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[S-072]サブウーハー試作3号機、3.5号機(20cm口径へ)

皆さま、あけましておめでとうございます。
今年も、オーディフィルは良い音に向けて邁進して参ります。どうぞ宜しくお願い致します!


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さて、前回紹介した「試作2号機」は聴感も比較的良好なものでしたが、
やはりサブウーハーと称するのであれば、20Hz台の低音にチャレンジしたいものです。

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そこで、ウーハーの口径を16cmから20cmに変えてみます。
写真で見る通り、数字以上の大きさの差を感じますね!

箱は、試作2号機のを流用しました。

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測定や試聴をしてみましたが、思ったほど低音が出てきてくれません。
16cm用の箱だったので、20cmには窮屈だったのでしょうか。


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低域の増強を狙い、20cm口径に相応しい大容量の箱を作成してみます。
試作2号機が30Lだったので、今回は50Lの容量とします。

2号機と同じく、内部補強もバッチリです。

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完成、そして測定。

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この写真で、コーン紙表面に突起が付いているのが分かりますでしょうか。

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この突起は、接着剤で貼り付けた「ワッシャー」で、振動板の重量を増やすことを目的としています。

こうすることでユニットは低い周波数領域で共振しやすくなり、より低音のレンジを伸ばすことができます。
小口径ウーハーから見た目以上の低域を引き出すためにしばしば使われる手法です。

測定結果ではこんな感じになりました。

<ノーマル>
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<30g付与>
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ノーマル状態では、70Hz付近からダラ下がりでしたが、30gの錘を付与することで50Hz付近までフラットに伸びるようになりました。 -10dBとなる低域下限は23Hzとなり、まずまずの測定結果です。


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しかし、そこからが問題でした。
聴感では、全く低音が聴こえないのです。

私自身も凄い不思議なのですが、測定結果では十分に伸びた低音が得られたのですが、聴感では試作2号機に遠く及びませんでした。


ユニットも箱も大きくなっているのに、低音が出ない!?

一つだけ思い当たる所があるとすれば、振動板の違いです。
試作2号機は立体的に補強した振動板をもつユニットが特徴でした。

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<試作2号機のユニット>

それに対し、この3号機は市販のウーハーユニットとはいえノーマルのままです。
この補強構造が無いと、どうやら求める低音には辿り着けなさそうだと、確信するに至りました。

もう一つは、20cm口径で必要な箱は、一般家庭では使いにくいサイズになってしまう、ということも分かりました。
Concept-SOLAもそうですが、いかに一般家庭に馴染むサイズでスケール感のある音を出せるかが、私の追求していきたい姿なのです。


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この試作3号機では、このサブウーハー構想の目指す姿が明確になってきました。

16cm口径で、振動板を補強したユニット。
そこから、20Hz台の低音を引き出す。

サブウーハー試作は、次回以降の【4号機】に引き継がれます。。。


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[S-072] サブウーハー試作4号機(3Dプリンターでの振動板製作)

連載しているサブウーハー製作も、いよいよ試作4号機まで来ました。

今までの試作を通して、
立体的な補強構造を付与し、振動板の「構造剛性」を高めることが、優れた低音再生のために必要だということが分かってきました。

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<立体的な補強構造をもつ振動板(試作2号機より)>


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いかにして、補強部材を製作するか。

立体的な補強構造が大切なことは分かってきましたが、
問題はその製造方法です。

試作2号機ではハンドメイドで作りましたが、
この方法では時間がかかるだけでなく、製作に相当な修練が必要です。


もっと簡便かつ正確に作れる方法はないか?

思い立ったのが、3Dプリンターの活用です。

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3Dプリンターは、CADソフトで作成した図形を自動で作製してくれます。
上記は、小さな箱を作ってみたときの写真です。

高硬度なPLA素材で作った製作物は、強度も十分にありました。

また、かなり細かな構造も作ることができるので、
作り込みを行えばかなり良い線まで行けそうです!


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まずは、試作。

まずは3Dプリンターの習得も兼ねて、8cmフルレンジ用の補強部材を作製してみました。

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左側が最初期のもの。形状はシンプルなリング型。
結果は大失敗。不用意な補強構造が強い共振を生み出してしまい、聞けたものではありませんでした(汗)

いくつか試行錯誤をした中で、良好だったのが写真右の構造。
「富士山」をひっくり返したような構造で、コーン紙の広範囲で強度アップを図ることができます。

実際の音も癖は少なく、この形状をベースに検討を続けることにしました。


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想像力との戦い!

3Dプリンターを手に入れたからといって、
すぐに正解の構造が思い浮かぶわけではありません。

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試作品を作っては聴き、また少し構造を変えてトライする...
これを何か月も続けました。

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一番良かったのは、写真中央の構造。
低音の力感、制動力、音色。どれも群を抜いて優れていました。

例えるのなら、ベースギターの指の動きが見えるような描写力があると言えば良いでしょうか。

バスドラムの風圧を感じるアタックも、迫力十分。
単に音が出ているだけでなく、低音の始まりから終わりまでの音圧変化を克明に描く能力が備わっていました。


補強構造としては、こんな感じ。
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表から見るとシンプルですが、どんな方向からの応力にも耐えられるよう、裏側には複雑な構造を作り込んでいます。
(※現在 最終ver.に向けて改良中)


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補強部材としての能力は?

一つ疑問が浮かぶとすれば「3Dプリンターで造形できるプラスチック素材で、本当に補強ができるのか?」という点です。

答えは、YESでもあり、NOでもあります。

このことは周波数特性を見ると、簡単に説明ができます。
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1kHz以上の帯域で、大きなピークディップ発生しており、
中高音域ではプラスチック部材は強度を失い、共振してしまうことが分かります。

中高音域まで完全に共振を制御したいのであれば、プラスチックでなく、金属などのもっと硬度の高い素材を活用することが求められるでしょう。


しかし、全く使えないのか?というと、それもNOです。

その理由は、一番最初に説明した「非軸対称振動(釣鐘動)」がヒントになります。
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先日の日記で、低域の解像度を落とす主要因として、
100~500Hzで起こる横方向(赤矢印)の共振があること説明しました。

つまり、低域の解像度を上げるには、
中低音域の剛性を上げればOKなのです。

今回製作した補強部材は横方向の応力に強く、
中低音域の共振を直接的に抑え込む形状となっています。

この帯域であれば、プラスチック素材であっても、十分に剛性を発揮することができ、
試聴でもその効果を十分に確認することができました。


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3Dプリンターの導入で、今までにない完成度のユニットを作ることができました。
「構造剛性」をしっかりと引き上げ、より質の高い低音を作る土台が出来たといえるでしょう。


次回は、エンクロージュアの作り込みについて、お話します。
お楽しみに♪

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[S-072] サブウーハー試作4.5号機(箱の強度と定在波)

連載しているサブウーハー試作、いよいよ試作4.5号機です。

前回の試作4号機では、スピーカーの振動板を3Dプリンターで製作しました。

今回の4.5号機(表題写真)では、作成したスピーカーユニットはそのままに、
箱をフィンランドバーチ材で作製し、グレードアップを狙います。


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ウーハーの位置

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今回のサブウーハーでは、床面からの反射音との位相差を減らすことを狙いとして
ウーハーの位置を「下」にしています。

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パイオニアのトールボーイ型スピーカー「S−A7」でも使われていた技術で、以前から気になっていましたので、試作機の構造に取り入れてみました。

※ウーハーの下側配置については、後半に説明する箱内部の定在波の影響が大きく、
 今回の試作検証ではイマイチな結果に終わりました。


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箱の補強

エンクロージュアの剛性不足は、低域の解像度低下に直結するので、しっかりと作り込んでおきたいところです。

今回は、18mm厚のフィンランドバーチ板を使いましたが、内部にアルミ補強材を入れることでさらなる剛性向上を狙います。

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この効果は一目瞭然で、200Hz付近にあった箱の共振ピークを解消することができました。

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<補強なし>

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<補強あり>

200Hzは、60~100Hzの倍音に相当するところであり、ここの共振が抑えられたことは低域の質感改善に大きく貢献したと思っています。


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箱内部の定在波

こうして試作4.5号機を作製してみたのですが、聴いていると内部の定在波が気になってきました。

基本的には、140Hz以下のローカットフィルターが入るのですが、各部の完成度が高くなると中低域のモヤつきがどうしても気になってしまいます。


箱内部にマイクを入れて測定してみるとこんな感じの測定結果が得られました。
250~300Hzに大きな定在波が確認されます。本体高さが60cmなので、計算から縦方向の定在波だと分かりますね。

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<定在波対策なし>

とりあえずの対策として、中央部に邪魔板を入れてみました。
しかし、これは余り効果ありません・・・

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<邪魔板あり>


定番の定在波対策として、長さ36cmの音響管(片開口)を入れてみます。
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250~300Hzのピークを多少削り取ることができましたが、200Hzに新たなピークが生まれてしまいました。
音響管が入ったことで、新しい定在波の発生個所ができたということでしょうか。一筋縄ではいかなそうですね。

ヤマハやパイオニアのスピーカーでは、音響管を積極的に使っての定在波対策をしていますが、あれはかなりのノウハウがあるものと思われます。


どうしようか、と頭を抱えていた矢先、
当たり前のことに気づきました。

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スピーカーを箱の端に搭載することは、内部定在波の「節」に音源があることになります。

一般的なスピーカーのセッティングでも「部屋の隅にスピーカーを設置すること」が定在波を生むことは良く知られています。


基本に忠実に、スピーカーユニットの位置は、定在波の発生を避けられる「箱の中央(定在波の腹の位置)」とするべきでしょう。

そう考えると、ウーハーが下にある試作4.5号機の構造を、大きく見直す必要がありそうですね。。。(次回へ続く)


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[S-072] サブウーハー試作5号機  (最終回)

連載しているサブウーハーの試作記、今回は「試作5号機」の紹介です。


前回の試作4号機(※実際は4.5号機)で、かなり音質は良くなってきましたが、
エンクロージュア内部の定在波を消せずに苦労していました。

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 (試作4号機)



そこで今回の5号機では、ユニットの装着位置を 箱の中央にして、
定在波を軽減すること狙います。 

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※ユニット位置と定在波の関係は、前回の記事を参照


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ウーハーの装着位置を変えた効果は非常に大きく、
測定でも、はっきりと違いを確認することができました。

こちらは、試作4号機の測定結果。
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このグラフは、時間ごとに変化する周波数特性を記録したものです。
エンクロージュア内部の定在波(残響音)は、より手前側に描かれます。

200Hz~500Hzに、定在波由来のピークがあることが分かりますでしょうか。

この帯域の残響は、100Hzの倍音に相当し、低音の質感を大きく損ねてしまします。
また、「吸音材」ではなかなか消すことができないため、とても厄介な存在です。


そして、こちらが試作5号機の測定結果。
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先ほどのような、定在波由来のピークが無いことが分かりますでしょうか。

聴感上でも非常に大きな効果があり、
極めて透明度が高く、ダイナミックな低音が得られたことを記しておきます。


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そして、最後の微調整(?)として、
エンクロージュア容量を31Lから24Lに削減しました。

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  ↑ 完成後に丸ノコで裁断。


バスレフ型スピーカーでは、エンクロージュアの容量がダクトの効きを左右する重要なファクターになっています。

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参考:「講談社 新装版 世界でただひとつ自分だけの手作りスピーカーをつくる」

小さすぎる容量は、ダクトの効きが悪く、また背圧の影響をスピーカーユニットが大きく受けるために好ましくありません。

その一方で、大きすぎる容量は空気の弾性(上記の図のバネ部分)を著しく弱くしてしまい、ダクトからの放射音のダンピングが低下してしまいます。

リジッドで忠実な低音再生のためには、大きすぎず、小さすぎずの適切なエンクロージュア容量の設定が大切なのです。


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奥行は、わずか24cm。
小型スピーカーと殆ど変わらないサイズ感で、充実の超低音再生を可能にするサブウーハーが完成しました!

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サイン波を入力すれば、25Hzまでしっかりとしたレスポンスを聴かせてくれます。
しかし、それは本作の特徴の一つにすぎません。

現在、この試作5号機を2ヵ月近く聴いていますが、
全く不満のない性能で、ハイスピードな低音を満喫しています。

メインスピーカーにしっかり追従する、スピード感のある低音。
それだけに留まらず、質・量・伸び、その全てにおいてメインスピーカーを凌駕することが、本作の最大の魅力だと考えています。


サブウーハーは使いこなしが大切な製品でもあるので、
2021年6月の製品化の際には、丁寧な調整マニュアルを用意したいと思っています。


サブウーハー「SW-1」商品ページはこちら。

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このサブウーハーを皆さまの環境に届けられることを、楽しみにしています!


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Fostex FE168SS-HP 考察とバックロードホーン設計 【設計図面あり】

(画像 Fostex社webページより)

皆さん、こんにちは。
Fostexから突如、新製品の発表がありましたね!

その名は
FE168SS-HP

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マニア好みの超強力な磁石を搭載し、
名機といわれるFE168ESを連想させるHPコーンが印象的ですね!


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<ユニットの位置づけ>

さて、このユニットがどういう位置づけにあるか考えてみましょう。

まず、近年はFE166NV(左)やFE168NS(右)といった、
サブコーンが付いているタイプを主軸に商品展開をしていました。

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今回、FE168SS-HPに搭載されたのはそれらとは異なり、
特徴的な凹凸のあるHPコーンです。

歴史的には、ESシリーズ(限定)、EΣシリーズ、ES-Rシリーズ(限定)に搭載されてきた振動板です。
※ES-Rは、13cmと20cm口径の二種類のみ販売。

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FE168EΣ



私も過去に、このFE168EΣを愛用しており、
その音質的特徴は下記の3つに集約されると感じています。

・低歪&高透明
・突き抜けるレスポンス
・力感のある低音


FE168SS-HPの技術的な詳細は公式webページに載っていますが、
私個人の経験からは、上記のような音質を期待したい所です。

中には2001年発売のFE168ESと似たような外観であることに対して、技術の停滞を危惧する意見もあるかと思います。
しかし、このオーディオ業界において優れた技術を伝承することがいかに難しいかを考えると、紙コーンフルレンジの技術を腐らせることなく、2021年に新製品として世に出すことができたFostexの技術力を、私は高く評価したいと思います。


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FE168EΣを使用した作品 [S-004](2007年頃 製作)


※なお、FE168NSに代表されるサブコーン付きのタイプは、少し聴きやすくて晴れやかな感じ(温度感高め)な印象です。



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<ユニット特性・推奨箱設計の吟味>

それでは、スピーカーユニットの特性を見ていきましょう。

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FE168SS-HP 取扱説明書 Specification Sheetより

お世辞にもフラットとは言い難い特性ですが、
軽量紙コーンのフルレンジに、フラットな特性を望むのは野暮なものです。

【周波数特性と引き換えに失うもの】を求めて作り込みが行われるのが、Fostexの紙コーンの魅力であって、
むしろ、特性に若干の暴れが残っていることこそが「しっかりと期待に応えたことの証」だと言えるはずです。


さて、フルレンジの特性データから聴感バランスを推測するとき、
私は軸外特性(30°や60°)を重視して確認します。


実際のリスニングでは軸上(0°)だけでなく、軸外の放射音も含めて(むしろ主成分として)聴いているため、軸外特性のほうが聴感とマッチした傾向が現れることが多々あるためです。



さて、FE168SS-HPの軸外特性はどうでしょうか。
30°特性を見ると、2kHzのピークの後は、12kHz付近までフラットに伸びていることが分かります。

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2kHzのピークは、ボーカルの明瞭さにつながる要素と言えそうです。
相対的に3~5kHzがディップになるので、聴き心地の良さも(多少は!)期待できるかもしれません。

12kHz以上の帯域は、ストンと音圧が下がりますが、
60°特性では音圧が出ており、ナチュラルで無理のない高域の伸びがあると思われます。

少し気になるのは、7kHz付近に0°と60°特性の双方にピークがあること。
中高域はエンクロージュアの回折効果が大きく影響される帯域で、実際の作例で目立つかは分かりませんが、
必要に応じてノッチフィルターを軽く(あくまでも軽く!)加えると良いかもしれません。


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FE168SS-HP 公式webページより

ユニットは、奥行が105mmと非常に大きくなっています。
箱設計では注意が必要ですね。


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FE168SS-HP 取扱説明書 Application Sheetより

標準箱は、テーパーを多用したバックロードホーン型。
18mm厚の3×6板を4枚使用する設計です。片chで約40kgの本格的な造りですね。

テーパーを使ったバックロードホーンは、概して大らかな音色になることが多く、
さらに、空気室の奥行き、ホーンの広がり率が大きく設定され、キレ味より量感重視の低音が想像されます。
長岡先生のD-37と比べても、聴きやすい音色になるのではないでしょうか。

逆に言えば、直管で構成されたバックロードホーンは、40Hz~60Hzの最低域の伸びに優れる傾向があるため、
A級外盤のような鮮烈なソフトを聴く場合は、D-37のような構造に理があるかもしれません。

ユニットは強烈ですが、エンクロージュアは万人向けの設計としてバランスを取ったのかな?というのが私の正直な感想です。

もし20~50Hzの最低域が必要であれば、俊敏な低音が特徴のサブウーハー「AudiFill SW-1」を組み合わせるのが良いかもしれませんね。
↑宣伝させて頂きます(笑)

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<バックロードホーン設計図面>

さて、取説掲載のBHもかなりの出来栄えなのですが、
以下のコンセプトで、私のほうでも設計をしてみました。

・コンパクト&充実の低音
・響きの良い材料「フィンランドバーチ」を使用
・多様なユニットへの対応



<コンパクト&充実の低音>

まず、取説掲載の標準箱は素晴らしい造りなのですが
奥行450mm、横幅322mmは、狭い部屋ではちょっと扱いに困る場面もありそうです。

そこで本設計では、奥行432mm(天板414mm)、横幅286mmに小型化。
実際には、エンクロージュアの角を45°にカットするため、10%以上の小型化ができたように見えるはずです。

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重要なのは、内部の音道を小さくしないこと。
小型化というと内部の音道を削りたくなりますが、この容量を1割でも削ると明らかに低音が減ります。

特に、Fostexの標準箱は長年の経験と試行錯誤で作られており、かなり最適化が進んでいると思われます。 今回の設計では、標準箱の設計を最大限尊重し、細かい所を調整してコンパクト化を進めました。

板厚を削減したところは、金属材料を使って補強することを予定しています。 この方法は、板厚で振動を押さえこむより、透明度の高い音色を狙うことができると感じています。



<響きの良い材料「フィンランドバーチ」を使用>

ラワン合板やシナ合板は、悪くない材料なのですが、
音の品位・純度としては少し物足りないものです。

今回は、音質・加工性・価格の3拍子が揃った「フィンランドバーチ合板」を使います。  フィンランドバーチ合板は、2400×1200mm、もしくは1200mm×1200mmのサイズが市場に出回っており、今回の図面もこの寸法に合わせて作成しました。

なお、無垢材や集成材も良いのですが、あれは音質に特化した選択であって(音の良い樹種の)加工難易度や価格を考慮すると、DIYには勧めにくいです。。。



<多様なユニットへの対応>

FE168SS-HRは、歴代最強クラスの磁気回路をもっていますが、
諸事情によりFE168NS、FE166NVなどの他のユニットを使用する機会もあると思います。

ユニットを変更した場合、低音の量感が変化(相対的に中域~中高域の張り出し感が変化)してしまうので、何かしらの方法での調整が必要です。

本作は、背面に直径100mmの穴を設け、そこから内部の吸音材を出し入れできるようにしました。

余り話題にならないのですが、バックロードホーンの吸音材の急所はホーン音道の中央にあるため、こうした調整穴がないと完成後は手出しできなくなってしまうのです。
ちなみに、一般的に知られている「ホーン開口部」や「スロート部分」への吸音材挿入は、重低音の音圧が下がりやすいので(積極的には)お勧めできません。



このように、今回は3つのコンセプトで設計図面 [S-076]を作ってみました。
Fostex標準箱の方に好印象を抱く方も多いかもしれませんが、私欲に任せて作った設計図なのでご勘弁を。

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まだザグリとか、細かい所のフォローができていない図面なのですが、まずは公開させて頂きます。 私も春~夏にかけて頑張って作ってみようと思いますので、皆さまの何かしらの参考になりましたら幸いです。


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サブウーハー「SW-1」と「B&W小型スピーカー」の組み合わせ

皆さん、こんにちは。
サブウーハー「SW-1」の試聴動画を作成したので紹介します。

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動画では、音量・録音レベルを揃えて、
サブウーハーの有無を比較して頂けるようにしました。


組み合わせたスピーカーば、B&Wの小型スピーカーの名機「DM601S2」。
小型といっても16cm口径の2wayなので、低音の量感、帯域バランスも良好なスピーカーです。

そうなると、サブウーハーに期待するのは、「質感」のさらなる改善になります。
さて、SW-1は期待に応えてくれるでしょうか!?


全てフリー音源を使用していますので、どうぞ安心してお楽しみ下さい♪


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<クラシック>


まずは、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。
低音楽器のコントラストに注目です。
(★0:23付近で、あり・なしが切り替わります)

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<Jazz>


次は、Jazz。
低音楽器はもちろん、サックスの存在感も聴きどころです。
(★0:20付近で、あり・なしが切り替わります)

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<ピアノ>


こちらは、ピアノソロ。
重低音は含まれませんが、左手の低音が滲まないか がポイントです。
(★0:23付近で、あり・なしが切り替わります)

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いかがでしたでしょうか?
俊敏さが持ち味の「SW-1」の音を楽しんで頂ければ幸いです。

技術的な詳細は、次回以降の日記で紹介できればと思います。
どうぞお楽しみに!


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測定から読み解く、B&W DM601S2とサブウーハーの組み合わせ。

今日は、B&Wのブックシェルフ型スピーカーDM601S2とサブウーハーの組み合わせについて、詳しく書いていきます。

先日の日記では、Youtube動画でサブウーハーの効果を聴いて頂きましたが、
ここでは、測定結果や調整のやり方についてもお伝えしようと思います。

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B&W DM601S2 について

まず、このDM601S2は、16cm口径ウーハーをもつ2wayスピーカーです。
ブックシェルフ型で、いわゆる小型スピーカーの部類に入りますが、十分な低音再生能力を持っています。

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スペックとしてはこんな感じ。

ツイーター :2.6cm メタルドーム
ウーハー  :16.5cm ケブラーコーン
周波数帯域 :50Hz~30kHz -6db
出力音圧レベル:88dB
インピーダンス:8Ω
参考:B級オーディオFAN

1999年の発売ですが、現代的なブックシェルフ型スピーカーの模範的な特性だといえるでしょう。


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周波数特性の評価

サブウーハーと組み合わせるにあたり、もう少し詳細に特性をとってみました。
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-10dBとなる低域下限は、約50Hz。カタログスペックより音圧は低めですが、この辺は誤差が出やすいところです。

興味深いのが、バスレフダクトの音圧特性(図中、紫点線)です。
共振周波数が35Hzと、このクラスのスピーカーとしては異例ともいえる低いチューニングです。

最低音域までしっかり伸ばし、12畳以上のやや広い部屋でのパフォーマンスを重視しているのかもしれません。


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DM601S2 試聴レポート

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まずはサブウーハー「OFF」で聴いてみます。

低音から高音までスムーズに伸びたサウンドが印象的。ボーカル帯域も程よい温度感を維持しつつ、シンバルなどは金属質な響きで心地よく聴かせてくれます。

音の質感はクラス相応と感じますが、その中で上手く音を練り上げていることに感心します。 ユニット、ネットワーク、エンクロージュアの全てを一体で開発している成果でしょう。

低音域は、普通の音源を聞いている限りはそこまで不足感はありません。ウッドベースやドラムもしっかりと表現しています。
その一方で、低音域全体に緩さがあるのは否めません。小型スピーカーで低音を伸ばした代償として、どうしても切れ味は犠牲になってしまうのは仕方のないことです。


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サブウーハー追加の下準備

サブウーハーを追加するにあたって、気を付けないといけないのは、
「サブウーハーを追加で、低音のスピード感は上がらない」ということ。

低音のスピード感は、いかに100Hz~1kHzを付帯音なく再生できるかにかかっており、100Hz以下の帯域はその補助的な効果でしかありません。

つまるところ、サブウーハーを追加する前に、低音を引き締めてやることが、俊敏な低音を手に入れるための第一歩なのです。

実際にやることとしては、バスレフダクトのダンプです。
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バスレフダクトは、重低音を増強するのに重要なアイテムですが、
低音の質感(俗に言う「スピード感」)を鈍らせる一因でもあります。

ダクト共振の時間的な遅れはもとより、
箱内部の定在波がダクトから漏れ出てしまう影響もあるようです。

その改善方法として、スポンジ等を使ってダクトを半分塞いだり、
さらには完全に塞いで密閉型にしたりすることが有効です。

実際に音を聴きながら、塞ぎ方の多少を決めていきます。
ドラムの「タンッ!」という音が、ストレートに飛んでくるかどうかを聴きながら、塞ぎ方をコントロールします。 ここでは、あえて重低音の量感は無視して、音のスピード感のみに注目して調整を行います。

なお、完全に塞ぐより、ダクトの周囲に少しスポンジを貼る程度の方が、バランスのよい聴感特性になることもあります。 スポンジの代わりとして、ティッシュペーパーをふんわりと詰めることでも対策は可能です。

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今回は、写真のようにダクト下半分に薄いスポンジ素材を貼ってみました。
これで下準備が完了です。


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周波数特性と聴感

それでは、いよよサブウーハーを「ON」にして調整を行います。
まずは、測定器を使ってざっくりとレベルを合わせてみました。

まずは、低音がダラ下がりのパターン。
-10dBで23Hzを狙った無理のないセッティングです。
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しっかりと超低音の存在感を聴かせながら、その量感は控えめ。
先ほどのダクト調整の効果もあり、サブウーハーがない状態よりも低音の質感は明らかに向上しています。 

このグラフの特性は、聴感上でも禁欲的な低音に聴こえるため、実際はもう少しサブウーハー音量を高めても良さそうです。


次に、特性フラットを優先にしたパターン。
-10dBは17Hzに到達します。
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ここまで音圧を上げてしまうと、聴感上の違和感が出てきます。
(特性グラフには表れていない)部屋の定在波の影響での増幅もあり、超低音の圧迫感を強く感じてしまいました。


実際は、両者の中間付近の特性が、ベストチューニングになります。
オーディフィル「SW-1」と推奨アンプ「Nobsound G2PRO」の組み合わせでは、このような音量位置になりました。

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低音のスピード感と量感が両立し、必要な時にはグッと超低音が押し寄せるように表現されます。
中低域は、実在感が大きく向上し、ボヤけることなく微細な音まではっきりと聴こえるようになりました。今まで気づかなかったベースやチェロの旋律にも、つい聴き惚れてしまいます。

<サブウーハーの効果を動画でどうぞ>

(★0:23付近で、あり・なしが切り替わります)




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サブウーハー調整のやり方

今回のようにサブウーハーを調整する時には、様々な音源を使用します。ジャンル・アーティストの異なる30以上の楽曲だと言えば良いでしょうか。

POPSやROCKのように、ドラムや電気的な低音がドカドカ入っているもの。
Classicのように、グランカッサからチェロまで、幅広いナチュラルな低音が入っているもの。
Jazzのように、量感だけでなくスピード感が大切になるもの。
ボーカル(男性・女性)のように、一聴しただけでバランスの崩れを判別できるもの。

これらの音楽に加えて、映画やドラマの台詞も大切な試聴音源です。


調整の順番は、①→②→③の順が良いでしょう。
①ざっくりとした音量・位相を決める。
②超低音が多く入っている音源で、不快な圧迫感を感じないレベルに【音量】を調整する。
 ※20~60Hzの音圧がここで決まります。
③アコースティックな音源で、中低域の表情や、低音から高音までの全体の帯域バランスが適当になるように【クロス周波数】を調整する。
 ※100~300Hzの音圧がここで決まります。

<超低音が多い音源でのサブウーハー試聴>

(★0:20付近で、あり・なしが切り替わります)

<アコースティックな音源でのサブウーハー試聴>

(★0:23付近で、あり・なしが切り替わります)


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難しいのは、位相の調整です。
測定器があれば、周波数特性にディップが発生しないような位相(正・逆)に調整するれば大丈夫です。

この時、測定器(マイク)、メインスピーカー、サブウーハーの三者を半径30cm以内に密集させて測定し、定在波の影響を可能な限り除去することが大切です。
部屋の影響が入ると、位相は途端に見えなくなってしまい、誤った判断をしかねないためです。

もし測定器が無い場合は、メーカーの説明書にある推奨の位相調整で問題ないはずです。
最近は、スマートフォンのアプリでも周波数特性を測ることができ、位相を判断するだけであれば十分活用が可能ですので、ぜひ測定にチャレンジしてみて下さい!


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サブウーハーの調整は、一朝一夕で終わるものではありません。
日を改めて、耳をリセットして聴いてみることで、また新たな発見があり、良い調整につながることも多々あります。

また、調整中のサブウーハーは、不自然な超低音の音圧を浴びることになり、耳へのダメージも大きいものがあります。
耳に疲れを感じたら翌週に試聴を持ち越すことも大切です。


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以上が、サブウーハーの調整法です。 一般的な小型スピーカーであれば、この方法が応用できると思いますので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。



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FE168SS-HPの試聴動画を作成しました。 【Fostex16cmフルレンジ比較試聴】

皆さんこんにちは。
Fostexの16cm限定ユニット「FE168SS-HP」が、いよいよ我が家にも届きました!
(前回の記事「考察と設計図面」はこちら。)


今回入手したのは、FE168SS-HP, FE168EΣ, FE168NS, FE166NVの4機種です。
こうして並べてみると、なかなかに壮観ですね!

16cm口径のバックロードホーン向けフルレンジで、
これだけのラインナップがあるのはFostexだけではないでしょうか?



せっかくですので、4機種の比較試聴動画を作成しました。





動画にもありますが、聴感上の能率は、
168EΣ = 168SS-HP < 166NV < 168NS という順序でした。



比較試聴をするなかで、他にも感じたことはありますが、それはまた次回。

続編をお楽しみに♪


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オーディフィル 5周年!

皆さん、こんにちは。
4月に入って、暖かい日が続いていますね♪

そして、表題のとおり、
オーディフィルは5周年を迎えました!

5年間、まずはブランドとして存続できたことは、
皆さまの応援のお蔭だと思っております。


正直、5年間いろいろありましたが、
ようやく自分のなすべき「3つのこと」が見えてきたように思います。




・ひのきスピーカー

いまはラインナップが途絶えていますが、
オーディフィルの根幹は、「ひのき」材を使ったスピーカーです。

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艶やかなボーカル、心地よく響くその音は、
他の素材では出せない魅力があります。

特に、フラッグシップモデル「Concept-SOLA」で提唱した
 ・小型
 ・小音量
 ・高品質
の3要素は、これからも突き詰めていこうと思います。

2021年末に向けて、水面下で開発を進めています。
どうぞご期待ください!



・アクセサリー

「買い替えなくても大丈夫。」

スピーカーメーカーらしからぬコンセプトですが、
ユーザー目線で、コストパフォーマンスに優れたアイテムを製作しています。

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第一弾はインシュレーター「KOTUBU
お蔭さまで、1200個ご愛用頂いております。


第二弾が、販売開始間近のサブウーハー「SW-1」。

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高剛性振動板と、アルミ材による補強構造。
精緻でハイスピードな超低音再生を誇る製品になりました。


必要なものを最小限に。
そんな感覚で、これからもお役に立てるアクセサリーを作っていこうと思います。



・自作スピーカー

メーカーを立ち上げた今であってても、
喜びの源泉は「自作スピーカー」にあると思っています。

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年末に開催する「アニソンオーディオフェス」は、
自作スピーカーでアニソンを鳴らすイベントです。

大好きなアニソンを一日中鳴らすという、(個人的に)最高すぎるイベントになっているので、これからも継続的に開催していこうと思っています。


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そして「バックロードホーン型」も外せない要素になりそうです。

先日、限定ユニットのFE168SS-HPが発売され、
カノン5Dの原点ともいえる喜びを再び燃え上がらせています。



5周年なので記念モデルを・・・という体力もない未熟なオーディフィルですが、
10周年、20周年に向けて、着実に歩んでいこうと思います。

どうぞこれからも、何卒宜しくお願い申し上げ。

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「サブウーハー使いこなし術」 公開しました。

皆さんこんにちは。
春の緑が眩しい季節になりましたね。


さて、表題の通り、「サブウーハー使いこなし術」と題して、サブウーハーの活用方法をまとめたPDF資料を公開しました。
(ダウンロードは、こちら。)

サブウーハーの調整は、本来であれば、マイクなどの測定器を駆使して調整を重ねるべきですが、
聴感だけで調整をしていくにはどうすれば良いか、のノウハウを解説しました。


サブウーハーを加える効果は、その調整方法で大きく変化します。
オーディフィルのSW-1だけでなく、市販のサブウーハーにも十分に活用できる内容となっています。


資料は、40ページ近い分量になってしまいましたが、
その中には、サブウーハー調整で必須の「位相」のこと、
実際のスピーカーと組み合わせた際の実測データなどを掲載しています。


低音再生にお悩みの方には、何か役に立つことがあるかと思いますので、
この機会に、読んでみて頂けると嬉しいです。



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PDFダウンロードは、こちら



バックロードホーン向け16cmフルレンジ、試聴感想

今回は、FE166NV、FE168NS、FE168EΣ、FE168SS-HPを比較試聴したときに感じたことを、まとめて書いていこうと思います。

先日公開した動画「Fostex バックロード向け16cmフルレンジ 比較試聴」を見ながら読んでもらえると、より分かりやすいと思います。


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FE166NV 標準価格 ¥12,650(税込)/1台

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今回試聴したなかでは、最もリーズナブルな製品です。
2019年11月に発売されたモデルで、ロングセラー商品の多い自作スピーカーユニットとしては新顔の部類に入るでしょう。

しかし、このFEシリーズはFE166E→FE166En→FE166NVとマイナーチェンジを重ねており、その歴史は1964年に発売されたFE103(※10cm口径)まで遡ることになります。
上級機と見比べると価格なりの作りに見えてしまいますが、不動の人気を誇るFEシリーズの中核を占めるモデルとして十分な魅力があります。

また、小口径のFE103NVやFE126NVと比べて、低音再生が容易なのもFE166NVの良さです。箱設計をシビアに考えなくても、しっかりとした低音を聴かせてくれるという点で、16cm口径のメリットがあると思います。

聴いてみると、上級機と比べると情報量はやや少ないのですが、音を朗々と鳴らすエネルギーを感じました。ボーカルや低音楽器の存在感は、小口径のフルレンジや小型市販スピーカーでは味わえないレベルにあるのは間違いありません。
とくに、大編成のオーケストラやJAZZ、さらにはロックが好きな人には、この大口径バックロードの分厚いサウンドにぜひ一度触れてみて頂きたいところです。

箱は、あまりガチガチに作り込みすぎない方が良いでしょう。ユニットから出てくる音を、より拡張するような感じで、自然に箱が振動するような作りの方がこのユニットの鳴りっぷりの良さを引き出すことができそうです。

使いこなしとしては、スーパーツイーターの追加が効果的と思われます。FE166NV単体でもフルレンジとして楽しむことができますが、クラシックやボーカルの繊細さを狙うには超高音域の不足を感じました。FT17Hなどの安価なツイーターをスーパーツイーターとして加えることで一層のグレードアップが図れるでしょう。


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FE168NS 標準価格 ¥29,700(税込)/1台

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FE166NVの兄貴分にあたるのが本機。FE168NSは2018年12月に発売され、「2層抄紙コーン」を量産型フルレンジで初めて搭載したことに注目が集まりました。
(※「2層抄紙コーン」は2014年に発売されたFE103Solで初搭載。しかしFE103Solは限定販売であり、量産モデルでの搭載はFE168NSが初。)

この2 層抄紙コーンは、コーン紙(振動板)の表と裏で、特性の異なる紙質になっているのが特徴です。紙コーンはパルプから作られますが、表側には短繊維のパルプ、裏側には長繊維のパルプが配合されています。これにより、癖が少ないながらもレスポンスに優れる音に仕上がっているのです。

聴いてみると、朗々と鳴るFE166NVの魅力はそのままに、さらに繊細でシルキータッチな表現も得意とします。音を抑圧するような素振りは一切なく、楽器ライクにフワッと音が出てくるのが魅力だと言えるでしょう。この辺は、Youtube動画でも上手く録音できたと思っています。

本機の得意分野は、ボーカル。 微妙なニュアンス一つ逃さない表現力は、FE168NSの再生品質の高さを裏付けるものでしょう。

箱は、しっかりとした本格派のバックロードホーンが似合います。もちろん、薄い板を使った箱でもユニットの持ち味を引き出すことができると思いますが、内圧に負けないタフな作りの箱を用意してやることで、どんな瞬発力のある音もリアルに聴かせるスピーカーに仕上がるはずです。ユニットの能力が高いために、こうした凝った使いこなしにも応えてくれるのです。

使いこなしとしては、振動を丁寧に扱ってやることがポイントになりそうです。しっかりとした箱に入れることと、振動を殺すことは必ずしも同一ではありません。FE168NSはダブルコーンの軽量振動板が持ち味。その楽器ライクな音の表現をスポイルすることなく鳴らすためには、箱を構成する素材の吟味や、制振のサジ加減が求められるでしょう。


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FE168EΣ 標準価格 ¥29,700(税込)/1台

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発売されたのは、なんと2004年。15年以上にもわたるロングランモデルがFE168EΣです。
当時は、FE166E(現在のFE166NV)の兄貴分として登場。その後、価格帯を同じくするFE168NSの登場で姿を消すかと思いきや、まさかの並列販売体制に。

使用しているESコーンは、バナナパルプを使っているもの。これを立体的な構造に仕上げているのが、外観上の特徴にもなっています。
この構造は「HPコーン」と呼ばれ、大型建築物の構造を支えるための高剛性化技術を振動板に応用したものです。

聴いてみると、研ぎ澄まされたピュアな音に驚かされます。一切の歪を排除するような純度の高さが感じられ、楽器的に鳴るNSとは異なる方向性です。低音は厚みとパワーを感じさせ、振動板の剛性の高さがそのまま音に表れている感じです。
その代償なのかは分かりませんが、高音域の一部の帯域にピークディップがあり、Youtube動画の録音ではそうした欠点が目立ってしまったのが残念です。

本機の得意分野は、クラシックやPOPS。複雑に音が絡み合い、音場が広大に広がる音源では、FE168EΣの音響性能の高さがいかんなく発揮されるでしょう。POPSだけでなく、意外とアニソンにも親和性があり、私自身数年間メインシステムとして本機を愛用していました。

箱は、FE168NSと同じく、しっかりとした作りが望まれます。特にこのユニットの純度の高い音を生かそうとすると、箱は剛性や制振を十分に考慮したいところです。そうすることで、瞬発力だけでなく、空間の透明度や奥行などもしっかりと表現できる高品位なバックロードホーンが作れるでしょう。

設計年式の古いユニットなので、先にも述べた通り高域にピークディップがあります。これをいかにカバーし、長所である歪の少なさや透明感を引き出せるかが使いこなしのポイントになりそうです。スーパーツイーターを組み合わせたり、ノッチフィルターをかけたりするなど、細かな使いこなしにもしっかり応えてくれるのがFE168EΣだと思います。しっかりと使いこなせば、FE168SS-HPにも匹敵する品位の再生音が得られると感じています。


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FE168SS-HP 標準価格 ¥38,500(税込)/1台

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2021年4月発売の限定ユニット。当初、10cm・20cm口径でリリースされた「FExx8-Sol」系統(FE-NSシリーズの強化版)での登場が予想されていましたが、その斜め上をいく発表内容に驚かされたのは記憶に新しいところです。

振動板は、FE168EΣのHPコーンを踏襲したもの。実際に見比べても、その形状の差はごく僅かです。
もちろん、ハトメレス構造や、新たな振動板素材など、進化を感じさせる要素も盛り込まれています。

定価ペアで7万円近い値段の高級ユニットですが、投入された物量はもちろん、聴感でも十分に納得できる内容になっています。FE168EΣの低歪さを継承しつつ、さらにクセを減らしてきている感じです。過去の限定ユニットの評判が覆るぐらい使いやすく、万人にお勧めできるユニットです。
試聴では、高域に穏やかなロールオフを感じたため、スーパーツイーターをセットで使用することが大前提になるでしょう。この辺の個性は、Youtube動画でも確認できると思います。

本機は比較的オールラウンドに使えるタイプで、どんなジャンルの音楽にも違和感なく対応できると思います。あえて言うなれば、シンプルな録音の音源では、他のスピーカーでは体感できないほどの生々しい音像を楽しめると思います。

箱は、言うまでもなく十分に作り込まれたものとすべきでしょう。とくに、安価な構造用合板では箱由来のノイズが多く、せっかくのユニットの魅力が半減してしまうと思われます。試作検証が終わったら、フィンランドバーチ合板などでしっかり作ってやりたいところです。

最新型ユニットだけあって、非常に使いやすい音に仕上がっているFE168SS-HP。ハイ落ちゆえにスーパーツイーターが必須など、ある程度の予算が必要になるのは間違いありませんが、それに見合う音であるのは間違いなさそうです。
FE168SS-HPは、20年に一度ともいわれる16cm口径フルレンジの傑作。じっくりと腰を据えて、使いこなしに取り組めるユニットだと言えるでしょう。



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以上が、各ユニットの感想になります。
全て聴いてみましたが、どれも魅力があって甲乙つけがたいですね(笑)

他のスピーカーでは味わえないバックロードホーンの世界、ぜひ体感してみて頂きたいと思います!



<関連記事>
2021年03月27日「FE168SS-HPの試聴動画を作成しました。
2021年02月13日「Fostex FE168SSーHP 考察とバックロードホーン設計


[S-076] FE168SS-HPを使った新型バックロードの設計コンセプト

今日は、新作バックロードホーンの設計について説明しようと思います。

FE168SS-HPの登場のときに、Fostexの図面を元にしたバックロードホーンを公開したのですが、ふと「バックロードホーンの進化とは何だろう?」と思ってしまったのです。

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FE168SS-HP と 長岡バックロードの変遷

FE168SS-HPの取扱説明書に掲載された作例は、長岡鉄男氏の「D-7」に類似しています。

「D-7」は1970年代に発表された作品ですが、その説明で「1930年代のアメリカの設計が基本になっており~」とあるため、基本設計は100年近く前のものになります。

そして、1983年の頃に長岡氏は、下記のコンセプトをもつ新たな音道構造が発表しています。
①斜め音道の排除
②音道長の延長
③キャビネット強度の向上。

このコンセプトに基づいた作例「D-50」「D-70」といった、長岡氏のバックロードホーンの定番となる音道構造になりました。

・D-50についてはこちら
・参考書籍「バックロードホーン・スピーカーを作る!」


長岡氏もその時々の新たなニーズに合わせて、コンセプトを作りバックロードホーンの設計をしています。
そこで、私もFE168SS-HPを手に入れたことを機会として、新しいコンセプトに沿ったバックロード設計をしてみようと思い立ったのです。


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本作の設計コンセプト

新しいバックロードを作ろう!と思ったものの、それは案外難しいものでした。

真っ先に思いつくのは、「バックロードバスレフ方式」でしょうか。短い音道長のバックロードと、バスレフ動作を組み合わせたことで、非常に低い音域まで伸ばすことに成功している方式です。こちらについては、音工房Zさんの方でFE168SS-HP向けのエンクロージュアが開発中とのことで、期待したいところです。
音工房Z「FE168SS-HPとT90-REを使ったエンクロージャー開発」


それでは、私には何ができるか。
古典的なバックロードホーンの良さを尊重しつつ、少しづつ現代のニュアンスを入れていくことにしました。炭山先生の本を読みつつ色々考えてみたところ、以下の3つをコンセプトを挙げることにしました。

①バッフル面積の極小化
②現代的な設置利便性・小型化
③新しい低音増幅原理の導入


以下に、それぞれを詳しく説明します。



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①バッフル面積の極小化

バッフル面積の大小は、かねてより音場感に影響があると言われてきました。近年は、「エッジディフラクション」と呼ばれ、バッフルがあることで軸上の周波数特性が乱れることも知られています。

このエッジディフラクションを計算するソフトを使用すると、バッフル面積を極小化すると、2kHz付近の周波数特性がスムーズになることが分かります。

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<大きなバッフルでのシミュレーション>

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<小さなバッフルでのシミュレーション>


バッフル面積の極小化を実現する手段として、鳥形のバックロードホーンは非常に有力な候補になります。
長岡鉄男氏のスーパースワンを代表する鳥形のバックロードホーンは、極めて小さいバッフル面積と、十分な低音を出すためのホーン設計を両立することができています。


以上の事から、今回はバッフル面積を可能な限り小さくするために、「鳥形」のバックロードホーンを製作することにしました。


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②現代的な設置利便性・小型化

16cm口径の鳥型バックロードホーンをいざ設計してみるとかなり大型になることに気づきました。
ブックシェルフ型スピーカーが隆盛の今、大口径3wayが主流だった時代のサイズ感は到底受け入れられません。

しかし、先日の日記でも書いたように、バックロードホーンのサイズを削減することは、音質上のデメリットに直結します。
理想的なエクスポネンシャルホーンを考えた場合、ホーンの広がり率と長さから、ある程度の容量が必須になってしまうのです。

今回は、全体的なプロポーションのほか、デザイン面でのバランスを見直すことで、設置しやすい寸法を目指してみようと思います。


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③新しい低音増幅原理の導入

②で小型化をした分、より賢く低音を増幅しないといけません。様々なエンクロージュアがこの世の中にありますが、低音増幅の方法は「ホーンロード」と「共鳴」に二分されます。


ホーンロード
ホーン開口部へ向けて適切に音道を広げ、開口部の断面積を大きくし、空間への放射インピーダンスを最適化します。これにより、ユニットの振動の「空振り」が減少し、能率を上げることができます。
これがホーンロードの原理であり、バックロードホーンの設計の要であるのは言うまでもありません。


共鳴
バックロードホーンの場合、【1】管共鳴と【2】ヘルムホルツ共鳴の双方を併せ持っています。

【1】管共鳴
共鳴管としてホーンが動作し、ホーンの長さに応じた低音が増幅されている、という話です。 これは、私も過去の実験で経験しており、バックロードホーン設計には必ず盛り込むようにしています。


【2】ヘルムホルツ共鳴
バスレフ型スピーカーのように、ある程度の容量と、そこに付属したダクトがあることで起こる共鳴です。
下記サイトで記載があるように、近年ではホーン開口部にダクトを装着する作例が多くあり、バックロードバスレフ型もその一例です。

バックロードホーンの歴史と進化【2020年版】
バックロードホーンの歴史と進化【2017年版】


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ホーン内部の共鳴を制御する

しかし、ホーン開口部にダクトを装着することは、先の「ホーンロード」とは相反する設計方針です。
私個人としては、バックロードホーンらしい開放感のある音を保つためにも、ホーン開口部は広くしておきたいという考えがあります。そのため、今回の作例では、ホーン開口部を塞ぐことは余り考えていません。


そうなると、低音を増幅させるためのヘルムホルツ共鳴は、ホーン内部のどこかで生み出さないといけません。

以前にも、長岡氏の「スーパースワン」のように、ホーン音道が多数の180°の折り返しをもつバックロードホーンでは、折り返し部分でヘルムホルツ共鳴が発生しているのでは、という推測がなされていました。

しかし、それを意図的に制御する設計方法は知られておらず、いまだに経験則で作るものという状況だと思います。
実際に、炭山アキラ先生の「コサギ」「チュウサギ」は、180°折り返しを多数含む構造で、重低音域の再生を可能にしています。


今回のS-076では、折り返し部分でのヘルムホルツ共鳴の動作を考慮したバックロードホーン設計としていこうと思います。成功するか失敗するかは分かりませんが、貴重な実験データが得られるのではないかと期待しています。


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ひとまず図面はできましたが、その詳細はまた次回にお話ししようと思います。

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[S-076] バックロードホーンの魅力と、設計の基本

今日はバックロードホーン初心者の方に向けて、その魅力と基本となる設計法を説明しようと思います。


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市販スピーカーのホーン

まず、「ホーン」というと、市販のホーン型スピーカーを思い浮かぶ方が多いかと思います。
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JBL社のスタジオモニターシリーズが有名ですが、コーン型のウーハーの上部にホーン型のツイーターが組み合わされています。
このツイーターのホーンの形の事を「フロントロードホーン」と呼び、一番メジャーなホーンの形式になります。

ホーンの音の魅力は、何と言ってもトランジェントの良さではないでしょうか。
音の立ち上がり、立下りをキレ味よく、かつ浸透力のあるリアルな音で聴かせてくれるのは、ホーンならではの表現です。ジャズのドラムやシンバルの瞬発力、手を伸ばせば触れられそうなボーカルの立体的な音像感。これらの音は、ホーン型スピーカーの真骨頂だと思います。


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低音にもホーンを付けられる?

ホーンが魅力的な音を出すことは、上記のとおりです。
しかし、市販スピーカーを見ると、高音を担当するツイーターにはホーンが付いていても、低音を担当するウーハーにはホーンが付いていないことが多いのです。

これは、ホーンというものは音の波長に対応するサイズが必要で、高音域(波長が短い)では家庭サイズのホーンが作れるのに対し、低音域(波長が長い)では非常に大型のホーンになってしまい家庭での実用性に乏しいという問題があるのです。


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しかし、良いと分かっているものに全力を注ぐのが古今東西のオーディオマニアの性です。低音に巨大なホーンを装着し、低音から高音までの全ての帯域をホーンで再生する「オールホーン型スピーカー」も存在します。

家をまるごとコンクリートのホーンで作ってしまうようなケースもありますし、アバンギャルド社の「TRIO XD」のような数百万円のハイエンドスピーカーも、オールホーン型の一例になります。

※歴史的なホーンの進化の順序や、技術的にホーンが完全な動作をしているか否かは、別途調べて頂くのがよいでしょう。ここでは、私のスピーカー観に沿ってお話させて頂きます。


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フルレンジ+低音ホーン=バックロードホーン

先に上げた「オールホーン型」は、各々のホーンが得意とする帯域が狭いために、3way~5wayといった複雑なシステムにならざるを得ないという欠点もあります。 そうなると、我々のような個人のスピーカービルダーが気軽に低音ホーンの音を楽しむというのは難しくなってしまいます。

それでは、ホーンを低音だけに使い、他の帯域はフルレンジユニットで再生するのはどうでしょう?
どうせなら、フルレンジの背面からの音を活用すれば、さらに合理的です。

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これが、バックロードホーンです。
コーン型のスピーカーユニットは、振動板が前後に動いて音を出すため、我々が耳にする前側の音とほぼ等しい音が後ろにも出ています。この「後ろ音」をホーンで増幅するのが「バックロードホーン」です。

一般的には、後ろ側の音は吸音材で吸うべきとされています。これが前側の音と混ざると、位相が異なった音が干渉するのでは?という懸念もありました。

しかし、オーディオ評論家の長岡鉄男氏が1980~1990年代に発表したバックロードホーンは、ホーンならではの瞬発力とスピード感のある低音が感じられ、懸念された欠点を上回る魅力があるとして大きな評判になりました。


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バックロードホーン設計の基本

バックロードホーンはどうやって設計すればいいのでしょうか。

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設計が難しいと言われるバックロードホーンですが、設計の基本となるパラメーターは僅か4つだけです。

①空気室の容量
②スロートの断面積
③ホーン音道の長さ
③ホーン音道の広げ方


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空気室とスロートの設計

スピーカーユニットが入る部分が「空気室」。そこに接続されるホーンの入り口が「スロート」です。
これらの設計で、ホーンの上限周波数、つまりユニットとホーンの帯域が切り替わるクロスオーバー周波数fxが決まってきます。

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クロスオーバー周波数fxは、通常200Hzに設定します。この計算式は経験則に基づくものですが、信頼のおけるものだと感じています。
スロート断面積は、スピーカーユニットの振動板面積(コーン紙の面積)から計算します。通常は、振動板面積に対して80%が良いでしょう。

詳しい空気室の設計方法は、こちら
初心者の自作スピーカー講座 第15回
BH型スピーカーを設計しよう~その2 (空気室編)~


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スピーカーユニットの選定

先ほどの推奨設計値は、Fostex社の「バックロードホーン向け」とされるユニットでの値です。

それ以外のユニットでの製作も、何回かチャレンジしましたが、正直言ってしまうとバックロードホーンにはバックロードホーンでの使用に特化したFostex社製のユニットを素直に使うのが一番だと感じています。

これらの製品には、取扱説明書に作例の掲載もあり、設計に困ったときの手助けになるでしょう。

<バックロードホーン向けのユニットは、以下の3シリーズ>
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 FE-NVシリーズ(8cm~20cm)

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 FE-NSシリーズ(10~20cm)

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 FE-EΣシリーズ(10~20cm)


それぞれの詳細は、こちらのブログを参照。
「バックロードホーン向け16cmフルレンジ、試聴感想」


なお、その他のユニットはバスレフ型などの一般的な箱で使うことをお勧めします。バスレフ型でも設計次第ではかなりの瞬発力のある低音を狙うことができます。




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ホーン音道の設計

ホーンの音道は、いかに理論に沿った広げ方をするかがポイントになります。 具体的には、下記の計算式で求められる「エクスポネンシャルホーン」という形状が知られています。

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ホーンの広がり率mを設定することで、様々な広げ方のホーンを描くことができます。
私の経験上、m=0.8がオススメです。

なお、広がり率の表記は他の方法もありまして、雑誌の評論家の先生方は、下記のページに記載の広がり率(約1.1)で説明することもあるようです。
https://www.minor-audio.com/bibou/speaker/backroadhorn.html

このホーンの曲線は、excelで簡単に描くことができます。
下記webページをご参照ください。

詳しいホーンの曲線の設計方法は、こちら
初心者の自作スピーカー講座 第16回
BH型スピーカーの設計 ~その3 (ホーン編)~


広がり率をm=0.8に固定した場合、ホーンの長さでホーン全体の容積が決まります。
ホーンの長さは伸ばした方が低音再生には有利になりますが、容量も考慮すると1.7~2.5mが実用的な範囲ではないでしょうか。もちろん、さらに小型化を狙う場合はもっと短いホーンもありえますが、短いホーンは低音再生能力が下がるので注意が必要です。


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本作の設計

FE168SS-HPを搭載する本作[S-076]では、下記のような設計パラメーターとしました。

・空気室容量 約4~6L (fx=約230~150Hz) ※ユニットの容量を除いた値
・スロート断面積 90cm2 (振動板面積の80%)
・ホーン広がり率 m=0.8
・ホーン長さ   1.7m


比較的オーソドックスな値かと思います。
ホーン長さを短めにして、6畳間でも使いやすいサイズ感を目指しました。


こうして計算したホーンを、パタパタと折り曲げていくと、こんな感じに。

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これだけでは、ホーンの構造が分かりにくいと思いますので、
次回の日記で、詳しく説明しようと思います。



~続く~



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[S-076] 設計の詳細

前回に引き続き、バックロードホーン型スピーカー「S-076」の設計について書いていこうと思います。

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ホーンの構造

前回の日記で説明したホーン広がり率m=0.8のホーンは、次のような形になります。
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今回は、次のような形でスピーカーに組み込むことにしました。

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複雑に折り曲がっていますが、まずはスロートから赤矢印のように下側へ向かいます。
そこから、青矢印の形で二つに分岐。そして再度、紫矢印ののように一つに合わさる形状です。

以前は、折り曲げ方についてかなり熟考したのですが、今現在は「折り曲げ方の違いでは、ホーン特性に大きな差は出ない」という結論に至っています。 90°、180°いずれの折り曲げ方でも、ちゃんと音波は伝搬していきます。

その一方で、ホーン開口面積・長さをどうするか、ホーン開口部をどこに設けるか、はかなり大きな影響力があると認識しています。

ホーン開口面積と長さは、現実的には本体サイズの制約もあり自由度は少ないかもしれません。その一方で、ホーン開口部の位置は、比較的自由度があるはずです。

結論から言うと、ホーン開口部がユニットから遠いほうが、低音感を確保しやすいと感じています。
また、ホーン開口部を床に近い位置とすることで、延長ホーン効果を利用しやすくなり重低音再生には有利になります。


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実際の設計への落とし込み

ホーンのおおまかな構造が決まったら、あとは試行錯誤しながら設計へ落とし込みます。

図面の中に、[0.6]などの数字がありますが、これはスロートからの距離を表しています。この距離と先ほどのホーンの断面積(計算値)を見比べながら、図面を描いていきます。

一度描いてみると、初期のデッサンより大きく違う寸法が必要になることが多々あります。
今回のS-076も、3回ぐらい図面を描き直して完成しました。
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製作

使ったのは、12mm厚のラワン合板。
扱いやすさと、温かみのある音が楽しめる素材です。

ホームセンターでカットを行い、丸穴はジグソーを使って自分で加工しました。

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測定結果は、次回の日記で説明していこうと思います!
お楽しみに♪

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[S-076] 試聴感想、周波数特性&空気室の調整

皆さんこんにちは。今日は暖かい日になりましたね!

今回は、Fostexの16cmフルレンジ「FE168SS-HP」を使ったS-076の試聴と測定について書こうと思います。
また、後半では空気室容量の差について説明します。


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S-076の概要

FE168SS-HPを使ったバックロードホーン「S-076」のパラメーターは下記のようになっています。

・空気室容量 約4.8L (fx=約190Hz) ※ユニットの容量(1.0L)を除いた値
・スロート断面積 90cm2 (振動板面積の80%)
・ホーン広がり率 m=0.8
・ホーン長さ   1.7m

(設計の詳細は、こちら

今回は、このバックロードホーンを測定し、特性グラフを見ながら解説をしていこうと思います。


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正面1m特性

まずは、正面1mの特性です。

通常ですと、「ユニット軸上1m」の特性を測るのですが、このS-076は後面下部にホーン開口部があるため低音音圧が想定より小さく出てしまう問題がありました。(図中、青線)

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そこで、1mの距離を確保しつつ、マイク高さを下げることでホーンとの距離を調整して、聴感特性に近い結果がでる位置で測定をしました。(図中、赤線)


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周波数特性を見ると、70Hzから15kHzまで整った帯域バランスが得られていることが分かります。
聴感上では、60Hz以下までしっかり出ており、小型の16cmバックロードとしては上出来の値です。

再生周波数レンジだけでいえば、小型ブックシェルフ型スピーカーにも及ばないかもしれませんが、バックロードホーンならではの瞬発力は大きな魅力です。低音から高音域まで、一切のリミッターを感じない音が飛び出してくるのはとても気持ちいいものです。

特に、16cmフルレンジFE168SS-HPのf0は54Hzで、それ以上の周波数帯域で再生しているのも、好印象に貢献しているでしょう。10cmフルレンジで無理に伸ばした低音とは、明らかに馬力感が異なります。


こうした音の傾向は、ベースギターの音色感や動きを克明に描く気持ちよさにつながります。普通のスピーカーでは籠った音色(下手すれば旋律が聴こえない状態)になりやすいベースギターを、明快に聴かせてくれるのは快感そのものです。

弦楽器やボーカルも、キツい音にならないのはFE168SS-HPならではの良さかもしれません。一昔前のフルレンジと比べ、かなりコントロールされた中高域になっている印象を受けます。

限定ユニットのFE168SS-HPですが、実際に聴いてみたところ扱いやすさが全面に出てくる音で安心しました。予算が許すのならば、初心者でも迷わず選んでよいと思います。


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ホーンの動作を考える

さて、それでは個々の特性を確認し、ホーンの動作が上手くいっているかを考察してみます。

<ホーン開口部>
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<ユニット直前>
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ホーン開口部の特性を見ると、50Hz~500Hzの幅広い帯域で音圧が出ていることが分かります。500Hz以上が綺麗にカットできているのは、複雑に折り返した音道のお蔭でしょう。(吸音材は、一カ所だけ薄く入れています。)

ユニット直前特性を見ると、45Hz、110Hz、180Hzに大きなディップがあり、それぞれホーン共鳴の基音、2倍音、3倍音に相当しています。この周波数ではホーンが共鳴しており、振動板の空振りが抑えられています。

この共鳴音の実測から、ホーンの音道長を求めると 340(m/s)÷45(Hz)÷4=1.89mになります。前回の日記で図面から求めた音道長1.7~1.8より少し長い結果になりました。これは、ホーン末端の開口端補正による効果かもしれません。 

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インピーダンス特性でも、同様の周波数に大きなディップを確認することができました。まずは、想定通りのホーンとして動作していると思って間違いなさそうです。


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空気室容量の変更

先ほどは、容量4.8Lの「空気室(中)」を装着しての測定でした。
バックロードホーンの空気室容量を変えた時、どのような変化があるかは確認をしておきたいところです。


ここでは、以下2種類の空気室を比較しました。

「空気室(小)」
・空気室容量 約3.8L (fx=約240Hz) ※ユニットの容量(1.0L)を除いた値

「空気室(大)」
・空気室容量 約6.2L (fx=約145Hz) ※ユニットの容量(1.0L)を除いた値

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(用意した3種類の空気室)


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正面1m特性の比較

まずは、正面1mでの測定です。マイク位置は、先ほどと同じ床から60cmです。

「空気室(小)」↓
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「空気室(大)」↓
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測定結果ではほとんど差が分かりませんが、聴感では大きな差がありました。


まず、空気室(小)はかなりナローレンジに聴こえました。特に、高音域が抑制された感じで、それ単独で聴いてしまうと「フルレンジだから仕方ないかな?」と思ってしまいますが、ユニットの描写力が中低域の厚みに隠れて聞こえにくくなっているような感じです。


その逆に、空気室(大)はワイドレンジ。低域から高域まで屈託なく撒き散らす感じです。

低域のドスンという感じもハッキリと感じることができ、ホーン内部の空気が自由に動いているような感じを受けました。その一方で、中低域の解像度は若干下がるかな?という感じもあり、空気室によりユニットとホーンの結合が弱まった功罪の双方を感じ取ることができました。

最も大きく変わったのは、意外にも高域でした。切れ味と輝き感が感じられる高音は、先ほどの空気室(小)で聴いた音と同じユニットとは思えない質感です。空気室(大)は、中域もスムーズに出てくる感じがあり、長岡スピーカーが好きな方にはこれぐらいが適正値かもしれません。

様々なジャンルの録音を聴くと、空気室(大)ではボーカルのハスキーさが目立つ場面もあったため、好みに応じては空気室(中)がベストバランスになるのではないでしょうか。空気室容量の調整は、中低域より高域の印象に注目して判断すると分かりやすいと言えそうです。


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空気室容量による、ホーン動作の違い

次に、ホーンの動作を確認するために、先程と同じく各部の測定結果を見てみます。

「空気室(小)」↓
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「空気室(大)」↓
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まずは、ダクト開口部の特性。まず、300~500Hz付近の減衰が「空気室(大)」の方が大きくなっていることが分かります。空気室容量変更の狙いの一つでもあるクロスオーバー周波数(fx)の差が表れたものと思われます。その一方で、1kHz以上の漏れ出てくる高音域に余り差はありません。

100Hz以下の低音域はどうでしょうか?ピークとディップの差は「空気室(大)」の方が若干大きそうです。聴感で「ドスン」という感じが空気室(大)の方が感じられた、というのもこの特性に由来しそうです。


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次に、ユニット直前の特性を見てみます。

「空気室(小)」↓
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「空気室(大)」↓
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100~200Hzのディップを見てみると、空気室(小)のほうが深いディップがあることが分かります。これはホーンの共振がより直接的にユニットで制動されていることの証拠です。


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最後に、インピーダンス特性を見てみます。

「空気室(小)」↓
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「空気室(大)」↓
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インピーダンス特性では、空気室(小)の方が全体的に20~200Hzの値が小さくなっているのが分かるでしょうか。これもホーンとユニットの結合が強まったことを表しています。


以上の結果から分かるように、空気室の大小は、ユニットとホーンの結合の強弱を変えるファクターになっています。
これは、必ずしもどちらかが良いということではなく、結合が強いとよりホーンとしての動作が大きくなり、その一方で、結合が弱いとより共鳴管ライクな動作になっていくという話です。 これとその他のファクター(例えば設置場所による低音の大小、吸音材による変化、リスナーの音の好み)を総合的に考えていくのが良いでしょう。


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S-076は、想像以上の一発目からいい音を聴かせてくれました。バックロードホーンでありがちな中低域の付帯音もなく、まずは一安心です。

今回は周波数特性のデータを沢山のせてみました。皆さんのバックロードホーン作りの参考になれば幸いです。

とくに、ユニット直前の特性は、ホーンの共鳴周波数を知るうえで重要なデータになります。インピーダンス特性からも同等の考察ができますが、インピーダンスの測定環境が無い場合は、手持ちのマイクでユニット直前の周波数特性を取るだけでもかなり有用な情報が得られるでしょう。


次回は、吸音材の違いをデータと聴感で確認してみます。お楽しみに!

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世界で最初のバックロードホーン

皆さん、こんにちは。

最近、私生活が忙しくなってしまいましたが、前回までのバックロードホーン製作もマイペースに進めています。
その内容は、後日ホームページのほうに掲載できればと思っています。



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最初のバックロードホーンは?

ふと気になったのですが、バックロードホーンはいつ頃からあるのでしょうか。

1950年頃の「クリプシュホーン(Klipsch horn)」が最初という話もありますが、
良く調べてみると、1930年代の英国と米国でそれぞれ発明があったことが分かりました。



英国では、1933年にポール・フォークト氏が、バックロードホーンに関する特許「英国特許 667170」を取得したのが始まりです。

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特許中の図面

その構造は、今のバックロードホーンとはかなり異なり、蓄音機をイメージさせる大きなフロントロードホーンを備えていました。

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雑誌「The GRAMOPHONE」1936年 1月号掲載の広告

フォイクト氏は、後にフルレンジで有名なローサー氏と出会い、
その設計思想は、Lowther Loudspeakers社のバックロードホーンに引き継がれていきます。


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米国でも同じ1930年代に、H.F.オルソン氏がRCA社でモニタースピーカー「MI-4400」を発表します。

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RCA Broadcast Equipment (1940) p.52 より

オルソン氏は、音響工学の本を執筆していることでも有名です。資料からも、その構造が現代のバックロードホーンに極めて近く、当時としては驚くべきワイドレンジな特性を誇っていたことが分かります。

ちなみに、最初のダイナミック型スピーカーの特許が出願されたのが1926年。それから僅か10年足らずでバックロードホーンの原型ができたのですから、驚くべきことでないでしょうか。


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その後の1940年、1950年にも、歴史的に貴重なバックロードホーンの作例があることが、調べていく中で分かりました。

続きは、下記webページに掲載しましたので、もしご興味あれば見ていただけると嬉しいです。


<続きはこちら>
「1-04 バックロードホーンの歴史と長岡鉄男氏」
http://www.audifill.com/essay/back_loaded/1_04_bh.html



耳で聴こえる10オクターヴの範囲

皆さんこんにちは。
先日、サブウーハーSW-1の出荷が終わり、一安心しているカノン5Dです。

SW-1は、16cm口径ながらも25Hz(特性上は17Hz)からの低音再生が可能なサブウーハーです。
今まで作ってきた「ひのきスピーカー」は、小型のものが多かったので、SW-1はその低域を補完してくれる強力なアイテムになったと思っています。


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人間が聴こえる音の範囲は、20Hz~20kHzと言われており、
楽器を含め、その中には低音から高音まで様々な音が含まれます。

音の高さを表すのに「1オクターヴ」というのは便利な表し方です。

一般的に基準音と呼ばれる440Hz(ラの音)の1オクターヴ上は、880Hz(高いラの音)です。
つまり、「1オクターヴ上」の音は、周波数でいえば「2倍」に相当します。


では、低音の20Hzから、高音の20kHzは、何オクターヴなのか。

ざっくり計算すると、【10オクターヴ】になります。
20Hz×2^10=20,480Hz です。


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こちらの図で書いたように、低音の3オクターヴ(20Hz~160Hz)、高音の3オクターヴ(約2.6kHz~20.5kHz)は、
周波数を示すグラフ上では等しい長さに描くことができます。


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近年ではハイレゾが盛んに言われており、
大半の製品で、高音の3オクターヴは十分に確保できていると言えるでしょう。

しかし、低音はどうでしょうか。
160Hzはともかく、その1オクターブ下の80Hz、さらにその下の40Hzになると、だいぶ怪しくなってきます。


細かい話をすれば基音と倍音の関係があるので、高音と低音を等しく語るのは問題があるのですが、
こうしてグラフにしてみると、低音をしっかり再生することの大切さが見えてくるように思います。


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FOSTEXの紙コーンフルレンジと、エンクロージャー設計の話

FOSTEXといえば、紙コーンのフルレンジユニットです。もちろん、ウーハーやツイーターなどもラインナップしていますが、FOSTEXらしさを最も感じるのはフルレンジでしょう。
その歴史は長く、表題画像は今から約50年前の1972年のFosterカタログに掲載されていたものです。
トランジスタ用ラジオなどで培った、聞きやすく高能率なユニット作りの技術は、家庭用オーディオでも大いに注目されました。


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(写真FE126E)
とりわけFEシリーズの量産タイプユニットは、手頃でありながら、瞬発力のあるキレのいい音を楽しませてくれます。
先ほど高能率と言いましたが、実際の数値では90db程度。市販の大型トールボーイ型スピーカーと同程度であり、そこまで目立った値ではありません。

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(2021年発売のFE168SS-HP)


私は、その魅力的なキレのいい音のポイントは、振動板にあると感じています。
振動板を軽く作ることはできても、それを癖が少なく、品位の高い音にするのは難しいものです。
大抵は、振動板の厚みを増すことで共振を減らしていきます。もしくは、金属コーンのようにどこか1点で共振するようにして、ネットワークでその帯域を切り取るような設計にします。

しかし、FOSTEXの振動板作りは異なると感じています。振動を押さえ込むことなく、なおかつ暴れさせることなく、丁寧に振動を処理している様子が、その音から伝わってきます。
振動を丁寧に扱う方法論は、アコースティック楽器作りに通じるところがありそうです。
良く鳴るようにしつつ、美しく鳴るようにする。
音楽を再生する道具には、そうした丁寧な作り込みが重要なのだと思います。


スピーカーユニットだけでなく、エンクロージャー(箱)も同じです。
単に振動を抑制するだけでは、生々しい響きから遠ざかってしまいます。かと言って、無作法に鳴りすぎるのもNGです。
素材の癖を知りつつ、どんな振動状態を作っていくのかを考える。それが、スピーカーのエンクロージャー設計の本質だと感じています。





スピーカー測定の最新事情

皆さんこんにちは。

今日は、最新のスピーカー測定についてお話しようと思います。

最新と言っても、何か特別なことをする訳ではなく、よく知られている周波数特性の延長でのお話です。

 

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こちらはFOSTEXのGX100BJというスピーカーの取り扱い説明書に記載されている周波数特性です。大半のスピーカーがこうしたグラフ表記がない中、データをしっかりと表示するFOSTEXの姿勢は素晴らしいと思います。

さて、これはおそらく軸上1mの距離で測定された結果なのですが、実際のリスニングルームでは下図のように様々な方向に放射された音を合算して聞いています。

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もちろん直接音(=軸上特性)も聴いているのですが、それ以外に軸上以外の方向に放射されている音も耳に入ってくるのが注目すべきポイントです。

従来もメーカーの開発では、軸上特性以外のデータを収集することがあったと思いますが、その解釈に統一的な理論はありませんでした。

しかしながら、米国ハーマン社(JBLやInfinityなどを束ねる企業)のトール博士の基礎研究により、軸外特性の解釈の仕方が明らかになってきました。

さらに、2015年には同氏の研究成果に基づく「スピノラマ」と称される測定手法が、米国家電協会CEAの「家庭用スピーカーの標準測定法(CEA-2034)」に登録されたことが話題になりつつあります。

「スピノラマ」では、次のような5本の周波数特性をグラフ化します。

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   ①On Axis(軸上)
   ②Listening Window(リスニングウィンドウ)
   ③Early Reflctions(初期反射)
   ④Sound Power(音響パワー)
   ⑤Directivity Index(DI値)

それぞれの詳細は割愛しますが、軸外への音放射を合算した特性が凹凸がなく滑らかであることを、より好ましいとします。

この考え方がどこまで家庭用高級スピーカーに応用できるかは難しいところですが、業務用モニタースピーカーでは本評価方法を重視して設計したと思われる製品が散見されるようになってきました。

スピーカーを作る立場として、こうした潮流は注視していこうと思っています。

 

関連記事

最新スピーカー測定技術「スピノラマ」 http://www.audifill.com/essay/eng/0_09.html

 

 

fin.

[S-073]新作スピーカー SOLA MK2

先日から、新作「SOLA mk2」の試作検討を開始しました。

このスピーカーは、2018年に発表したひのきスピーカー「Concept-SOLA」の後継機になります。

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(写真)旧製品 Concept-SOLA

 

あれから3年の年月を経て、新しく分かってきたことが多くあります。

ユニット設計、箱の構造、指向性制御。SOLA mk2には、今まで積み上げた知見を全て投入していこうと思っています。

初代SOLAの「コンパクト、ハイクオリティ」はそのままに、さらなる表現力をもつモデルになると考えています。

 

今は、開発の初期段階でして、最も基本的な箱容量と全体デザインの調整を進めています。

この日記でも、詳細を少しづつ報告できればと思っています。

 

 

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