前回の続きで、共鳴管の「太さ」についての実験結果を解説していきます。
今回の実験は、こんな感じでしたね。
FOSTEXの10cmフルレンジ「P1000K」を使用して、
様々な太さの共鳴管(長さは1.2m)での挙動を確認してみました。
まずは、聴感の特性です。
「72%(振動板面積比・共鳴管の太さ)」とした場合、低音のみならず中高音にも窮屈さ(歪っぽさ)が感じられました。低音に関しては、ほぼユニットから出ているようです。
「100%」とすると、窮屈さは大分緩和され、低音もバスドラムの音域が感じられるようになりました。ただ、依然としてハイ上がりで、100~200Hzの低音は薄いままです。
「200%」では、低音が出てくることで全体バランスも改善され、窮屈さも解消されました。
「400%」も、低音音圧は十分なレベルです。中高域は、透明度が増したように感じますが、低域と中高域の馴染みが悪く、低音に若干の遅さを感じるようになりました。
「800%」は、(400%と比較して)それほど低音音圧が上がる様子はないものの、ぐーぐーと質の悪いサブウーハーが鳴っているような音となりました。付帯音も多く、JPOPSではワンワンとした管の響きを感じます。
聴感特性では、200%か400%が好ましい感じでした。
さて、次は周波数特性を見ていきましょう。
私は、いつも「ダクト直前」「ユニット直前」「軸上(1m)」の最低三ケ所で測定しています。
共鳴管開口部からの放射特性を確認する「ダクト直前」、ユニットの負荷・振幅を把握できる「ユニット直前」、聴感との関連性を議論できる「軸上(1m)」といった所でしょうか。
(画像の上で右クリック→名前を付けて画像を保存、で高解像度データがダウンロード可能です。)
ここでは、以下の二つの考察をしていきます。
「低音部音圧」は軸上1mの特性結果を元に、500Hz付近の音圧と、一次共振に相当する70Hzの低音音圧を比較します。聴感での重低音量感を定量化するのが目的ですね。
「ユニット空振り 抑制効果」はユニット直前の特性結果を元に、管共鳴によりユニットから放射される音圧が低下(エネルギーが共鳴に消費される)する現象を把握します。
<低音部音圧>
聴感で感じたように、振動板面積が400%(振動板面積比)以上となると、低音部の音圧が最大値を迎えることが分かります。少なくとも今回の系では、ここが閾値となると考えて間違いなさそうです。
<ユニット空振り 抑制効果>
下の分布図から、断面積が72%のように、細い共鳴管ほど空振り抑制効果(=ユニットからの低音音圧低下)が確認されます。一方で、400%以上のように太い共鳴管では、余りユニットからの音圧低下は起こらないようです。
一般的に、「空振り抑制」=「低音増強」と思われがちです。しかし、この結果からすると「ユニットに負荷がかかっていても、低音がでない」という状況は十分にあり得る、むしろ「ユニットに負荷がかかっているからこそ、低音がでない」とも考えられます。
断面積が小さな共鳴管は、ユニットが管共鳴を駆動しても、「放射効率」「共鳴効率」という点で難があり、それゆえに低音が出ないのかもしれません。
さらに、ユニットは共鳴を励起する「ドライバー」であると同時に、強力な電磁制動で共鳴を抑制する「アブソーバー」であることも忘れてはならないようです。この二つの力加減を元に、共鳴を上手くコントロールするのが共鳴管設計のコツなのかもしれません。
今回の実験では、断面積が200%以上のような、比較的「空振り抑制効果」が弱い領域で十分な低音量感を得ることができました。さらに断面積を広げていくと、800%で(おそらく共鳴が強くなるため)音圧低下量が再び上昇していきますが、それは聴感上ではNGな低音質感となっている領域でしたね。「制動が効きすぎず、制御しきれないほどの共鳴も起こらないポイント」がベストだと言えそうです。
さて、ラストはインピーダンス特性を見てみましょう。
200%→400%のところで、大きく形状が変わっているのが分かります。(吊り橋型から谷型?)
この変化が起こった断面積は、聴感や周波数特性でも好ましい特性が得られた場所だと言えます。
<<まとめ>>
共鳴管の最適な断面積は、「制動が効きすぎず、かつ、制御しきれないほどの共鳴も起こらないポイント」にあり、その値はユニット直前特性や、インピーダンス形状から推測が可能だといえます。
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次回は、この共鳴管を「折り曲げた」ら、どうなるか、、、を確認してみようと思います。
今回の実験は、こんな感じでしたね。
FOSTEXの10cmフルレンジ「P1000K」を使用して、
様々な太さの共鳴管(長さは1.2m)での挙動を確認してみました。
まずは、聴感の特性です。
「72%(振動板面積比・共鳴管の太さ)」とした場合、低音のみならず中高音にも窮屈さ(歪っぽさ)が感じられました。低音に関しては、ほぼユニットから出ているようです。
「100%」とすると、窮屈さは大分緩和され、低音もバスドラムの音域が感じられるようになりました。ただ、依然としてハイ上がりで、100~200Hzの低音は薄いままです。
「200%」では、低音が出てくることで全体バランスも改善され、窮屈さも解消されました。
「400%」も、低音音圧は十分なレベルです。中高域は、透明度が増したように感じますが、低域と中高域の馴染みが悪く、低音に若干の遅さを感じるようになりました。
「800%」は、(400%と比較して)それほど低音音圧が上がる様子はないものの、ぐーぐーと質の悪いサブウーハーが鳴っているような音となりました。付帯音も多く、JPOPSではワンワンとした管の響きを感じます。
聴感特性では、200%か400%が好ましい感じでした。
さて、次は周波数特性を見ていきましょう。
私は、いつも「ダクト直前」「ユニット直前」「軸上(1m)」の最低三ケ所で測定しています。
共鳴管開口部からの放射特性を確認する「ダクト直前」、ユニットの負荷・振幅を把握できる「ユニット直前」、聴感との関連性を議論できる「軸上(1m)」といった所でしょうか。
(画像の上で右クリック→名前を付けて画像を保存、で高解像度データがダウンロード可能です。)
ここでは、以下の二つの考察をしていきます。
「低音部音圧」は軸上1mの特性結果を元に、500Hz付近の音圧と、一次共振に相当する70Hzの低音音圧を比較します。聴感での重低音量感を定量化するのが目的ですね。
「ユニット空振り 抑制効果」はユニット直前の特性結果を元に、管共鳴によりユニットから放射される音圧が低下(エネルギーが共鳴に消費される)する現象を把握します。
<低音部音圧>
聴感で感じたように、振動板面積が400%(振動板面積比)以上となると、低音部の音圧が最大値を迎えることが分かります。少なくとも今回の系では、ここが閾値となると考えて間違いなさそうです。
<ユニット空振り 抑制効果>
下の分布図から、断面積が72%のように、細い共鳴管ほど空振り抑制効果(=ユニットからの低音音圧低下)が確認されます。一方で、400%以上のように太い共鳴管では、余りユニットからの音圧低下は起こらないようです。
一般的に、「空振り抑制」=「低音増強」と思われがちです。しかし、この結果からすると「ユニットに負荷がかかっていても、低音がでない」という状況は十分にあり得る、むしろ「ユニットに負荷がかかっているからこそ、低音がでない」とも考えられます。
断面積が小さな共鳴管は、ユニットが管共鳴を駆動しても、「放射効率」「共鳴効率」という点で難があり、それゆえに低音が出ないのかもしれません。
さらに、ユニットは共鳴を励起する「ドライバー」であると同時に、強力な電磁制動で共鳴を抑制する「アブソーバー」であることも忘れてはならないようです。この二つの力加減を元に、共鳴を上手くコントロールするのが共鳴管設計のコツなのかもしれません。
今回の実験では、断面積が200%以上のような、比較的「空振り抑制効果」が弱い領域で十分な低音量感を得ることができました。さらに断面積を広げていくと、800%で(おそらく共鳴が強くなるため)音圧低下量が再び上昇していきますが、それは聴感上ではNGな低音質感となっている領域でしたね。「制動が効きすぎず、制御しきれないほどの共鳴も起こらないポイント」がベストだと言えそうです。
さて、ラストはインピーダンス特性を見てみましょう。
200%→400%のところで、大きく形状が変わっているのが分かります。(吊り橋型から谷型?)
この変化が起こった断面積は、聴感や周波数特性でも好ましい特性が得られた場所だと言えます。
<<まとめ>>
共鳴管の最適な断面積は、「制動が効きすぎず、かつ、制御しきれないほどの共鳴も起こらないポイント」にあり、その値はユニット直前特性や、インピーダンス形状から推測が可能だといえます。
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次回は、この共鳴管を「折り曲げた」ら、どうなるか、、、を確認してみようと思います。