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 試聴・測定編4 (空気室容量の検証 FE126E)

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2/11と前回の日記では、二つのバックロードの特性を紹介しました。




ユニットも、箱もほぼ同一。
空気室容量だけが唯一違いで、
2/11は1.9L、前回(3/8)は2.7Lという設計でした。

今回は、空気室容量の違いに注目し、データを比較しながら、
バックロードホーンの設計方法を考えてみようと思います。

まず、聴感上の違い。
【1.9L】濃厚、表情豊か、ナローレンジ、ピラミッドバランス
【2.7L】繊細、単調、あっさり、現代的ワイドレンジ、上ずってる

全帯域で見てしまうと分かりにくいのですが、
低音に注目してみると・・・

『ウッドベースは、1.9L空気室では、緩急が自在な演奏を堪能できましたが、2.7Lでは輪郭が緩み、音程感も大幅に劣ってしまいボワンとした感じで鳴るようになってしまいました。』(前回の日記より)


つまるところ、広めの空気室(2.7L)では、ホーンの制動力が弱まっているのではないか?と思っているのです。

確かに、空気室というのは、ユニットとホーンの間の「緩衝材」のようなものだといえるでしょう。


では、そう思って周波数特性を見てみます。
何事も先入観は大切なのですw



(1.9L、部屋の中央に設置、軸上0.5m)



(2.7L、部屋の中央に設置、軸上0.5m)


1.9Lのほうでは、低域はダラ下がりです。
一方で、2.7Lは、50Hzや140Hz付近にピークが確認できます。

この50Hzと140Hzは、ホーンの共鳴周波数に相当ており、
そのことは、ユニット直前の周波数特性や、インピーダンス特性から確認することができます。



(2.7L、軸上0.05m)
※ユニットの周波数特性の凹が、共鳴周波数。



(2.7L、インピーダンス特性)
※インピーダンス特性の凹が、共鳴周波数。

つまり、
大き目の空気室(2.7L)では、ホーンの共鳴が強くなり(制動が弱くなり)、その結果として周波数特性に共鳴音のピークが表れた…と考えられます。



さらに直接的な証拠として、
ホーンからの出力特性を見てみましょう。


(1.9L、ホーン開口部)


(2.7L、ホーン開口部)

特性のピークとディップを、それぞれ赤線と青線で結んでみました。

違いは一目瞭然です。
1.9Lでは、最大で10dB程度だったピーク⇔ディップですが、
2.7Lでは、最大で13dB程度に拡大しています。

これは、ホーン共鳴の制動力が、空気室容量によって変化し、
1.9Lに比べて2.7Lのほうが共鳴の制動が小さく、共鳴音が増大している証拠だと考えています。


こうして周波数特性を見ていると、
どうやら、空気室の大小により、共鳴の強さ(制動の強弱)が変わり、周波数特性に変化があるようだ、と分かってきました。


しかし、周波数特性というのは、測定誤差も起こりやすいので、まだまだ曖昧な結果だと言われても仕方ないでしょう。
先ほど、ホーン特性で+3dBの差を議論しましたが、「誤差範囲」と言われても反論できません。


そこで、最後に、インピーダンス特性を比較してみます。



(1.9L)


(2.7L)

どちらも、密閉型として測定したインピーダンス特性に従って、
BHとしてのインピーダンス凹凸の上限が決まっているようです。
(この話は、2/15の「<S-041> 試聴・測定編2」試聴・測定編2」に記載)

そして、1.9Lのほうが、密閉型としてのインピーダンス上昇が大きく、
BHとしてのインピーダンス特性の凹凸(ホーンを制動できる範囲?)も高域側まで伸びているといえそうです。

もう一点注目したい点としては、1.9Lのほうが凹が若干ブロードになっている点でしょうか。
インピーダンスの凹は共鳴周波数を表しており、そこでの特性がブロード(幅広)であれば、共鳴もブロードになる(=弱い共鳴)になるといえます。


つまり、インピーダンス特性から見ても、
空気室が小さい(1.9L)のほうが、ホーンとユニットの連結が強固であり、結果として共鳴が弱くなると考察できるのです。

ただ、ここで「空気室は小さいほうが(共鳴が抑えられるから)良い!」と結論付けることはできません。
空気室容量は、低音質感だけでなく、高域とのバランスを含めて考えるべきで、
今回の日記に書いたような、低音特性だけでは決められないことも多いのです。

あくまでも、今まで不明瞭だったバックロードホーン型スピーカーの設計に、
一つの新しい切り口を見出すことができたのでは?という感じの話です。


<今回測定したS-041のスペック>
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搭載ユニット:FOSTEX FE126E
(口径12cm、m0:2.9g、Qo:0.25、実効振動板面積 66.4cm2)
空気室容量:【1.9 or 2.7L】
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:74%、Fx=【260 or 181Hz】)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
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さて、今回はFOSTEXのFE126E(FE126Enの旧ver)を使用しての検証でした。
この結果は、他のユニットでも同様なのか気になるところです。

そこで、次回の日記ではユニットをParcAudio DCU-F121Pに交換してのテストを報告しようと思います。




「FOSTEX FE103-sol試聴会(小澤先生)」に行ってきました。 1

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先日、コイズミ無線での試聴会に行ってきました。
お題は、もちろん「FE103Sol」。

先日発表されたばかりの、FOSTEX製の10cmフルレンジの限定ユニットで、
今回は、バスレフ型の作例や、ウーハーを追加した2wayの作例を聴くことができました。


最初に聞いたのは、レギュラーモデルの「FE103En」です。
「FE103En」は「FE103Sol」の原型となったユニットで、まずはその実力を確認しておきたいところです。




まずは、バイオリンとピアノの曲から。
この曲では、FE103Enの弱点が明白になってしまいました。バイオリンは刺激的であり、ハイの伸びも少なく潤いに欠けるものです。低域こそ、引き締まったものでしたが、この曲ではメリットになりません。

ソプラノとオルガンの曲でも、やはり固さを感じてしまいます。ソプラノの高域は耳につき、自然さは少なく、残響音も分離できません。

コントラバスなどの弦楽を聴くと、骨格の豊かな低音に驚かされます。FE103Enの駆動力は、このバスレフ箱を十二分に駆動てきているといえるでしょう。
チェロのふくよかさは余り感じられず、ちょっと不自然です。

まあ、FE103Sol用の箱に入れて聴いているのですから、FE103Enの実力を発揮できなかったのでしょう。 FE103Enは、もうちょっと負荷をかけて、箱から低音を引き出してバランスをとって使いたいものです。


さて、いよいよ、FE103Solの登場です。





箱は先ほどのFE103Enと全く同じですが、やはり音は全く違うものでした。

バイオリンとピアノの曲では、すーっと伸びたバイオリンの高域に驚かされます。さすがに高級ツイーターと比べると粗さを感じますが、10cmフルレンジとしては極めて優秀だといえるでしょう。8cmのFE83Enと比較しても勝るとも劣らない高域だといえます。
演奏者の技巧は見えにくいものの、整ったサウンドです。

ピアノとソプラノの楽曲では、ソプラノの粗さがなくなり、歌い手の心情が伝わってくる表現力を感じました。歌としての緩急も感じられ、FE103Enとの差を感じさせます。サ行は強くなく、使いやすい印象でした。どちらかといえば、FE83Enに近いのでしょうか。

コントラバスの楽曲では、馬力のあったFE103Enと比べると、やや不利な印象。低音の力感は大幅に減少し、上辺だけをなぞるような演奏に聞こえてしまいます。低音の伸びはFE103Enと大差なしです。


さてさて、FE103Solの良さが見えてきたところで、
小澤先生の作例の登場です。




内容量を1.5倍に設定し(9L)、
共振周波数を70Hzに設定しているとのこと。




ダクトとユニット直前の特性の合成では、
低音に盛り上がりがある感じ。

これを、25cm軸上で測定すると、こんな感じ。



周波数特性は、測定方法によっても結果がコロコロ変わってしまうので、
なかなか難しいものですね。

さて、実際に聴いてみると・・・

バイオリンとピアノの曲では、演奏に勢いが感じられて好ましく感じました。ピアノもバイオリンもノリノリです。

ソプラノは、人の声の温もりが加わり、伸びやかで自然体な表現。残響音は少なめですが、音の固さも減った感じです。

コントラバスの弦楽では、一番まとまりのあるサウンドでした。ややモワつきがあるものの、どの帯域も均質な表現となり安心して聴いていられる音だと感じました。

小澤先生は、「16Ωなら、これぐらいの容量があっても良いのでは?」とのこと。確かに、小さなエンクロージュアで背圧をかけるより、大き目の箱で鳴らしてやった方が、FE103Solの持ち味を発揮できるのかもしれません。



今回は、まず3機種の視聴感想を書いてみました。

私自身、FE103EnとFE103Solの差は大きいと感じました。
特に「FEシリーズは高域にキツさがあるよねぇ〜」と思っている方にはオススメでしょう。

次回は、FE103Solの詳細と使いこなし方法について書いてみようと思います。

「FOSTEX FE103-sol試聴会(小澤先生)」に行ってきました。 2

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前回の更新から、1か月近く経ってしまいました(汗)
既にお手元にFE103Solが届いている方も多いのではないでしょうか。

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さて、FE103Solの詳細ですが、
炭山アキラ先生のブログに書いてありますので、リンクを貼っておきます。
2014.02.14「FE103-Solを聴いてきました」
http://speakercraft.asablo.jp/blog/2014/02/14/7222087


カタログ的な説明は皆様「耳タコ」だと思いますので、
FE103Solの特徴ともいえる銅キャップの写真を一枚貼るだけに留めておきます。


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試聴は、アキュフェーズのアンプから、真空管アンプへと切り替えて行われました。
今回用意した真空管アンプは、MJ誌の12月号で製作された5極管シングルアンプです。
KNFB(カソードフィードバック)とPK帰還しか使用していない設計だとか。



アキュフェーズのアンプと比較すると、ピアノの音が濃くなったように感じました。
一方で、ややモッサリしてしまう感じもあり、ローコスト設計のアンプの限界を感じる場面もありました。


ここで、小澤先生が「今回は、壁から離れた4π空間での視聴なので、2π空間での再生を基本に設計したスピーカーでは、低域不足となります。」と説明され、アンプ側で2dB程度のバスブーストを実演。

音楽を聴くと、確かに違和感のない範囲で厚みのある音に変化したなぁ〜と感じることができました。
小澤先生は、「違和感のあるイコライジングにならないためにも、上昇幅は6dB以下(3dB〜6dB)が良い」と説明していました。塩加減も適量がベストという訳ですね。



さて、再びアンプをアキュフェーズに戻し、
「FF165WK」をサブウーハーとして使った大型システムに進みます。



上部に乗っているのは、先ほどまで聴いていたFE103Solの小型バスレフ箱(小澤先生作)です。
これに、15L密閉箱とバスレフ部(共振周波数65Hz)を併せ持つ「ケルトン型」のサブウーハー部が組み合わさっています。
(製作記は、MJ誌の3月号か5月号とのことです。詳細は確認願います。)


小型バスレフ単独で鳴らしていた時と比較すると、
まずピアノの低音の響きの充実さに驚かされます。コントラバスも50Hzぐらいまでは余裕出ているようで、質感としても違和感のない範囲だと感じました。

JAZZを聴くと、低音域まで十分に伸張しており、迫力十分。フルレンジで鳴っている高音域のキレも上々で、開放感のある好ましいシステムだと感じました。
バックロードホーンほどの低音域の描写力はありませんが、低域に遅さは感じず、一般的な大型バスレフシステムとしては十分に成功していると思います。


さて、ここで予想外の「アニソン」タイム。
エヴァンゲリオンのOP曲「残酷な天使のテーゼ」を視聴することができました。

FE103Sol単独のバスレフ箱では、低域がダラ下がりのチューニングとなっており、ボーカルのサ行が明らかに目立つ音色。アニソン向けのチューニングではないのは明らか・・・という感じでした。

一方で、そこに先ほどのサブウーハーをアドオンすると、存在感のある低音が出てきました。クラッシック向けにチューニングされているという小澤先生の言葉どおり、ドラムの音は粘りと重量感を感じるものでした。
私の好きな「軽低音」ではありませんでしたが、いわゆる「重低音」の再生が出来ており、多くの人にとって親しみやすいサウンドになっていたと思います。

私の好みの問題はさておき、
十分な低音さえ確保できれば、FE103Solはアニソンを好ましく鳴らす能力がありそうです。
FOSTEXのフルレンジというと気難しさをイメージしてしまいますが、低歪なFE103Solは今までとは違う逸品だなぁと感じました。

今回は、FOSTEXの方の企画で実施されたアニソン試聴でしたが、アニソン再生においても十分な低域を再生することの大切さ、そして、FE103Solのアニソン適性が確認することができました。



さて、ラストはFF165WKとFE103Solを2wayとして使用したスピーカーの試聴です。



ウーハーとして使われるFF165WKは、2.8mHコイルで高域をカットし、ダブルバスレフ型の箱に格納しています。一方、FE103Solは、37.2μFで低域をカットし、密閉型(5L)で鳴らします。

先ほどのシステムと比較して、ややハイの鋭さとDBの低音の遅さが耳につきます。
一方で、ピアノ演奏では奥行感が感じやすく、中低域は好ましい音色感でした。音単独の魅力では、先ほどの(フルレンジ+サブウーハー)に分があるようですが、こちらはボーカルやチェンバロの響きといった繊細な表現に長けていると感じました。



さてさて、長文の記事となてしまいましたが、
FE103Solの試聴記はここまで。

私の手元にもFE103Solの実物が届いており、
「ペア梱包なのかwww しかも、ペラペラの新箱!」と、聴く前から大興奮しております。

FE103Solのスピーカー作製は、この春か夏頃に予定しています!

〜FE103-sol試聴会 Fin.〜

5月の自作スピーカーイベント告知 (塩ビ管、PARCサウンド鑑賞会)

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春の自作スピーカーイベントを紹介します。

1. 「集まれ塩ビ管スピーカー・関東オフ会2014」


・日時:2014年5月11日(日) 10:00頃開始(9:30開場)16:00頃終了予定。
・会場:神奈川県横浜市 「横浜ラポール 3階ラポール座(視聴覚室)」
[参考URL]http://www.enbisp.com/modules/news/index.php?page=article&storyid=66

塩ビ管で作られたスピーカーが集う、年1回のイベントです。
「オフ会」ではありますが、初見の方も参加しやすい雰囲気のイベントです。

当日は、11名の参加者がスピーカーを持ち寄り、発表します。
音響特性の良い部屋で、塩ビ管ならではの面白い形のスピーカーから、本格派の逸品までが聴けるイベントだと思います♪


2. 「2014 第4回PARCサウンド鑑賞会」


・日時:2014年5月31日(土) 10:00〜17:15
・場所:東京都港区 「九州工大鳳龍クラブ(新橋駅前ビル5F)」
[参考URL]http://blog.goo.ne.jp/ac-audio/e/e60b7398103f18041741dd96b85b7b77

冨宅氏の率いるスピーカー(ユニット)ブランド「PARCAudio」。
このユニットを使った作品が集まります。
アットホームな雰囲気で、和気あいあいとした雰囲気のイベントです。

当日は、10名の参加者がスピーカーを持ち寄るほか、
PARC Audioの冨宅氏による技術解説や、Mr. Hippo(A&Cオーディオ社 代表)による珍しい?実験なども予定しております。



これらのイベントには、私も作品を持っていき、発表する予定です。


新作!<S-042>


それでは、ご来場をお待ちしております!

2014年3月終了アニメ(冬アニメ)感想

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もう今期アニメも5話程度進んでいますが、
ちょっと戻って、3月終了の冬アニメをふり返ってみたいと思います!

「凪のあすから」
文句なしの秀作。PAWORKSらしい繊細な恋愛模様と、海と地上で繰り広げられるダイナミックな舞台が見事に合わさっていたと思います。
まあ、とりあえず、美海かわしいよw


「鬼灯の冷徹」
終始切れ味の良いギャグを楽しむことができました。ギャグメインなのですが、煩くならないのがこの作品の良さですね。やはり鬼灯様の影響力が大きいのでしょう。

「キルラキル」
こちらは熱血のバトルアニメ。想像を絶する展開で終始楽しめました!
声優さんの演技も絶好調で、世界観にどんどん飲み込まれていった作品でした。


あとは、「桜トリック」「ノラガミ」「Saki−全国編―」「中二病でも恋がしたい」「スペースダンディ」なども楽しかったです。普段なら「今期の三本の指」に入るような作品ですが、今回は題名のみに留めます。
ネタとしては「最近、妹のようすがちょっとおかしい。」「となりの関くん」「のうりん」なども面白かったです。声優さんの個性が爆発していて凄かったですw


さてさて、春アニメも中盤が近くなってきました。
今後も注目してみていきたいですね!

5月の自作スピーカーイベント (塩ビ管、PARCサウンド鑑賞会)

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昨日、PARCサウンド鑑賞会に行ってきました。
これで5月の自作スピーカーイベントは一段落ですね。

ここで、ちょっと振り返りをしてみたいと思います!

<集まれ塩ビ管スピーカー・関東オフ会2014>


昨年度参加したときは、普通の「木箱」だったので、
今年は、初の「塩ビ管」方式を作ってみました。

塩ビ管は、長所として箱容量やダクト長の調整が容易なのに対し、
定在波や箱設計(縦横比とか)では、自分の塩ビ管ノウハウ不足を感じるところもありました。

ユニットは「FE103Sol」です。
同じく参加された、なーおさん、kenbeさんの作品もFE103Solを搭載しており、
FE103Solの使いこなし方を勉強する良い機会になりました。

他にも、Stereo誌付録ユニットを中心に、
創意工夫に富んだ、皆さんのスピーカーを聴くことができて良かったです!

当日発表のあったスピーカーの詳細)は、下記リンクにありますので、ぜひご覧ください♪
http://www.enbisp.com/modules/xpwiki/154.html



<集まれ塩ビ管スピーカー・関東オフ会2014 >


こちらも、昨年に引き続き二回目の参加となりました。
昨年は、8cmウッドコーンでの参加でしたが、さらなる音離れの良さを狙って10cm紙コーン「DCU-F121P」を使ってみました。

当初の設計では、もっと小さな本体寸法だったのですが、
低音量感の増大を狙い、限界まで本体サイズを大きくして本番に臨みました。

当日は、大小様々なスピーカーが集まり、
終始楽しく視聴することができました。

とくに、高級ユニットをつかった2wayは聴き応え満点の逸品だと感じました!

当日の様子は、A&Cオーディオ社さんのブログで見ることができますので、ぜひどうぞ♪
http://blog.goo.ne.jp/ac-audio/e/3659fec43e63134713ad96fd69a3dd89?fm=rss


<発表スピーカー「S-042」について>


外観を除いて、音質だけでコメントすると、
まあまあな作品だったと思います。

良かったところとしては、カノン5Dらしい「音の表情」「ニュアンス」「音色美」といった部分を全面に押し出すことができたことです。

スピーカーからの再生音は、物理的性能に基づく音も大切なのですが、何よりも「演奏家や歌手の感性に触れられる」ことが大切ではないかと思っています。
どんな音が好ましいか、、、まで言及できるほど私の経験は多くないのですが、
「歌のニュアンスが再生できているか」「演奏家のノリノリな雰囲気が出ているか」などを考えながら、各種試行錯誤した結果が<S-042>の音になっていたと思います。

そんな本作のポイントが、どの会場でも再生音に表れていたかなぁ〜と思っています。


一方で、良くなかったところとしては2つ。(まあ本当はもっとあるのですがw)

一つ目は、ユニットの低音再生能力をフルに引き出せなかったこと。
塩ビ管スピーカーOFF会で測定して頂いたインピーダンス特性でも明らかなように、ダクトの効きが弱いのです。

原因は不明ですが、少なくとももう少しユニットに負荷をかけて、しっかりと低音を引き出したかった…というのが本心です。


二つ目は、若干音に固さが残ることがあったこと。

とくに女性ボーカル(POPS、ソプラノ)などで、耳障りな音が残っていたかなぁ〜と感じています。

今年の4月の引越しに伴い、部屋の環境が大きく変わってしまったため、スピーカーのチューニングで、粗を見つけることができなかったのが原因でしょう。
この辺は、リスニングルーム環境作りと並行して進めることができるので、しっかりと対策していきたいですね。




そんなこんなで、自作スピーカーイベントも無事に終了。
秋の「スピーカー再生技術研究会」「ミューズの方舟」にも、何かネタを用意できると良いなぁ〜と思っている、今日のこの頃です。

2014年6月終了アニメ(春アニメ)感想

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もう春アニメも終了の季節ですね。
最近、時の進むスピードが速く感じるカノン5Dです。

では、定番の3作品を挙げたいと思います。

「一週間フレンズ」
すっごいピュアな恋愛ものですが、それが自然な形でまとまっていたのは良かったです。メインの2人以外のメンバーも、良い味を出していたのが成功の秘訣だと思います。

「ノーゲーム・ノーライフ」
最初はSAOっぽい感じかな?と思いましたが、どちらかといえばバトルアニメ的なワクワク感を終始感じることができました。

「ご注文はうさぎですか?」
典型的な、ゆるふわアニメですね。背景の描き方も丁寧で、良い雰囲気を構成できていたと思います。チノかわしいよw


次の夏アニメも充実の作品がそろっているようで、
これからも楽しみが続きそうです。

自作シルヴァンver.2 の製作(1)

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ルームチューニングはオーディオ趣味の中でも大きな比重を占めるポイントです。

最近注目されている、ルームチューニングアイテムとして「シルヴァン」があります。
「シルヴァン」は、日東紡エンジニアリングが発売しているルームチューニング製品です。



ネットでの話によると、効果抜群とのこと。(殆どが宣伝記事ですがw)


一見しただけでは、ただの柱がたくさんあるだけですが、
実は、細かい技術が詰め込まれているのです。

その技術にフォーカスしたのが、次の日記です。
2011年05月24日「日東紡音響「SYLVAN(シルヴァン)」の技術を紐解く!? (1)」

連載で4回に分けて、特許技術を中心に紹介しました。


それに基づいて、作製した「自作シルヴァン」の一号機はこちら。
2012年04月20日「シルヴァン(偽1)を作ってみた  制作編」

この時は、手元にあった木材を組み合わせて作成しましたが、
部屋を拡張したかのような自然な反響音の実現に一役買ってくれる逸品となりました。


そんな作製から2年が過ぎ、
再び、シルヴァンの作製を目指すことになりました。

今回は「ver.2」ということで、
より大きなスケールでの作製にトライしてみようと思います。

木材は汎用建設材の「2×4」。
一本200円程度で購入できる、なかなかC/P比の高い材木なのです。



ちなみに、製品では円柱状の木材が使われていますが、
まあ角材でも変わりないのです。(たぶんw)

完成予想サイズは、180cm(H)×40cm(W)×20cm(D)で、
なかなかの大物になりそうな予感がします。

作製が進みましたら、また日記に書こうと思います!

 試聴・測定編5 (ユニット変更 TangBand W3-582SC)

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久々にバックロードホーンのことでも書こうと思います。
前回の日記から、既に5ヶ月近く経ってしまったので、まずはふり返りから。

前回の日記:2014年03月08日
「試聴・測定編4 (空気室容量の検証 FE126E)」
http://blog.goo.ne.jp/4g1g4g0/e/1202e1e135d7922ba7f110ea5cf0a79c

「試聴・測定編3〜4」では、空気室容量の違いが音に与える影響を確認しました。
そのあと、ユニットをParcAudioのDUC-F121Pなどに変えましたが、同様の傾向でした。


では、ユニットを大きく変えるとどうなるか。
類似のユニットではなく、口径も性格も異なるユニットを用意して、評価してみました。

まずは、TangBandのW3-582SCに変えてみます。
このユニットは、典型的な8cmフルレンジです。



開放系でのインピーダンス特性でFE126Eと比較をしてみましょう。



12cmのFOSTEX FE126Eのf0が90Hzなのに対し、
8cmのTangBand W3-582SCは140Hzとなっています。

なお、カタログスペックだともう少しf0は低いのですが、
小音量(200mV)での測定なので、この位はズレるものです。


このW3-582SCを、バックロードホーン型の箱に入れると、こんな感じになります。(青線)


箱は前回のFE126Eの時と同じで、概要はこんな感じ。
---------
空気室容量:1.9L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:153%、Fx=260Hz)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
----------


同じ箱に入れたFE126Eのインピーダンス特性と比較すると、こんな感じ。


明白に分かるのが、インピーダンス特性の凹の周波数(横軸)は、
ユニットが変わっても殆ど変っていないことが分かります。

つまり、バックロードホーンの凹は箱に依存するファクターだといえるのです。

一方で、凸については、ユニットにより変化するファクターのようです。(特に一番周波数の低い凸)
この辺はまだまだ不明点が多いですね。


さて、ラストは周波数特性です。

ユニット直前(0.05cm)


共鳴によるディップが確認できますね。
(エンクロージュアで共鳴が起こると、振動板の動きは抑制され、振動板からの音圧は低下します)

ホーン開口部からの音圧特性


典型的なBHの特性が得られています。
W3-582SCはバスレフ向けのユニットとされますが、特性上は全く問題なくBHとしての働きをしてくれるようです。


一般的な周波数特性はこちら。軸上0.5mでの特性です。


軸上から30°のポジションでは、こんな感じ。


このユニット、かなり指向性が広く、
30°ぐらいのズレでは大して高域特性が変わらないのが特徴だと言えます。


ちなみに、箱を壁際に近づけるとこんな感じ。軸上1mでの測定です。


低音の量感がぐっと出てきて、良い感じですね。
50Hzまで十分な音圧があり、8cmフルレンジとは思えない周波数特性です!


<音の感想 (当時のメモより)>
周波数特性上はかなり良好なのですが、聴感上は微妙な感じなのです(汗

全体的に付帯音が多く、モワつきが感じられます。小口径フルレンジとしてのスッキリとした音を求めると、空気室部分(1.9L)の密閉型としてしまった方が好印象な感じです。

低音は、BHらしいドカンとくる音ですが、どことなく「重たい」「暗い」雰囲気で好ましいとは言い難いものでした。
8cm口径としては、スロート断面積が異様に大きく設計しているので、その辺のミスマッチが出てしまったのでしょう。

ユニットのお蔭で、中高域は低歪な上品さのある音です。ソプラノボーカルなどはクラッシックらしい伸びやかさを感じさせます。小さ目のダブルバスレフ箱などで、上品な低音を付与してあげればこのユニットの良さを生かせるのでは?と思います。

今回は、12cm用に設計したバックロードホーンに8cmユニットを入れたので、実用性という点では難ありという結果でした。
しかし、インピーダンス特性を支配する要因や、f特と聴感の関係など興味深い結果が得られたと思っています。


さて、次回は逆のパターンで、12cm用の小さな箱に、16cmユニット「FE168EΣ」を取り付けてみようと思います。
また更新は気が向いたときに行いますので、今しばらくお待ちくださいませ(汗

 試聴・測定編6 (ユニット変更 FOSTEX FE168EΣ)

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さて、前回に引き続き、バックロードホーン箱のお話です。

12cmのFOSTEX FE126E用に作製した(まだ仮組み状態ですが…)、S-042エンクロージュアに対して、
様々な口径のユニットを装着してみる・・・という試みです。

前回は、TangBandの8cmユニットを装着しましたが、
今回はFOSTEXの16cm口径フルレンジ「FE168EΣ」を装着してみました。





まずは、基本の開放系でのインピーダンス特性です。


12cm口径のFE126Eと比較して、
16cm口径のFE168EΣが、よりf0が低く(グラフの凸部が左にシフト)していることが分かりますね。

さて、このFE168EΣをバックロードホーン箱に入れてみます。

箱は前回の時と同じですが、
空気室容量を2.7Lと大きくしています。(168EΣを入れるための処置です…)
---------
空気室容量:2.7L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:43%、Fx=181Hz)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.2m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
----------

ここで注目は、スロート絞り率(スロート面積/振動板面積)です。

W3-582SC(8cmフルレンジ、前回日記)の場合は、151%。
FE126E(12cmフルレンジ、3/8日記など)の場合は、74%。
FE168EΣ(16cmフルレンジ、今回)の場合は、43%。

このように、今回は16cmフルレンジを小さなBH箱に入れ、
スロート絞り率が極端に小さい場合を検証してみます。

さて、それではインピーダンス特性です。



FE168EΣ由来のインピーダンスは、空気室に入れたことでf0は高くシフトし(青線)、
そこにホーンロードが加わることで、ピークの開裂が起こっている(緑線)ことが分かります。

このホーンロード(正しくは音響管の共鳴)によるピーク開裂は、
FE126Eのデータを並べてみると理解しやすいです。



FE126E(2.7L空気室として条件を揃えた)のインピーダンス特性を、黄色線として表記しています。

FE168EΣとほぼピークの凹凸は一致しており、
バックロードホーンのインピーダンス特性は箱に由来するファクターが大きいと考えられます。

さらに、8cmフルレンジ(W3-532SC)の特性も合わせるとこんな感じになります。


特に、インピーダンスの凹は、
ユニットを変えても、ほぼ不変であることが分かります。

一方で、インピーダンスの凸、とくに一番周波数の低い凸は、
ユニットによって大きく変化することが確認できます。

それぞれのユニットごとに、一番周波数の低い凸のピークを読んでいくと、次のようになります。

W3-582SC(8cmフルレンジ)の場合は、50Hz。
FE126E(12cmフルレンジ)の場合は、38Hz。
FE168EΣ(16cmフルレンジ)の場合は、28Hz。

どれも、ユニット単体のf0より低いところにピークが出ており、
おそらく、ホーン内部の空気が「ユサユサ」と揺れている状態になっているのでは?と思います。

ホーン内部の空気は、約1Lで1g程度あり、
ユニットの振動板重量にそれが加算されることで、f0の低下(低い周波数の凸)となると考えています。

ちなみに、このインピーダンスからホーン内部の空気がどの程度ユニットと一緒に動いているか計算してみたところ、
全体積の1/3ぐらいだという結論になっています。


さて、細かい話はさておき、
周波数特性を見ていきましょう。

まずは、ユニット直前特性。(5cm)


大面積振動板だけあって、ディップ(50Hz、150Hz)の出方がキレイですね。
しっかりホーンロード(というかホーン共鳴による負荷)がかかっている証拠です。


次は、ホーン出口の特性です。


本来は、50Hzにもピークが出てくるはずですが、
殆どピークとして確認できません。

今回は、強力な磁気回路を使った大口径ユニットを使用しており、
ホーン内部の共鳴(50Hzの凸)を抑える力が強かったのかもしれません。

BHは過制動になると、むしろ低音が出にくくなる・・・ということかもしれません。
(まあ、セオリー通りに十分な断面積をもつホーンを使ってやれば、ちゃんと低音も出てくるでしょう。)



次は、部屋の中央にSPを設置しての周波数特性です。(軸上0.5m)


やはり壁の効果は大切なようで、
低音もかなり寂しい感じです。

軸上から30°ずれた状態での評価では、こんな感じ。(距離は0.5cm)


16cmフルレンジとしては指向性も頑張っているところでしょうか。
高域のピークディップは、FE168EΣらしいところですね(汗


さて、ラストは箱を壁際に設置しての周波数特性です。


全体的に右肩上がりで、低音域は70Hz付近まで・・・といったところでしょうか。
16cmフルレンジのBHとしてはお寒い特性ですが、箱のサイズからして致し方ないところでしょう。



<聴感特性>
ホーンが小さいためか、低音の引き締まり感は見事なものです。オーケストラのグランカッサは、早く打ち手の様子が明白です。
チェロ四重奏は等身大の表現で、口径からくるゆとりを感じさせるものでした。
和太鼓の低音は、強烈なパワーを感じ、他のスピーカーを圧倒させるものがりました。
周波数特性上は、70hzまでですが、それを感じさせない魅力のある低音が得られました。(FE168EΣの実力が発揮できているとは言い難いですが…)

中高音は、ややオンマイクで歪っぽさを感じさせるものでした。ボーカルは刺激的ではないのが救いですが、やや開放感が足りないのかな?と感じさせるところもありました。
ただ、情報量は圧倒的に多く、流石の高級ユニットだなぁ〜と感じさせる一面もありました。

ちなみに、このFE168EΣを2.7Lの密閉箱に入れた時の音は、最悪の一言でしたw
中高域が潰れていて、中域だけが妙に目立ってしまうのです。
もちろん、BHに入れたFE168EΣはそんな音はしないので、完全に箱との相性…という話なのでしょう。


今回は、前回の8cmとは正反対で、
16cmの大型ユニットを、12cm用の筐体に入れている状態での視聴となりました。

試聴・測定編5〜6でやってきたように、
箱とユニットの関係は奥が深いと感じています。

次回は、そのまとめを書きたいと思います。

 試聴・測定編7 (空気室容量・スロート断面積について)

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さて前回の日記では、S-041を使って色々なデータをとってきました。

バックロードホーンというものは非常にシンプルなもので、
この図にしたようなものです。



現実には、ホーンは直管をつないだような構成なので、
理論的に求めた値からは若干ズレるようです。

ただ、私の印象だと、
大まかな音質はホーンの基礎設計で決まる…と考えています。

基礎設計、つまり空気室容量・スロート断面積・ホーン長・ホーン広がり率の4つがポイントなのです。
そこからの応用パターンとして、ホーンのとり回しや、開口部の位置などがあると考えています。

応用パターンばかり注目していると「BHは理論通りに動かないので、設計法が確立できない」ということになるので、
まずは基礎設計についての足固めが必要ではないか?と思っています。


今回の、試聴・測定編1〜6では、基礎設計部分の「空気室容量」「スロート断面積」についての確認ができたと思っています。


<空気室容量>

空気室容量というのは、「ユニットとホーンの接合の曖昧さ」を決定するものです。

この結合が明確に(空気室容量が小さく)なると、
ホーンからの再生音は中低域まで豊かなものになる共に、共鳴音は低減傾向にあります。

前者のホーンからの再生音が変化することについては、
長岡先生が「カットオフ」として明記していたことで広く知られているようです。

一方で、後者は案外知られていないのですが、気柱共鳴に基づく共鳴音を最も効果的に制御できるのはユニットの電磁制動であり、
空気室を小さくすることで、ホーン共鳴に対してより積極的な制動をもたらすことができるのです。

これら双方の観点から、空気室容量の調整は重要なのです。


<空気室容量を大きくしたときの再生音変化>
実際の再生音という観点から考えると、
空気室容量を小さくしていくと、中高域の存在感が弱まるように感じるのです。

機構としては、ホーンからの中低域再生音量が大きくなっているのですが、
実際にリスニングポジションで聴くと、相対的に中高域(ちょっと耳障りなボーカルの領域)が弱くなるように感じるのです。

また、低音の質感は改善傾向にあり、(他帯域に対して)小さな音量であっても、
明瞭で質感に富んだ低音が聴けるように変化します。

空気室を小さ目に設計したバックロードホーンは、
極めて穏やかで、中低音が豊かなマイルドな音となり、
従来の長岡式BHのイメージを覆すものとなるでしょう。

ただ、一つ難しいことがあるとすれば、
既存の完成済みBHに「詰め物」をしても、上記のような効果は得にくいのです。

「詰め物」は大抵それ自身が固有の音を付与してしまい、
空気室容量の差異という狙った効果を引き出しにくいからでは?と考えています。



<空気室容量を大きくした場合の再生音変化>
逆に、空気室容量を大きくした場合、再生音はよりダイナミックな方向へシフトします。
中高域の華やかさは強調され、シンバルなどの最高域も透明感と粒立ちをもって表現されます。

ユニット背面の音が自由に動けるようになったためなのか、
情報量も増大していく傾向がありますね。

低域は、共鳴音が強く感じられ、空気を動かすBHらしい豪快なものへと変わっていきます。

ただ、質感は不明瞭になり、低音域に後れを感じることもあります。
聴感上の低域楽器の存在感は、むしろ減少傾向にあるともいえます。
(背後で小さくなっていたパイプオルガンの旋律が聞こえにくくなるなど)

中低域に目を向ければ、共鳴音が強いという言葉通り、
箱設計(ホーンのとり回し)などで共鳴音が起こりやすい場合は、そこが目立ってしまうこともありそうです。

よく、「空気室容量が大きいから、ユニット→ホーンの中低域伝達が少なくなり、中低域の癖が少なくなるのでは?」と思ってしまうのですが、実験してみるとむしろ逆であることに気付かされます。



<スロート断面積>
スロート断面積というのはあいまいな概念で、
人によっては、「スロートに詰め物をすることで、スロート断面積を小さくする」という言い方をすることもあります。

私が考えるスロート断面積は、ホーン全体の断面積を支配する要因、としての意味合いで、
エクスポネンシャル曲線 S=S0×e^(m×x) のS0に相当する項のことです。

スロート断面積が半分になれば、
ホーンの断面積、容積も半分になるという定義の仕方です。

その場合、スロート断面積による影響を確認するには、多数の試作箱を用意する必要がありますが、
S-041では、ユニットの口径を変えることで、相対的にスロート断面積の大小の評価をすることができました。


<スロート断面積を小さくした場合>
スロート断面積を小さくすると、単純に密閉型に近くなります。

これが好ましいかどうかはユニットの選択に依存するところがあり、
いわゆるバスレフ向けのユニットであれば、そのユニットの持ち味を生かすことができる設計、と言えますし、
バックロード向けのユニットの場合、非常に窮屈で歪っぽい音になってしまうのです。

具体的に書くと、再生音からホーン由来の付帯音が減っていく方向となり、
ホーンの効き自体が弱まっていく感じです。 (当然と言えば当然ですね。)

中低域のゴワゴワ・モワモワした感じは減少し、ユニットが本来持っていた美しい中高音が顔をのぞかせるようになります。
それと同時に、中低音の質感も上昇し、結果的に全帯域で情報量・質感の向上が見込まれるのです。

一方で、小さすぎるスロート断面積は、帯域バランスこそ問題ないものの、音全体に窮屈な印象を与えてしまいます。
ユニット自身に周波数特性の凹凸がある場合(BH向けユニットに多い)、それが酷く目立ってしまうこともありますね。


<スロート断面積を大きくした場合>
スロート断面積を大きくしていくと、音全体がホーンに支配されていく傾向にあります。

ホーンの気柱共鳴により、最低域の音圧が向上し、驚くほど低い帯域まで音圧を出すことも可能になります。
音は大らかな感じに変化し、全体的に豊かなサウンドへと変化します。

ただし、ユニットのバランスを無視してスロート断面積を大きくした場合、
周波数特性こそフラットなものの、聴感上はひどく付帯音が多く、モヤモヤしたものになってしまいます。

さらに、下手をすると中低域に(ホーンのとり回しに由来する)共鳴が起こることもあり、
それを抑制するのは、大量の吸音材をもっても困難です。


結局、スロート断面積を小さ目に設計してしまえば無難な音ではあるのですが、
BHらしい「口径を超えた再生音」を目指すには、ギリギリまでホーン断面積は大きく設計したいものです。

大体バランスが取れるところとしては、振動板面積に対して、
バスレフ向けフルレンジ:0.6倍
バックロード向けフルレンジ:0.8倍
といったところではないでしょうか。

いろいろ考えてみたものの、
結局、長岡氏の推奨値辺りが無難という印象なのです。




さて、S-041も連載が7回目になり、
ここでひと段落ということにしようと思います。

S-041は、最終的にはホーン長が2mを超える鳥形BHとなりまして、
その状態での測定結果などは、また後日に報告しようと思います。

<before> (今までの視聴・測定編1〜7回目)


<after>


秋の自作スピーカーイベント

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今年も、オーディオショウが開催される季節になってきましたね。
その熱気に負けじと(?)、有志が開催する自作スピーカーイベントもありますので、その紹介をしようと思います!


「スピーカー再生技術研究会 2014年第5回公開オフ会」

場所  東京 中野 「中野ゼロ視聴覚ホール」
日程 09月28日(日)
時間  10:30 一般開場 (16:00終了予定)
参考URL http://rilsrt.web.fc2.com/events.html

再生技術研究会のOFF回も、今年で5回目。
毎年、深い内容の発表が聴けるOFF回ですが、今年も充実の内容となりそうです。

新たな原理に基づくスピーカーから、素材に注目したスピーカー。
さらには、デジタルフィルターの話など、8名の方が発表をしてくださいます。

毎年、どなたでも気軽に入れる雰囲気なので、興味を持ったらぜひ行ってみることをお勧めします♪


「ミューズの方舟 自作スピーカーコンテスト2014」
場所  東京 「品川区立中小企業センター 3階 レクリエーションホール」
日程 11月30日(日)
時間  12:30 一般開場 (16:50終了予定)
参考URL http://d.hatena.ne.jp/musenohakobune/

毎年恒例のミューズの方舟主催、自作スピーカーコンテスト。
今年のレギュレーションは、「Scansperk 10F/8424G00 または 10F/8422-03(Stereo誌2012年8月号付録) 一発」。

Stereo誌の付録で有名な、ScanSpeakのフルレンジユニットで、
10名の参加者が、力作を発表します!

見て聴いて、評価して、 北欧フルレンジの実力を堪能しましょう♪


そんなわけで、
私、カノン5Dも「ミューズの方舟」のコンテストに参加しちゃいます!

早速、試作機「S-043」の製作に取り掛かっています!
カノン5Dらしい使いこなしのScanSpeakを、当日は聴いて頂きたいと思います!


祝 テクニクス復活!

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皆さま既にご存じだと思いますが、
パナソニックのオーディオブランド「Technics」が復活しました!


ステレオスピーカー「SB-R1」

ヨーロッパのオーディオショウ「IFA」などでは、大規模なブースを展開しているようですが、
webページでは下記の告知のみとなっています。

http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/2014/09/jn140904-1/jn140904-1.html

発表された機械の詳細については、
Phile-webが一番詳しいでしょうか。

http://www.phileweb.com/news/audio/201409/04/14860.html

12月頃には、国内でも公開になるようなので、
試聴会にはぜひ行きたいですね。

 バックロードバスレフとの出会い

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バックロードバスレフという方式は、主にkenbeさんが「ハイエンド自作スピーカー」というブログで紹介しています。

「ブログ・ハイエンド自作スピーカー」
http://kenbe.blog68.fc2.com/


むしろkenbeさん以外のバックロードバスレフの作例を私は殆ど知らないのです。

一つは、スピーカーのガレージメーカー「音工房Z」を率いる大山美樹雄さんの作品。

音工房Z(上記商品は販売終了。)
こちらは、kenbeさんの作例を参考に作られたとのこと。

もう一つは、MJ誌やステレオ誌でお馴染みの小澤隆久先生。

基本的に、共鳴管「QWT」方式ですが、開口部を若干絞ることで共鳴周波数が低下するとしています。


以前は、webページ「手作りスピーカー研究会」のkodamaさんがトライしていたようですが、
現在は、ホームページの更新は少なく、ヤフオクでの出品がメインとなっているようです。



まあ、以前は私も「そんな方式があるんだなぁ〜」と完全に外野を気取っていたのですよ。
しかし、今年の5月の「塩ビ管スピーカーOFF会」で、その考えは一変してしまったのです。

私が作製したのは、S-042というダブルバスレフ型の箱。


一方で、kenbeさんはバックロードバスレフ型の箱での作品での発表でした。
しかも、ユニットは同じFE103Solです。


音の差は歴然としていました。
ダブルバスレフでありながら、低音質感を重視した私のS-042でしたが、
kenbeさんの作例は、それを圧倒する低音質感と伸びを実現していたのです。


この音を聴いてしまったからには、後戻りはできません。
「次作るのはバックロードバスレフだな」と決まった、そんなオフ会だったのです。


さて、次回はバックロードバスレフの設計について話をしたいと思います。

2014年9月終了アニメ(夏アニメ)感想

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もうすっかり涼しくなりましたが、夏アニメの振り返りをしたいと思います。

「ヤマノススメ セナンドシーズン」
5分アニメだった前回から拡大して、15分のスケールでの放送でした。それでも間延びすることなく、充実の作品となりました。
登山に限らず、趣味全般の醍醐味としての「大変さ」「充実感」「挫折」みたいなものを上手く描くことができていたと思います。
OP曲も傑作ですね♪

「ソードアートオンライン?」
2クールだった前作でしたが、今回は1クール構成。
前作に引き続き、見事な展開で楽しむことができました。アクションシーンの出来栄えも優秀ですね。

「アオハライド」
青春って感じで、独特の雰囲気のある作品でした。恋愛メインの少女マンガでも、こういう雰囲気は珍しいかも。
劇伴音楽も良好ですね。

「月刊少女 野崎くん」
終始、ギャグのテンポが良好で楽しめました。個性的なキャラクターが生きている感じでした。



2クールものが少ないながら、今期はなかなか優作が揃いましたね。
来期も期待したいところです!

 バックロードバスレフの設計

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さて、前回(9/7)の続きで、
10/30のミューズの方舟のコンテストに向けての製作です。

今回作成するS-043は
「バックロードバスレフ」にしよう、と決めたので、
まずは、設計を固めていきます。

そもそも、バックロードバスレフというのは、
バックロードホーン(BH)の出口にダクトをつけたものです。





しかし、設計として通常のBHと異なるのは、
・ホーン長が短い
・ホーンの広がりが大きい
という点です。

ホーン長は、通常のバックロードの場合 1.5m〜3.0m程度のホーン長となりますが、
kenbeさんのバックロードバスレフの場合、もっと短い値(1.5m以下)を採用していることも多いようです。

一方、ホーンの広がりに関しては、ホーン長が短いために自然と大きくなります。
(「ホーンの広がり」=「断面積変化」/「ホーン長さ」という定義です)
↑正確には、こちら。

通常のバックロードホーンでは、広がり率0.8前後の値をとるのですが、
バックロードバスレフの作例を見ると、広がり率2.0以上になるようです。



さて、今回のS-043の設計はこんな感じです。






ホーン長は0.8mしかないので、共鳴管として動作したとしても、
ホーンからの低音は、110Hzが限界でしょう。

しかし、そこにバスレフ効果が加わることで、
64Hzの低音再生を狙う設計です。 (φ50mm、長さ100mmダクト使用時)

なお、この64Hzという値は、
本体エンクロージュアの全内容積(ホーン部+空気室部)と、
ダクトの断面積&長さから、一般的なバスレフ箱の式を用いて算出しています。


設計が決まったところで、あとは木工作業です。



ダクト板は3種類。ここに塩ビ管(φ100 or 50mm)が入る設計です。



空気室も3種類あります。それぞれ2.1L、3.4L、5.7L。



ダクト装着前。普通のバックロードです。



ダクト装着後のイメージはこんな感じです。




さて、次回は試聴と測定をしてみます。

 BHのダクト塞ぎ効果!

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さて、作製したS-043の音をチェックしていきます。



今回のS-043は、以下の概要を持っています。

空気室容量:3.5L
スロート断面積:45cm2
ホーン長さ:0.8m

開口部(ホーン末端)面積は、通常のBH状態では約190cm2ですが、
今回は「バックロードバスレフ」ということで、ホーン開口部に蓋をしての評価をしてみました。

開口部に装着した蓋には、それぞれφ100mm(78cm2)、φ50cm(20cm2)の穴が開いており、ホーンからの音はそこを通って外部に放出されます。



では、まず基本の状態の周波数特性です。(軸上0.5m)



これまた凄いf特でして、200Hz〜300Hzに盛大なピークがあります!
このピークのために、100Hz付近の低音は殆ど聞こえてきません。

まあ、「失敗したバックロード」ってこんな感じだなぁ〜w
と思ってしまったカノン5Dです。


さて、ここから木片を使ってホーン出口を絞っていきます。
φ100mm(78cm2)


200〜300Hzのピークがいくぶん緩和され、100〜400Hz程度のブロードなものへと変化しています。

φ50mm(20cm2)


先ほどのφ100mmとの違いは微妙ですが、確実に中低域のピークが減少しています。
ここまで来ると、先ほどの二つとは別物の音になります。
しかし、元はバックロードバスレフ向けに作製した0.8mのショートホーンということもあり、φ50mmまで開口部を絞っても、まだ100Hz以下の重低音を感じることはできません。

やはり穴をあけただけの蓋ではなく、塩ビ管を使ってのダクト長の調整が必要そうです。



開口部から出てくる音は、こんな感じです。
まずは、バックロードホーンのまま(開口部塞ぎなし、約190cm2)。



次は、φ100mm(78cm2)


大きな変化はありませんが、共鳴ピークが若干下がっていることが分かります。
先ほどは、「230, 400Hz」だったのに対し、φ100に絞ると「200, 370Hz」と若干ながら共鳴周波数が下がっています。

こちらはφ50mm(20cm2)


共鳴周波数はさらに下がって「160, 330Hz」になります。


共鳴周波数を一次共振(片側開口)としてホーン長を計算すると、ホーン長はそれぞれ36cm→43cm→53cmとなっています。
実際のホーン長は、0.8mなので、次第に共鳴が実際のホーン長に近づいていると解釈できそうです。

バックロードホーンのようなテーパー形状の音響管は、概して「両開口管」として共鳴するのです。そう考えると、0.8m÷2=0.4mとなり、36cmという計算値は妥当なものだと思いますね。


ラストは、ユニット直前の特性です。


(↑開口部そのまま)



(↑φ100mm)



(↑φ50mm)

ちょっと見にくいのですが、φ50の周波数特性では160Hz付近に共鳴由来のディップ(音響管に振動エネルギーが奪われている=音響管が共鳴している)が確認できますね。


さて、次回はバックロードバスレフの醍醐味(?)の、
ダクトの調整です!

 ダクトの長さ (バックロードバスレフ)

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前回は、S-043のバックロードホーンの出口を12mm厚の合板で部分的に塞ぐことで、特性が変化することを確認しました。

今回は、ホーン開口部となるφ50mmの穴に塩ビ管を挿入し、
「長さ」のあるダクトとしての動作を検証します。



(ベースとなる、S-043の概要)

このS-043の開口部に、
φ50mmの穴が開いた12mm厚板を装着し(バックロードバスレフ?とする)、
さらに、長さが100mmのφ50mm塩ビ管を穴に刺した状態(バックロードバスレフ?とする)での評価を行いました。


まずは、ホーン開口部の特性から。


バックロードホーン状態(塞ぎ板なし)



バックロードバスレフ?(φ50mm、12mm)



バックロードバスレフ?(φ50mm、100mm)

ダクトの部分が、長くなることで、
放出される100Hz以下の低音が、大きくなっていくのが分かります。

この変化は、より長いダクトを装着することで、
ホーン由来の高次共振音(200Hz以上)が抑えられたために、
相対的に、重低音(100Hz以下)のレベルが大きくなっているといえます。


次に、ユニット近傍(軸上5cm)の周波数特性を見てましょう。


バックロードホーン状態(塞ぎ板なし)



バックロードバスレフ?(φ50mm、12mm)



バックロードバスレフ?(φ50mm、100mm)

「φ50mm、12mm」では160Hz付近に確認された共鳴によるディップは、
「φ50mm、100mm」では130Hz付近へと変化しています。

「ダクトの長さが長くなると、共鳴周波数が低くなる」というお話は、
まるで「バスレフ箱」のようだと言えます。

しかし、実際にこのバックロードホーン箱の内容量(8.6L)を用いて、
バスレフの共鳴周波数を求めると、以下の値になります。
「φ50mm、12mm」 99Hz (バスレフと仮定しての計算値)
「φ50mm、100mm」 59Hz (バスレフと仮定しての計算値)

少なくとも、今回とったデータの中には、
上記の計算結果に対応するピークは出てきていません。

バックロードバスレフの動作を解明するには、
もう少しデータが必要なようです。



さて、ラストは周波数特性(軸上0.5m)です。


バックロードホーン状態(塞ぎ板なし)



バックロードバスレフ?(φ50mm、12mm)



バックロードバスレフ?(φ50mm、100mm)

一見して分かるように、200Hz前後の中低域のレベルが全く異なっています。
聴感でも、ダクトを用いることで、中低域の余分な中低音が減少し、さらに100Hz以下の重低音が聞こえるようになってくる変化を感じることができました。



今回は、バックロードバスレフの「ダクト」に着眼して話を進めてみました。
次回は、ホーンの長さを1.2mに拡張して、特性をとってみようと思います。

 ホーンの長さ(バックロードバスレフ)

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バックロードバスレフのS-043での実験です。
今回はホーン長を変えてテストしてみます。

前回の形状(ホーン長0.8m)は、ざっとこんな感じ。


今回は、さらに延長ホーンのパーツを取り付け、ホーン長を1.2mに拡張しました。


断面積をグラフにすると、こんな感じになりますね。




さて、まずはダクト直前での特性を見ていきましょう。
空気室容量は、3.5L。 ダクトはφ50mmで、12mm厚(塩ビ管なし)です。

<ホーン長 0.8m>


<ホーン長 1.2m>


これは、大分違いますね。
0.8mのホーン長では、(80Hzと、)160Hz, 330Hzにピークがあったのに対し、
1.2mのホーン長では、(70Hzと、)100Hz, 240Hz,370Hzにピークがあるように見えます。

これは、単純に共鳴管の原理で説明ができると考えています。
0.8mと、1.2mの、一倍振動、三倍振動、五倍振動をそれぞれ算出すると…

<0.8m>
340÷0.8÷4=110Hz(一倍振動)
340÷0.8÷4×3=330Hz(三倍振動)

<1.2m>
340÷0.8÷4=70Hz(一倍振動)
340÷0.8÷4×3=210Hz(三倍振動)
340÷0.8÷4×5=350Hz(五倍振動)

一倍振動については、実測値が計算値より1.5倍程度高い周波数に出てきているようですが、
三倍振動や五倍振動については、気柱共鳴と考えて間違いなさそうです。


今回の実験で使用したバックロードバスレフは、
190cm2のホーン開口部を、わずか20cm2まで絞っています。
面積比では、実に1/10といったところでしょうか。

常識的に考えれば、「ホーン(音響管)としては動作せず、バスレフになる!」と思うのですが、
実験結果を見る限りでは、「バックロードバスレフは、しっかりと音響管として動作している!」と考えて問題ないと思っています。



「共鳴音って言っているけど、要はバスレフ箱でもお馴染みの内部の定在波でしょ。メインの動作はバスレフだよ。」という意見もあるでしょう。

では、再度バスレフの式で計算してみます。(φ50mm,12mmダクトとして計算)
0.8mのホーン長のとき、内部容量は8.6L。共鳴周波数は99Hz。
1.2mのホーン長のとき、内部容量は23.0L。共鳴周波数は67Hz。

まあ、確かにダクト近傍の周波数特性を見ると、
80Hzや70Hz付近にも、共鳴由来と思われる「肩」がありますので、
100Hz以下の帯域では、バスレフ由来の動作がメインになっているのかもしれません。



議論を続ければキリがありませんので、データを先に出してしまいましょう。
ユニット直前での特性です。(軸上 5cm)

<ホーン長 0.8m>


<ホーン長 1.2m>


上記で議論した共鳴周波数で、しっかりとディップが出来ていますね。

やや気になるのが、70Hzの小さなディップです。
ホーン長1.2mの方であれば、70Hz付近は気柱共鳴やバスレフ共鳴などで説明できそうですが、
ホーン長0.7mの方は、気柱共鳴が110Hz、バスレフ共鳴が99Hzなので、70Hzディップができる理由がありません。

私自身は、S-043のホーン広がり率(m=2.5)から計算したホーンカットオフ周波数が65Hz前後であることから、
70Hzのディップは、おそらく「ホーンロード」によるものではないか?と考えています。



ラストは、軸上 0.5mでの周波数特性です。

<ホーン長 0.8m>


<ホーン長 1.2m>



違いは明白で、1.2mのホーン長のほうがフラットな特性が得られています。
実際に音楽を聴いても、ドラムの低域の余裕感など1.2mのほうに分があると感じました。また、0.8mはボーカル帯域(500Hz程度?)にも付帯音を感じ、ホーンの短さのデメリットが出てしまっているように感じました。

この辺は、ダクトの調整や、吸音材の吟味など、聴感&特性の両面から追い込みましたが、1.2mのほうが重低音域における潜在能力があるように感じました。
一方で、0.8mのほうは本体容量が1.2mの半分以下ながら、違和感のない低域を再生できることも確認できています。スペースファクター的には0.8mのほうに分があるので、設計思想によりホーン長は自由に選択しても良いのかな?と思っています。


さて、今回のホーン長を変えてのテストでは、バックロードバスレフの動作について興味深いところが見えてきたかな、と思っています。

次回は、空気室容量(ダブルバスレフ的に言えば「第一空気室」)を変化させての特性を確認してみようと思います。

 空気室容量の違い (バックロードバスレフ)

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11/30のミューズの方舟コンテストに向けて、
バックロードバスレフ型の「S-043」の実験を続けています。

今回は、空気室のサイズを変えての実験です。



バックロードバスレフ型は、バックロードホーンでいう「空気室」、ダブルバスレフでいう「第一空気室」に相当する容積(つまり、ユニット背面にある箱容量)が存在します。
今回は、そこを変化させることによる、箱の動作の確認をしてみようと思います。

今回用意した空気室容量のサイズは、
2.1L、3.5L、5.7L。


前回までの日記では、空気室容量 3.5Lでの測定値でしたが、
そこから前後に値をふることで、空気室容量の違いによる変化をつかんでいきたいと思います。

ホーンやダクト(開口部塞ぎ)については、前回と同様で、
ホーン長が1.2m、ホーン開口部は50φ(約20cm2)、12mm厚のダクトとします。


さて、まずはダクト直前での周波数特性から。
<2.1L、ダクト直前>


<3.5L、ダクト直前>


<5.7L、ダクト直前>



これは、非常に分かりやすい結果ですね。
空気室容量を大きくすると、100Hzのピークが大きくなっていきます。
一方で、70Hz付近の音圧は空気室容量に依存せず、
むしろ150~200Hz付近に関しては、空気室容量を大きくすると、よりカットオフが鋭くなって(音圧は低下して)いると言えそうです。


これらを説明するには、後述のユニット直前(軸上5cm)の特性と、
インピーダンスの変化を見てみると分かりやすいでしょう。

<2.1L、軸上5cm>


<3.5L、軸上5cm>


<5.7L、軸上5cm>



最も小さい空気室容量(2.1L)では、4つのディップ(70Hz, 140Hz, 240Hz, 380Hz)が確認できるのに対し、
最も大きい空気室容量(5.7L)では、2つのディップ(60Hz, 100Hz)のみとなっています。


これは、インピーダンス特性を見ても同様です。


2.1L(赤線)では、220Hz付近にインピーダンスの凹凸が確認できるのに対し、
5.7L(青線)では、220Hz付近の凹凸が確認できません。

また、100Hz~180Hzにあるインピーダンス特性の凹は、
空気室容量を大きくするに従って、周波数が下にシフトしていることが分かります。



この変化は、どう説明するべきでしょうか?
私自身の経験だと、「ダブルバスレフ」だけでなく、「バックロード」としても説明ができるのです。

まず、「ダブルバスレフ」としての説明です。

第一空気室容量(通常Vc1などと表される)が増大することで、第一ダクト・第二ダクト共に共振周波数が下がる(ユニット直前特性や、インピーダンス特性参照)。
また、空気室容量の増大により、ダクトの共振先鋭度が高く(より自由に共振できる状態)になり、共鳴の効率が向上する。(ダクト直前特性参照)。


次に「バックロード」としての説明です。

空気室容量が減少すると、ホーンとユニットの結合が強くなり、いわゆるホーンのクロス周波数(Fx)が向上する。
その結果、ユニットは200Hz以上の領域でもホーン共鳴の影響を受けるようになる。(ユニット直前特性や、インピーダンス特性参照)
また、クロス周波数の向上により、ホーン開口部は150Hz~500Hzの音圧が向上するとともに、共鳴音によるピーク(250Hz, 380Hz等)が小さくなる(ダクト直前特性参照)。
(なお、共鳴周波数が空気室容量に依存することは、本機(開口部を塞がない状態)や、通常のバックロードホーン(いわゆる長岡式での設計)でも確認される現象です。)



まあ、「長岡式バックロードホーン」自体が「不完全なホーン」として成り立っており、いわゆる「バックロードホーン」として作製したものも、バスレフ的な動作を内包しているといえるでしょう。
そう考えると、今回の「開口部をダクトで塞いだ」という行為でさえ、長岡式バックロードホーンの延長(バスレフ的な動作を含むもの)として解釈できるのは、ごく自然なことなのかもしれません。

もちろん、その逆も然りで、
「ダブルバスレフ」というものも、箱の寸法により定在波が生じ、それが再生音に影響を及ぼすことはよく知られていることです。
その定在波がダクト共振周波数に近いところで発生し、低音増強として働くのなら…と考えると、「バックロードバスレフ」の動作を上手く説明することができるのかもしれません。


なんだか曖昧なところではありますが、ラストに周波数特性(軸上0.5m)です。
下記特性は、開口部を塞ぐダクトが「50mmφ(20cm2)、長さ12mm」のものです。

<2.1L、軸上0.5m>


<3.5L、軸上0.5m>


<5.7L、軸上0.5m>



周波数特性では、違いが分かりにくいのですが、
聴感では大きな差異を感じることができました。

空気室容量を小さく(2.1L)したほうが、低音量感を確保することができました。
一方で、5.7Lとすると、ハイが目立ってしまい全体的にバランスがとれません。

しかし、これはダクトが「50mmφ(20cm2)、長さ12mm」での話。
大き目のダクトとして「100mmφ(78cm2)、長さ12mm」を装着すると、5.7Lでも良好なバランスとなることが確認できました。(周波数特性は割愛)

つまり、
「適度な低域のBH(空気室:大)」×「ダクト断面積:大」=GOOD
「過剰な低域のBH(空気室:小)」×「ダクト断面積:小」=GOOD
となるのです。

ご想像の通り、前者がBH的な味付け、後者がダブルバスレフ的な味付けの音であることも、確認済みです。


まあ、結局は「ダクト」=「中低域量感 調整剤」として考えることができる訳で、
作製するバックロードホーンの低域量感に合わせて、最適なダクトが選択される…という設計手法となりそうです。

逆に言ってしまえば、バックロードホーンの低域があまりにも過剰な場合、ダクトを小さくしても対応できない(もしくは、箱の持ち味が生かせない)場合もあるでしょうし、
バックロードホーンの低域が不足している場合(概して通常の長岡式で設計したBH)に対して、ダクトを装着しても、元のBH箱以上の低音量感は望めないと思われるのです。(中低域付帯音が減少し、相対的に重低音量感が上昇する場合はありそうですが…)

なお、空気室容量が大きくなると、最高域(10kHz以上)の音圧が上昇し、かつ情報量も大幅に増えるように聞こえました。
この辺の変化は、バックロードホーンと共通しているところがあり、過度な背圧は再生音を殺して(特に音の伸びやかさ・質感表現力が激減して)しまうようです。



ここまでの実験で「バックロードバスレフとは何か?」について、ある程度説明ができるようになってきたと思います。
次回は、コンテスト出品用の作品「S-044」の設計&製作に移っていこうと思います。
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