-POPSなどの音源を心地よく聴かせてくれる能力があったことを思い出します。

録音が悪くて、ちょっと鳴らすのが難しい音楽も、
TOYONEで聴くと、楽曲の旨味を上手く引き出してくれました。


様々な音楽への対応幅が広がると、日常生活に溶け込んだ使い方ができるようになり、音楽リスニングはもちろん、映画鑑賞用のスピーカーとしても長らく重宝したことを思い出します。

 

※Concept-SOLA、TOYONEは生産終了しています。
 現在の「ひのきスピーカー」のラインナップはこちら





まとめ

「第二世代」のConcept-SOLAとTOYONEは、
薄い板厚で ひのき固有の癖を和らげつつ、金属補強により箱の強度を高めたことが特徴です。

しかし、その大きな変化に翻弄されたのもまた事実です。
「補強構造をどう作るか」という新たな課題が出てきたのです。

単に「ひのきで作る」というだけでなく、「振動特性をコントロールする」という領域に踏み入れたのが、Concept-SOLAとTOYONEの存在意義だと思っています。



(2019年 秋のヘッドフォン祭での「TOYONE(左)」と「Concept-SOLA(右)」)



次回の日記で紹介する最新の「第三世代」の ひのきスピーカーでは、
「第二世代」で確立した技術をさらに磨き上げたものになっています。


どうぞお楽しみに。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。



ひのきスピーカー SOLA Mk2 試聴動画(女性Vo.&ベースギター)







オーディフィル 6周年!

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皆さんこんにちは。
まだまだ寒暖の差が大きな日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

2016年4月に始動した「オーディフィル」は、
今年で6周年を迎えました!!


現在は、6月に発売開始の
「SOLA Mk2」の最終準備を進めています。

写真のとおり、かなり良い出来栄えになっていますので、
どうぞご期待ください。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。



ひのきスピーカー SOLA Mk2 試聴動画(女性Vo.&ベースギター)


ひのきスピーカー設計 ~第三世代~①

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オーディフィルは「ひのき材」を使ってスピーカーを作っていますが、その設計は年々進歩しています。

単にひのき材を使うだけだった「第一世代」、アルミ部材で強度向上を試みた「第二世代」。そして、今回紹介するのが、最新作SOLA Mk2の「第三世代」になります。



第二世代と第三世代の違い

トップに掲載した画像は、第二世代と第三世代の内部構造を比較したものです。ぱっと見て、内部構造が全体的に変わっていることが分かりますでしょうか。


<第二世代>Concept-SOLA(2019年発売)の内部構造


従来の「第二世代」は、スピーカーの側面板と水平にフィンランドバーチの板を通し、その間をアルミ部材でつなげる構造でした。
強度向上には大きな効果がありましたが、最大音量に近い領域では少し問題がありました。



こちらの図の左に示すように、音量が大きくなりスピーカー内部からの応力が強まったとき、第二世代の構造では「青矢印」で書いた「よじれる」ような変形が発生し、アルミ補強部材の効果が薄れてしまうことがありました。

Concept-SOLAは、口径6cmの小さなウーハーを搭載しており、そもそも大音量を想定するスピーカーではなかったのですが、第二世代としての箱の性能に限界があったのは事実です。SOLA Mk2でさらに上の性能を狙うためには、もう一工夫が必要でした。


そこで第三世代では、側面板の上下方向にアルミ部材を配し、それをサンドイッチするように別のアルミ部材で左右をつないでいます。

この構造であれば、内圧が上がっても "よじれる"ような変形はなく、十分な強度を保つことができるのではないかと考えました。


<第三世代>SOLA Mk2(2022年6月発売)の内部構造





強度と響きの両立

ひのきスピーカーにとって、ひのき材由来の「響き」も大切な要素です。
「強度」を上げることで「響き」を失わないか、細心の注意が必要でした。

これは、第二世代、第三世代の箱を、上から見た図で示すと分かりやすいと思います。


第二世代では、アルミ部材を乗せるための(濃いオレンジ色で図示した)フィンランドバーチ板が、ベッタリとひのき板に貼り付けられています。一見頑強そうに見えますが、先に述べたような "よじれ"問題により、強度はそこまで高くなりません。

第三世代では、これをアルミ板1本だけで済ませているので、残る部分はフリーに振動することができます。

板全体をフリーに振動させてしまうと中低域のボンついた箱鳴りになってしまうのですが、第三世代の構造であれば振動できる面積は限られているので、中高域の美味しい響きだけを享受することができるのです。ギターの弦を短く押させて弾くと、高い音が出せるのと同じ原理です。


第三世代ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の製作の様子





音への効果、まとめ

以上のように、最新作SOLA Mk2の「第三世代」ひのきスピーカーは、新しい補強構造を採用しています。

最大音量付近での音のキレ、低音の力感が向上しただけでなく、ひのきの響きが最大限に生かされることで、音の粒立ちや純度感が、小音量でも向上したのが大きな収穫でした。

オーケストラを聴いているとき、コントラバスの旋律がハッキリと描写されるようになったと言えば良いでしょうか。JAZZでもベーシストの手の動きがはっきりと見える良さが出てきました。

アニソンやJ-POPSでは、打ち込み音源がパチッと決まる様子が快感です。
艶やかで優しい音は、以前からの「ひのきの響き」の特長でしたが、そこに力強さや瑞々しさが加わったのが、この第三世代エンクロージュアの効果だと思っています。


実は、第三世代にはもう一つ工夫が施されています。
そのことは、次回の日記で書こうと思います。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。






ひのきスピーカー設計 ~第三世代~②

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新作「SOLA Mk2」では、楽器を模した設計になっていることも特徴の一つになります。

上の画像は、書籍「The Science of String Instruments」に記載されている、バイオリンの板の振動パターンです。注目すべきは、A0やC2の振動モードで少しだけ左右非対称の振動になっていることです。

これは、魂柱やバスバーといったバイオリン内部の備品が左右非対称に配されているために起こる現象で、バイオリンが幅広い帯域で美しい響きをもつことに関係があると考えています。
響かせることは、共鳴と表裏一体なのですが、共鳴がある一カ所で強く出ることは「音の癖」につながってしまいます。この共鳴を上手く分散させることができるのが、左右非対称であるといえます。




SOLA Mk2の内部を見ると、本体中央(青線)の少し右側(赤線)に補強パーツが位置していることが分かると思います。距離にして7mmほどのズレですが、共鳴を抑えることなく響かせるための工夫になっています。


音にとっても、より軽やかな響きを得ることができ、スピーカーから音がフッと離れて鳴り始めるという感覚です。普通のスピーカーとは少し違う、楽器ライクな鳴りの良さを感じて頂けるものだと思っています。






ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。






SOLA Mk2 発売!

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【写真]】 SOLA Mk2


皆さん、こんにちは。
2022年の6月に、オーディフィルの最上級機「SOLA Mk2」を発売しました。

今日からは、SOLA Mk2の特長と、その背景を少しづつ書いていこうと思います。


SOLA Mk2の販売ページはこちら




小さな部屋、小音量でも鳴るスピーカー

SOLA Mk2の特長の一つに、「小さな部屋」「小さい音量」でも満足度の高い音を届けることができる、ことが挙げられます。

これは、私個人の想いとして大きな音で鳴らすことができない環境で、どこまで良い音を追求できるかを重視しているためです。




画像は、オーディフィルのメイン試聴室ですが、ごく普通のアパートの6畳間です。そして、スピーカー間隔は1mほどでしょうか。

真ん中には、プレーヤーとプリメインアンプが1台ずつ。

驚くほどにコンパクトな開発環境になっています。




「SOLA Mk2」の存在意義

世界は広いもので、30畳以上ある広大なリスニングルームをお持ちの方も沢山いらっしゃいます。
オーディオショウで、巨大なパワーアンプが床置きされている光景を見たことのある方も多いでしょう。

大手メーカーの一般的なスピーカーは、こうした広い部屋でのリスニングも考慮した設計がなされており、
小空間や小音量で本当の実力を発揮できるとは限らないのが現実です。


「オーディオは部屋から」という言葉もありますが、
オーディオの敷居を無暗に上げることは、オーディフィルの信念とは異なります。

今の部屋で、無理のない音量で、
圧倒的なパフォーマンスの音質を享受できる。

それが、「SOLA Mk2」の存在意義だと思っています。




次回以降は、「SOLA Mk2」の音質的特徴について書いていこうと思います。
どうぞお楽しみに!





オーディフィルが目指す音 ~その1~

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今回は「オーディフィルが目指す音」についてお話ししようと思います。

スピーカー製作をしている以上、何かしら【こんな音を鳴らしたい】という要求があるわけで、少しづつお話ししていこうと思います。



表題画像にあるように、
「力強く、艶やかで、美しい」というのが、オーディフィルが目指す音であり、
ひのきスピーカーの象徴的な音の特長でもあります。



「力強い」とは、音が前に出てくること。
世の中には沢山のスピーカーがありますが、私は音が明瞭かつキレよく前に出てくる音が好きです。奥の方でゴニョゴニョと鳴っているのではなく、ベールを剝がしたような鮮明さのある音です。
ボーカルが、ボーンと前に出てくる気持ちよさがあるか否かでは、音楽を聴いたときの心地よさが大きく異なってくると感じています。

以前はバックロードホーン型のスピーカーを作っていた経験もあり、こうした「鳴りっぷりの良さ」を重視してスピーカーを作製しています。


「力強い」は、「硬い・騒がしい」とは異なります。
誤解されやすいかもしれませんが、「力強い」と「硬い・騒がしい」は異なります。後者は、ひのきスピーカーでは徹底的に抑えて音作りを行います。

たまに、鋭角的な「硬い音」が鳴ることを誇らしげにしているオーディオシステムを耳にすることがあります。こうした「硬さ」は、立ち上がりを重視する特定の音楽ジャンルには有効ですが、そのスイートスポットを外れた場合、聴くに堪えない音になることが往々にしてあります。様々な録音の音楽を楽しむためには、「硬さ」は可能な限り排除する必要があります。

硬さを抑えつつも、不必要な付帯音を丹念に削っていくことで、力強さにつながる立ち上がりの良さ・瞬発力の良さが表れてきます。付帯音を取り払ったときに現れる立ち上がり感こそが、偽りのない本来の音楽の姿だと考えています。

「騒がしい」は高品位なオーディオで求める音ではないのは明白です。ノイズや歪により生まれる騒がしさは、音楽を心地よく聴くことにとってマイナスです。

しかしながら、ノイズと響きは、紙一重です。耳障りな音を抑えながらも、心地よい響きを残していく。これらをコントロールする技術が、ひのきスピーカー作りの要点になっています。先日の日記に書いた板厚の調整や、内部補強材の効果がこの辺に結びついています。


「力強い音」とは、抑揚が感じられること。
音楽は、そのダイナミックさ、抑揚に魅力があると感じています。生演奏とオーディオの一番の違いは、このダイナミズムの表現だと思っています。

しかしながら、生演奏と家庭での音楽鑑賞は、絶対的な音量に大きな差があります。また、ハイエンドオーディオでない限り、完全な上流系(プレーヤーやアンプ)、完全な部屋(室内残響)は存在しません。

そうした不完全さのある中で、いかに音楽の魅力を引き出せるかに着目したとき、ひのきの響きが非常に有効に機能すると考えています。
「響き」とは、音(=振動)を受けて、ほんの少しだけ振動が増幅する効果だと言えます。これを適切に活用したとき、まるで生演奏に一歩近づいたような抑揚のある表情を聴くことができると考えています。


「力強い音」とは、低音から高音まで充実している音。
JBLの上位シリーズスピーカー「Project K2」が、「フルバンド・ウィズ・フルダイナミクス」というコンセプトを掲げていますが、このフルバンドが低域から高域まで、という考え方です。

「SOLA Mk2」は、卓上にも置ける小型スピーカーですが、その低音再生限界は35Hzになります。オーケストラの大太鼓の低音はもちろん、地響きのような電子音楽の低音まで、克明に表現する能力があります。

こうした最低域が、十分なエネルギー感を持っていることに加え、他の帯域と同じぐらいの明瞭さを持っていることが重要だと考えます。そこで求められるのは、ボワボワとした低音ではなく、ゴリッとくる克明な低音です。そのために、スピーカーのエンクロージュア剛性や、振動板の構造剛性を上げる工夫をしています。


「力強い音」とは、高揚感の源泉。
こうして「力強い音」について説明しましたが、その全ては音楽を聴いたときの高揚感を生み出すためにあるといえるでしょう。お気に入りの歌手が、目の前にいる感じ。ライヴで鳥肌が立つあの感覚。それらを生み出すことができる音の要素が「力強い音」だと考えています。


次回は、2つめの要素「艶やかな音」について説明します。
どうぞお楽しみに。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。





オーディフィルが目指す音 ~その2(艶やか)~

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今日は、「オーディフィルが目指す音」の第二回目です。



「艶やか」とは。
オーディオから出てくる音が、色彩感が豊かで、惚れ惚れするような音であること。これが「艶やか」の意味するところです。

楽器の美しい響き、それを豊かな色彩感をもって伝えられるか。音に対して「色彩感」というのも変な話かもしれませんが、音楽を絵画に見立てたとき、しっかりとした色が出ているかは重要な要素になるはずです。

前回の「力強く」がコントラストだとすれば、今回の「艶やか」は色域や彩度の表現です。
楽器の固有の音が、薄まることなく、その濃厚さを聴かせることができるかという点において、ひのきの無垢材は非常に大きな仕事をしてくれています。



艶やさと、無垢木材の関係。
木材、それも無垢の木材の響きが適切に加わることで、音楽は色彩感を取り戻すと感じています。

もし、完全にピュアな録音・再生系を組むことができれば、そうした響きは不要になるはずです。しかし、私の知る限りでは、それを実施しようとすると総額数千万円のハイエンドオーディオの世界になってしまいます。

我々が対象とする現実的なオーディオでは、無垢木材による「良質な響き」が加わることで、音楽はその表情を取り戻し一層のリアリティを感じることができます。

良質な響きというのが、これまた難しい話で、単に響きを付与しただけでは「着色感・付帯音」として聴こえてしまいます。無垢木材の音色がベッタリと付いた状態では、音楽を楽しむには至りません。

響きは、あくまでも元の音源にある表情を引き出す、隠し味として使うべきなのです。
無垢木材で作ったスピーカーや、楽器の構造を参考にしたスピーカーは多々ありますが、響きの効果を違和感なく調理できている作例は思いのほか少ないのが現実です。



艶やかな音は、香り高い音。
先ほどは絵画という視覚で話をしましたが、これは嗅覚でも同じです。例えば「香り高いコーヒー」というとき、どういう香りを想像するでしょうか。

「香り高い」が意味するのは、単に「匂いが強い」という意味ではないはずです。好ましく魅力的な香りが、深みをもって感じられるとき、香り高いと表現するのではないでしょうか。

音においても同じです。鋭い音や刺激的な音が出せることも大切ですが、それ以上に、一つ一つの音の要素が、程よいバランスと深みをもって調和していることが重要なのです。



艶やかは、特性では測りにくい何か。
オーディフィルの目指す音として①力強く②艶やかで③美しい、という要素を挙げていますが、その中でこの「艶やか」が一番特性で測りにくい項目かもしれません。

艶やかな音は、付帯音を減らせば良いわけではなく、周波数帯域をフラットにすることで実現できるものでもありません。艶やかな音を作りだすには、細かな振動の制御、吸音の調整が重要になります。

私は、音響特性を測る行為を否定しません。私自身もスピーカー開発の過程では、マイクと測定音に一日中格闘することもあります。もしかしたら今後、艶やかさをもたらす要素を特性で示せるようになるかもしれません。

例えば、下記に示すひのき材の振動特性は、「艶やかさ」を特性で測る試みの一つだといえるでしょう。





艶やかさは、小音量再生で最も大切な要素。
小音量で再生した時、音は概して存在感を失いがちです。「大音量であれば良い音だけど...」という場合は、リアリティを音量に頼っており、艶やかさが不足していることが多いと感じています。

小音量にしたときにも、しっかりと音の魅力をキープするには、音そのものの魅力度(=艶やかさ)を高めておかないといけません。いつでも大音量で聴けるのであればそうした配慮は不要かもしれませんが、オーディフィルが目指す音楽再生は、生活と両立できる小音量再生にあります。

よくあるのが、木の響きは音量を上げたときのみ作用する、という誤解です。大音量にしたときに箱鳴りが強く感じられるなどの経験からそうした話が出てくるのだと思いますが、「箱鳴り」と「木の響き」は区別して考えるべきです。

強度不足による箱鳴りは、(それが意図したものでない限り)徹底的に抑えるべきです。ホンボンという無作法な箱鳴りが、多様な音楽に対して効果的である例を私は知りません。

艶やかさの源になる無垢木材の響きは、インシュレーターによる音質変化に近いものがあります。有害な振動モードを取り除き、音楽再生に好ましい振動を残していくチューニングです。
その効果の大小が、再生する音量に殆ど依存することなく、しっかりと小音量でも発揮されることは、簡単なインシュレーターの実験でも体感できると思います。



まとめ
今回は、「艶やかさ」にフォーカスしてお話ししました。

スピーカーメーカーのカタログを見ると、原音忠実の先にリアリティがある、という書き方をしていることが多くあります。
しかし、もう少し違うアプローチがあるのでは?、というのがオーディフィルの考え方であり、ひのきスピーカーの存在意義でもあります。その思想が最も如実に表れているのがこの「艶やかさ」という考え方なのです。

次回は、3つめの「美しい音」について、書いていこうと思います。
どうぞお楽しみに。



ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。




オーディフィルが目指す音 ~その3(美しい)~

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今日は、「オーディフィルが目指す音」の第三回目です。




「美しい」とは

美しい佇まい。スピーカーから出てくる音を聴いたときに、第一印象をそう受け取ってもらえることを目指しています。

技術的に言えば、歪が少なく、付帯音が少ないこと。ただ、これを無暗に追求しすぎてしまうと「無表情」になってしまうのでテクニックが必要です。

基本設計の段階から、ノイズが出ないように設計することが大切です。ここで言うノイズは、明らかに聞こえるものではなく、例えば木材や繊維が振動するときに発生するガサつく感覚のことです。




「美しい」と「綺麗」の違い

辞書としての意味は同じかもしれませんが、自分の中では「美しい」と「綺麗」は少し違います。

「美しい」で求めるのは、深みのある美です。ぱっと聞いて判断できる部分より、何時間も音楽を聴いているときにハッとする美しさを感じること。

木材の選択のなかで、ぱっと聴いても分かる響きを持っている材料は避けました。どの楽器も画一的な「綺麗な音」になってしまうのです。

ひのき材に求めたのは、もう少し素朴で風合いの良い響きです。スピーカーに仕立てる際には、さらに制振構造を加えて、響きの状態を調整することで「美しい」と感じられる所へ持っていくことができたと思っています。


  
  <スピーカー内部の制振構造>





ギリギリを攻める

研ぎ澄まされたモノには、美しさが宿ると考えています。
例えるのなら、日本刀の輝きのような感じです。極限まで研いだ刃先は、見るものを魅了する美しさがあります。

音も破綻しないギリギリを狙うことが、美しさの根源になります。
サビの部分で声を張り上げたとき、音が破綻しないギリギリの表現ができると、そこに美が宿ります。それは、単なる綺麗とは違う意味合いになるはずです。

部品のクオリティ(例えばスピーカーユニットやコンデンサ)が良質であるのも条件になりますが、それだけでなく音の余韻(響きとも言いますが)の帯域バランスをしっかりと管理して設計することが大切です。




リラックスできること

ほっと一息つきたいときに、聴きたい音。

単に「リラックス」といっても様々ですが、自分がイメージするのは日本庭園のような安らぎです。



自然の様を大切にするのが、日本庭園の魅力だと思っています。
ぱっと見は地味かもしれませんが、ほっと一息ついて抹茶でも飲みたくなる雰囲気がある場だと思います。

作為的すぎずに、整える。この両者が両立出来ている状態が「美しい」だと思います。
そして、これが日本庭園と、私の志すオーディオの共通点です。



オーディオは工業製品ではありますが、そこに自然な風合いをどこまで持たせられるか。技術一辺倒にならないように、これからも研鑽を積んでいきたいと思っています。





まとめ

オーディオにおいて何を「良し」とするのは人それぞれです。様々なオーディオマニアの方の音を聴かせて頂く機会がありますが、どれ一つとして同じ音ではなく、どれも魅力的な音であることに驚かされます。

オーディオを本格的に初めてまだ15年ほどですが、ようやく自分の目指す音や、オーディオ像が明確になってきたように思います。そして、それを具現化できたのがオーディフィルの「ひのきスピーカー」です。

もし ひのきスピーカーを聴く機会があったら、ぜひこの3つの要素を思い出してもらえると嬉しいです。


オーディフィルが目指す音 ~終~



<関連記事>

「オーディフィルが目指す音 ~その2(艶やか)~」

「オーディフィルが目指す音 ~その1(力強い)~」





ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。




スピーカーユニットの固定方法(01)

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今回からは、少しニッチなテーマである
「スピーカーユニットの固定方法」について考えてみたいと思います。




スピーカーユニットとは、スピーカーのなかで音が出る部品です。

音はすなわち空気の振動なので、
スピーカーユニットは振動の影響をシビアに受けることが知られており、
固定方法も様々なパターンが存在します。

 

一番シンプルでオーソドックスなのは、
スピーカーユニットのフレームにネジ穴を開け、
スピーカー正面のフロントバッフルにネジ止めする方法です。

大半の市販スピーカーはこの方式をとっており、
イメージしやすいと思います。




ただ、スピーカーユニットの動作原理から考えて、
振動の基点となる、磁石のところを支えるべきじゃないの?
という考え方もあります。

ならば、後ろから引っ張ったらどうか。

   

確かに、これは良さそうです。
スピーカーユニットを支えるフレームの強度が十分でなくても、
磁石のところを固定してしまえばOKなのです。




先ほどの図を見ると、
磁石と背面の板が固定されている構造になっています。

   

振動の基点となる磁石を支えるのは良くても、
「背面の板の【剛性】は十分なのか」
という問題があります。

せっかく磁石を支える構造にしても、
その支柱が揺れてしまっては意味がありません。


なるほど。
では、下から支えてみるのはどうでしょうか。

   

下から支えれば、あとは地面が強固であればOKです。
確かに、これは良さそうです。





こんな風に、歴史的に色々なアイディアが生み出されて、
数々のスピーカーが生み出されてきました。

たとえ現代のハイエンドスピーカーでもスピーカーユニットの固定方法は様々です。


この連載では、「これが最高の固定方法だ」と結論づけるつもりはありません。

様々な方式と、その主張や実例を学んでみることで、
より広い視点でスピーカーを見ることができるのではないかと思っています。


どうぞお楽しみに。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。




スピーカーユニットの固定方法(02)

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前回に引き続き、スピーカーユニットの固定方法について紹介していきます。まずは、後ろから引っ張るタイプのスピーカーユニットの固定方法についてです。




この方法に熱心なのが、皆さんご存じ「B&W」です。


https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/802-d4

こちらは「802d4」というスピーカーのミッドレンジです。アルミニウムかSUSかは分かりませんが、金属の棒が背面まで伸びているのが分かります。




https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/702-signature

下位機種の「702 Signature」でも同様に、ミッドレンジの磁石から伸びる棒が見受けられます。
興味深いのは、赤丸で囲った部分にバネ状の部品が見られることです。800シリーズのミッドレンジが入るエンクロージュアは金属のアルミニウムで作られた「タービンヘッド(旧ノーチラスヘッド)」であるのに対し、700シリーズでは木製のエンクロージュアに格納されます。木材は金属と異なり湿度での伸縮が起こりやすいため、それに耐えられるようバネ部品を使っているものと思われます。





さらにその下位機種にあたる「603S2 AE」では、ミッドレンジはバッフル面にネジ止めになっているようです。この辺は、コストパフォーマンスとの兼ね合いを考えての判断と思われます。


https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/603-s2-anniversary-edition
<「603S2 AE」の構造>





このように、B&Wの上位機種のミッドレンジは「後ろから引っ張る」方式で固定されています。しかしながら、ウーハーとツイーターは異なるようです。


https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/801-d4

まず、ウーハーはバッフル面にネジ止めする方式です。バッフル面をアルミニウム部材で強固にすることで、十分な制振効果を得ているものと思われます。とくに上位機種では、ウーハーユニットの重量が大きくなり、このような固定方法が採用されたものと思われます。

このアルミニウム部材は、内部の補強構造(Matrixブレーシング)と一体化しており、疑似的に下から支える方法になっているとも言えます。

 
https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/803-d4

<Matrixブレーシングは、下から支える効果を生む?>




ツイーターの固定方法については、あまり明確な資料を見つけることができませんでした。有名な流線形上のボディ(ソリッドボディー・トゥイーター・オントップ・ハウジング)と一体化され、デカップリング(本体と非結合)されているものと思われます。いわゆるフローティングに近い構造なのではないでしょうか。


https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/805-d4


https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/loudspeakers/802-d4




B&W以外に、「後ろから引っ張る」固定方法をしているメーカーがあるか探しましたが、殆ど見つけることができませんでした。唯一あったのが「TIME DOMAIN(タイムドメイン)」です。

「Yoshii9」というタイムドメイン社を代表するスピーカーでは、図のようにスピーカーユニットから吊るされた棒があります。棒の質量により、ユニットは適度なテンションで常に引っ張られることになります。


http://www.timedomain.co.jp/tech/theory/td_theoryA4.pdf





「後ろから引っ張る」固定方法は、振動板の反作用を効果的に支持する方法として好ましいものと思われます。
しかし、その支持する張力を長期にわたって維持することができるか?など、構造的に難しい面があるものと思われます。B&Wとタイムドメイン以外にも採用例があれば、情報を頂きたいと思います。


なお、サブウーハーの世界では、左右対称にユニットを配置し、その背面を結合する方法がしばしばとられます。


https://www.eclipse-td.com/products/td520sw/index.html


これについては、また次回説明しようと思います。
お楽しみに!
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