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スピーカー再生技術研究会 2013年公開OFF会 日記3

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スピーカー再生技術研究会のOFF会レポートも、今回で3回目。
会場で配られる資料は、こちらのページにあるpdfからダウンロードできますので、「もっと詳しく知りたい!」ときにぜひご利用ください。

古館さんのスピーカーは、塩ビ管スピーカーでも発表されていた大型ブックシェルフ型。



特徴としては、バッフルに取り付けられた音響レンズと、内部のダブルバスレフ。
今回は、音響レンズのデモをしてくださいました。


まずは、音響レンズ「あり」の状態で視聴。

以前視聴した時には、高音域が目立つイメージだったのですが、今回はむしろ大人しく抑えられているなぁ〜という印象でした。
エージングが進んだのか、部屋の影響なのか、単なる耳の問題なのか(←全くもって自信がないw)、不思議な感じです。

大口径のウーハーに支えられた低音域に、奥行き感豊かな高音が重なり、なかなか良好なバランスだと感じました。




次は、音響レンズを外してのデモです。

こうすると、一気に高音域が出てきました。
全体の音のイメージも大分変わり、音響レンズという手綱が外され、かなりジャジャ馬な印象へと変化しました。

広い会場では、こういうスパイシーで開放的な音も悪くないのですが、やはり自宅で聴く際には先ほどの大人っぽい音色が勝るのだと想像しています。

ちなみに、音響レンズならではの「指向性制御効果」も十分にあるようで、
音響レンズが無いと指向軸から外れた時に、かなり高域に癖があるように感じました。(カーカーいう感じ?)
音響レンズを付けると、どの角度から聞いてもOKな印象に変化し、この工作は大成功だといえそうです。


さて、いよいよ私の番です。



(撮影:加藤氏)

今回持参したのは、共鳴管型のS-039。
今年の春のParcサウンド鑑賞会では、DCU-101Wという癖の強い(と開発者も認めているw)ユニットを装着していました。

今回は、磁石強化verのDCU-102Wへ載せ替え、なかなか満足できる状態での出品となりました。




共鳴管型スピーカーというのは、箱設計のパラメーターが少ない分、ユニットとの相性で大きく出来不出来が決まってしまうようです。
個人的には、「バスレフでも使えるけど、それだとちょっと低音不足。かといってBHでは使えない」という塩梅のユニットが共鳴管との相性が良いように感じています。

さて、一発目の選曲は「The RED ROAD (BILL MILLER)」。
重低音を聴いて頂こうという選曲で、聴いてくださった皆さんの評判も上々でした。

横で聞いていると、あまり低音出てないかな…という印象だったので内心ヒヤヒヤでしたが、客席のほうには十分に届いていたようです。まずは一安心。

二曲目の選曲は、「MONALISA(神田めぐみ)」。
サックスの響きは、共鳴管型のスピーカーの中低域の共振と相まって、なかなか良く鳴るものです。こちらは発表者としても安心して聴くことができました。(他の人がどう思っていたかは分かりませんが、自己満足としては大成功ですw)

さて、こうして発表会をやっていると、いくつか分かってきたこともありました。

?8cmフルレンジでは厳しい・・・
やはり広い会場では、小口径の耐入力が限界を迎えてしまいます。特に、大振幅時に高音域に妙な歪が乗る(正式名称は忘れた…)が発生してしまい、「トーン」という澄んだ音が「ミョーン〜」と変な歪をもって聞こえてしまいます。
大音量時では、小型であっても2wayのスピーカーが有利だなぁ〜と感じてしまいました。

?ユニットの個性。
ParcAudiの8cmフルレンジは、なかなかの優等生君だなぁ〜と感じています。
どんな音源、どんな再生装置を使っても嫌な音を出さない、けれど暗くならず軽やかに聴かせるというのが、ParcAudioのユニットだと感じています。別の言い方をすれば、フルレンジであっても2way的に鳴る・・・感じでしょうか。
この辺は好き好きのようで、人によって評価が分かれるところだと思います。

今度出た紙コーンのフルレンジ(DCU-F121P、11月中旬発売予定)も気になるところですね!

?会場の個性。
様々な会場でSPの発表をしていると、やはり各会場での音の出方がずいぶん違うのが分かります。

特に、自分の部屋でのチューニングでは見えなかった、スピーカーの利点・欠点が見えてくるので、いつも発表前は緊張してしまいます。これからも広い会場での発表する機会は大切にしたいですね。


そんなことを考えながら、発表は無事に終了。
研究会での発表機会を下さった鈴木会長、写真撮影やCDPの操作をしてくださった加藤さん、SP製作について貴重なアドバイスを下さった会場の皆様に感謝申し上げます。

次回は、この研究会の目玉(?)でもある、シミュレーションの話や、
超力作のスピーカーが登場します!

スピーカー再生技術研究会 2013年公開OFF会 日記4

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連載してきたスピーカー再生技術研究会のOFF会日記も、今回でラスト。
この研究会らしい理論的な発表と、超力作のスピーカーを紹介します。

まずは、石田さんの発表。
バスレフ型の動作を、電気回路に置き換えたシミュレーションの発表でした。

専門用語でいう「等価回路」というもので、
コイルやコンデンサといった電気回路で、機械的な動きを表現できるのです。

石田さんは、シミュレーションだけでなく、
実際の作例との比較検証も行っており、素晴らしい研究だと思いました。

http://rilsrt.web.fc2.com/meeting_2013.html
詳細は、上記リンクよりダウンロードできる資料に譲りますが、
電気回路のシミュレーターは豊富にある(と思うw)ので、興味のある方はぜひトライしてみてください!


鈴木会長は、同じシミュレーションでも物理的な数式での解析を実践されていました。


(スピーカー再生技術研究会 ページより転載)

こちらも、バスレフ型や多段バスレフ型のシミュレーションでして、
運動方程式から算出することを特徴としています。

実際の動作を数式に置き換えることで、複雑な動作モデルをシンプルに(?)表現しているのには驚きました。


ラストは、松さん。
FALの平面ユニットを使用したスピーカーを持参してくださいました。



このスピーカーは、FALの海外オーディオショウ用に製作されたモデルとのこと。
日本らしい色彩と模様をまとった本機は、音を出す前からオーラを感じさせます。



さらに、本体上部を含めた平面部に振動子を設け、
音色のコントロールを実施していました。(デザイン的に「日本刀」をイメージしているとか)

発表では、FALのユニットの使いこなしについてもいくつか教えて下さいました。
特に、構面解放バッフルで背圧をかけないことで良い音を引き出せる・・・というのは新しい発見でした。ユニットの適切な使用方法を見極めるのは大切ですが、それがまた難しいんですよね〜(汗

柿渋(?)を塗った振動板からは、パリッとした軽やかな再生音。
共鳴管として動作しているというエンクロージュアにより、低音の量感は十分。
音も外見と同様に、特殊なユニットを丹念に使いこなしているなぁ〜という印象でした。


さて、こうして2013年のスピーカー再生技術研究会の日記は、これにて終了。
毎回、創意工夫に富んだ発表に驚かされますが、今回は私も発表者として楽しむことができました。

オーディオの楽しみは人それぞれだと思いますが、もし「自分で考えたアイディアを実践すること」「音質向上に向けて創意工夫すること」が好きなのであれば、【自作】というのは最高の選択肢の一つなのでは?と思っています。

-完-

<S-039> ユニット交換! DCU-F101W→DCU-F102Wへ

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今年の5月頃に作製したスピーカー「S-039」のユニットを交換しました。

S-039は、ParcAudio製のユニット「DCU-F101W」を使用した共鳴管型スピーカーです。コンパクトながら、共鳴管による低音増強により40Hzぐらいからの再生ができるモデルでした。



(2013.05.25)Parcサウンド鑑賞会で発表させていただきました。

その後、自宅でしばらく聴いていたのですが、
「ユニット交換をしたらどうなるのだろう?」という欲が湧き上がってきましたw

そこで、磁石強化verといえる「DCU-F102W」に変更してみました。



違いは一目瞭然。
磁石の大きさが全く違います。コイズミ無線の限定商品としてバックロードホーン用に開発された本機であれば、共鳴管をぐいぐい駆動してくれそうです。


んで、さっそく装着。





やはり赤いリングが映えますね!

音を聴いてみると、高域の歪が減少していることが分かります。
変更前の「DCU-F101W」は、開発者も「中高域に少しあるキャラクターが気になっていた」と言っているように、中高域に微妙な癖があるのです。無理に高域を伸ばしつつ耳障りな成分を抑え込んだためでしょう。

後発品の「DCU-F102W」は、その辺が改善されているようで、Parcならではの爽やかな高域が違和感なく鳴っています。

スムーズな音の響きは特筆すべきレベルでしょう。弦楽など、固さを感じさせずハーモニーを上手く聞かせます。低音域も同様で、重苦しさは皆無。それでいながら、音階が明瞭なのは共鳴管型のメリットだと思います。

ボーカルには深みがあり、人のもつ柔らかさを感じます。感情の表現も十分に感じられ、フルレンジの良さがありますね。音場が広く感じるのは、小口径フルレンジの良さでしょうか。

低音域は、DCU-101WとDCU-102Wで大きく変わりました。
元々、DCU-101Wはバスレフ箱でも十二分な低音量感が出るユニットなので、共鳴管型SPでは量感過多な傾向がありました。

DCU-102Wに変えたことで、低音量感は適正化され、バランスのとれた再生音になりました。
共鳴管を駆動する能力も十分あり、50Hz以下も出ているようです。大太鼓が鳴るのがハッキリと分かりますし、これが全体の音楽の土台となっているのが好ましいのです。
ドラムのようにレスポンスの高い低音にもしっかりと追従しており好印象です。鈍く重くなりがちな低音ですが、共鳴管×DCU-F102Wの組合せはレスポンスよく低音を表現することができていると思います。



2013年「スピーカー再生技術研究会」の発表でも、この低域は好感触でした。

DCU-102Wは、完全なBH用ユニットではなく振動板重量が若干重めなので、共鳴管やダブルバスレフにも好適だと思います。『低音は振動板でなく、箱で出す。』という自作スピーカーの醍醐味を楽しめるユニットだと言えそうです。


さて、次回はユニット交換後の特性を見てみようと思います。

<S-039> ユニット交換後の特性

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今回は、S-039の測定結果から、共鳴管の動作とユニット変更の効果を見てみようと思います。

まずは、インピーダンス特性から。
インピーダンス特性は、スピーカーの動作を知る上での重要な指標となるので、ぜひとも測定しておきたいですね。

まずは、DCU-F101Wから。


このユニットは、f0が80Hz程度(実測)と8cmフルレンジとしては驚異的に低いのが特徴です。

このユニットを共鳴管に入れると、30Hz〜200Hzの幅広い範囲に凹凸のあるインピーダンス特性となりました。
共鳴周波数に相当するのは、インピーダンスの凹に相当する部分で、50Hz,100Hz,160Hzが共鳴していることが分かります。

次に、DCU-F102W。


こちらは、f0が140Hzと8cmフルレンジとしは一般的な特性となっています。ユニット単体で測定した際の、インピーダンスピークも高く、強力な磁気回路であることがデータにも表れています。

共鳴管に入れた場合、先ほどのDCU-F101Wより凹凸が見えにくい印象です。箱の構造、吸音材量はほぼ一緒のはずなので、ユニットの特性による違いなのだと思います。

インピーダンスの谷(共鳴周波数)は、60Hz,120Hz,160Hz,190Hz,250Hz付近に表れています。
この共鳴管の理論上の基本共鳴周波数は40Hzで、本来であれば3倍振動(120Hz)、5倍振動(200Hz)、7倍振動(280Hz)となるはずです。実際の測定値は理論どおりとはいきませんでしたが、管の広がり方や、管の折り曲げ、ユニットの特性などで変化したと考えています。


周波数特性は、DCU-F102Wを使用した場合を見ていこうと思います。
(DUC-F101Wを搭載した時の特性は、こちらの日記

ユニット近傍特性。


音響管型の箱が似合いそうな、ハイ上がりな特性ですね。DCU-F102Wの設計コンセプトが良く出ている特性だと思います。

共鳴管 開口部の特性。


この特性を見ると、50Hz〜800Hzの広い範囲の音が、開口部から出ていることが分かります。
共鳴管というと、基本共振周波数や3倍振動しか、共鳴音として出てこないと思いがちですが、実際はこれだけ幅広い音が管開口部からでているものなのです。

細かく凹凸を見ていくと、先ほどのインピーダンス特性で「谷」が表れていた周波数(60Hz,120Hz,160Hz,190Hz,250Hz付近)に、それぞれ共鳴による音圧増大が確認できます。300Hz以上の細かい凹凸は、共鳴管内部での細かな共鳴で出てきたものでしょう。
共鳴管やバックロードのような音響管型のスピーカーは、様々な付帯音が管開口部から出てきます。吸音材を管内部に仕込むなどで、これらを軽減することができますが、音響管方式の魅力的な音も同時に削がれてしまうことが多々あります。この辺のさじ加減で音を作り出していくのが、音響管方式の魅力だと思っています。


ラストは、軸上1mの特性です。


私の部屋は低音が出にくい特性なので、この位でまあまあフラットな特性になっていると考えてよいでしょう。

一見、10kHz付近のレベルが高く、ハイ上がりかと思われますが、フルレンジスピーカーは指向性が狭く、部屋の反響なども考えるとこの位が丁度良かったりするのです。
どちらかというと、300Hz付近の盛り上がりが問題で、好みによっては吸音材を増量して、もう少しスッキリとした音を狙っても良いかもしれません。

低音域の特性は、スピーカーの設置場所によっても±5dBぐらいコロコロ変わってしまうので、深追いはしないことにします。低音量感不足が懸念される共鳴管型でしたが、DCU-F102Wとの組み合わせでは聴感上問題ない低音量感が得られました。


以上が、S-039とDCU-F102Wとの組み合わせの測定結果になります。
やはり測定をしてみて分かることは多く、今後の参考にしていきたいと思います。

次回は、2013年12月8日に予定している「ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2013」の様子でも紹介しようと思います♪

ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2013 〜その1〜

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自作スピーカーの恒例行事、ミューズの方舟主催「スピーカーコンテスト2013」の紹介です。

会場は、中小企業センター。100名近いお客様が今年もいらしてくれました。




今回のSPコンテストのレギュレーションは、
FOSTEXの10cmウーハー「FW108N」と、ツイーターを組み合わせること。





マグネシウム振動板が発売された今となっては古さを感じるユニットですが、
基本に忠実なつくりは、スピーカービルダーにとって使いやすいユニットだといえるでしょう。


さて、スピーカーコンテストを始める前に、
毎年、リファレンススピーカーを決めて、共通「課題曲」を鳴らします。

今年のリファレンススピーカーは「FOSTEX GX100MA」。





今人気の小型スピーカーですね!

アキュフェーズのアンプで駆動された本機は、見事なウェルバランス。
低音こそ箱のサイズを感じさせますが、中高域は歪が少ないながら単調にならない良さがありました。
しっかりとしたアンプで駆動することで、表情豊かに鳴らすことができていたと思います。


さて、最初の発表者は田中さん。



箱容量は2.6Lと、コンパクトな筐体として設計。
ウーハーのQoは箱に入れることで上昇することが知られていますが、
本作は、小さ目の箱に入れることでQoを0.26→0.42とすることを狙っています。




自作スピーカーらしい背面には、ネットワークと「スパイラルダクト」を搭載。
ウーハーは1.2kHzで高域カットし、中高域以上の帯域をツイーターに割り振る設計です。試行錯誤を繰り返す中で、クロスは6dB/octとしたそうです。

音を聴くと、カリカリの解像度のある音だと分かります。
甘さや付帯音は感じさせず、24mm厚のフィンランドバーチで固めた効果が如実に出ていました。

スパイラルダクトから出てくる低音は、絶妙なチューニング。
チェロは、コリコリとした感覚が好ましく感じました。普通のスピーカーでは出すことが難しい解像度を、全帯域でもっているのです。

ボーカルは甘さがない分、やや荒さを感じさせます。
ただ悪い荒さではなく、積極的な張り出しを伴う心地よい感覚だと思いました。ツルッとしていない風合いが感じられる、木彫りの荒さみたいな感じでしょうか?


一作目から、市販スピーカーとは異なる魅力を見せてくれたコンテストですが、
今回は、全9台の出品がありました。

このブログでは、順に作品を紹介していこうと思います♪

ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2013 〜その2〜

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ミューズの方舟主催の自作スピーカーコンテスト2013の様子を連載しています。

今回は、連載2回目。
気合の入った力作の登場です。

まずは、藤澤さん。




市販スピーカーのような美しい仕上がりのスピーカーで、
搭載されているユニットは見慣れないものでした。

このツイーターはMUNDORFの「AMT 21CM 2.1」というもの。
ググってみると、海外で3〜4万円/本ぐらいで流通している高級品のようでした。

動作原理としては、いわゆる「ハイルドライバー」で、
ELACや、ADAM Audioのツイーターと似たようなものだと思います。

「測定に拘った」という藤澤さんは、
まず、TSパラメーターの測定を実施し、FW108Nの特性をFs=59Hz、Qts=0.29、Vas=3.3Lとして、エンクロージュアの設計を進めていったとのこと。



まず、ユニット単独でのf特を測定し、そこから2.5kHzのクロスが最適と判断したそうです。
たしかに、FW108Nの6kHzのピークは厄介ですね。

周波数特性の測定は「ARTA」というソフトを使用。
このソフトは、各ユニットの特性を加算するなど、様々なことができるようです。

ネットワークに関しては、
2.5kHz、-36dB/oct.のカットオフ、ツイーターにノッチフィルタ、ウーハーにはインピーダンス補正回路とバッフル補正…が含まれるよう、
ソフト「SoundEasy」を使用して決定していった結果がこちら。



うーん、フルレンジ派の私にはサッパリですが、「グラウンド」に落としている表記が玄人感満点だと思いました。(適当な感想でスミマセンw)

こうして、出来上がった特性はこちら。


(近接測定での結果を加算したf特)
フラットな素晴らしい特性に仕上がっていますね!

ちなみに、バスレフダクトのチューニングはこんな感じ。






さて、前置きが長くなりましたが、
試聴してみると、やはり市販スピーカーと張り合えるだけの完成度の高い音でした。

AMT型のツイーターは、トランペットの張り出し感を演出しつつも上品さを失わない見事な鳴りっぷりでした。
チェンバロも伸びやかで、高価なユニットではありますが、価格相応以上のサウンドだなぁ〜と思いました。

適切な箱容量と、ダクトチューニングにより、低音には深みとスピード感が見事に両立していました。ティンパニーも素早く立ち上がる感じで、かなり完成度の高いバスレフ箱だと感じましたね。

しっかりとした測定と、基本に忠実な作りの本機は、いわゆる「高級オーディオ」の音がしていたと感じました。
高級といっても、ペア15万以下で(たぶん)作れるのだろうから、そこは自作スピーカーのSP比の勝利だなぁ〜と感じてしまいました。


さて、お次は、毎度オリジナリティに溢れる作品を持ってくる白須さんです。



「今年はイオンだ」という題名のとおり、「イオン」に着目した創意工夫満載の作品となっています。

目につくのは、左右の白い吸音材みたいなもの。
建築用の断熱材で、水分を吸ってイオンを放出する!らしいです。

さらに、怪しげなムードを漂わす「ロウソク」ですが、これも燃えるときにイオンを発生して、劇的な音質改善をもたらすとか。

なんだか信じがたい話でもありますが、実際に効果があるのですから、搭載しない訳にはいかないでしょう♪

もちろん、昨年から続けている「除電」「ラジウム」も全力投入なので、外見だけでなく、中身もいろいろと凄いことになっているようです。

詳細は、ブログ「白須のブログ」を見て頂ければと思います。
http://d.hatena.ne.jp/arcs2006/




ツイーターとして使用するユニットは、FOSETXのFE83En。
非常にメジャーなユニットですが、墨塗装でイオン化(除電?)対策もバッチリです!

エンクロージュア自体は、FE83En用に作製したもので、
FE83Enの取説に載っている、一般的なダブルバスレフとのこと。


そんな強烈な外観(いや中身も凄いw)の本機ですが、
いざ鳴らしてみると、案外素直な音がしていました。

「普通」と言ってしまえば、一言で感想が終わってしまうのですが、
バイオリンの切れ込み感など、毎年感じる白須さんらしいサウンド(これが除電&イオン化の音?)だなぁと思いました。

情報量が多く、歪みが少ないためなのか、
パワーアンプが悲鳴を上げるような電力をスピーカーに入れても、意外に違和感なく聴けてしまうのです。
普通なようで、なんか不思議な感じ。これがイオン化のミソなのでしょうか。



スピーカーの特性に着目して、丹念に作りこむスピーカーづくりがあれば、
自分の感覚とアイディアから、至上の音を目指すスピーカーづくりもある。

そんな自作スピーカーの楽しさを、改めて感じさせてくれた2作品でした。


まだまだスピーカーコンテストは続きます!

ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2013 〜その3〜

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ミューズの方舟主催の自作スピーカーコンテスト2013の様子を連載しています。

今回は、連載3回目。
昨年度のコンテストでも大活躍だったお二人の作品を紹介します。

まずは、上條さん。


赤いリングが目を引くユニットは、ParcAudioの「DCU-F102W」です。


ウーハーはスルーで接続。
ツイーターとして使うDCU-F102Wは、複数のコンデンサで段階的にローカットをしています。低域は完全にカットしていないのがミソのようで、その効果が気になるところです。

外見からは分かりませんが、昨年同様に「ヒレ」による細工が振動板やエンクロージュア内部に実施されています。
「ヒレ」の詳細は本人の希望によりここでは伏せますが、ボーカルに付帯する歪感を減少させることができるとのこと。

エンクロージュアは、DUC-F102Wが密閉。FW108Nがバスレフといたってシンプルです。
インピーダンス特性には50Hz付近に綺麗なディップが表れ、絶妙なダクトチューニングができていることが分かりますね。



周波数特性は50Hz〜15kHzまで伸びたカマボコ型で、無理をせずスムーズにまとめています。

特徴的なネットワークを搭載した本機ですが、上手く二つのユニットが調和して鳴っているようです。



音を聴くと、中音域の張り出しが強く、声を前面に出してくる印象の音でした。

エレキギターは鮮明に描写しつつも、耳障りな高域は最小限に抑えられており、
ユニットの選択や、「ヒレ」の効果が見事に表れているのかなぁと感じました。

試聴音楽はPOPSメインでしたが、どれも引き締まった低域に支えられ、
熱気あふれるライヴ会場の雰囲気を感じることができました。



お次は、昨年音質賞を受賞された塩沢さん。
今年も得意のZWBR方式の作品です。



ダブルバスレフ方式を採用した大きな筐体で、
強力なFW108Nの性能を発揮できる余裕のある空気容量を確保したとのこと。
(ちなみに、第一空気室に17L、第二空気室に20L)



中央に斜め方向の仕切りを装着し、定在波の低減を狙った構造となっています。
共振周波数は、第一ダクトが95Hz(内径67mm、長さ80mm塩ビ管ダクト)、第二ダクトが32Hz(幅180mm×高さ30mm(出口は14?)×長さ200mm)となっています。
第二ダクトの先端にスリットを設けることで、ボンつきを抑えることができているそうです。



このダクトのチューニングは、品質工学の「L9」という方法を元に実施しているとのこと。
塩沢さんのブログ「COGのブログ」のこちらのページが参考になると思います。

2013/06/26の記事
http://blog.livedoor.jp/qcreate/archives/51911073.html

「L9」という言葉は初めて聞いたのですが、
複数の因子の最適解を、効率よく(総当たり戦より効率的に)見つけることができる方法のようです。

http://www.hinkai.com/qe/tyokou.html
http://www.qes.gr.jp/introduction/whatqe_qa/QA2/QA2Q13V11N4.htm

ネットワークは一般的な-12dB/oct型。

750Hzと低く設定されたクロス周波数がポイントになりそうです。


そんな本機は、すっきりとしたサウンドを軸として、
ZWBR方式の大型エンクロージュアが深々とした低域を表現します。

普通、この容量のダブルバスレフを作製すると、ボヨンとした鈍く遅い低音が出てくるのですが、
本作では、キレの良いバスドラムや、ウッドベースを表現できているのです。

スロートの末端を半分に絞った効果なのだとは思いますが、
10cmウーハーから30Hz付近の低音を引き出しつつ質感を確保するという課題は見事にクリアできていると感じました。

付帯音が少ないのもこの作品の特徴で、
JAZZなども引き締まった音の良さを感じることができました。

欲を言えば、「色気」や「抱擁感」に近い音色が欲しくなるところですが、
そこはツイーターの選択や、板材の選択でどうにでもなるような気がします。

確かな設計方法で作成された本機は、
見事、音質賞を受賞されました!



どの作品も力作で、紹介している私も楽しくなってしまうのですが、
今回の日記はここまで。

まだまだスピーカーコンテストは続きます!

ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2013 〜その4〜

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ミューズの方舟主催の自作スピーカーコンテスト2013の様子を連載しています。

今回は、連載4回目。
自作ならではの、特徴のある作品を紹介します。

まずは、前田会長の作品から。



アクリルを使用した強固なエンクロージュアには、
パッシブラジエーターが2基搭載されています。

特徴は、パッシブラジエーターとして使用した「YSCオーディオ YS137A-PSC」に、
コンデンサを追加し、歪成分に制動をかけている点です。

今回は、この「サーボパッシブラジエーター」を二基搭載し、
反動をキャンセルし、自然で迫力のある低音を狙ったとのこと。

本体は透明なアクリル製で、
高い工作精度で作られていることが良くわかります。



音を聴くと、音の立ち上がり・立下りが見事に表現できていることが分かります。
チェンバロの音は逸品で、粒立ち感と残響が鮮明に描かれています。この音を例えるなら、静かな水面に雫がポタポタ落ちていくような感じでしょうか。

POPSは、しっかりと地に足がついた表現で、
バチッと決まるドラムの音が、リズムをしっかり刻んでいくのは快感でした。

特徴のあるパッシブラジエーターは、しっかり動作しているようです。
この小さなサイズの箱から、オルガンの重低音が出ているのは驚きでした。

吸音材が殆ど入っていないのも好結果で、
スマートな外観を保ちつつ、鮮明な音再現につながっているのかなぁと思いました。



お次は、谷本さん。
静岡から、はるばるいらしてくださいました。



特徴的なエンクロージュア(?)は、プラスチック段ボール(厚さ3mmポリカーボネイト中空板)で構成されています。

このペラペラの材料を、適度に湾曲させ強度を向上させる設計となっていました。
基本構造としては、平面バッフル型になりますね。

ツイーターは、今年のStereo誌の付録「5cmフルレンジ」。
バッフルは基本的にはウーハーと同形状のようです。

フラフラなのはエンクロージュアだけでなく、
ユニットの指示構造もフラフラです。





ウーハーは上部のネジ一本で支持され、
こちらも、プラスチック製でバネのようになっています。

いったいこの構造からどんな音が出てくるか興味津々でしたが、
いざ聞いてみると、意外と普通の音でした。

フワッと広がる音は、エンクロージュアの柔軟性ゆえでしょうか。
弦は柔らかさとコシが両立している上々なものでした。

不思議なのは低音。なぜか普通に低音が出ているのです。
ティンパニーやコントラバスは緩みがなく、瞬発力も上々でした。

平面バッフルというと、ビンテージスピーカーのイメージが強かったのですが、
FW108Nのような現代的なウーハーとも相性が良いことを発見しました。




まだまだスピーカーコンテストは続きます!

ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2013 〜その5-最終回〜

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ミューズの方舟主催の自作スピーカーコンテスト2013の様子を連載しています。

今回は、いよいよラスト。

まずは、渋江さんの作品から。




「ピラミッド・スピーカー」と命名された本機は、
赤茶色に塗られた綺麗な仕上がりです。




前面には、FW108NとFT27Dが配されています。
後面にもFW108Nがありますが、こちらはパッシブラジエーターとして動作しているとのこと。

クロスはシンプルな-6dB/oct型ですが、
ウーハーを2.7kHz、ツイーターを6.0kHzでカットしているところにチューニングのキモがありそうです。





音は落ち着いたサウンドで、(外見とおなじ?)ピラミッドバランスだと感じました。

弦楽では、低弦の存在感が薄らぐことなく、各パートの音のバランスに秀でています。

若干、低域にモヤつき感を感じさせますが、最低域はしっかりとコントロールされており、ブーミーさは感じませんでした。しっかりと面積のある低音を出せるパッシブラジエーターの利点なのでしょうか。

ボーカルはしっとりとした質感と柔らかさを持っており、好印象でした。
仕上げの丁寧さと、落ち着いた音色で、長く楽しめるスピーカーシステムになっているなぁと思いましたね。



ラストは後藤さん。




大型のリボンツイーターはDaytonの「PT2C-8」。
女性ボーカルをよく聞くとのことで、中高域の滑らかさを求めての選択でしょうか。




クロスは2kHzと低めに設定し、
リボンツイーターの良さを引き出す設計方針のようです。




箱はダブルバスレフ箱を採用し、低域の拡大を狙っています。
第一空気室は5.5L、第二空気室は9.9Lと設定。共振周波数は、106Hzと48Hz。ダブルバスレフ型として標準的な設計で省スペース性と低音再生のバランスを狙ったつくりだと思います。


一聴して感じるのは、全帯域の柔らかな表現です。

リボンツイーターの能力だけでなく、箱の材料に集成材(松?)を採用したことも美しい響きをもたらす要因となったのでしょう。
ボーカルの「とろ味」の表現では、本作は秀でた能力があると感じました。

ダブルバスレフによる低音は量感十分。ボーカルもよく張り出し、試聴曲のPOPS系女性ボーカルとの相性は抜群でした。



こうして、全9作品の発表が無事に終了しました。
今年は例年にも増してハイクオリティな作品が多く集まったなぁ〜という印象でした。

FOSTEXのFWシリーズは、来年にモデルチェンジをするらしいので、
スピーカービルダーの一人として楽しみにしたいと思います。

出品者の皆さん、会場設営をした方舟メンバー、
そしてお客さんの皆さんに、感謝の気持ちを表したいと思います。

もう年の瀬ですが、また来年も自作スピーカー界が活気づく一年でありますように。

-終-

2013年12月終了アニメ(秋アニメ)感想、2013年アニメ感想

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もう年の瀬なので、今年のアニメの感想を書きたいと思います。

まずは、12月終了アニメから。
「メガネブ!」
「メガネ者」達のギャグメインの話を、最後まで軽快に描けていたと思います。
深い話は多くないのですが、ちょっとイイ話もいくつかあって、終始楽しめました。

他には、自然の描写が素晴らしい「のんのん日和」、意外にも真面目なスポ根ものだった(?)「世界でいちばん強くなりたい!」、ちょっぴりベタな展開だけど京アニのアクション描写が光る「境界の彼方」など、注目すべき作品も多かったと思います。


2クールものでは、「サムライフラメンコ」「キルラキル」「凪のあすから」など、期待作も多いので、しっかりチェックしていこうと思います。


さて、2013年の総論ですが、
TVアニメとして凄い話題になるものは無かったかなぁ〜という弱気な感想でもあります。

そんな中でも、リニューアル版として劇場版の再編集を放送した「宇宙戦艦ヤマト2199」は見事な出来栄えだったかなぁと思います。
TV版としても違和感のない作りと、終始視聴者を引付けるストーリーも圧巻でした。

私のお気に入りは、「Fate/kaleid liner プラズマ☆イリヤ」でしょうか。
コミカルで可愛らしい作品ではありながら、しっかりと少女の成長を描くことができていたと思います。登場人物を絞り、その中で小さな話を丁寧に描いたのが成功の要因だと思います。

異色作として挙げたいのは、「新世界より」。
壮大なスケールで繰り広げらえる作品は、見ている側に疑問を投げかけて幕を閉じる。ちょっと珍しい作品だとは思いますが、それ故に記憶に残る逸品だったと思います。


今年も劇場アニメは傑作が多かったと思います。
私が見てきた中でも、「劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME」や「劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語」は圧巻の出来栄えでした。他にも、「STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ」も人気作だといえそうです。


来年も良い作品に出合えるとイイですね!

あけましておめでとうございます。

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あけましておめでとうございます。
いつも「趣味の小部屋」を読んでくださり、ありがとうございます。

昨年は趣味に仕事に忙しい一年でしたが、
それだけ充実していたのかな?と思っています。


↑2014年、初日の出♪

さて、2014年ですが・・・
「もっと深めたい!」
をテーマにしようかなぁ〜と思います。

2013年は、和太鼓やロードバイクなど、新しい趣味を始めた年だったのですが、
始めたばかりの趣味はまだまだ初心者ですし、オーディオを聴く時間も減ってしまったなぁ〜と思っています。

今年は、もっと「深く。」をテーマに、
遊びに、仕事に(順序逆かw)がんばっていきたいと思います!


↑最新作「S-041」。
FE126Eを使ったスワン型です。実はまだ接着が未完で、手を放すと倒れてしまいますw

バックロードホーン

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スピーカービルダーにとって、複雑な想いを抱かせるワードとして「バックロードホーン」があります。

ある人には、日々の音楽の友であり、
またある人には、付帯音という悩みを持ち込む厄介な存在であり、
そして、またある人には、過去の思い出でもあったり。
またまた、ある人にとっては、憧れの対象でもあったり・・・

オーディオには、その言葉だけで強烈な印象を与えることができるワードがあるのでは?と思っています。

レコード愛好家にとっての「カードリッジ」、デジタルオーディオにとっての「ジッター」「ハイレゾ」、一昔前のオーディオ界なら「ハイファイ」、ビンテージの中での「ウェスタン・エレクトリック」、そして、やはり「電源」。


何も知らなければただの「単語」。数行の解説だって十分かもしれません。

しかし、一度足を踏み入れた者には分かる、奥の深い世界への入り口だと思うのです。

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さて、今まで20台のバックロードホーン型SPを作ってきた私ですが、
ここ2年間ぐらいは、共鳴管やバスレフ方式のものばかり作っていました。

(まあ、ぶっちゃけBH作るより、他の方式のほうが楽ですしw)

「やっぱりバックロードホーンでないと出ない音があるなぁ〜」と未練たらたらのまま日々を過ごしていました。

(SPの発表会とかあると、持参できる小型のサイズのSP作りになりがちなんですよぉ、と言い訳してみたり。)

そんな2014年の冬、久々のバックロードホーン作りをスタートさせることになりました。

(早い話が、重い腰がようやく上がった訳です。)

次回は、設計について紹介したいと思います。

FOSTEX 限定ユニットFE103-Sol

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昨年末に噂されていた「FWシリーズ」の後継機はマダかなぁ〜
と思いながら、FOSTEXのホームページを見てみたところ、

なんと、

限定ユニットの発売がありました。

「FE103-Sol」



解説を読むと、どうやら「FE103」というユニットの発売50年にあたるのですね。

命名について読んでみると…
『そしてFE103 と同じように長年愛用され太陽のようないつも身近にある、そんな愛着を持ち合わせたスピーカーとなることを願い“FE103-Sol”と命名しました。』

ん?太陽?身近?・・・で、どうして「SOL」になるんですかw

とググってみたら、ラテン語で「Sol」は「太陽」の意味だとか。さすがグーグル先生。
読み方は「ソル」「ソール」みたいです。

う〜ん、珍しく凝ったネーミングですが、
限定ユニットの「S」がしっかり入っていますね。


さて、本題。
この「FE103-Sol」というネーミングからするに、旧型「FE103」の復刻かと期待したのですが、実はそうでもなさそうです。

2層抄紙ESコーンや、銅キャップ、ガラスコンポジットボイスコイルで、歪感を抑え、(説明を読む限りでは)現代的な味付けのユニットのようです。

量産機の「FE103シリーズ」は、紙コーンに強力磁気回路というシンプルな作りで、以前は高いCP比を感じたユニットでした。
しかし、金属や磁性材料の価格が高騰する中で、度重なる値上げが行われた今となっては、持ち前のCP比も陰りを感じていました。

もちろん、小口径バックロードホーン用ユニットとして「FE103En」は類稀なユニットであり、今でも魅力ある音色に変わりはありません。
あくまでも「価格」としての魅力は、TangBandなどの海外ユニットや「P-1000K」などに譲ってしまったと思います。

今回の「FE103-Sol」は、FEシリーズの伝統を受け継ぎつつ、材料一本勝負にならないところを目指しているのかなぁと感じました。


つい長文が続いてしまいますが、TSパラメータです。
<FE103-Sol>



意外とf0やm0は変わっていないようです。パラメーターとしての変化は若干Q0が大きいかな?ぐらいの感じですね。


んで、f特。
<FE103-Sol>



<FE103En(参考)>



いやー、これはビックリですよ。
なんですか、この5kHz〜15kHzのピークはwww

こういう「f特フラットとか気にしないぜ」みたいなユニット作りは大好きですよ。f特なんて飾りです。と調子に乗って豪語したくなります。

FOSTEXの技術であれば、この高域ピークを潰すのは造作もないのでしょうけど、あえて残してユーザーの選択に任せたのだと思います。限定ユニットだからこそ(?)の決定に拍手を送りたいですね。

まあ、冷静に見れば、(メカニカル2wayの影響なのか)指向性が鋭いので、ちょっと高域を盛ったのかもしれません。


そんなFE103-Solですが、4月中旬の発売予定のようです。
発売前には評論家の先生方が作例を作ったり、店舗でのデモが行われたりすると思うので、期待して待っていたいですね。

ちなみに、私ならダブルバスレフで作りたいです。量感重視でチューニングして、上質なドンシャリ感のあるPOPS特化型としてまとめるとか。

 バックロードホーン型の設計ポイント

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今年の1月に入って、マイペースに新型SPの作製を進めているカノン5Dです。
今回作製する「S-041」は、バックロードホーン型です!

バックロードホーン型を作製するのは、1年半ぶりでしょうか。
久々の作例になるので、今までのノウハウを最大限に生かして作製しようと思います。

今までの作例(S-001〜S-040)は、下記ページにまとめてありますので、
作品番号と対応させながら、BH設計のポイントを解説していこうと思います。
http://kanon5d.web.fc2.com/audio/souzou/souzou_top_2.html

?ホーンの長さ
一般的には長い方がよいと言われますが、私は全く同意しません。2mもあれば、重低音域まで十分に再生が可能だと考えています。むしろ、長いホーン長は遅い低音につながり、無暗にながくすべきではないのです。
(参考:S-013,S-019など)


?空気室容量
これは、ホーンをどこまで制御するかに関わってくると考えています。

ホーンは、「駆動」と「制動」の双方が必要で、この度合を決めるのが空気室容量になるのだと思います。
これが小さすぎると、音色感は良いのですが、中音〜中低音だけが張り出すような音になってしまいます。一方で、(スロート断面積が大きいのにも関わらず)空気室容量が大きいと、中低音不足の迫力や生気がない音になってしまったり、ホーンの付帯音が抑えられないスピーカーになってしまいます。
(参考:S-014)

この「制動」に注目しても、もどこまで必要かケースバイケースなのではないかと思います。(空気室を小さくして)ホーンを制動すれば、中低音のピークは抑えられると思いますが、共鳴によって得られている最低域の伸びは減少すると考えられます。この辺はまだまだ私にとって未知の領域ですね。

よく空気室容量の調整で、木片や小石を空気室に投入する方法がありますが、これらは吸音材や反響材、制振材としての効果も含んでしまい、空気室容量の差異を把握するのは難しいのでは?と思います。


<↓ 14.02.02追記>
?+α スロート断面積

スロート断面積は、ホーンの起点となる部分で、ここが変わるとホーン全体のサイズも変わってくる…という最重要ポイントです。

経験上では、以下の長岡先生の経験式でも大体あっていると感じています。

fx=10×S0/Va
(長岡先生はfx=100〜300を推奨。作例は200〜250が多い。)
S0:スロート断面積[cm2]
Va:空気室容量[L]

長岡先生は、fxをホーンのクロス周波数(高域再生上限)としていましたが、実際はそれほど明白にハイカットがされる訳ではありません。
ただ、スロートを大きくしたり、空気室容量を小さくすると、中低域がリッチなサウンドになるなるのは経験済みです。長岡氏の経験式は、ある程度は参考になると感じています。

そこで、S0は、とりあえず振動板面積の0.8倍となる適当な値に設定して設計を進めるのが良いと思っています。
<↑ 14.02.02追記>


?空気室の形状、スロート位置
空気室の役割として、ユニットから出た音をホーンに流し込むことがあると考えています。
ユニットは最高の「共鳴駆動装置」であると共に、電磁制動による最高の「吸音材」でもあるのです。よく、スロートに吸音材を投じてホーンの共鳴を抑える手法がとられますが、吸音材に比べ、(中〜低音域では)スピーカーユニットの制動力は遥かに強力だと思うのです。

結論として、ユニットはスロートの近くにする。スロートからの空気の流れをスムーズにするような空気室形状が好ましい。と考えています。
(参考:S-020,S-013など)


?吸音材の配置
ホーンの中にも適量の吸音材は必要だと思っています。ホーンの両端(スロートや開口部)に吸音材を設置すると、低音の迫力感を失いやすいです。
お勧めは、ホーンの中間位置や、ホーンの折り返し部などでしょうか。この部分は完成してからだと手が付けられないので厄介ですね。
(参考:S-017,S-019など)


?ホーンの形状
基本的にはエクスポネンシャル曲線で構成されるものが好ましいです。この基本形状は厳守したほうが良いのですが、開口部はあまり広げすぎないほうが重低音量感に有利なようです。
(参考:S-004,S-005,S-010,S-013など。)

バックロードホーンにおける低音の「量感」と「伸び」はトレードオフです。魔法も奇跡もありません。
この割合を決めるのは、ホーンの広がり率です。0.9〜0.7程度の中で選び、0.8前後の値が好ましいでしょう。なお、広がりが急(広がり率が大きい)のほうが量感重視です。
(参考:S-017,S-018など)

※「広がり率」については、下記ページ参照。
http://kanon5d.web.fc2.com/audio/kouza16.html

ホーンは無理に曲線で構成する必要はなく、むしろ階段状のほうが重低音量感は出しやすいのです。20〜30cmごとに広げていくのが良さそうです。
(参考:S-022など)


?ホーンの取り回し
まず、断面積は正方形がベストです。扁平率が高くなると、重低音量感が著しく減少してしまいます。特にスロート部は影響を受けやすいので、縦横比が1:2以下の扁平形状にならないようにしたいですね。

ホーンの折り曲げ方は、180°のみで構成すべきです。90°の折り曲げは、低音量感を大きく損なうようです。
折り曲げ部は、滑らかにつながるよう「斜め板」の設置が共鳴音防止に効果的だといえます。この「斜め板」の効果は絶大で、ホーホーといった不快な共鳴音を-10dB程度減少できると感じています。
(参考:S-018,S-020〜022など)

ホーンの折り曲げ回数は、多くても問題ないようですが、基本的には少ないほう(1〜2回)が良いでしょう。


?開口部の位置
開口部の位置は、案外複雑な問題だと思っています。
よく言われるのが、「前向き」か「後ろ向き」かの問題。スワンのように後ろ向きの場合、低音量感は確保しやすいのですが、壁の影響を受けやすく設置による影響を受けやすいと感じています。
私のおすすめは、断然「前向き」で、壁の影響を受けにくく、扱いやすさが魅力です。たまに前向きだと中低音の付帯音が聞こえやすい…とか言われますが、そもそも付帯音のあるホーンは開口部がどちらに向けようと付帯音を減らすのは困難です。

さらに、上部に開口部を設置する際は、開口部が揺れないようにするのもポイントです。
ホーンから出てくる音は「大面積・小振幅」であり、バスレフのような「小面積・大振幅」に比べ、本体の揺れの影響を受けやすいのでは?と考えています。

SP本体は、ユニットの振動をうけて前後に揺れるものです。この影響から逃れるには、開口部を上面・底面に設けるか、左右対称(2箇所)に配置して振動をキャンセルする必要があると考えています。




長々と書いてしまいましたが、果たしてどこまで本当かは分かりません。
これからの作例で、少しづつ明らかにしていければと思います。

 FE126Eのバックロードホーン設計

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現在制作中のバックロードホーン(BH)型のスピーカー<S-041>の設計について、説明しようと思います。

使用するユニットは、FE126E。



現行のFE126En(5775円/本)の旧型ですが、大きく特性は変わりません。

『軽量振動板×強力磁気回路』を安価な価格で実現したユニットで、カノン5D一押しの製品です。

そんなFE126Eの特性はこんな感じ。(カッコ内はFE126Enの数値)

共振周波数:70Hz(83Hz)
能率: 93dB/w(93dB/w)
m0 :2.9g (2.8g)
Q0  :0.25 (0.30)

これを見るだけでも、十分にBH用のユニットだと分かりますね。
12cmフルレンジとしては異様なまでに軽量な振動板重量(m0)と、十分に高い能率がBH用ユニットとしての高い適性を感じさせます。

ちなみに、周波数特性はこちら。
<FE126E>



<FE126En>



いわゆるハイ上がりですが、これもBH用ユニットの特徴ですね。
中低域以下の帯域をホーンで増強することで、全域でハイレスポンスな音を狙うことができるのです。



さて、箱の設計ですが、こんな感じです。


(クリックで拡大)

寸法など、ゴチャゴチャ書いてあるので、
スッキリさせたのがこちら。


(クリックで拡大)

空気の流れは、A→B→C→D→E→F→Gとなっていて、
A〜Dまでが一本の管で、そこから左右に分岐してE〜Gとなります。

ホーン全長は、約2.5m。
スロート断面積は、49cm2 (絞り率0.75)
開口部面積は、313cm2 (面積比:6.4倍)


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私がBH型を設計する場合は、まずスロート断面積から決めます。

FE126Eの振動板面積は、66.4cm2。

今回の作例では、スロート絞り率は75%としました。
FE126Eなら、もう少し欲張れますが、本体サイズも比例して大きくなってしまうのでこの程度に収めておきました。


次は、ホーン広がり率を決めます。
とりあえず、ホーン広がり率は「0.8」に設定しました。
重低音の伸びと量感を狙っての値です。


(クリックで拡大)

この「スロート断面積」「広がり率」に合わせて、ホーンの各部の寸法を決めていきます。

スピーカー全体のデザイン、ホーンとり回しや、寸法をラフデッサンで決めながら、次第に妥協できるところへ落ち着けていきます。
適当に描いてみて、理論的なエクスポネンシャル曲線との乖離があれば、そこを訂正してまた描いてみる…というのを何回か繰り返していきます。

んで、寸法や、ホーン長さを適当な値に落ち着かせるのです。
今回の設計では、ホーン長が2.5mとなりましたが、2.3〜2.7mぐらいでもGOサインを出したと思います。

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さて、他にも設計のポイントをいくつか挙げると・・・


(クリックで拡大)

?くさび形スロート
設計図の「A」→「B」が、逆ホーン型の形状となっています。ユニットからの空気をスムーズに送り込むことを狙いとしましたが、果たして効果はどうなんでしょう?

?斜め板
「C」「F」などのコーナー部には、45°の斜め板を装備。これは中低域の付帯音低減に効果絶大なので、必須装備です。
「45°斜めカット」など、テクニカルなことはせず、普通にカットした10cmの板(断面よりちょい小さ目サイズが良い)を45°に設置するだけです。

?デッドスペース
Aの後方(ネック後方)や、Cの後方にはデッドスペースを設けました。
最終的な音色調整時に、小石でも入れてみようと思います。




設計編はこれで終了。
次は、組立編です!

「アニソンオーディオVol.1」を買いました!

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先ほど、「アニソンオーディオVol.1」を買ってきました!




1冊2000円と、結構値が張るので購入を一時躊躇いましたが、
中身を見て納得。

凄い量のインタビューに、アニソンのソフトレビューがあるじゃないですか。
おまけに、DVD-ROMのDSD音源付き。
そして、広告が少ないw


「アニソンを高級オーディオで聴く」ってこと自体、余りメジャーなことではないですし、拒否反応されることも多々ありました。むしろ、「イイね!」なんて言われる確率のほうが少なかったかもしれません。

その中で、この雑誌の存在は、とても勇気づけられるものでした。


インタビュー記事からは、音響エンジニアのアニソンに対する熱い想いがひしひしと伝わってきますし、
まさかの竹達さんに、茅原みのり も登場してくるサプライズもあり、
そして何よりも、ライター・編集者の方々が、アニソンが大好きなのが伝わってくる誌面でした。


あまりにもマイナーなジャンルなので、季刊でさえ難しいかもしれませんが、
次号を楽しみにしようと思います。
(それまでにDSDを聴ける環境を整えたいなぁw)

 作製編1

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今回はS-041の組立編です。
BHの組立は、組み立てるに従って、ホーンの形が見えていく面白さがありますね。





まずは、設計図に従ってホーンの形を作っていきます。




ホーンの出口は先に開けておくのがコツですね。
(図面D部分なので、図面Eへの連結部になるところです)






組立が終わる前に、吸音材を仕込んでおきます。
吸音材は、定番の金魚用フィルターです。安くて入手しやすくて、音もまあまあ(?)というGOODな素材なのです。







ラストの締め付けは、しっかり。
これでも、隙間ができてしまうので、そこはボンドで埋めておきます。






あとは、空気室です。
磁気回路が大きいので、ザグリは必須です。この加工は、中高音の情報量増大・歪感低減に大きな効果があるのです。




前回のブログでは、空気室の設計について大きく触れませんでしたが、
ユニットとスロートの位置が近いのが特徴です。




こうして、箱が完成です。(中央部だけですが…)







とりあえず、中央部だけでも出来上がったので、
次回は音だしと、測定をやってみましょう。

 試聴・測定編1 (FE126E+1.9L空気室+中央ver.)

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前回の続きで、バックロードホーン型スピーカー「S-041」の試聴と測定をしていきます。




おさらいとして、今回、視聴・測定するS-041の設計はこんな感じ。
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搭載ユニット:FOSTEX FE126E
(口径12cm、m0:2.9g、Qo:0.25、実効振動板面積 66.4cm2)
空気室容量:1.9L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:74%、Fx=260Hz)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
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なお、「Fx」「ホーン広がり率(広がり定数)」については、下記ページを参照してください。
http://kanon5d.web.fc2.com/audio/kouza15.html
http://kanon5d.web.fc2.com/audio/kouza16.html





正面から見ると、かなり細みのスタイルのスピーカーですが、音は充実しています。低音も80Hz前後まで出ており、バランスもまずまずです。

花澤香菜のclaireを聴くと、女性ボーカルの活き活きとした表現が見事だと分かります。FOSTEXの紙コーンらしい張り出しの良さを基調として、音楽を楽しく聞かせるスピーカーだといえます。
若干カマボコバランスで高域楽器が大人しいですが、単独で聴いていれば不満は覚えないでしょう。

アコースティック楽器ではさらに潜在能力を発揮します。バイオリンの響きや、音像描写はしっかりしています。強力な磁気回路のおかげで、滲みやすいウッドベースも骨格豊かで、楽器の質感を伝えます。

バックロードホーン(以下、BH)らしい音を聴かせるのは、やはり低音。音階は明解そのもので、(倍音がメインながら)オルガンやグランカッサの質感は十分。
音圧レベルそのものは、口径や本体サイズの限界を感じますが、それでも立ち上がりが明瞭な低音は十分に【聴こえる】のです。

BHの欠点として指摘されやすい共鳴音は、ほぼ確認できませんでした。チェロ四重奏を聴いても、違和感は皆無です。
ホーン長が短いBHは癖が出にくい…と言われますが、今回もその法則が適用できたようですね。

欠点を挙げるとすれば、やや音に「固さ」があることでしょうか。ギターの独奏では、抑揚豊かな演奏に聴こえる一方で、ギターの本体が響かせる繊細な響きや倍音成分は少なめでした。オルガンももう一歩伸びやかさが欲しいところです。



さて、試聴感想はこんなところにしておいて、
早速測定をしていきましょう。

まずは、SP本体を壁際(普段の設置場所)に設置し、軸上1m(片ch)で周波数特性を測定します。



(設置:壁際、 距離:軸上1m )

若干ハイ上がりですが、低音部の90Hzのピークが幸いして70Hzぐらいまでは再生できているといっても良いでしょう。

ホーン長さが1.2mしかないBHとしては驚異的な低音の伸びだと言っても良いかもしれません。


次に、軸上から30°だけずらしたマイク位置で再測定するとこんな感じになります。


(設置:壁際、 距離:30°1m )

だいぶ聴感イメージに近いグラフになったかもしれません。



次は、スピーカーを ぐ〜っと壁から離して、
部屋の中央付近での測定を行います。


(設置:部屋中央付近、 距離:軸上0.5m )

なんと、低音が消えましたw
バックロードホーン型(特にホーンが短いやつ)は、部屋と一体となって動作するので、設置場所の影響を受けやすいのです。

あまり一喜一憂せず、淡々と測定を進めていきましょうw


こちらは、軸上ではなく30°ずらしての測定。


(設置:部屋中央付近、 距離:距離:30°0.5m )

10kHz以上は大分落ちますが、むしろフラットに近づいたかもしれません。
他のフルレンジに比べると、指向性は広い方だと思います。


お次は、ユニット直前の特性です。


(設置:部屋中央付近、 距離:ユニット直前 5cm )

近距離での測定なので、1kHz以上の特性はアテになりません。
注目は、低域に出現するディップで、ホーンの共振周波数に相当します。
本作では、60Hzと160Hzでしょうか。


こちらは、ホーン開口部の特性。
ホーン開口部に、ずぶっと(3cmぐらい?)マイクを突っ込んでの測定です。


(設置:部屋中央付近、 距離:ホーン開口部 0cm )
※ノイズの影響を受けた50Hz付近はデータ削除済。

典型的なBHのホーン開口部の特性で、160Hzから800Hzぐらいに細かい凹凸があります。聴感では気にならなかったものの、音響管としての共鳴が少なからず起こっているようです。



ラストは、インピーダンスの測定です。


山谷…が何個かありますが、
山は、38Hz、115Hz、200Hz、(315Hz)
谷は、80Hz、150Hz、(250Hz)
といったところですね。

なかなか解釈が難しいので、次回の日記以降で一つずつ考察していこうと思います。


さて、今回は沢山の測定結果を並べてしまいましたが、
次回の日記で、自分なりの解釈を加えながら、データを見ていこうと思います。

 試聴・測定編2

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最近は、雪や雨が続くのでオーディオが捗るなぁ〜と思っているカノン5Dです。

さて、前回はS-041初の試聴・測定編でした。(まだまだ未完成ではありますが…)
今回は、測定データの解釈をしてみようと思います。


前回紹介したのは主に3つでした。
「聴感特性」「周波数特性」「インピーダンス特性」


【分かりやすさ】という点では…
「聴感特性」>「周波数特性」>「インピーダンス特性」
という順番になるかと思います。

周波数特性で「50Hzが-12dBで…」とか言われるより、「ウッドベースも量感十分だ」と説明したほうが、大多数のオーディオマニアには分かりやすいのではないでしょうか。


しかし、【信頼性】という点では、以下の順番になるのでは?と思っています。
「インピーダンス特性」>「周波数特性」>「聴感特性」

「聴感」なんて、所詮は主観的評価なので、体調が変われば評価も一変してしまうでしょう。アンプやCDプレーヤー、アクセサリー(インシュレーターや電源)による差だって影響を受けてしまいます。

一方で、「周波数特性」は、半導体アンプであればアンプの種類が変わろうとも一定の測定値を示しますし、ましてやインシュレーターや電源系の変更で周波数特性が(大きく)変わることはありえません。

そんな「周波数特性」ですが、これも大きな落とし穴があると考えています。
測定したことのある方は分かると思いますが、「周波数特性」って、測定方法によって結果が激変するんですよね。前回の測定でも、部屋のどこにスピーカーを設置するかで、結果なんて豹変してしまうのです。

最後の頼りは、「インピーダンス特性」です。
私も最近になって測定し始めたのですが、なかなか信頼できそうです。箱の動作を正確に知ることができますし、なにより再現性が良いのが有難いのです。

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ま、結局、どれも大切で、どれも万能ではない…ということです。


さて、話をS-041に戻しましょう。

箱の動作を知るために大切なインピーダンス特性です。



今回は、1.2mのホーン長なので、想定される管共鳴周波数は…
基本振動:340/(1.2×4)=70Hz
3倍振動:(340/(1.2×4))×3=210Hz

インピーダンスの谷は共鳴周波数として解釈できるので、
一番下の共鳴周波数は、谷と一致しています。


しかし、三倍振動(210Hz)は、谷として確認できません。むしろ山?
ここの帯域の挙動については、ユニットの変更や、箱の変更の結果を確認してから判断したいところですね。


次に、ホーンからの周波数特性をみてみましょう。




ホーン出口の音圧ピークを低い方から数えてみると、
150Hz、280Hz、380Hz…と続いていきます。

150Hzと280Hzは、インピーダンス特性の谷(150Hz,250Hz)と一致しています。
つまり、インピーダンス特性の谷となる周波数で、「何らかの共振」が起こっており、それがホーンの音圧出力につながっている、という結果が得られています。




次に、新たな切り口として、(スロート部を遮蔽し、)1.9Lの密閉箱として動作させた時のインピーダンス特性を重ねてみます。




小さな密閉箱に入れたことで、FE126Eのf0が大きく上昇していることが分かります。

注目は、バックロードに入れた時のインピーダンスの凹凸の上限は、密閉箱のインピーダンスの上限と等しいことです。




これは偶然なのか、それとも何かの法則性が隠れているのか今のところ分かりません。
空気室容量や、ユニットの種類、ホーンの形状を変えてみての変化を見てみたいですね。



次回は、空気室容量を変えてのテストをしてみます。

 試聴・測定編3 (FE126E+2.7L空気室+中央ver.)

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さて、前回まで「S-041」の視聴・測定をしてきましたが、
この「S-041」は、ヘッド部分を交換して、空気室容量を自由に変更できるのです。






今回の日記では、
空気室容量を「1.9L(写真右)」から「2.7L(写真左)」へ変更しての違いを確認してみます。

おさらいとして、今回、視聴・測定するS-041の設計はこんな感じです。
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搭載ユニット:FOSTEX FE126E
(口径12cm、m0:2.9g、Qo:0.25、実効振動板面積 66.4cm2)
空気室容量:2.7L ←【ここ変わりました!】
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:74%、Fx=181Hz←【ここも変化】)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
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なお、「Fx」「ホーン広がり率(広がり定数)」については、下記ページを参照してください。
http://kanon5d.web.fc2.com/audio/kouza15.html
http://kanon5d.web.fc2.com/audio/kouza16.html

<視聴感想>

単純に空気室容量が違うだけなのですが、全く違う音で驚きました。
大きな変化としては、音のレンジが広くなる一方で、深みや味わいが減少してしまう感じです。


ソプラノは、1.9Lは密度感が高い表現だったのに対し、2.7Lではサラッと流す感じで繊細。2.7Lは客観的な表現という感じであり、三味線のような土臭さが欲しいものでは逆効果。アッサリとした音になってしまいました。

ウッドベースは、1.9L空気室では、緩急が自在な演奏を堪能できましたが、2.7Lでは輪郭が緩み、音程感も大幅に劣ってしまいボワンとした感じで鳴るようになってしまいました。

一方で、ギターは絶好調。1.9L空気室では硬さが残る音色でしたが、2.7Lはレンジが広く聞こえ、現代的な表現で好ましく感じました。

結論として、こんな感じでしょうか。
【1.9L】濃厚、表情豊か、ナローレンジ、ピラミッドバランス
【2.7L】繊細、単調、あっさり、現代的ワイドレンジ、上ずってる


2.7Lの状態で、さらに聴きこみを進めていきます。

茅原みのり「境界の彼方」では、開放感のある音色です。シンバルワークが手に取るように分かり、分解能は極めて高いといえます。
空気室を大きくしたことで、フルレンジの高域再生能力を十分に引きだせていることが分かります。フルレンジとは思えないレンジ感だといえるでしょう。

一方で、低域が殆ど感じられず、音階も曖昧。中低域のレベルも低く、かなりハイ上がりだと言えると思います。
良い意味で解釈すれば、楽曲の透明感の演出につながっている…といえるでしょうか。


次は、アコースティック楽器を聴いてみます。
ギターは、空間の広がりを感じさせ、音像もシャープ。手の動きを伝える高域の情報も十分です。
バイオリンは澄んだ表情で、切れ味に富んでいるのが好ましいです。胴の響きは得られませんが、音色の美しさは逸品です。

一方で、課題はやはり、中低域。
パイプオルガンは、低音がボヤけてしまい、音色も単調です。明らかにホーンが駆動できていない感じなのです。これではバックロードホーンの良さが感じられません。
チェロでは、かなり高い帯域に(500〜800Hz)にホーン鳴きが感じられました。和太鼓を聴いても湿っぽい感じで、余り好ましくありません。


<各種測定結果>

さて、視聴感想はこの辺にして、測定をしていきます。
今回は考察はほどほどに、測定結果を載せていきます。

まずは、SP本体を壁際(普段の設置場所)に設置し、軸上1m(片ch)で周波数特性を測定します。

(設置:壁際、 距離:軸上1m )

この辺は、1.9Lverとほぼ同じですね。

次に、軸上から30°だけずらしたマイク位置で再測定するとこんな感じになります。


これも、ほぼ同一。あれほど聴感特性が変化したのに、周波数特性は殆ど変らずです。


次は、部屋の中央付近での測定を行います。


うーん、140Hzにピークがあるように見えるかな?

こちらは、軸上ではなく30°ずらしての測定。

(設置:部屋中央付近、 距離:距離:30°0.5m )
ユニットは変化なしなので、高域の減衰は変化なしですね。

お次は、ユニット直前の特性です。

(設置:部屋中央付近、 距離:ユニット直前 5cm )

ディップは、60Hzと、160Hzにあります。これも、1.9Lverと同じですね。

こちらは、ホーン開口部の特性。
ホーン開口部に、マイクを突っ込んでの測定です。


(設置:部屋中央付近、 距離:ホーン開口部 0cm )


ラストは、インピーダンスの測定です。


綺麗な三つ山特性ですね。
この辺は、次回の日記以降で一つずつ考察していこうと思います。


さて、今回は沢山の測定結果を並べてしまいましたが、
次回の日記で、1.9Lと2.7Lの比較をしながら、データを見ていこうと思います。
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