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[S-044][S-045] スピーカー製作のアフターストーリー

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製作した自作スピーカーを譲ったり、設計のお手伝いをしたり・・・という機会があったので日記に書き留めておきます。

~S-044について~
2015年ミューズの方舟コンテストの試作のなかで生まれたS-044は、ユニット交換やエンクロージュアの検討を経て、だいぶ良い音が出るようになってきました。
このことを、最近オーディオに興味をもった会社の後輩H氏に話をしたところ、「ぜひ譲ってください!」という流れに。

そんなわけで、嫁入り決定です!

カノン宅


H氏宅



初めてのオーディオとのことだったので、マランツのプリメインアンプ「PM7005」も同時購入したとのこと。
「普通のTV番組が、映画館で見てるみたいな音になった!」と喜んでもらえたのでまずは一安心。

搭載したユニットのFOSTEX FE103Solが優秀なのは言うまでもなく、
試行錯誤したエンクロージュアも相まって、フルレンジとは思い難いワイドレンジなシステムになっていると思います。

どうでもいいことですが、
もし今後、H氏がスピーカーを買い替えることがあったら、どの価格帯の製品を買うのか気になるところです(笑)


~S-045について~
「スワン・ザ・バスレフ」として各所で発表していたS-045ですが、
塩ビ管スピーカーOFF会で試聴されたYさんから、「FE103Solで同様のものを作ってみたい」とご連絡を頂きました。

そこで、私からこんな感じの設計を提案させて頂きました。
この辺の設計手法は2015年のstereo誌への私の投稿記事に基づくものです。


プロの木工家のYさんは、
製作も見事なものです。







写真でみても分かる通り、
私の作った「スワン・ザ・バスレフ」と比べても明らかに高精度な作りこみです!

ダクトのチューニングに関しては、VU65では低音がダボつくようで、
VU50(長さ6.5cm)に落ち着いたとのこと。

今後、塗装も予定されているとのことで、まだまだクオリティが上がっていきそうです!




さて、そんなカノン5Dですが、
ここ数か月間は最新作「S-048」に全力投入でした。

そのお話は、また次回以降に書いていこうと思います。

[S-048] 高校野球 と 宇宙戦艦ヤマト と スピーカー

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夏の高校野球も終わった今日ですが、
高校野球を見るとたまに思うのが、「暑くないのかなぁ・・・」ということです。

そりゃ、連日30℃を超える日のグラウンドの上となれば、
相当な熱波に見舞われること間違いないでしょう。

しかし選手達は、そんな暑さを超える、遥に辛い練習を乗り越えてきて、
今日この日を迎えているのだと思います。

幼少の頃から、練習を重ね、
ようやくたどり着いた甲子園は、まさに晴れの舞台だと言えるでしょう。



さて、話は変わり、戦艦ヤマトである。(またしても唐突なw)

地球の存亡をかけて、人類未踏の最果ての地「イスカンダル」を目指す話である。
それを支えるのは、一つのメッセージのみ。(2199ではホログラムっぽいやつだったかな?)

目的とするものがそこにあるか確証がないだけでなく、
そもそも帰ってこれるか、いや、行けるかすら分からない。

しかし、あの有名な「宇宙戦艦ヤマト」の歌にあるように、
『誰かがこれを やらねばならぬ』という意思のもと、大宇宙に飛び立つのです。



そして、本題のスピーカーの話です。

自作スピーカーの世界で有名な「共鳴管」や「バックロードホーン」は、
いまでは多数のアマチュア製作者の手によって製作されています。


しかし、残念ながら製作方法についてはノウハウの塊となってしまっている感じが否めません。

多数の音響管型スピーカーを発表した長岡先生も、肝心なところは曖昧(「なんとかなる!」「複合的な動作になる」的な感じ)ですし、
測定を駆使してスピーカーを発表している小澤先生も、自身の「開口部塞ぎQWT」の周辺のみの考察に留まっていると思います。


音響管型のスピーカーをより進化、発展させるためには、
明確な設計法の確立、それを裏付ける実験が必要なのでうす。


そう、正に「誰かがこれを やらねばならぬ」なのです。

しかし正直に言って、音響解析のためにスピーカー試作を重ねるのは「楽しくありません」(笑)

だって、測定して、結果を吟味して、壊す。
モノラルなので、せっかく作っても、「音楽」すらマトモに聴けないのです orz
このどこが楽しいだろうか。もはやドMの境地ですよ(笑)

しかし、「誰かがこれを やらねばならぬ」なのです。
野球でいえば、素振り1000回、球拾い、筋トレ…なのです。


「期待の人が 俺(達)ならば」かどうかは分かりませんが、
カノン5Dの新作「S-048 実験機」は、そうした考えの元に生まれた、非常に地味な渾身の一作なのです。


写真が無いのも寂しいので、S-048の雄姿をペタリ。

[S-048] 共鳴管の太さ(解説編)

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さて、S-048の実験第一弾は「共鳴管の太さ」です。

本当は、興味のあるバックロードホーンから入りたいのですが、まずは基本をおさえる意味から、シンプルな共鳴管からスタートしましょう。

共鳴管の設計は非常にシンプルです。
「太さ」と「長さ」。それだけです。

まあ、他にもテーパーとか、折り返しとか色々ありますが、
基本は、「太さ」と「長さ」で問題ないでしょう。

この二つのファクターのうち、
「長さ」については大体の理解が進んでいます。

片開口共鳴管にユニットを取り付けると、
1倍、3倍、5倍・・・と、共鳴周波数が現れます。


一方、「太さ(断面積)」についてはどうでしょうか?
そりゃ、太い方が低音が出るに決まってる・・・って本当でしょうか?


確かにイメージ的には、太い管のほうが効率的な共鳴が得られ、
結果として、重低音増強効果が大きいように感じます。

しかし、例えば公園にある土管(長さは3メートルほどでしょうか?)の中で声を発したとして、
果たして56Hz(340÷3m÷4×2=56Hz)の重低音が野太く響き渡るでしょうか?


(画像はイメージです)

土管の太さは十分なので、もし断面積に比例して得られる共鳴が強くなるのであれば、相当な重低音増強効果がありそうです。
お察しのとおり、現実にはそんなことは起こりません。土管ではなく、半径数メートルの巨大なトンネルをイメージして頂いても良いでしょう。


では、どこかに閾値があるのか。
ユニットの振動板面積に対して、ある程度以上で共鳴管効果が最大を迎えるのか。


そこで、実験です。
FOSTEXの標準的ユニット「P1000K」を使用し、断面積が振動板の72~800%となるよう変化させた直管の音響管を用意しました。



P1000Kのf0は82Hz。音響管の長さは1.2mなので、共鳴周波数は約70Hzです。

これ以上音響管の長さが長いと、P1000Kの出力音圧レベルの低い領域での評価となり誤差が増すと考え、音響管の長さは「共鳴周波数がf0と同等程度」として決定しました。


断面積については、最小の72%(振動板面積比)がバックロードホーンのスロートに相当するもの。最大の800%がバックロードホーンの開口部に相当するものです。
もちろん、一般的な共鳴管の太さである200~300%も、この中に入りますね。


実際のスピーカーの様子はこんな感じです。(断面積800%の状態です)







気になる結果は、次回にお伝えします!

[S-048] 共鳴管の太さ(結果考察編)

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前回の続きで、共鳴管の「太さ」についての実験結果を解説していきます。

今回の実験は、こんな感じでしたね。

FOSTEXの10cmフルレンジ「P1000K」を使用して、
様々な太さの共鳴管(長さは1.2m)での挙動を確認してみました。


まずは、聴感の特性です。

「72%(振動板面積比・共鳴管の太さ)」とした場合、低音のみならず中高音にも窮屈さ(歪っぽさ)が感じられました。低音に関しては、ほぼユニットから出ているようです。

「100%」とすると、窮屈さは大分緩和され、低音もバスドラムの音域が感じられるようになりました。ただ、依然としてハイ上がりで、100~200Hzの低音は薄いままです。

「200%」では、低音が出てくることで全体バランスも改善され、窮屈さも解消されました。

「400%」も、低音音圧は十分なレベルです。中高域は、透明度が増したように感じますが、低域と中高域の馴染みが悪く、低音に若干の遅さを感じるようになりました。

「800%」は、(400%と比較して)それほど低音音圧が上がる様子はないものの、ぐーぐーと質の悪いサブウーハーが鳴っているような音となりました。付帯音も多く、JPOPSではワンワンとした管の響きを感じます。


聴感特性では、200%か400%が好ましい感じでした。
さて、次は周波数特性を見ていきましょう。

私は、いつも「ダクト直前」「ユニット直前」「軸上(1m)」の最低三ケ所で測定しています。
共鳴管開口部からの放射特性を確認する「ダクト直前」、ユニットの負荷・振幅を把握できる「ユニット直前」、聴感との関連性を議論できる「軸上(1m)」といった所でしょうか。
(画像の上で右クリック→名前を付けて画像を保存、で高解像度データがダウンロード可能です。)


ここでは、以下の二つの考察をしていきます。



「低音部音圧」は軸上1mの特性結果を元に、500Hz付近の音圧と、一次共振に相当する70Hzの低音音圧を比較します。聴感での重低音量感を定量化するのが目的ですね。

「ユニット空振り 抑制効果」はユニット直前の特性結果を元に、管共鳴によりユニットから放射される音圧が低下(エネルギーが共鳴に消費される)する現象を把握します。


<低音部音圧>




聴感で感じたように、振動板面積が400%(振動板面積比)以上となると、低音部の音圧が最大値を迎えることが分かります。少なくとも今回の系では、ここが閾値となると考えて間違いなさそうです。


<ユニット空振り 抑制効果>




下の分布図から、断面積が72%のように、細い共鳴管ほど空振り抑制効果(=ユニットからの低音音圧低下)が確認されます。一方で、400%以上のように太い共鳴管では、余りユニットからの音圧低下は起こらないようです。

一般的に、「空振り抑制」=「低音増強」と思われがちです。しかし、この結果からすると「ユニットに負荷がかかっていても、低音がでない」という状況は十分にあり得る、むしろ「ユニットに負荷がかかっているからこそ、低音がでない」とも考えられます。

断面積が小さな共鳴管は、ユニットが管共鳴を駆動しても、「放射効率」「共鳴効率」という点で難があり、それゆえに低音が出ないのかもしれません。
さらに、ユニットは共鳴を励起する「ドライバー」であると同時に、強力な電磁制動で共鳴を抑制する「アブソーバー」であることも忘れてはならないようです。この二つの力加減を元に、共鳴を上手くコントロールするのが共鳴管設計のコツなのかもしれません。

今回の実験では、断面積が200%以上のような、比較的「空振り抑制効果」が弱い領域で十分な低音量感を得ることができました。さらに断面積を広げていくと、800%で(おそらく共鳴が強くなるため)音圧低下量が再び上昇していきますが、それは聴感上ではNGな低音質感となっている領域でしたね。「制動が効きすぎず、制御しきれないほどの共鳴も起こらないポイント」がベストだと言えそうです。


さて、ラストはインピーダンス特性を見てみましょう。


200%→400%のところで、大きく形状が変わっているのが分かります。(吊り橋型から谷型?)
この変化が起こった断面積は、聴感や周波数特性でも好ましい特性が得られた場所だと言えます。


<<まとめ>>
共鳴管の最適な断面積は、「制動が効きすぎず、かつ、制御しきれないほどの共鳴も起こらないポイント」にあり、その値はユニット直前特性や、インピーダンス形状から推測が可能だといえます。

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次回は、この共鳴管を「折り曲げた」ら、どうなるか、、、を確認してみようと思います。

秋の自作スピーカーイベント

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今秋の自作スピーカーイベントのお知らせです!

「スピーカー再生技術研究会 オフ会」
日時:2015年9月21日(月・祝) 9時~(予定)
   2015年9月27日(日)   9時~?(予定)
場所:中野ゼロ「視聴覚室」 (JR/東西線 中野駅から徒歩10分以内)


今年は、2日間の開催となった再生技術研究会オフ会です。
「スピーカーの再生」を主なテーマとして、様々な創意工夫をした作品が登場します!
来場しての試聴のみであれば、事前登録不要なので、ぜひお気軽にお越しください♪

私は9/21(祝)と、9/27(日)の双方に参加を予定しています。

9/21は、S-050と、最新作S-052の発表を予定しています。

<S-050>
Right-EAR製の平面振動板ユニットを搭載した、バックロードホーン型のスピーカーです。
独特の駆動方法をもつ平面振動板ユニットの低歪な音に注目です!


<S-052>
今月発売のDigiFi誌に付録の、8cmユニットを使った密閉型スピーカーです。
グラスファイバー振動板をもつ本ユニットの、繊細なサウンドをお聞かせできるかと思います。(現在作製中!)



9/27は、ステレオ誌のコンテストに投稿予定の「S-051」の発表を予定しています。
ただ、私用によりオフ会には午前中のみの参加となります。

<S-051>
実験箱S-048で得られたノウハウを最大限に投入し、10cmフルレンジの限界に迫る再生を実現!?
2.6mの共鳴管から放たれる、地を這う重低音は必聴です。



「自作スピーカーコンテスト 作品展示会」(ステレオ誌主催)
日時:2015年11月28日(土)
場所:音楽之友社 音楽の友ホール (東京メトロ 神楽坂駅より1分など)

今年も開催の読者競作です。試聴の際は、11/4までに入場申し込みをする必要があるので、注意が必要ですね。



「ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2015」
日時:2015年11月下旬
場所:品川区立中小企業センター「3階レクリエーションホール」 (JR/りんかい線 大井町駅から徒歩15分)

今年のレギュレーションは、「FOSTER C080P33SまたはFOSTEX FE83Enを1発」です。
カノン5Dは「FE83En」で出品予定ですが、旧「FE83」の魅力を引き継ぐ「C080P33S」との対決に注目です!

[S-048] 共鳴管の折り曲げ(U字)(解説編)

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実験箱S-048では、共鳴管型スピーカーの原理を探るための実験をしています。
前回は、共鳴管の太さについて検討しました。

さて、今回は共鳴管の「折り曲げ」について考えてみます。

共鳴管やバックロードホーン型スピーカーの場合、
長さが2m以上の音響管をもつことから、大抵1回以上ホーンを折り曲げることになります。


音響管型スピーカーを多数作製してきた長岡先生は、
「折り曲げホーンの問題点」として、著書に残しています。

<以下、「長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術Special Edition基礎知識編」 より>

「折り曲げには90度と180度があるが、180度は気流の乱れが起きやすいので90度の方が有利である。」(P.32)

さらに、音響迷路型(共鳴をさせない設計の音響管をもつスピーカー)の項では、
「共鳴管のようにストレートである必要もない。」(P.23)
「(音響迷路型は)複雑に折り曲げることで、中高音を減衰させ、共鳴も防ぐ」(P.23)
としており、
共鳴管は直管であることが好ましいというようなニュアンスです。



では実際はどうなのか?
実験してみましょう。


共鳴管の太さは、前回の実験で好ましい結果となった
200%、400%(P1000K振動板面積比)の二種類とします。

この音響管を180°で折り曲げて、
その変化を確認してみようと思います。





直管ver.の長さが120cm(一次共鳴70Hz)だったので、
折り曲げver.は、60cmの管を2本つなげるような構造としました。

折り曲げ部分は、特に処理をせず、
シンプルな構造としておきます。


もし、直管と変化がないとすれば、
そのまま70Hz(=120cm)の共鳴が得られるはずです。

スピーカー自作派で噂されるように、
もしコーナー部で共鳴が切れ、部分的な共鳴が発生するのであれば、
141Hz(=60cm、ユニット側)や106Hz(=80cm、開口部側)の共鳴音が確認できるでしょう。


気になる結果は、次回の日記でお伝えします!

[S-048] 共鳴管の折り曲げ(U字)(結果・考察編)

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音響管を使ったスピーカーとして、二つの作例を比較してみます。





それぞれ、ユニット(FOSTEX P1000K)の振動板面積に対して、
200%と400%の断面積をもつ音響管をS-048で用意しました。

それらを「U字型」に折り曲げたときの、
変化を見てみましょう。


まず、聴感上の変化ですが、
あまり大きな変化はありませんでした。

瞬時に切り替えての比較であれば、分かる程度の違いだと思いますが、
記憶を辿っての比較のため、この程度では大きな差とは感じませんでした。

なお、断面積の差(200→400%)などは、直管で感じた違いを踏襲するものとなっています。
U字管でも、直管と同様に、共鳴管の断面積に由来する変化は起こっているようです。



では、周波数特性を確認して、より詳細に見てみましょう。


(画像の保存、でより高精細な画像が見れます。)

左から、ダクト直前(音響管開口部付近)、ユニット直前、軸上1mの周波数特性となっています。


<ダクト直前特性について>
まず、70Hz前後の一倍振動による共鳴を確認すると、
直管に比べ、「U字」のほうが共鳴によるピークが強く明確に表れています。

さらに気になるのは、U字管は共鳴周波数が若干低くなっていることです。

共鳴が強い400%では、明らかに一倍振動のピーク位置が、70Hz(1.2m)→50~60Hz(1.5m)と低くなっています。
倍音に関しても同様に、U字管のほうが明らかに低い周波数に出ていますね。

なお、U字管で懸念された、音響管内での分割共鳴については、
141Hz(=60cm、ユニット側)や106Hz(=80cm、開口部側)の双方とも確認されませんでした。
とくに周波数特性に乱れた感じもなく、理論通りの倍音が確認されるので、共鳴の分割は起こっていないといえるでしょう。


<ユニット直前特性について>
注目は、共鳴周波数でのディップ(振幅=空振りの抑制)です。

200%の太さでは、U字管のほうがディップは全体的に小さくなっています。

400%の太さの方は、三倍振動(160~200Hz)のディップについてはU字管の方が大きく見えますが、やはり一次振動(50~60Hz)のディップはU字管が小さく出ています。


<軸上1m特性について>
まず、一倍振動(70Hz付近)に注目すると、特に200%の太さではU字管のほうが音圧が出ているように見えます。一方で、400%の太さのほうは、大差なし…でしょうか。

基本的にほぼ同じ特性となっていますが、一部違うのは200~400Hz前後の中低域の特性です。
3倍~7倍の高次共鳴に相当する帯域ですが、U字管のほうが明らかに特性の乱れ(細く鋭いピーク)が確認されます。



こうして周波数特性を見てみると、大きく3つのポイントが見えてきます。
<U字管の特徴>
1. 一倍振動が強い。(制動が弱く、共鳴が強い)
2. 共鳴周波数が下がる。
3. 中低域に特性の暴れが出る。


1.については、周波数特性からの推測でしかありませんが、
U字管のように、一回折り返しをつけることで、折り返した後の管は(スピーカーユニットによる制動を受けず)比較的フリーに共鳴できるようになる。と考えています。


2.については、インピーダンス特性を見てみても明白です。



それぞれ、太さが200%と400%のインピーダンス特性ですが、
U字管のほうが、明らかに共鳴周波数が下がっているのが分かります。

今回、長さ1.2mの直管の再現として、
長さ0.6mの音響管をつなげたU字管を用意しましたが、その前提が違うのかもしれません。

太さ400%のU字管の場合、共鳴周波数(50~60Hz)から計算する音響長は1.5mでして、これはU字管内の最短距離ではなく、U字管の折り曲げ部の奥を含めた距離がカウントされているとも考えられます。



音は最短ルートを通る、という常識とは異なる結果ですが、
今回の実験結果からは、そう考えるのが妥当でしょう。


3.の、中低域の暴れについては、以前からバックロードホーン製作界隈で噂となっていたことです。

ただ、この原因は一般的に「管の分割共鳴による」と考えられていますが、
今回の実験箱では、分割共鳴(141Hzや106Hz)は全く確認できません。

つまり、この中低域の暴れは、共鳴の変化ではなく、
コーナー部に特有な音響的干渉が原因ではないか、と考えられます。
(もちろん、それによって共鳴の変化が誘発されることもあるでしょうが、本当の原因は違うと思うのです。)



現実的なバックロードホーン型や共鳴管型スピーカーでは、避けて通れないU字管ですが、
今回の実験で、色々と興味深い挙動を確認することができました。

上記に挙げた3つの特徴は、あくまでも仮説にすぎません。
そもそも、直管とU字管の2条件の比較だけでは、明確な結論に達することは難しいでしょう。

次回は、U字管にすると「2. 共鳴周波数が下がる。」を、徹底的に調べてみようと思います!

[S-050] スピーカー再生技術研究会(21日)に発表する作品の紹介

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今日は、明後日の再生技術研究会OFF会で発表予定の、新作「S-050」の紹介をしようと思います。



S-050は、搭載するユニットに注目です。
先日紹介したRight-EAR製「C0607」を搭載し、平面ユニットならではの低歪な再生音を実現しています。



このユニットの構造は、音楽信号が通る電線が配されたフィルムを中心として、その前後に磁石を配したものです。



こうした独自の構造により、振動板全面が駆動点となり、分割振動が起こりにくくいことから、低歪な再生音を実現しています。
特に女性ボーカルは特筆すべきものがあり、澄み切った瑞々しいボーカルは、他では代え難いものがありました。

本方式は、1988年に「プロトロ」により開発され、2007年に設立の「Right-EAR」がこのライセンスを購入し、製品化に至っています。 Right-EARは、ユニット単体での販売のほか、ピロースピーカーやブックスピーカーなどの完成品も販売していますね。


一方で、エンクロージュアに注目すると、S-050はバックロードホーン型のエンクロージュアとなっています。
特徴的なのは、そのホーンの広がり方で下図のような広がり方となっています。


一般的なバックロードホーンは、「エクスポネンシャル曲線」に基づくホーン形状(点線)としますが、S-050では重低音に効くホーン後半部での広がりを穏やか(右図、実線)としたホーンにすることで、重低域まで効率的な増幅を実現しました。



<S-050の特性>
軸上1m 周波数特性


ユニット直前 周波数特性


ダクト直前 周波数特性


インピーダンス特性



「スピーカー再生技術研究会」の発表では、S-050の低歪な音を聴いて頂けるようなソフトをお聞かせできればと思っています!

[S-051] スピーカー再生技術研究会(21日)に発表する作品の紹介 2

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21日のスピーカー再生技術研究会OFF会では、なんと2台のスピーカーを発表します♪

一つは、先日お知らせした「S-050」。
そしてもう一つは、今日紹介する「S-051」です。



DigiFi誌 Vol.19(15年8月号)の付録、8cmフルレンジユニットを使った作品です。

カノン5Dの作品としては、珍しい密閉型で、
強固なエンクロージュアによる、素直な低音、粒立ちの良い中高音が特徴です。


内部は、逆ホーン構造が組み込まれていまして、
無駄な中低音を吸収し、クリアで明快な重低音再生を狙います。





板厚の影響を甘く見ていて、想像よりエンクロージュア内容量は小さいかと思います。(3L程度かな?)
それでも、比較的振動板が重い本ユニットは、十分な低音再生を実現してくれました。


<周波数特性(軸上1m)>


<周波数特性(ユニット直前)>


300Hz弱~1kHzのところに、ピークディップがあるのは、内部の逆ホーンの影響でしょう。
これを吉と考えるか、凶と考えるか・・・(汗)

<インピーダンス特性>



発表は、いよいよ明日なので、
いまから試聴曲&プレゼン内容を考えます!

[S-052] スピーカー再生技術研究会(27日)に発表する作品の紹介

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ヤマハが凄いスピーカーを出しましたが、
こちらも負けてはいられません。

新作「S-052 ツイン・ウィング」です。




ステレオ誌のコンテスト応募作なので、詳細は伏せますが、
27日の「スピーカー再生技術研究会」で鳴らそうと思います!


(21日の「スピーカー再生技術研究会(1日目)」の様子)

それでは、皆さまのご来場、お待ちしています♪

[S-048] 共鳴管の折り曲げ(音響距離)(解説編)

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大分、時間が空いてしまいましたが、「S-048」の続きです。

前回、U字型と直管の共鳴管を比較したときに、想定とは違った共鳴周波数となりました。



当初想定していたのは、最短距離の120 cmに相当する70Hz。つまるところ、直管と同様の周波数です。
しかし、実際の周波数は、50~60Hz。計算上は、150 cmに相当するものでした。
--この辺は、前回の日記を参照ください---


さて、そうなると、実際はどの辺を音は通っているのか。
まず、簡単に考えると、赤矢印のようになりますでしょうか。



実際は、上記イメージより少し短いルートを通るようですが、
少なくとも音道長は、最長距離に影響を受けると考えられます。

この仮説であれば、
次のような実験をした場合、共鳴周波数が仮説通り変化するはずです。



ダメ押しに、細いver.(振動板面積比200%)もやってみましょう。


さて、この結果はどうなるか?
次回の日記をお待ちください♪

[S-048] 共鳴管の折り曲げ(音響距離)(結果・考察編)

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今回は、前回説明した音響管の「音響距離」を実験結果から考察してみます。

「音響距離」とは、音響管の共鳴動作から逆算した距離のことで、
構造上の距離でなく、音波にとっての距離という意味です。

実験としては、下記の二つ。





ユニットは、FOSTEXのP1000Kを使用しまして、
振動板面積に対し、400%(10×20cm)と200%(10×10cm)の音響管でテスト

します。折り返しの構造という不確定要素を含むため、どのような音響距離が表れるか注目です。

では、結果です。
<周波数特性、400%>


<インピーダンス特性、400%>


<周波数特性、200%>


<インピーダンス特性、200%>


まずは、共鳴周波数から考察してみます。
仮説では、最長距離に相当する共鳴周波数(=音響長)となる、、、と考えました。


このように比較すると、確かに折り返し端を移動させることで、それと相関があるように音響長が変化します。

一方で、「音響長=最長距離」という訳でもなく、
管の構造により、若干の差異があるようです。


さらに、面白い発見がありました。
折り返し部を広く(a/b=100%→200%)していくと、管から出力される音の、倍音成分がかき消されていくように見えるのです。

実際に、音響管の出口で音を聴くとそう聞こえるので、グラフにして見てみましょう。




基音(1倍振動)を0dBとして、各倍音の音圧を示しましたが、
やはり、a/b(折り返し部のゆとり)が大きいほど、倍音が減衰しているように見えます。

おそらく、折り返し部での干渉などが原因でしょう。
以前から「(90°折り返しでなく)180°折り返しが多いほど低音が出る」「折り返し部は、R(コイル)の効果があり、高音を減衰させる」といった話がありましたが、今回の実験でそれが確認できたといえます。



今回の実験で、折り返し構造について大分理解が進んできました。

次回は、「折り返し構造を変えて音響距離が伸びた場合」と「本当に管を伸ばした場合」で、どう特性が違うか確認してみましょう。

[S-050] Right-EAR製ユニットのサウンド [動画]

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先日紹介したS-050の動画を作成しました。

S-050は、Right-EAR製のスピーカーユニット「c0607」を使用したスピーカーシステ?ムです。
独自の駆動方式をもつ平面振動板ユニットは、分割振動が極めて少ないことから低歪かつ?情報量豊かな再生音が特徴です。

動画を撮っているときも、聴き慣れた試聴曲から見事な情報量を引き出してくれました。

S_050 ×c0607 (Right-EAR)


[S-049]Fostex FE83En との戦い (ミューズの方舟 コンテスト2015)

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いよいよ、秋の自作スピーカーイベントのトリともいえる「ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2015」が近づいてきました!



公式ブログ


コンテストで使用するユニットは、FOSTEXの「FE83En」です。
長岡先生時代からある、FOSTEXを代表する8cmユニットだといえます。


試しに、共鳴管箱「S-049」に装着してみると、、、、
あれ?低音が出ない(笑)


ステレオ誌付録のP1000では、地を這う重低音を鳴らしていた「S-049」ですが、
FE83Enでは、ウンとも言いません。

試しに、ユニットのインピーダンス特性をとってみました。


エージング前ではありますが、流石にf0=200Hzは厳しいです。
とは言いつつも、カタログスペックですらf0=165Hzなので、まあ妥当なところでしょうか。

m0=1.53gという超軽量コーンなので、
支持系のちょっとした変化でも、大きくf0が変わってしまうのかもしれません。



そこで作製したのが「S-052」。
内部構造を可変として、試作機としての役割を期待します。

11/29(日)のミューズの方舟のコンテストに向けて、
「S-052」で得られた情報を、本ブログで書いていこうと思います。 
(もちろん、実験機S-048のこと忘れてませんよ!)

音展2015(オーディオ・ホームシアター展 2015) スピーカーレビュー 前編

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昨日、「音展2015(オーディオ・ホームシアター展 2015)」に行ってきましたのでレビューをしようと思います。
もちろん、カノン5D視点のスピーカーが中心の(変態的ではない?)レビューです!


まずは、必聴の3ブランドから。

<ファルコン株式会社(FalconLab)>(2F 201)
http://falconlab.jp/index.html




今回の音展の正に大穴。
ホーン型と無指向性を上手く組み合わせた方式のスピーカーで、圧倒的な存在感と臨場感が両立しています。ホーン型に付随するであろう癖っぽさは微塵も感じさせないのが見事です。

小型のModel201は、瞬発力のある小口径ウーハーがホーンとのマッチングを見せます。小口径とはいっても20cmあるので、中低域の厚みもGOODです。

大型のModel707は、レンジが20Hz付近まで伸びる大型機サウンド。壮大なスケール感には、ただ圧倒されるばかり。大音量再生でも全く濁ることのない再生能力も素晴らしかったです。


<TAD (音源出版)> (1F HALL1)




定番のスピーカーながら、やはり崩れぬ盤石さがあります。
音を再生することにおいて、全く非の打ちどころがなく正に完璧です。デザイン的な存在感もさることながら、音を出せば他の追随を許さないハイエンドサウンドです。自動車でいうF1的存在かもしれません。

もちろん、「感情表現が・・・」とか「リラックスして聴けない・・・」とか思う節もありますが、それはそれ。F1に「静かさ」や「乗り心地」を求める人はいないでしょう。

スピーカービルダーのカノン5Dにとっては、まさに「絶望」的存在。聴くたびに、越えられない壁を感じてしまうのです。


<六本木工学研究所>(2F 205)




海外の高級ユニットを使ったスピーカーを展示していました。
名機のユニットを集めたところで、その音にはならないのは百も承知ですが、ユニットのパフォーマンスの高さは見逃せないものがあります。

今回はScanSpeakやSEASのユニットを使用したスピーカーでした。
ハイエンドスピーカーと言うにはエンクロージュア設計の甘さを感じましたが、他のブースでは聞けないダイナミックなサウンドは圧倒的なCP比だといえます。
高品位なユニットをシンプルに鳴らす好例のような作品で、安価なアンプでも駆動しやすいことはユーザーにとっても嬉しいことでしょう。


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音展は、まだまだ他にも沢山のスピーカーが来ていました!
ここでは定番のスピーカーを先に紹介します。

<PENAUDIO(SPEC)>(2F A)


欧州の高級スピーカーとして、よく見かける「SALA S」です。
やはり上品な音で心惹かれるものがありますね。

<MAGICO(完実電気)(オヤイデ電気)>(1F HALL3)(2F H)

トールボーイ型の「S3」は、完実電気ブースで発見しました。
アルミの重量級筐体からは、全く無駄な音が出ません。音が出て、消える瞬間が見事に聴こえてきます。こうなると、ちょっぴり木材の音が恋しくなったり!?


小型ブックシェルフの「Q1」は、オヤイデ電気にありました。
こちらは、素晴らしい鳴りっぷり。MAGICOは無色透明なぶん、アクセサリーでの使いこなしがポイントになるのかもしれません。


次回は、音展で見つけた「新しい出会い」を紹介します!

音展2015(オーディオ・ホームシアター展 2015) スピーカーレビュー (後編)

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音展のようなオーディオショウでは、馴染のない製品も聴くことができる機会だといえます。

レビュー後編となる今回は、
私自身、初めて聴いたスピーカーを取り上げてみようと思います。

<DIASOL>(2F C)


三菱電機「DIATONE」の流れをくむハイエンドスピーカー「DIASOL i」。
4機搭載された「B4C」ツイーターは、他のダイヤモンドやベリリウムでは聴けないサウンドを放っていました。硬さだけでなく内部損失が高いせいか、よりピュアで力強い高域となっています。あえて言えばセラミックスツイーターに近い雰囲気かもしれません。

ミッドとウーハーは独自素材のものでしたが、ちょっとツイーターの存在感に追随できていない感じです。特に、デジタルアンプで駆動されるウーハーは、いかにも「サブウーハー」という感じの音なので、好みが分かれそうです。(コンパクトながら20Hz台のサウンドが出るのは凄いのですが)

値段としてはペア1000万円ですが、この存在価値は「B4C」ツイーターになるのではないでしょうか。DIATONEの中古品は割れやすい素材ゆえに流通量も限られていますし、カノン5Dのような「DIATONEを知らない子供たち」が増えていくなかでは技術遺産的存在価値があるスピーカーだと思いました。


<Technics>(3F北3)


復活して話題になっていたTechnicsですが、ようやく聴くことができました。


平面同軸振動板をもつ「SB-R1」は、シームレスで癖のない音色。この雰囲気は当時のフラッグシップ「SB-M10000」を思い起こさせるものがあります。ちょっぴり奥まった表現が気になりましたが、吸音材の量を調整すれば大丈夫でしょう。

現代的な要素は、ウーハーの解像度です。今回は新製品のプリメインアンプで駆動されていましたが、締まりのある低域はライバルのTAD「E1」に負けていないかもしれません。

<Focal、B&W(逸品館)>(西7)


圧倒的な物量は、このショウへの意気込みを感じさせるものでした。

Focalは、Electra 「1028BE」と「SOPRA」を聴くことができましたが、フリースタンディング設置であった「1028BE」のヌケの良いサウンドが印象的でした。
B&W「804 D3」は完全に「かませ犬」状態でしたが(?)、やや音に硬さがある印象です。以前のDiamondシリーズの方が、しなやかさを感じることができるのはエージングのせいでしょうか?

ここの素晴らしさは、プレゼンの上手さです。
職業柄というのもあると思いますが、他のブースでは何を言っているのかすらわからない、終始音楽の説明をしていて機材の特徴すら分からないという惨状のなか、一線を画するものがありました。


<花田スピーカー研究所>(2F B)


こちらも素晴らしいプレゼン、、、というか「B&W 805Dとの対決」という強烈なデモでした。
私の感覚ではB&Wのほうが優勢だったように感じましたが(汗)、デモの意気込み、意図するポイントは明確に伝わってきました。デモのために、リアルタイムで切り替えるシステムを作ってしまったりと、もはや脱帽ものです。


<デイプラネット>(2F 205)
(写真はPhile-web記事より)

特徴的なスピーカー「jazzman」を発表。ブックシェルフタイプのサイズ(奥行きは20cmぐらい?)の後面解放箱なのに、野太い低音が出てくる・・・という、摩訶不思議なシステムです。
聴くことができたのは数分でしたが、煙っぽいJAZZの雰囲気は見事だと思いました。


<Teragaki-Labo>(2F 201)


こちらもチョイ聞きでしたが、独特の雰囲気のスピーカーです。
従来のスピーカー評価軸ではただのナローレンジなのですが、本機の魅力はもっと他にありそうです。

<WRAPSOUN>(2F 205)


8角形の形状をもつスピーカー。
時間のため、チョイ聞きしかできず。

<AZISound>(2F E)


面白い形のスピーカー。「CUE」は無指向性タイプで、超柔らかいサウンドです。ベッドサイドに置いておきたい一品でしょうか。



まだまだ面白いスピーカーがあったようですが、
見聞きできたのは、これで全てです。

特設会場でポンと置いても、実力の5割、いや2割程度のサウンドになってしまうのは私も経験済みで、出展社の皆さんもさぞかし苦労されたかと思います。

そんな中で、やはり「プレゼン」は大切だとカノン5Dは思っています。どういう意図で設計して、どういう再生音で、どういう音楽で聴いて(驚いて)ほしいのか。せっかく技術の方がいらっしゃっているのだから、もっとアピールして欲しいものです。

この音展は平均年齢も若く(40才ぐらい?)、また来年も活気のあるオーディオショウを期待することが出来そうです。

音展2015(オーディオ・ホームシアター展 2015) スピーカーレビュー -終-

[S-049] ステレオ誌コンテスト応募作、全容公開!(1/2)

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ステレオ誌のコンテストの結果も、先日には分かってきていまして、
カノン5Dは見事「落選」してしまいました(笑)

反省するところは多々ありますが、
まずは、今まで余り話してこなかった応募作「S-049 ツイン・ウィング」について紹介したいと思います。

第1回目となる今回は、「ツイン・ウィング」の技術的特徴について説明しようと思います。

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「ツイン・ウィング」は、P1000 1発から最高の音を引き出すために設計されたエンクロージュアです。本作には、下記の3つの技術を採用しています。



1.「デュアルフレーム・エンクロージュア」
2.「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」
3.「桧アンカー」

1.「デュアルフレーム・エンクロージュア」について。
 「ツイン・ウィング」の特徴的な形状は、音響特性を最優先にして設計した「デュアルフレーム・エンクロージュア」を搭載しているためです。本技術は、二つの効能をもつ構造から構成されます。
 一つめは、外観にも表れる「アウターフレーム」です。従来の箱型のエンクロージュアの場合、バッフル端の90°コーナーで音波が反射し、音を濁していました(図1-1左)。「アウターフレーム」は、外側を変形五角形とすることで、バッフル端の影響を軽減します(図1-1右)。これにより反射波の影響が少なくなり、低歪な音、広大な音場の表現に貢献します。
 二つめは、内部構造の「インナーフレーム」です(図1-2)。複雑に組まれた本構造は、内部すべてが三角形で構成されます。これは、音を濁す定在波の原因とされるエンクロージュア内部の平行面を排除するとともに、「トラス構造」による箱強度の向上を狙ったものです。これらは音の混濁を低減する効果があり、大編成オーケストラも低歪かつ鮮明に鳴らすことができます。
 「ツイン・ウィング」は、この二つのフレーム構造を一つの筐体に収める合理的な構造としています。これは板取りの効率化のみならず、構造の単純化による付帯音低減にもつながっています。

図1-1 
図1-2 

2.「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」
 一般的な共鳴管型スピーカーからは、音響管による増幅として、最低音の基音のほか、その3倍の周波数の3倍音、その5倍の5倍音などが付随して出てくることが知られています。これにより共鳴管は幅広い帯域の低音を増幅できますが、特に基音と3倍音の間には3オクターブもの開きがあり、それが「低音の癖」として認識される欠点がありました。
 そこで本作に搭載した「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」は、管の途中で大きく断面積を変えることで、まるで長さの異なる2本の共鳴管が双方の欠点を埋めるような動作することを狙います。
具体的には、ユニットから1mの位置で音響管の断面積を約3倍に一気に広げることで、長さが約1.5 mの部分共鳴(管全長2.6m-1.0m)を新たに発生させます(図1-3)。なお、この部分共鳴の発生には、「2倍以上の断面積」に管を一気に広げることが大切です。長岡式共鳴管にあるような、2倍以下の小さな広げかたでは部分共鳴を励起することはできません。
この部分共鳴が実際に起こっているかは、本作のインピーダンス特性(図1-4)で確認することができます。管全長2.6mに由来する40Hzと120Hzのディップ(共鳴点)のほか、長さ約1.5mの部分共鳴に由来する60Hzと180Hzのディップも発生していることが分かります。
本技術を搭載する「ツイン・ウィング」は、風圧を感じる大太鼓の響き(超低域)から、スピード感に溢れるウッドベース(中低域)までシームレスな再生が可能となりました。また、共鳴点が複数に分散しているため、吸音材をほぼゼロにしても付帯音を感じないメリットも生じ、生き生きとした音楽表現が可能となっています。

図1-3 
図1-4 

3.「桧アンカー」
 スピーカーユニットは、音を出し終えた後も、自身の固有共振による残響音を発しています。これは、スピーカーユニットが金属やフェライト磁石など、内部損失が低い素材で作られているためだと考えられます。
 本作では「桧アンカー」として、磁気回路の後部に「桧(ヒノキ)」の木片を貼りつけています(図1-5)。磁気回路(金属)と桧(木材)をハイブリッドさせることで、双方の固有振動の違いから固有音を低減することを狙いとしています。
この効果は非常に大きく、ボーカルは瑞々しくピンポイントに定位し、中低音はコシの強さを感じるものとなりました。さらに、中高域の付帯音が抑制されたためか、最低域の存在感も確かなものへと変化します。これらの効果は、スピーカーユニットを特殊な構造で強固に固定したものと似ていますが、「桧アンカー」は非常に簡便な方法で、同様の効果が得られるのが特徴です。

図1-5 

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地味な技術ではありますが、それぞれ明確に音質を向上させてくれるものです。
次回は、具体的な設計図と、そのサウンドを聴いて頂きたいと思います!



~~オマケ~~
11/30のミューズの方舟自作スピーカーコンテストに向けて製作中の「S-054」。
ユニット周囲のバッフルをグリッと削り、背面の音の流れをスムーズにする加工としました♪

[S-049][Youtube動画] ステレオ誌コンテスト応募作、全容公開!(2/2)

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「S-049」の第二弾です。
まずは、再生音を動画でお楽しみください!

SONYのPCMレコーダー「PCM-D50」での録音(Youtube動画ではMP3 320kbps)ですが、S-052のワイドレンジかつ低歪な音が確認できるかと思います。
特に、ウッドベースの明確な音階は聴きどころです!

S-052「ツイン・ウィング」 (2015年Stereo誌付録 Fostex P1000)



測定結果&内部の設計は、こんな感じです。

<周波数特性 軸上1m>



<周波数特性 ダクト直前>


<周波数特性 ユニット直前>


<インピーダンス特性>



<内部構造>





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さて、ミューズの方舟コンテストでの発表用作品「S-054」も、順調に製作が進んでいます。
今日の写真はフロントバッフルです。


最近は、「マホガニー(赤)」と「ウォルナット(こげ茶)」を混ぜて色を作ることが多いですが、
今回のS-054は、S-049と比べてより深みのある色となるよう調合しています♪

feastrex試聴室へ行ってきました

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今日は、山梨にあるfeastrex(フィーストレックス)の試聴室に行ってきました。

最寄の穴山駅は、山梨甲府から電車で長野松本方面に向かって数駅のところにあります。
(特急の止まる韮崎駅も、大通りを通って試聴室へアクセスでき、関東から向かうときはオススメかもしれません。)



今回は、秋山社長に迎えに来て頂き、本社内の試聴室まで快適に行くことができました。お忙しいなか時間を作って下さり、感謝感謝です。


私がfeastrexのスピーカーを知ったのは大学生の頃。
八王子の家具屋横のログハウス(現在オーディオショップは閉鎖)で聴いたのが出会いでした。自作スピーカーを始めたばかりのカノン5Dにとって、feastrexのスピーカーは衝撃的なものでした。

それから、5年。社会人になり、懐事情も変わってきた(?)今となり、ようやく伺うことができました。



本社の一角を占める試聴室には、feastrexの大小様々なスピーカーが並んでいました。
再生系はfeastrexを鳴らすために研ぎ澄まされたものながら扱いやすく、ほぼ自由に聞かせていただくことに。

まずは、漆職人の田中氏作製の「やくの」から。
長岡ネッシーを連想させる本機には、美しい漆塗装がされています。



搭載されるユニットは、NF5-ex。
磁界の流れに基づく磁気回路は、実に美しい仕上がりです。feastrexの励磁型(電磁石搭載)ユニットの最廉価モデルながら風格充分です。



サウンドは、一般的なフルレンジの良さを持たせつつ、楽器のように豊かな響きを感じさせるものでした。共鳴管を用いた低音増幅を行う本機は、12cmフルレンジであっても音楽の低音再生は十分なものがありますした。

feastrexの特徴ともいえる励磁型は、現在では珍しい形式です。フェライトやアルニコと比べても遥かに透磁率が高い素材を電磁石で磁石化することで、優れた制動力に基づく浸透力のあるサウンドを得ることができます。


(許可を頂いて掲載しています)

特に、秋山氏のオススメは、磁気飽和しない励起電圧で使うことだとか。確かに試聴すると、磁気飽和させた状態(一般的なスピーカーもこっち)では、音が平面的になり、せっかくの教会録音の音楽も雰囲気台なしなのです。


この磁気回路に「バーメンジュール」を用いたのが、こちらの製品。



バスレフ型の存在感のあるキャビネット(奥行きは薄い)に、上級機となるD5e-TypeIIIが搭載されています。なお、このユニット重量は6.1Kgというモンスター級。

こちらは周波数レンジも広がり、一層透明度の高いサウンドを聴くことができました。楽器の解像度や音数の多さは、まさにハイエンドオーディオ級ですが、フルレンジならではの自然さも感じられ上級機に相応しいサウンドです。

これらのユニットに使われている振動板は、人間国宝の岩野市兵衛氏による手作りのもの。



一般的な紙コーン(パルプ原料)とは異なり、和紙は長繊維がランダムに分散しているのが特徴とのこと。



和紙といっても、頑強なもので手でちぎれないほどの強度があります。
ハサミで切り込みを入れて引き裂くと、長い繊維が複雑に絡み合っているのがよく分かります。先端素材ではありませんが、和紙は振動板素材の理想系かもしれません。
この伝統の和紙作りも、次の担い手に伝授されるとのことで、今後も振動板の供給体制は心配無用のようです。


ここで、一発、アニソンも聴いてみました。


「Key+Lia Best 2001-2010」から何曲か聞きましたが、最高級フルレンジならではのボーカルの瑞々しさは他では得難いものを感じることができました。さらに、奥行き表現が素晴らしく、実態感溢れるサウンドステージも印象的でしたね。


さて、ラストは9インチ(22cm)の口径をもつ試作ユニットの試聴です。
大きな本体からは、楽々と30~40Hz台の音が放出されます。まさに大型機に相応しいサウンドですね。



大口径フルレンジは、ビンテージなイメージが強いですがfeastrexは別物です。高域は十分に伸長し、先ほどの5インチ(12cm)口径とも張り合えるハイの伸びを持っています。本当に見た目と違うワイドレンジな音が出てくるので、不思議な感覚すら覚えます。

超弩級の磁気回路と軽い振動板の組合せは、和太鼓の再生で圧倒的なパフォーマンスを見せてくれました。ウーハーの重い重低音で現実とは掛け離れた和太鼓を奏でるオーディオが99%のなか、正にリアルな和太鼓サウンドを奏でているのがfeastrexの9インチでした。以前和太鼓を習っていたカノン5Dにとって嬉しい体験でした。

そんなユニットに対しても、厳しい目を向け、次なる改善を考えているという秋山氏。feastrexのスピーカーユニットは、常に進化を続けるとのことで、これからも楽しみなカノン5Dです。

他にも、沢山の面白いお話を聞くことができました。自宅から簡単に行ける距離ではないですが、またぜひ伺いたい場所になりました。秋山さんには、お忙しいなか駅まで送って頂き、無事帰路につくことができました。

- feastrex訪問記 完 -

[S-054] ミューズの方舟 出品作「83Diamond」の紹介(1)

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11/29のミューズの方舟コンテストの出品作「83Diamond」が完成しました!

まずは、その姿を見ていきましょう。




丸のこを用いて作製した本体は、特徴的なデザインにつながりました。







さて、この「83Diamond」という命名は、
FOSTEXの8cmフルレンジ「FE83En」を使用していること、
Diamondのような、特徴的なルックス、最上級のクオリティを願ってつけられました。


この83Diamondの音色イメージを図にすると、こんな感じでしょうか。


それぞれの特徴は、投入技術に基づくものとなっており、
これから順々に説明していこうと思います。


まず、歪感を除去するために実施した「45°カット」。
特徴的な外見からも、すぐ分かるポイントです。

これは、非常に古典的なもので、
着想はオルソンの著書に基づくものです。



斜めカットは、非常に難易度が高いものですが、
念願の「丸のこ」を入手してトライしてみました!



上記のイメージ図に示したとおり、再生音は、歪を極限まで減らしたものとなりました。
大音量でも煩くなく、小音量でも細部が聞こえる、これは新しい体験です。

市販スピーカーでは、曲面エンクロージュアが当たり前の現代ですが、
自作スピーカーだって、負けてはいられないのです。




さて、残る搭載技術「ハイブリッドレゾナンスチューブ」「桧アンカー」については、次回をお楽しみに!
(追記 S-053は、ブログ未公開の「S-054の試作機」です。)
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