今回は、上図②の「後ろから磁石を支える」タイプについて見ていきます。
パターン② 後ろから磁石を支える。(パイオニア)
下から伸ばした支柱に、磁石を支えるような役割を持たせる方法は、1980年代後半からパイオニアが「ミッドシップマウント」と称して、継続的に採用していました。
その固定方法は様々なのですが、木材を使った「S-99Twin」、金属を使った「S-3000」があります。
「S-99Twin」
参考:https://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/speaker/s-99twin.html
「S-3000」
参考:https://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/speaker/s-3000.html
他にも「EXCLUSIVE S5(1989年)」「S-5000Twin(1990年)」「S-HE100(1992年)」「S-07(1995年)」といったスピーカーシステムに、「ミッドシップマウント」の表記が見受けられます。
2000年に発売された「S-AX10」では、ミッドシップマウントという文言ではなく「各ユニットはエンクロージャー後方から固定されており...」という記述がありました。
画像を見る限りでは、主な固定は前側のフレームのネジ止めであり、スピーカーユニットの後ろ側にダンピング材を接触させて制振をする、とい手法であると思われます。
「S-AX10」
参考:https://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/speaker/s-ax10.html
このように、パイオニア社は1980年代後半から2000年頃まで、スピーカーユニットの後方を支持する手法に熱心に取り組んできました。
しかしながら、同じ2000年に発売された「S-PM2000」では、一般的な【フレームをねじ止めする】固定方法に戻っています。
酒樽の響きを生かしたピュアモルトシリーズでは、頑強にユニットを固定する必要がなかったのかもしれません。
これ以降は「S-1EX」「TAD M1」といったハイエンドスピーカーでも、スピーカーユニットの固定に特別な所作は見受けられません(※)。両者とも、ハイエンドスピーカーらしい十分な肉厚をもつエンクロージュアになっており、特別な固定方法をとらなくても音質上の問題がなかったものと思われます。
(※TAD M1の中高音域を担当する部分はフローティング)
パターン② 後ろから磁石を支える。(デンソーテン)
タイムドメイン理論を重視するデンソーテンの卵型スピーカーでは、「グランドアンカー」と「ディフュージョンステー」を組み合わせることで、後ろから磁石を支えています。
参考:https://www.eclipse-td.com/products/td510zmk2/index.html
スピーカーユニットに十分な質量をもつアンカーを接触させ、振動を抑え込むことを狙いとした構造です。さらに、それを支える「ディフュージョンステー」は、スピーカーユニットだけでなくキャビネットをも支持をする部材になっており、振動の流れをシンプルにしています。
よく見ると、ユニットに接触する金属部品(黄色)が丸みを帯びているように見えます。これは、鉄製のグランドアンカーと磁石を適度に離すための構造と思われます。素材は加工性や振動特性に優れた「鉄」とのことですが、これがスピーカーユニットに近づきすぎると、その磁力線を引き寄せてしまう問題が起こります。
かつての最上級機「TD712zMk2」では、磁石と接触する支持部分をSUSやアルミ部材に変える対策をしていました。
https://www.denso-ten.com/jp/gihou/jp_pdf/53/53-2.pdf
このように、デンソーテンの卵型スピーカーの場合、スピーカーで発生する全ての振動を「ディフュージョンステー」に集めて、床に放出することが特徴にしています。フルレンジというシンプルな構成だからこそできた理想的な構造だといえるでしょう。
序盤で紹介したパイオニアの「S-99Twin」や、デンソーテンの卵型スピーカーを聴く機会がありましたが、どちらもナチュラルで質感豊かな低音が印象的でした。
凝った構造の割には、音の押し出し感(ゴリッとくる感じ)が強いわけではないので肩透かしを食らってしまう感じもありますが、中高域から低音域まで全体がしっかりと制動されているための音と思われます。良くも悪くも、整った音という印象を抱いています。
次回は、同じ後ろから支持する方法でも、少し変わった方法を紹介します。どうぞお楽しみに!
ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。
パターン② 後ろから磁石を支える。(パイオニア)
下から伸ばした支柱に、磁石を支えるような役割を持たせる方法は、1980年代後半からパイオニアが「ミッドシップマウント」と称して、継続的に採用していました。
その固定方法は様々なのですが、木材を使った「S-99Twin」、金属を使った「S-3000」があります。
「S-99Twin」
参考:https://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/speaker/s-99twin.html
「S-3000」
参考:https://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/speaker/s-3000.html
他にも「EXCLUSIVE S5(1989年)」「S-5000Twin(1990年)」「S-HE100(1992年)」「S-07(1995年)」といったスピーカーシステムに、「ミッドシップマウント」の表記が見受けられます。
2000年に発売された「S-AX10」では、ミッドシップマウントという文言ではなく「各ユニットはエンクロージャー後方から固定されており...」という記述がありました。
画像を見る限りでは、主な固定は前側のフレームのネジ止めであり、スピーカーユニットの後ろ側にダンピング材を接触させて制振をする、とい手法であると思われます。
「S-AX10」
参考:https://audio-heritage.jp/PIONEER-EXCLUSIVE/speaker/s-ax10.html
このように、パイオニア社は1980年代後半から2000年頃まで、スピーカーユニットの後方を支持する手法に熱心に取り組んできました。
しかしながら、同じ2000年に発売された「S-PM2000」では、一般的な【フレームをねじ止めする】固定方法に戻っています。
酒樽の響きを生かしたピュアモルトシリーズでは、頑強にユニットを固定する必要がなかったのかもしれません。
これ以降は「S-1EX」「TAD M1」といったハイエンドスピーカーでも、スピーカーユニットの固定に特別な所作は見受けられません(※)。両者とも、ハイエンドスピーカーらしい十分な肉厚をもつエンクロージュアになっており、特別な固定方法をとらなくても音質上の問題がなかったものと思われます。
(※TAD M1の中高音域を担当する部分はフローティング)
パターン② 後ろから磁石を支える。(デンソーテン)
タイムドメイン理論を重視するデンソーテンの卵型スピーカーでは、「グランドアンカー」と「ディフュージョンステー」を組み合わせることで、後ろから磁石を支えています。
参考:https://www.eclipse-td.com/products/td510zmk2/index.html
スピーカーユニットに十分な質量をもつアンカーを接触させ、振動を抑え込むことを狙いとした構造です。さらに、それを支える「ディフュージョンステー」は、スピーカーユニットだけでなくキャビネットをも支持をする部材になっており、振動の流れをシンプルにしています。
よく見ると、ユニットに接触する金属部品(黄色)が丸みを帯びているように見えます。これは、鉄製のグランドアンカーと磁石を適度に離すための構造と思われます。素材は加工性や振動特性に優れた「鉄」とのことですが、これがスピーカーユニットに近づきすぎると、その磁力線を引き寄せてしまう問題が起こります。
かつての最上級機「TD712zMk2」では、磁石と接触する支持部分をSUSやアルミ部材に変える対策をしていました。
https://www.denso-ten.com/jp/gihou/jp_pdf/53/53-2.pdf
このように、デンソーテンの卵型スピーカーの場合、スピーカーで発生する全ての振動を「ディフュージョンステー」に集めて、床に放出することが特徴にしています。フルレンジというシンプルな構成だからこそできた理想的な構造だといえるでしょう。
序盤で紹介したパイオニアの「S-99Twin」や、デンソーテンの卵型スピーカーを聴く機会がありましたが、どちらもナチュラルで質感豊かな低音が印象的でした。
凝った構造の割には、音の押し出し感(ゴリッとくる感じ)が強いわけではないので肩透かしを食らってしまう感じもありますが、中高域から低音域まで全体がしっかりと制動されているための音と思われます。良くも悪くも、整った音という印象を抱いています。
次回は、同じ後ろから支持する方法でも、少し変わった方法を紹介します。どうぞお楽しみに!
ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。