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ひのきスピーカー設計 ~第二世代~

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前回に引き続き、ひのきスピーカーの歴史を振り返ってみます。

今回紹介するのは、「第二世代」と呼べる設計になっている
「Concept-SOLA」と「TOYONE」です。

※Concept-SOLA、TOYONEは生産終了しています。
 現在の「ひのきスピーカー」のラインナップはこちら




Concept-SOLA "コンセプト ソラ"



Concept-SOLAは、小型の2wayスピーカー。
ブックシェルフ型ですが少し縦長の本体が特徴です。

様々な特徴がある本作ですが、
ここでは、ひのき材の扱いにフォーカスしてお話しします。



Concept-SOLAのスピーカー箱には、
15mm厚の ひのき材を使っています。

これは、25mm以上の板厚を誇る「第一世代」と比べると、
控えめともいえる値です。


(写真)15mm厚の側面板を接着している様子

前回の日記で説明したように、
「第一世代」のひのきスピーカーでは、
板を厚くしすぎたため、中高音域に「キンキン」としたクセがありました。

特にエレキギターが耳障りに聞こえてしまい、
様々なジャンルの音楽を大音量で鳴らせるとは言えないものでした。。


そこで、このConcept-SOLAでは
あえて板厚を薄くし、硬質な響きが無くなるように設計しています。



しかしながら、単に板厚を薄くするだけでは強度不足になってしまいます。

音が出ているスピーカーの内部には、音による非常に大きな応力がかかっており、
強度が不足すると、スピーカーが過度に振動してしまい、濁った音になってしまうです。


そこで、Concept-SOLAでは、左右の板にアルミの部材を通し、
箱を補強する設計にしています。

  


この補強部材の効果は抜群でした。
強度を高めつつも、全体が厚い板材で構成されていた第一世代のような癖は感じられず、強度アップの恩恵でもある「透明度の高さ」「明確な低音音域の表現」が手に入ったのです。


こうしてConcept-SOLAは、音の透明度が高く、音場が広がりが綺麗な音でありながら、深々とした低音も奏でられるスピーカーになったのです。





もちろん、無垢ひのき材による豊かな響きも健在です。
女性ボーカル曲では、澱みのない凛としたボーカルが逸品だったのを思い出します。



(2018年の真空管オーディオフェアにて)


カーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」では、
甘美な音色のギターイントロに始まり、艶やかなボーカルが心地よいと評判でした。



※Concept-SOLA、TOYONEは生産終了しています。
 現在の「ひのきスピーカー」のラインナップはこちら




TOYONE "トヨネ"



「TOYONE」は、少し大きめの10cmフルレンジを搭載した ひのきスピーカーです。

先ほど紹介した「Concept-SOLA」が定価20万円を超える価格かつやや縦長のフォルムであったので、より安価でコンパクトなモデルとして「TOYONE」は設計されました。






この「TOYONE」も、第二世代ひのきスピーカーの特長である、比較的薄い「15mm厚」の ひのき板で作られています。

そして、スピーカー内部に金属の補強フレームを装備していることも、先ほどのConcept-SOLAと同様です。




「TOYONE」は、ひのきスピーカー史上、最も豊かな響きをもつスピーカーだと思います。

全ての部材が15mm厚(※背面は12mm厚のフィンランドバーチ合板)で構成されており、芳醇なひのきの響きの源になっていました。



(製作中のTOYONE)


しかし、「TOYONE」の芳醇な響きは、試作機の段階では欠点も併せ持つものでした。

特に、中低域の響きが特定のポイントで制動できなくなり、
ボンついた音が出てしまったのです。


これは「第一世代」で悩まされたキンついた中高音の響きではなく、
チェロの帯域、つまり中低域の過剰な響きとして現れてきました。

板厚を薄くしたことにより、共振周波数が中高域から中低域にシフトしましたが、その「共振の制御」という点では、まだまだ未熟だったのです。


この中低域の付帯音の対策には、相当苦労しました。
「響きを殺さずに、付帯音を減らす」ために、試行錯誤が続いたことを思い出します。


(箱の一部分に荷重をかけ、振動特性を変える実験)


(電気的なフィルターで改善を図る実験)



最終的には、補強構造の見直しをすることになりました。
まずは、箱の開口部から手の届く範囲を変化させてみます。




どんな部材が効果があるのかが分かってきたところで、新たな構造を設計図におこしていきました。(製品版は、こちらの構造です)








スマートな外観の「TOYONE」でしたが、箱の響きという点では難易度が高く、非常に苦戦した作品でした。

無数の試行錯誤が必要な開発でしたが、今から思うと振動特性について多くのノウハウが手に入ったのは収穫だったといえるでしょう。




豊かな響きと、フルレンジの点音源を併せ持つ「TOYONE」。
クラシックはもとより、J-POPSなどの音源を心地よく聴かせてくれる能力があったことを思い出します。

録音が悪くて、ちょっと鳴らすのが難しい音楽も、
TOYONEで聴くと、楽曲の旨味を上手く引き出してくれました。


様々な音楽への対応幅が広がると、日常生活に溶け込んだ使い方ができるようになり、音楽リスニングはもちろん、映画鑑賞用のスピーカーとしても長らく重宝したことを思い出します。

 

※Concept-SOLA、TOYONEは生産終了しています。
 現在の「ひのきスピーカー」のラインナップはこちら





まとめ

「第二世代」のConcept-SOLAとTOYONEは、
薄い板厚で ひのき固有の癖を和らげつつ、金属補強により箱の強度を高めたことが特徴です。

しかし、その大きな変化に翻弄されたのもまた事実です。
「補強構造をどう作るか」という新たな課題が出てきたのです。

単に「ひのきで作る」というだけでなく、「振動特性をコントロールする」という領域に踏み入れたのが、Concept-SOLAとTOYONEの存在意義だと思っています。



(2019年 秋のヘッドフォン祭での「TOYONE(左)」と「Concept-SOLA(右)」)



次回の日記で紹介する最新の「第三世代」の ひのきスピーカーでは、
「第二世代」で確立した技術をさらに磨き上げたものになっています。


どうぞお楽しみに。




ひのきスピーカー「SOLA Mk2」の詳細はこちら。



ひのきスピーカー SOLA Mk2 試聴動画(女性Vo.&ベースギター)








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