今日は、共鳴管型スピーカーの共鳴をコントロールする方法について説明しようと思います。
以前にちょっとお話ししたように、共鳴管はそのままでは500Hz~1kHzの中域までを増幅してしまう特性があります。
ハイ上がりなユニットに対して中域からの音圧が欲しい長岡型共鳴管とは異なり、この連載で対象としている一般的なユニットにとっては「低音だけの増幅」という特性が必要です。
そこで、何らかの形で中低域~中域を抑え込まなければなりません。
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吸音材を使う
これは非常にシンプルで、吸音材を使用して共鳴を止める方法です。
とくに、MJ誌などで活躍されている小澤隆久先生が提唱しているのは「共鳴管のユニット付近に吸音材を入れる」という方法です。
これは、基音での共鳴と、倍音での共鳴では、異なる位置に『共鳴の腹』ができることを利用したものです。
共鳴の腹では、空気が大きく振幅しており、そこに抵抗となる吸音材を入れることでその共鳴を抑えることができます。
基音の共鳴(図中で一番上の管)は、管の開口部に共鳴の腹が来ています。
一方で、3倍音や5倍音での共鳴(図中で上から2番目と3番目の管)は、ユニットの近傍に共鳴の腹が来ています。そこで、その共鳴の腹に対して吸音材を設置することで有害な倍音だけを抑え込むことが可能となります。
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開口部を塞ぐ
これは、先の小澤隆久先生のほか、音工房Zの大山氏などが実施している方法です。
共鳴管の開口部を塞ぐことで、開口部からの中高音漏れを防ぐことを狙いとしています。
基音の共鳴である重低音は、開口部付近では流体としての性質が主となり、
開口部を多少(60%程度)に塞ぐだけでは、流速が増すだけで、そこから出てくる音圧(空気の総量)にほぼ影響はありません。
一方で、中高音域は波としての性質が強く、開口部の面積に応じて出てくる音圧が左右されます。
それゆえに、開口部を塞ぐことで低音域の音圧は保ちつつ、有害な中高域をカットすることができるのです。
さらに、設計によっては超低域を補強するバスレフ箱としての動作をも期待することができ、非常に効果的な方法といえるでしょう。
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開口部塞ぎの欠点?
一方で、開口部を塞ぐことは「音響インピーダンスのマッチング(整合)」という考え方とは相反する手法であることも忘れてはなりません。
「音響インピーダンス」が整合していない状態では、振幅が大きくても音としては余り伝わっていきません。たとえば、小口径ウーハーに20Hzを振幅させても超低音はほぼ出てきません。これは長岡先生が『空振り』と称した状態ですね。
もちろん、こうした状態でも大振幅にすれば、音圧としては出てきます。しかし、聴感上で好ましいかと言えば別問題だと感じています。
大口径ウーハーや、バックロードホーン箱の奏でるような、空気を直接ドライヴするような再生音は、やはり「面積」に依存していると考えています。
開口部を塞いだ共鳴管は、深く沈むような低音となるような経験があります。これを「バスレフ臭い」と表現している人もいましたが、そんな感じです。
軽くて音色感が豊かな低音は、どうしても放射面積が広いスピーカーが有利というイメージをもっています。
開口部を塞ぐかどうかは、周波数特性はもちろん、聴感上の好みや設計意図によって選択すべき問題だというのが、現状でのカノン5Dの主張です。
一方で、部屋の共鳴(定在波)により、インピーダンス整合が想定以上(低音過多)となった場合の対処方法として、開口部を塞ぐのは合理的な方法だと思います。
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テーパーをつける
これも良く知られている方法でして、実際やってみても結構効果があります。「カノン5Dの資料室」でも掲載していたデータを使って、説明しようと思います。
次に示すのは、長さ2.4mの共鳴管の広がり具合を変えたデータです。両末端の断面積の比をとって「1.0倍」「1.9倍」「4.6倍」の三段階で、開口部の周波数特性を比較します。
なお、ユニットは、TangBandの10cmフルレンジW4-927SA。ユニットの位置は管の端とします。
[1.0倍(255cm2→255cm2)]
[1.9倍(150cm2→285cm2)]
[4.6倍(75cm2→345cm2)]
これらを比較すると、より大きな広がりをもった共鳴管ほど、ピークディップが少なくなっていることが分かります。その一方で、「4.6倍」のように急な広がりをもつ共鳴管は100Hz以下の伸びが悪くなることも確認できます。
音としては、低域の不自然なピーク感は無くなり、穏やかな鳴りっぷりに変化します。「4.6倍」では100Hz以下の重低域の伸びがスポイルされる感じがあるものの、「1.9倍」では重低音の伸びは「1.0倍」と大差なく良好でした。
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今回は、以下の3点で開口部の放射特性をコントロールしてみました。
・吸音材を入れる
・開口部を塞ぐ
・テーパーをつける
次回は、干渉などの音響的な効果を使って共鳴音をコントロールするする方法を紹介します!
以前にちょっとお話ししたように、共鳴管はそのままでは500Hz~1kHzの中域までを増幅してしまう特性があります。
ハイ上がりなユニットに対して中域からの音圧が欲しい長岡型共鳴管とは異なり、この連載で対象としている一般的なユニットにとっては「低音だけの増幅」という特性が必要です。
そこで、何らかの形で中低域~中域を抑え込まなければなりません。
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吸音材を使う
これは非常にシンプルで、吸音材を使用して共鳴を止める方法です。
とくに、MJ誌などで活躍されている小澤隆久先生が提唱しているのは「共鳴管のユニット付近に吸音材を入れる」という方法です。
これは、基音での共鳴と、倍音での共鳴では、異なる位置に『共鳴の腹』ができることを利用したものです。
共鳴の腹では、空気が大きく振幅しており、そこに抵抗となる吸音材を入れることでその共鳴を抑えることができます。
基音の共鳴(図中で一番上の管)は、管の開口部に共鳴の腹が来ています。
一方で、3倍音や5倍音での共鳴(図中で上から2番目と3番目の管)は、ユニットの近傍に共鳴の腹が来ています。そこで、その共鳴の腹に対して吸音材を設置することで有害な倍音だけを抑え込むことが可能となります。
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開口部を塞ぐ
これは、先の小澤隆久先生のほか、音工房Zの大山氏などが実施している方法です。
共鳴管の開口部を塞ぐことで、開口部からの中高音漏れを防ぐことを狙いとしています。
基音の共鳴である重低音は、開口部付近では流体としての性質が主となり、
開口部を多少(60%程度)に塞ぐだけでは、流速が増すだけで、そこから出てくる音圧(空気の総量)にほぼ影響はありません。
一方で、中高音域は波としての性質が強く、開口部の面積に応じて出てくる音圧が左右されます。
それゆえに、開口部を塞ぐことで低音域の音圧は保ちつつ、有害な中高域をカットすることができるのです。
さらに、設計によっては超低域を補強するバスレフ箱としての動作をも期待することができ、非常に効果的な方法といえるでしょう。
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開口部塞ぎの欠点?
一方で、開口部を塞ぐことは「音響インピーダンスのマッチング(整合)」という考え方とは相反する手法であることも忘れてはなりません。
「音響インピーダンス」が整合していない状態では、振幅が大きくても音としては余り伝わっていきません。たとえば、小口径ウーハーに20Hzを振幅させても超低音はほぼ出てきません。これは長岡先生が『空振り』と称した状態ですね。
もちろん、こうした状態でも大振幅にすれば、音圧としては出てきます。しかし、聴感上で好ましいかと言えば別問題だと感じています。
大口径ウーハーや、バックロードホーン箱の奏でるような、空気を直接ドライヴするような再生音は、やはり「面積」に依存していると考えています。
開口部を塞いだ共鳴管は、深く沈むような低音となるような経験があります。これを「バスレフ臭い」と表現している人もいましたが、そんな感じです。
軽くて音色感が豊かな低音は、どうしても放射面積が広いスピーカーが有利というイメージをもっています。
開口部を塞ぐかどうかは、周波数特性はもちろん、聴感上の好みや設計意図によって選択すべき問題だというのが、現状でのカノン5Dの主張です。
一方で、部屋の共鳴(定在波)により、インピーダンス整合が想定以上(低音過多)となった場合の対処方法として、開口部を塞ぐのは合理的な方法だと思います。
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テーパーをつける
これも良く知られている方法でして、実際やってみても結構効果があります。「カノン5Dの資料室」でも掲載していたデータを使って、説明しようと思います。
次に示すのは、長さ2.4mの共鳴管の広がり具合を変えたデータです。両末端の断面積の比をとって「1.0倍」「1.9倍」「4.6倍」の三段階で、開口部の周波数特性を比較します。
なお、ユニットは、TangBandの10cmフルレンジW4-927SA。ユニットの位置は管の端とします。
[1.0倍(255cm2→255cm2)]
[1.9倍(150cm2→285cm2)]
[4.6倍(75cm2→345cm2)]
これらを比較すると、より大きな広がりをもった共鳴管ほど、ピークディップが少なくなっていることが分かります。その一方で、「4.6倍」のように急な広がりをもつ共鳴管は100Hz以下の伸びが悪くなることも確認できます。
音としては、低域の不自然なピーク感は無くなり、穏やかな鳴りっぷりに変化します。「4.6倍」では100Hz以下の重低域の伸びがスポイルされる感じがあるものの、「1.9倍」では重低音の伸びは「1.0倍」と大差なく良好でした。
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今回は、以下の3点で開口部の放射特性をコントロールしてみました。
・吸音材を入れる
・開口部を塞ぐ
・テーパーをつける
次回は、干渉などの音響的な効果を使って共鳴音をコントロールするする方法を紹介します!