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共鳴管型スピーカーW-toneと、FOSTEX FE103M。

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2012年3月4日に書いた日記では、
共鳴管型スピーカー「W-tone」のユニットを「ALPINE DLS-108X」から「FOSTEX FE103M」へ変更したことを書きました。
http://blog.goo.ne.jp/4g1g4g0/e/f92dd779eb86c73d43ef8afedb452426

しかし、この状態ではホーン開口部の特性に大きなディップが確認され、貧相な低音量感に拍車をかける形となってしまいました。
(↓管開口部特性。図中赤丸部)


これは、管端から30cm程離れたところにユニットが取り付けてある為でです。
そこでユニット位置を管端に移動することで、ディップの解消を狙いました。


(左がbefore。右がafter。)

写真では、こちらが施工前。



以前のユニット取付位置に板を貼り付け、
その下(内部では管端)に、ユニットを取り付けます。




それでは、測定結果を。

軸上1m


ユニット直前


開口部


インピーダンス特性(測定ミス?)



まず、軸上1m特性は施工前と余り変化はなく、150Hz程度までフラットで、そこからストンと落ちた後、だらだらと40Hz付近まで伸張しているのが分かります。

ユニット直前は、施工前後で殆ど違いが分かりません。ディップの位置から、共振周波数が35Hzと110Hzだと分かりますね。

管開口部の特性では、施工前後で大きな差がありました。
以前あった180Hz付近の大きな谷は消え去り、500Hz付近から40Hz付近まで綺麗に山が並んでいる様子が分かります。これはユニットが管端に移動したことによる効果でしょう。

インピーダンス特性は、やや不完全な測定系だったため参考程度なのですが、
40Hz、110Hz、180Hz、240Hz、300Hzにディップが確認され、これらは管開口部特性の山(=共振)と上手く対応させることができますね。


音としての変化ですが、なかなか好感触でした。気になっていた低音の細さが和らぎ、バランスは上々です。重低音も感じられ、共鳴管として成功しているようです。

一方で、「重低音まで豊かな低音量感」と言うまでには至らず、やはり低音不足が気になります。壁に近づけた位置で使用すれば、なんとか誤魔化せるかなぁ〜という感じです。

さらに、ユニットが管(断面積175cm2、振動板の約3.5倍)をドライヴできていないようで低音に重ったるさが散見されます。共鳴管方式は低音の軽さが利点なので、これでは幻滅ですね。

この辺は、FE103Mと共鳴管型の「相性の限界」みたいなもので、改善するのは難しそうです。改善策としては、ユニットをTangBandやFOSTEXの新FFシリーズのような量感を稼ぎやすいタイプにするか、FE103Mのためにバックロードホーン箱を用意するかでしょう。


次回は、ユニットをFE103M(10cmフルレンジ)から、FE168EΣ(16cmフルレンジ)に変更して、より強力に共鳴管をドライヴしてみます!

W-toneのユニットを FOSTEX FE103M から FE168EΣへ

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今度は、「Fostex FE103M」を「FOSTEX FE168EΣ」へ変えてみました。
10cmでは駆動しきれなかった共鳴管を、強力にドライブすることを狙います。

FE103M搭載時



ユニットを外します。本体の横幅は175mmなので、なんとか16cmフルレンジを入れる穴を開けることができました。



FE168EΣを入れて完成!



ユニット上方に貼ってある松集成材は、最初にALPINE DLS-108Xが入っていた穴を塞ぐ為のものです。

さすが高級ユニットだけあって貫禄があります。
独特な形状のHPコーンもイイ感じです。






早速、周波数特性の測定です。聴感上好ましかった吸音材ゼロの状態です。

軸上1m



ユニット直前



管開口部




軸上1mの周波数特性を見ると、500Hz以下では余りFE103M (10cmフルレンジ)と差が見られません。

150Hzを境にズルズルと音圧が降下し、50Hz付近では-10dB程度に低下しているところも類似しています。FE168EΣのほうが3dBぐらい低音音圧が高いように見えますが、誤差の範囲でしょう。

口径を大きくすれば駆動力やf0といった点から低音再生が有利になると考えられますが、共鳴管ではユニットは「共鳴の制動」としての役割も併せ持っており、後者が強く出た場合は低音量感の低下が起こる可能性は十分にあります。
特に、FOSTEXのFEシリーズのような軽量コーンでは、管共鳴の制動が強く、共鳴管よりバックロードホーン(これは非共鳴系)に向いているのでしょう。

高域特性は、FE168EΣ特有の凸凹が目立っています。8kHzのピークはカタログ通りですが、カタログにある15kHzのピークは測定限界以上だったようで確認できませんでした。

聴感では大きな違いが確認できました。
ややFE103Mでは緩めだった低音も、16cm口径のFE168EΣであれば しっかりと骨格をもった音として表現されます。やはり共鳴管を上手く制動できているのだと思います。
管の断面積が175cm2なので、FE103Mでは振動板の3.5倍だったのに対し、FE168EΣでは1.5倍だったのは大きな違いだといえます。

帯域バランス、最低域の伸びとしては余り変化ないようです。

一方で、全域の質感や情報量ではFE168EΣが圧倒的です。さすが高級ユニットですね。一方で、ボーカル帯域以上で周波数特性の凹凸に起因すると思われる違和感を感じましたが、使いこなしで調整できる範囲だと思います。あくまでも16cm口径なので、その辺まで完璧を望むのは酷なのでしょう。

ちょっと面白かったのが、低音が意外とユニット本体から出ていることです。FE103Mの時は低音の大半が管開口部から放射されていたのに対し、FE168EΣでは半分程度がユニットから直に放射されているような感じでした。
よく言われるように、FE168EΣはバスレフ方式の箱とも上手くマッチするかもしれませんね。

ユニットに適合する箱とは?

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先日(3月19日の日記にて)、いろいろな箱形式を書きましたが、それぞれに適合するユニットを選ぶことが大切です。

それを簡単に示せるのが、次の「BHファクター」と「DRファクター」かなぁ〜と思っています。
2011年12月25日に発表済みではあります…)


↑ちなみに、物理的な根拠は皆無ですw


例えば、バックロードホーン型の箱では…

<クリックで拡大>

こちらの示したFOSTEXのフルレンジSPが適合します。
グラフで言うと左下にあたるでしょうか。

しかし、これらをバスレフ箱に入れると低音不足は免れません。
さらに、共鳴管箱では制動過多となりなかなか量感を稼ぐことができないようです。


一方、共鳴管に適合するユニットは、こちらになります。

<クリックで拡大>

例としては、ParcAudioの赤パーク、feastrex、Daytonの一部のユニットを示しましたが、まだまだ製品数が少ないのが現状です。

これらはある程度振動板が重いものの、ダンパーも硬いので小型バスレフでは若干の低音不足となります。
しかし、これらのユニットを振動板面積の1.5倍〜2.5倍程度の断面積をもつ管に入れると、良好な低音増強が得られるのです。制動が弱めなので、細い共鳴管でも効果的に低音増幅が可能なようです。

ただ、ALPINE DLS-108X(車載用10cmウーハー)のように、この範囲に入る特性であっても、Q0が0.8と大きすぎる場合は100〜200Hz付近がブーミーになりやすいと感じています。Q0は0.4〜0.6程度までが良さそうです。


そして、最も一般的な特性を持つウーハーユニットは、バスレフ箱に適合します。
(むしろ、商品として最も需要のあるバスレフ箱に適合するように、ユニットが設計・生産されるのです)


<クリックで拡大>

例としてFOSTEXの10cm〜80cm口径のウーハーを示しましたが、
これらはバスレフ箱に入れることで、良好な低音特性を簡単に得ることができます。また、現在最も多くの製品数があり熱心に研究開発が行われている部類のユニットなので、優秀な特性を持つものも少なくありません。

しかし、(特に20cm以下の小口径ウーハーにおいて)バスレフ箱では相当良質(高価?)なパワーアンプで駆動しないと、なかなか表現力豊かな低音を再生することはできません。

これらの優秀なユニットをバスレフ以外の箱に入れてやることは、現状の均一化した低音再生系を打破する一つのアプローチになりそうだと考えています。

そうは言っても、従来型の共鳴管やBHに突っ込むだけでは、低音がブーミーになってしまうだけです。そこで、新しい箱形式を考える必要があり、既に「多自由度バスレフ」「バックロードバスレフ」「多重共鳴管」がその成功例だと言えるでしょう。


今回、私が試作したのが、「共鳴管付きバスレフ」です。



詳しい設計は、また後日。

アニソン購入 〜2012冬(新春)〜

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冬アニメが終わり、怒涛の春アニメの録画予約を逃すまいと頑張っているカノン5Dです。

さて、今回も購入したアニソンを。




写真左
「TVアニメ「アイドルマスター」 新オープニング・テーマ「CHANGE!!!!」 」

本当は千早回で流れていた「約束」が入っている「ANIM@TION MASTER 06」を買おうとしてゲーマーズに行ったのですが、今一ジャケットがピンと来なくて(ジャケ絵のローテーションと、本編内容が微妙にずれちゃうんですよね…)、偶然手元にあった「CHANGE!!!!」に一目惚れ。

本作は後半の方が好きでしたし、毎週話が盛り上がってくる中で流れていた曲でしたし、何よりジャケットの絵が素晴らしいですね。



一枚の絵の中にストーリーを想像できる要素が沢山あり、お気に入りの一枚です! (よく見ると雪歩だけが不思議な表情をしていますがw)

音質は・・・久々に爆弾を踏んでしまったようですwww

まず、一曲目のCHANGE!!!は12人(?)のボーカルを出すのがそもそも困難すぎます。私のシステムだと声が甲高い子が目立ってしまい、それを押さえ込めば篭ってしまい、なかなか全員を均一に出て来ない感じですorz

さらに凄いのが、2曲目の「We just started」です。強烈な重低音が「ボーボー」鳴ってしまい、なかなか手強い相手です。音の圧縮感も強烈で、水樹奈々が可愛く感じられます!



写真中央
「『ラストエグザイル‐銀翼のファム‐』O.S.T. 音楽:黒石ひとみ」

こちらは初回盤なので、スリーブケース付きです。
ジゼとファムの絡みがイイ感じのイラストです♪



ちなみに、ミリア様推しならOST2がオススメです。ミリア様の御御足が///
http://www.lastexile-fam.com/cd.html

音質は良好な部類だと思います。レンジ、分解能共に良好だと思います。
ちょっと打ち込みっぽさが目立つ場所もありますが、作品全体の雰囲気が崩れるほどではありません。

黒石ひとみさんが歌う曲(ED曲など)では高音の表現が難しいですが、録音自体は良質でオーディオ的な爽快感につなげやすい好録音だと思います。



写真右
「借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック」

作品自体は2010年夏ですが、先日のTV放送を見て購入決定へ。
ジャケットは特殊で、メインの絵は裏側に描いてあり、表側(普通歌詞カードが入っている方)には小さな冊子が入っています。



中身は、ジブリ作品関連CDの紹介なのですが、
何と『24金ゴールドディスク仕様』だった「サントラ全集」や、ジブリ美術館での限定公開だった作品のサントラ盤の紹介があるなど、ジブリファンとしては熱い内容だと言えます!!

音質も、最近のジブリ作品らしく優秀で安心して聴くことができます。Dレンジ、fレンジ共に広く、柔らかく鮮度の高い音だと言えます。

どの曲も素晴らしいのですが、序盤の聴きどころは、1曲目の「The Neglected Garden(荒れた庭)」でしょうか。
アリエッティの世界観が凝縮された曲で、繊細な表現に始まり、ダイナミックな音楽に展開していく様子が素晴らしいです。曲の中に何回か超低音が入っているので、オーディオ的な快感も十二分です!

あとは、9曲目の「Spiller-Instrumental Version(スピラー)」。打楽器を含めた愉快なサウンドが散りばめられており、オーディオ的な醍醐味を味わえる一曲になっています。

「共鳴管付きバスレフ」の設計と作製

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先日の「共鳴管付きバスレフ」ですが、
「Bass Reflex With Tube」なので、「BS-WT方式」とします。

今回作製したのは、こんな感じです。


<クリックで拡大>

今回は実験機なので、
バスレフ箱と共鳴管部を切り離して、単独での特性も確認できるようにしました。


<クリックで拡大>

音響管は約1.8mで、共鳴周波数は片開管で47Hz,141Hz、両開管で94Hz,188Hzを狙います。
共鳴管の出口は、80mm×100mm程度の大きさの穴を左右に開け、両側に低音が放射されるようにしました。余り深い意図はないのですが、開口部が真ん中にあると全体の強度が保ちやすいという利点があると思います。

管の太さは80cm2(振動板の1.6倍)〜120cm2(振動板の2.4倍)としました。この辺は小沢氏の多重共鳴管試作を参考にさせて頂きました。

バスレフ箱は、大小の二種類を作製しました。


<クリックで拡大>

使用するユニットはユニットはALPINEのDLS-108Xです。

10cm同軸2wayで、f0は120Hz、Q0は0.8なので、それに合わせてバスレフ箱を設計しました。
また、ダクトの共振周波数を大小それぞれ57Hzと80Hzに設定し、音響管との相性を確認します。


制作としては、まず音響管を作成します。



そして、本体箱の作成。
大きい方は、このように底面を斜めにして定在波予防を狙ってみました。



バスレフダクトとバッフルを除く部分が完成。



ダクトは、木材で作りました。実験用なので、塩ビ管の方が良かったと反省してます。



ダクト穴を開けて、そこに合わせるようにダクトを設置。この段階で吸音材も入れておきます。



バッフルを作製して、完成!
バッフル板には、SPFの無垢材(「1×4」と呼ばれるやつ)を使いました。




次回は、測定と試聴結果を書こうと思います。

「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (1)

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先日製作した「共鳴管付きバスレフ(BS-WT)」の報告です。



まずは、小箱単独(容量 約6L)から。つまり、ブックシェルフ型部分だけですね。
これは共振周波数が80Hzのバスレフ箱になります。

軸上1m


ユニット直前


ダクト直前


インピーダンス特性(参考)




聴感上は、残念ながら低音不足でした。
軸上1m特性を見ても、150Hzからストンと落ちてしまっています。

ダクトで増強される予定の80Hz付近にはピークがありますが、その音圧は小さいです。

ユニット直前の音圧を見ると、ユニットの特性(f0=120Hz, Q0=0.8)に基づく低音減少があります。そして、バスレフダクト共振に基づく80Hzのディップも確認できますね。

一方で、ダクト直前の特性では、80Hz〜150Hzまで幅広いピークがあります。
これは、共振の強度が極めて弱いためで、基本的に80Hzが共振周波数と考えてよいでしょう。

ちなみに、インピーダンス特性はこんな感じです。
検出抵抗が4.2Ωだったりと不完全な測定系なので、参考程度にしておくべきでしょう。




では、これに共鳴管を加えると・・・

軸上1m


ユニット直前


ダクト直前


インピーダンス特性(参考)



聴感上は、残念ながら低音不足に輪をかけたようになってしまいました。
前段となるバスレフは(やや伸びを犠牲にしても)十二分な低音量感が必要なのだと思います。


軸上1mの特性を見ると、100Hz以下のピークがブロードになり、幅広い帯域で低域増強効果が出ていることが分かります。
低域下端は、音響管長(約1.8m)の一次共振(47Hz)に基づいているようにも見えます。

ユニット直前の特性では、90Hzに大きなディップがありますが、
その大きさは(バスレフ単独と比べて)若干大きくなっています。

一番大きな違いは、ダクト出口の特性です。
やはり共鳴管らしい大きなピークディップがありますね。

このピークの位置を読むと、90Hz, 150Hz, 200Hz, 280Hz, 340Hz, 410Hz でしょうか。

音響管は約1.8mなので、想定される共鳴周波数は
片開管で47Hz,141Hz、両開管なら94Hz,188Hz になるはずです。
しかし、実測されたのは大きく違う値となりました。

原因として考えられるのは、共鳴管の形状です。
普通の共鳴管は、「J」や「U」の形となる一回折り返し形状ですが、
今回の共鳴管は渦を巻くような複雑な形状です。



今まで、3倍、5倍、7倍振動…と続くと思っていましたが、
もしかしたら、折り返しに応じて開口部の高域特性が決まっているのかもしれません。



なんか複雑な結果になってしまいましたが、
「バスレフ+共鳴管」という組み合わせでは、共鳴管特性が強く出るものの、単純な共鳴管と比べて高倍振動が抑えられるようです。

ただ、聴感上での低音質感は今回の実験では確認できませんでした。
次回は、もう一つのタイプの箱をテストします。

「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (2)

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今度は、大箱を使っての測定です。



大箱(図中右)は、容量8.8Lで、共振周波数は57Hzになります。



軸上1m


ユニット直前


ダクト直前


インピーダンス特性(参考)




一聴して、小箱より低音量感が出ているようですが、まだまだ低音不足です。

ちなみに、このユニット(DLS-108X)で普通のバスレフ箱を設計する場合は、共振周波数を80Hz程度に設定するのがベターかなぁと思います。(容量は8Lでも問題なさそうです)

今回の作例であっても、ダクトからは50Hz前後までの低音が出ているので、(床にベタ置きするなど)置き方を工夫すれば適度な量感を確保することができました。

聴感上としては、一般的なバスレフ箱という感触で、低音質感も平凡です。


ユニット直前の特性は、興味深い結果が得られました。

先日紹介した「小箱単独」の特性と比べると、150Hz付近の盛り上がりが少ないことが分かります。これは、箱容量が大きくなった為にQ0の上昇が抑えられたことが原因だと考えられます。

このように、大箱(容量8.8L)であってもf0付近に盛り上がりが確認されるので、(密閉箱のセオリーとしては)もっともっと容量の大きな箱が適性ということになります。
(なお、カーオーディオ用ユニット設計では、容量30L〜45Lを基準とする…と聞いた記憶があります)

さらに、「小箱」では500Hz〜2kHzに細かなピークディップがあったのに対し、今回の「大箱」では1kHz付近に大きなディップが一つあるだけです。
聴感上では、スッキリとした「小箱」、ゆとりのある「大箱」といった感じの音で、この違いを優劣として語るのは難しそうです。

そして、57Hz付近にあるディップはダクトの共振周波数ですね。これは計算どおりです!


ダクト出口の特性を見てみると、50Hz〜150Hzまで非常にブロードに増幅されていることが分かります。
原因としては「効果的な共振」が得られていないだけなので、もっと容量を大きくした箱であれば、このブロードなピークは鋭くなるでしょう。




さて、これに音響管を接続すると・・・ 
(この状態を「管付き」と呼びましょう)

軸上1m


ユニット直前


ダクト直前


インピーダンス特性(参考)



これは、なかなか興味深い結果となりました。

聴感上では、素直に低音が伸びたように感じます。低域が伸びたことで「単発バスレフ」と比較すると「管付き」は雄大な感じになります。
バスレフ(1段目)が57Hz、共鳴管(2段目)が1.8m(47Hz)なので数値上は余り変わらないはずですが、共鳴管を付加した効果は大のようです。

低音の質感は、「管付き」だと「単発バスレフ」に比べてやや開放感に劣る感じです。しかし、ダブルバスレフともちょっと違う質感です。ダブルバスレフに比べると、共鳴管付きバスレフは少々固く重い感じの低音だと言えそうです。

しかし、何故か中域の存在感や質感、表現力は「管付き」の方が優れていました。管の中を音が通ることで、不要な成分が減少したのでしょうか。

ただ、やはりこの『共鳴管付きバスレフ』も万能ではないようで、バスレフの低音質感を「改善」することはできませんでした。結局、共鳴系を闇雲に二つにしたところで、低域の忠実度(?)は向上しないようです。


軸上1mの結果を見ると、若干ながら80Hz前後の音圧レベルが「単独バスレフ」と比べて向上しています。(変化は数dB程度ですが)


ユニット直前のデータを見ると、80Hz付近に小さなディップが確認できます。
上記に示した「単発バスレフ」の状態では計算どおり57Hzにディップがあったのですが、共鳴管付加により、それが大きく移動したことになります。

このディップのシフトを「小箱+管」と比較すると…
小箱:80Hz→90Hz
大箱:57Hz→80Hz
となるので、共鳴管の付加により、ディップは基本的に上側にシフトする…と考えて良さそうです。


この「大箱+管」の『開口部特性』のピークを読むと・・・
80Hz, 140Hz, 200Hz, 280Hz, 340Hz, 410Hzとなります。

先日の日記で紹介した「小箱+管」と比べると、若干低域側のピークが上にシフトしているのが気になりますね。
(「小箱+管」は90Hz, 150Hz, 200Hz, 280Hz, 340Hz, 410Hzでした)

そして、どちらの箱でも開口部f特のピーク位置(「大箱+管」なら80Hz)と、上記したユニット直前f特でのディップの周波数は一致することが分かります。



ダブルバスレフも同様に言えることですが、やはり周波数特性を欲張り過ぎないのはコツのようです。あくまでもf0の半分〜8割(DLS-108Xはf0=120Hzなので100〜60Hz)程度に収めておくのが良さそうです。

一応、もうワンパターン程度作ってみようと思いますが、この方式から出てくる低音は自分の好みとは違う感じなので早めに収束させようと思っています(笑)

PARCサウンド鑑賞会(4/28) のお知らせ

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私も先日知った情報なのですが、
ParcAudioのユニットを使った発表会が開催されるようです。

基本的には仲間内同士の交流会みたいな感じのようですが、
外来の人も歓迎とのことだったので、私も行ってみようと思っています!


詳細は、こちらのリンクをご参照ください。
4/28 PARCサウンド鑑賞会開催


リンク先の情報によると・・・

場所:
東京 新橋
新橋駅前ビル 5F
「鳳龍クラブ」

日時:
4/28(土) 13:00〜

参加料:
500円(一人)


一応、確認して書いていますが、
必ず、リンク先の情報を参照するようお願い致します。

なお、昨年(2011年)も開催されたようで、下記リンク先のような大盛況だったとのこと。
PARCサウンド鑑賞会 無事終了しました


ParcAudioは、数少ない国内のユニットメーカーなので、皆で盛り上げていきたいですね!

[ParcAudio 本家ページ]
ウッドコーンや各種オリジナルスピーカーのPARC Audioです

ScanSpeakの10cmフルレンジ「10F/8424G00」

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ScanSpeakといえば、海外製高級ユニットの代名詞ともいえる存在ですが、
実は、フルレンジユニットも一機種販売しているのです。

名称は「10F/8424G00」で、同社の入門向け「Discoveryシリーズ」の中に組み込まれています。



製品詳細pdf
http://www.scan-speak.dk/datasheet/pdf/10f-8424g00.pdf



情報を整理すると…
口径は10cm(4インチ)。NRSCコーティングのガラス繊維振動板。エッジはゴム素材。
磁気回路はネオジムマグネット、銅(メッキ?)ポールピース+銅キャップによる低歪化。

といったところでしょうか。


お値段は、25,194円/本(コイズミ無線にて)
やや高い値段設定ですが、これ一本(ネットワークレス)で全帯域を再生できるのは有難いですね。
http://dp00000116.shop-pro.jp/?pid=42264361




公開されている特性を見る限り、素晴らしくスムーズな特性だといえます。


TSパラメータを見ると…
f0=90[Hz], Qts=0.37, Mms=2.77[g]
となっています。

FOSTEXのFE103Enは、
f0=83[Hz], Q0=0.33, Mms=2.55[g]
さらに、FF105WKは、
f0=75[Hz], Q0=0.41, Mms=3.40[g]
であることを考えると、

この「10F/8424G00」は、コーン紙は軽く、ダンパーは硬い。磁気回路はやや強め、といった具合だと思います。
なので、バスレフ型はもちろん、多段バスレフや、共鳴管にも優れた適合性を見せるはずです。ただバックロードホーンに使うには、やや難しそうかな?と思います。



フルレンジは、軽量コーンを生かした低域再生や、つながりの良い中域再生など、2wayには無いメリットも多いと思います。
マルチウェイ派にとっても、広帯域かつ高品位なミッドレンジとして有意義な製品となるでしょう!

シルヴァン(偽1)を作ってみた  制作編

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一年前ぐらいに、「日東紡音響「SYLVAN(シルヴァン)」の技術を紐解く!?」として特許技術を中心にいろいろと調べていました。

2011年05月24日 「日東紡音響「SYLVAN(シルヴァン)」の技術を紐解く!? (1)」など)

ただ、実際に作る機会がなかなか無く、気付いたら一年もの時が過ぎていました。



作製物のイメージとしてはこんな感じ。



中央の「エ」字型の支柱に、柱を吊るします。 



それでは、早速制作に入ります。

まずは「I」もしくは「エ」字型の支柱を作ります。



今回は、余っていたコンパネ(12mm厚)を使用しました。
直角部分は「金折(L字金具)」だけで十分な強度を得ることができました。

ちなみに、寸法は
底面・上面板は 13cm×21cm程度。
支柱は、5cm×90cm程度。

本家シルヴァンのサイズが 横幅40cm、奥行約20cm、高さ約140cm との事なので、それと比べると小さめですね。



支柱は、3本の異なる太さをもつ角柱を用いました。



それぞれ、(細)2cm×1cm、(中)1.8cm×2.5cm、(太)3cm×5cmとしました。

手元にあった「松集成材」の端材で作ったので、太さはテキトウです。
要は、異なる数種類の太さの柱を用意するのが大切なのです。

なお、本家シルヴァンでは「(直径) 6cm、4.5cm、3.2cm」の「円柱」を使っています。素材は「タモ集成材」ですね。



角柱の先に、フックを固定します。





これで、柱を「吊るす」形になります。
本家と大きく異なりますが、工作難易度を大きく下げてくれるポイントです。



そして、天面にもフックを取り付けます。



このとき、(細)→(中)→(太)の順番で柱が並ぶのをイメージしながら取り付けることと、「ランダムさ」を意識することが大切です。

特許では、「(列内の拡散柱の間隔は)乱数を用いて5〜50%程度のランダム配置度で、間隔がバラけるようにランダムに設定する。」とありますが、手作業でテキトウにやればOKでしょう。



そして、柱を吊るして完成!
前側から(細)→(中)→(太)となるように柱を配置します。




端材を使ったので、やや下の方が寂しい(柱が短い)ですが、まあ成功でしょう。
公開特許によると「柱群により背後が見通せなくなる程度に、配置調整を行う。」のが良いそうです。


どうでしょう? 簡単ですよね!?
実作業時間は3時間未満、制作費は5千円以下でした。
(板さえ切り出してあれば、あとはネジ止めだけです)


試聴編は、また次回。

シルヴァン(偽1)を作ってみた  試聴編

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さて、作製したシルヴァン(偽)の話です。




当たり前ながら、部屋の中で組み上げていくと、
部屋の中央付近で「シルヴァン(偽)」は完成します。

完成間近、
そう、全ての柱を吊るし終わる頃には、
耳に妙な感覚を覚えるのです。

具体的には、耳が澄んだ状態というか、強制的に澄まされた状態というか…
部屋内外の細かな音が良く聞こえるようになったのです。


面白そうなので、シルヴァン(偽)を部屋の中央に置いた状態で、
音楽を再生してみます、

一聴して、ずっと情報量が増大しているのが分かります。
そして低音も引き締っているようです。



とりあえず、左右スピーカーの間に設置すると、
情報量の増大と共に、定位が改善されたのが分かります。

従来型の散音材だと、音が柔らかくなる傾向なのですが、
今回のシルヴァン(偽)だと、音の陰影が濃くなり、ワンランク上の機材のような質感を得ることができました。

さらに、低音域も大きな違いが確認できます。
今まで「ボォォォーン」と雄大に鳴っていた低音が、「ゴン」といった硬い輪郭で描かれるようになりました。その一方で、量感はかなり減少したようです。

柱状拡散体ということで「壁の向こうまで広がる臨場感!」というのを予想していましたが、あくまでも音場表現は大差なしでした。
今回のシルヴァン(偽)は奥行が10cmだったので、本家のようにある程度の厚みが必要だったのかもしれません。



やはり、これだけの表面積を持つルームチューニング材なので、材料として使った「松集成材」の音が強く乗っているようです。低音が消えたのもその影響かもしれません。
本家のように「タモ集成材+表面コート?」など、様々な材質を検討してみると良さそうです。

面白いことに、このシルヴァン(偽)にメープル材の「インシュレーター」を付加することでも、微妙に音色が変わるようです。


そして、その効果範囲も特徴的だといえます。



この図のように、このチューニング材の効果が及ぶのは垂直方向に非常に強い指向性があるようです。本家のサイズが「高さ140cm」なのは、リスニングポイントの高さをカバーできるように設定されたのかもしれません。



このように、柱状拡散体は非常に特徴的で明白な効果が得られるので、オススメできると思います!

電池覇権 / 大久保隆弘

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リチウムイオン電池に興味を持ったので、読んでみました。
基本的に、経営方針的な考え方が書かれていましたが、技術の人にとっても入門書として良いと思います。

その中でも、技術革新を続けていないと、必ず価格下落の波に飲まれる…といった事が非常に印象的です。
半導体、液晶テレビ、携帯電話。全て日本がリードしていたのですが、今は韓国を含む海外勢にシェアを奪われているといえます。

80年もの前に想像された究極の電池「佐吉電池」のように、技術に関わる人は想像力をフル活用して次の指針を立てる必要があるといえるでしょう。

バスレフ箱部分の「容量」について (共鳴管付きバスレフ)

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ようやく、「共鳴管付きバスレフ」の要点が分かってきたかなぁ〜と思っているカノン5Dです。


今回は、バスレフ箱を小さくして再度作製しました。
ユニットはお馴染み、ALPINE DLS-108Xです。

容量は約2Lと、10cm口径としては異常に小さいです。むしろ、バックロードホーンの空気室に近いイメージでしょうか。
ダクト断面積は30mm×60mm(振動板の36%)で、長さは18cm程です。

それでは、測定結果を。

<バスレフ箱 単独>


(吸音材は入っていません。)

[軸上1m]



[ユニット直前]



[ダクト直前]



[インピーダンス特性]




軸上1mの特性は150Hzからストンと落ちていて、聴感上も低音は沈み込まずにポンポン鳴っているだけです。単独で聴くために設計していないので、こんなもんでしょう。

ダクトから出てくる音は、200Hzより上の帯域が上手い具合に落ちています。吸音材レスながら、ダクトの配置が効果的だったのでしょう。500〜1kHzは、箱内部の低在波でしょうか。

ユニット直前特性も、見慣れたものですね。1.5kHz付近のディップは、エッジの逆共振でこのユニット固有のものです。

インピーダンス特性は、以前やや大きめの箱で測ったものに比べ、二つ目のコブが大きい(というかコブの大きさが揃ってきた?)のが分かります。これは、箱容量が小さくなったためでしょうか。






<共鳴管付きバスレフ>

合体します。




[軸上1m]



[ユニット直前]



[ダクト直前]



[インピーダンス特性]




軸上1mの特性は、大きく改善されました。バスレフ箱単独と比較すると5〜15dBの向上が確認でき、80Hz付近まで低音を伸ばすことに成功しました!

聴感上でも、十分な量感が得られました。バスレフの低音質感とは異なり、やや重量感があるものの共鳴管らしい響きを兼ね備えています。
以前の状態(4/15日記参照)と比べると、バスレフ箱の容量を小さくしたためか、小音量時でも十分な低音感を得ることができました。

ユニット直前特性では、定番の90Hzのディップがあります。

ダクトの出口での測定では、共鳴管らしいピークが並んでいます。このピーク位置は、ユニット直前特性のディップと同じ位置だというのも定番ですね。

インピーダンス特性は、特徴的な三つ山特性になりました。以前は殆どピークが確認できなくなった(4/15日記参照)のに比べ、大きな違いだと言えそうです。



今回は、バスレフ箱の容量を小さくしましたが、それが効果的だったようです。

「共鳴管バスレフ」は当初『ヘルムホルツ共鳴(バスレフ部分)×気柱共鳴(共鳴管部分)』を狙ったのですが、実際は『共鳴管 − 音響フィルター(高域カット)』として動作しているようです。

バスレフ部分があることで共鳴管へ伝わる高域がカットされますが、バスレフ部が大きいほど、共鳴管を駆動する力が弱くなってしまいます。
感覚的には、バスレフ部の容量はバックロードホーンの空気室と同程度(8cm口径で0.6L、10cmで2L、16cm口径で5L)が良好だと思います。

逆に言うと、バスレフ部がある限り、シンプルな共鳴管より低音増幅力は劣るのです。先日のTangBand W4-927SCのように、共鳴管で適正特性となるユニットは「共鳴管付きバスレフ」では低音不足になる可能性が大きいと言えます。

本方式は、あくまでも『共鳴管では低域ブーミーになってしまうようなユニット向け』の方式ということでしょうか。

ネッシー型の共鳴特性シミュレーション

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共鳴管バスレフの話が続いているので、ちょっと気分転換。

長岡先生が作ったネッシーってありますが、その類似系の設計について。



基本的には、αとβの長さを決めることになりますね。
この場合、第一音道は長さα、第二音道は長さα+βとなります。
そして、全共鳴管長は2α+βですね。

第一音道(α)、全共鳴管長(2α+β)は、片開管なので1倍・3倍・5倍振動が予測されます。
第二音道(α+β)は、両開管となります。ここでは説明上 2倍・4倍振動としておきます。

ここで、全共鳴管長を横軸に、周波数を縦軸にとってグラフにしました。
灰色の部分は、αが負の値になるので無視します。

[β=0cm]


[β=20cm]


[β=40cm]


[β=60cm]


[β=80cm]


[β=100cm]


[β=120cm]


[β=150cm]




とりあえず、β=0cmの優秀さが目立ちます。
ただ、ユニット位置を考えると、β=0の場合、管長は2mが限度でしょう。

例えば、β=60cmの場合、
全体の管長が180cmの場合は150Hz付近に共鳴音の重なりが生じピークとなる可能性が高いといえます。この場合は、管長が130〜150cmもしくは230〜300cmとなるように設計すると良いでしょう。


まだまだ机上の段階ですが、ネッシー型を作る際はこれを元に検討しようと思います。

バスレフ箱部分の「ダクト断面積」について (共鳴管付きバスレフ)

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今度の実験は、「共鳴管付きバスレフ」の管断面積を変えてみます。

先日作製したバスレフ箱は、容量が2Lで、ダクト断面積18cm2、ダクト長さ約20cmでした。



構造としては、このようになっており、
ダクトの断面積を変更することも可能なのです。



ダクトは木材で制作されていまして、
フロントバッフルを外すと、このように見えます。



ちょっと色の薄い木材が、ダクトの高さ方向を決めていますので、
今回は高さ30mmと44mmの二種類を用意しました。




それでは、ダクト断面積を大きく(18cm2→26cm2)して、再測定です!
ユニットは引き続き、ALPINE DLS-108X (振動板面積 約50cm2)です。

<バスレフ部単独>
[軸上1m]



[ダクト直前]



[ユニット直前]




先日(5月2日)と類似した結果なので、あまり細かくは書きませんが、
ダクトの共振周波数が上がって(80Hz→約110Hz)いるのは、ダクト断面積が大きくなったためでしょうか。


<共鳴管付きバスレフ>
[軸上1m]



[ダクト直前]



[ユニット直前]




5/2の結果(ダクト断面積18cm2)と比較すると、今回の26cm2の場合は
聴感上は、やや低音量感が減少するものの、音の透明度は向上したかな?といった感じです。

軸上1mの測定では、100Hz以下の帯域が6dBほど高くなっています。聴感とは異なり、ダクト断面積を大きくしたことにより低音域の音圧向上が確認できました。

ダクト開口部特性では、100Hz以下の音圧が5/3の測定結果と比べて小さくなっていることが分かります。これは、ダクトの共振周波数が上にシフトしたことによるのでしょう。

ユニット直前特性は5/3と比べて、若干90Hzのディップが小さいような気がしますが、3dB程度の差異のみで誤差範囲でしょう。



断面積の増加により、ダクト共振周波数の上昇があったのは確かなようです。
それにより、共鳴管に送り込まれる位相が変化した為か、軸上1m特性では80Hzが上昇する結果となりました。

この辺は共鳴管長さとも関わってくるので、ちょっと複雑な話になりそうですが、この帯域の増減は低音量感に大きな影響を及ぼすので、設計段階から位相特性に注意する必要があるでしょう。


次回は、共鳴管付きバスレフの最終章として、「まとめ」を書きたいと思います。

「共鳴管付きバスレフ」の まとめ

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4月1日から試行錯誤を続けていた「共鳴管付きバスレフ」も、いよいよまとめです!


[名称]
「共鳴管付きバスレフ」
もしくは「共鳴管バスレフ」「管付き」など。

他方式に『バックロードバスレフ』などがあり、それと混同しない名称が望ましい。



[設計の狙い]
共鳴管方式は、超低音の伸びや軽やかな低音質感など魅力的な点が多い。
しかし、この方式により好ましい低音量感が得られるユニットは非常に限られている。

特に、一般的に「ウーハー」と呼ばれるユニットや、低音域が豊かなフルレンジユニットは、共鳴管方式の箱と組み合わせると低音過多となる。

これらのユニットには「バスレフ方式」の箱がマッチするが、バスレフ方式は
?超低音の伸びが悪い
?聴感上の低音質感が好ましくない
といった短所がある。
(もちろん、バスレフ型も設計次第でこれらの欠点を最小限に抑える事は可能)

?は、ユニット背面から出た音がダクトを通り、ユニット正面の音と干渉するためである。ダクトの共振周波数以下の音域では顕著である。

?は、ダクトの放射面積が小さい(概して振動板の半分以下)ことが原因と考えている。音波は放射面積が大きいほど効率よく放射でき、聴感的な質感が向上される。各種『ホーン』はこれを期待した構造である。



[具体的な構造]
本方式は、「バスレフ箱」と「共鳴管」、そしてそれを接合する「ダクト」によって構成される。
下記の図を見ると分かりやすい。



バスレフ箱の先に、長い共鳴管を付けたことで、
上記欠点?の干渉を軽減することが可能だと考えられる。
また、欠点?においても、共鳴管の断面積は振動板の1.5倍〜3倍程度ある(詳細は後述)ために、低音の質感向上を期待できる。



[設計のポイント]

「バスレフ箱」は、ある一定の容量を持つ箱である。形状は問わないが、ユニット背面の音波の流れを妨げないような構造が望ましい。

容量は、バックロードホーンの空気室に近い容量が好ましい。
具体的には、8cm口径 1L、 10cm口径 2L、 12cm口径 3L、 16cm口径 5L 程度だろうか。

この容量が大きすぎると共鳴管を十分に駆動できなくなる。小さすぎると一般的な共鳴管に近くなると考えられる。



「共鳴管」は、ある程度の太さと長さを持つ管である。

共鳴管の太さは、一般的な共鳴管と同じく、振動板面積の1.5〜3倍程度が好ましいであろう。

共鳴管の長さは比較的自由に決定できる。しかし、共鳴管が長くなると概して低音質感や量感が乏しくなる。
そこで、より高品位な低音質感を追求するために、共鳴管の長さは1.3〜2m 程度に抑えることが望ましい。

共鳴管の形状は、余り折り曲げが多くない方が好ましい。折り曲げは共鳴効率の低下を招くので、「U字型」もしくは「W字型」程度が限界と思われる。管の断面は正方形(もしくは円形)に近い形状のほうが共鳴効率において好ましく、扁平率が高いものは不適だと考えられる。



「ダクト」は、ある程度の太さと長さを持つ管である。

断面積は振動板の20%〜50%の範囲で問題なく動作することが確認できている。
ダクトの長さは、10cm〜20cm程度が良さそうだ。

このダクトの設計は、上記の箱容量、共鳴管長さと関係があり、ダクトの共振周波数は共鳴管の両開口共鳴周波数と同じにするのが良さそうである。


例えば、共鳴管長さが1.7mの場合、音速は340[m/s]より、両開口共鳴時の共鳴周波数は、
340÷1.7÷2=100[Hz]
となる。

上記より、箱容量はユニット口径に従って決定できる(10cm口径なら2Lなど)ので、
後はバスレフ共振が100[Hz]となるよう、
一般的に知られているバスレフダクトの共振周波数算出式でダクト面積・長さを決定すればよい。

ダクトの長さを現実的な寸法に収めると、自ずとダクト断面積も決まるだろう。



「バスレフ部」と「ダクト」の位置的関係は比較的自由度があるが、
「共鳴管」と「ダクト」は、好ましい位置関係が存在する。

まず、共鳴管の効果的な動作を考えると、共鳴管の端(閉じている側)にダクトを設ける必要がある。
また、ダクトは共鳴管と同軸上でも構わないが、90°や180°の折り返しをつけた方が共鳴管の動作を阻害しにくいように感じる。スピーカー技術研究会の小沢氏のレポートにも、同様の記述がある。参考リンク






[本方式の効果]
まず、一般的な共鳴管方式における管開口部の周波数特性を示す。
(断面積255cm^2、管の長さ 2.4m ,ユニット ALPINE DLS-108X)

このように、200Hz付近にピークをもち、500Hz前後まで低音増幅が確認される。

軸上1mでも180Hzに鋭いピークが確認されるなど、共鳴管方式の箱に低音が出やすいウーハー向けユニットを組み合わせると、ブーミーな響きとなることが測定結果からも確認できた。
(この特性は、やや低音が出にくいフルレンジユニットには好適となる)

次に、本方式における管開口部の周波数特性を示す。
(バスレフ部容量 約2L、ダクト断面積18cm2、 ダクト長さ18cm、
共鳴管部断面積80cm2〜120cm2、 共鳴管部長さ 180cm
使用ユニット ALPINE DLS-108X)

やや中低域のモレが多いものの、単純な共鳴管に比べて100Hz付近の増大が確認できた。

軸上1m特性でも、鋭いピークが無く、素直な特性が得られている。




[結論]
本方式は、バスレフ方式に適合するユニットに対して良好な提案になるといえる。








<過去の関連日記一覧>
4/1「共鳴管付きバスレフ」の設計と作製
4/14「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (1)
4/15「共鳴管付きバスレフ」の試聴と測定 (2)
4/29「共鳴管付きバスレフ」の魅力再発見??
5/1「共鳴管付きバスレフ」× TangBand W4-927SC
5/3 バスレフ箱部分の「容量」について (共鳴管付きバスレフ)
5/4 バスレフ箱部分の「ダクト断面積」について (共鳴管付きバスレフ)


Fostex 13cm マグネシウム振動板フルレンジMG130HR 発売!

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昨日、FOSTEXから新型限定ユニットの発表がありました。

「MG130HR」


詳細は、こちらのpdfリンクに詳しいのですが…
新製品発表 リンク

特徴としては、

・「純」マグネシウム振動板
・ウレタン系エッジ(ポリカーボネート系材料配合)
・振動板直結アルミボイスコイルボビン
・アルニコマグネット磁気回路

といったところで、なかなか高級な作りになっています。

ちなみに、お値段は1本 50,000円なり。

特性としては…


ユニット単体での周波数特性は、こんな感じです。


基本的にバスレフ向けユニットだと考えてよいでしょう。
実際に「YK130MG」というバスレフ箱も発売されて、その周波数特性は50Hz付近まで素直に伸びています。









他のユニットと比べるには、
同じ13cmのParcAudio「DCU-131W」「DCU-131PP」が比較対象として良さそうです。

「DCU-131W」


口径;13cm
能率:87 dB
F0:48.6 Hz
Mms:7.487 g
Qts:0.545


「DCU-131PP」


口径;13cm
能率:90 dB
F0:62.3 Hz
Mms:5.693 g
Qts:0.444


これらと比較すると、FOSTEX MG130HRは次のようになりますね。
口径;13cm
能率:87 dB
F0:58 Hz
Mms:7.8 g
Qts:0.36

この値を見ると、低音量感はParcAudioの2機種の中間程度かな〜と思います。

箱設計としては、同時発売のものがかなり適性値に近いと思うので、
自作するのでしたら、材料を集成材や無垢材にするなどでクオリティアップを狙えると思います!


早速、コイズミ無線で5月19日13:00〜試聴会が予定されています。
イベント紹介 コイズミ無線

浅生先生の解説も含めて、今から楽しみです♪

[読書] 自動車用 リチウムイオン電池 (金村聖志)

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先日もリチウムイオン電池関連の本を読みましたが、
こちらは、完全に理系向けの本。

リチウムイオン電池を構成する正極材・負極材・セパレーター・電解質・バインダーに分けられて解説されていました。

現在は、正極材としてLiMn2O4、LiCoO2など、 負極材として黒鉛などが用いられていますが、
それを超える特性(主に容量)を実現するために様々な材料開発が行われています。

しかし、そうした新規材料は使用時に膨張する、反応速度が遅いなど様々な問題があり、
今後さらなる改善が期待されます。

本書は、各分野の研究者が合同で執筆していましたが、
それぞれの項によって読みやすさが違うかな?と感じることもありました。

値段はちょっと高めですが、リチウムイオン電池の現状を知る良書だと言えるでしょう。

FOSTEX MG130HR 試聴会 (秋葉原 コイズミ無線)

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昨日は、秋葉原のコイズミ無線で開催された「FOSTEX MG130HR」の試聴会に行ってきました。
盛り沢山の内容なので、前編と後編に分けてお伝えしようと思います。




前半は、FOSTEXの技術者と浅生先生でMG130HRの技術的なことについての説明がありました。



このユニットは、「純Mg+HR形状」の完成系ともいえる自信作で、
その高度な表現力を生かすために、磁気回路も贅沢なものとなりました。



大型のアルニコ磁石が目を引きますが、磁気透過率の高い「純鉄」を使い、銅キャップによる低歪化も行われています。



磁石だけで1.5kGという異例の重量になってしまったので、
フレームはより頑強な亜鉛ダイキャスト(通常はアルミダイキャスト)としたそうです。



ダンパーはダブルダンバー。
形状を吟味し、柔らかく動きやすいものだとか。



ボイスコイルは、「ロングプレート、ショートボイスコイル」という構成。

接合部は、HR形状に基づき、3D CAD(?)で加工しているとか。
以前は職人技でハサミで現物切断していましたが、近年は最後のすり合わせのみを手作業で行っているそうです。
(↑ちょっと記憶が曖昧w)




さて、FOSTEXの純Mgコーンへの挑戦は、6年前にさかのぼります。

純Mgは成形性が悪く、
振動板への応用は、業務用SP「RS-N2」「RS-2」のようにツイーターに限られていました。
http://www.phileweb.com/news/d-av/200409/23/11246.html

それを8.5cm口径フルレンジとして製品化したのは2006年秋の「MG850」「G850(完成品)」でした。
http://www.phileweb.com/news/audio/200606/08/6548.html

この時は、コーン型に整形するだけでも精一杯だったとか。



そして、3年後の2009年には「MG100HR-S」「MG100HR」そして、完成品の「G2000」などに搭載されたのが、
「10cm純Mg+HR」振動板なのです。
http://www.phileweb.com/news/audio/200904/27/8904.html

しかし、よく見ると「HR」の凹凸が控えめなのが分かります。
この時は成形技術の限界で、伸張性の悪い純Mgを深く絞り込むことができなかったのです。


2010年には、市販品「GX250」で、13cmのHR振動板を開発。

しかし、これは「純Mg」ではなく「合金」でした。


そして、2012年。
市販品「G1302MG」「1300MG」の後を追う形で、
フルレンジユニット「MG130HR」が登場したのです。
http://www.phileweb.com/news/audio/201110/27/11402.html

成形技術も向上し、HRの「尾根」がクッキリしているのが分かります。

フルレンジを作るにあたって、
エッジをウレタン系にするなどの変更があったそうです。



「MG130HR」の音については、また次回。

FOSTEX MG130HR 試聴会 2 (秋葉原 コイズミ無線)

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前回の続きで、先日のコイズミ無線での発表会です。

まずは、市販品の箱「YK130MG」との組み合わせ。


市販品だけあって、洗練された印象です。


内容量は、10,2L。 ダクトの共振周波数は 62Hzです。



さて、早速試聴です。
単一楽器のアコースティックなものから、オーケストラ、JAZZまで聴きました。

まず感じるのは、純Mgならではの癖の少なさ。

Mg「合金」だと「シャリシャリ」した音になりやすいのですが、
むしろ肉厚でコシのあるサウンド。

制動も抜群で、アルニコならではのキレの良さ、情報量の多さが、純Mgの音を引き立てているようでした。

重低音も十分で、ズシンと沈んだ音が低音楽器の存在感を高めています。




これで感想の9割程度を書いてしまったのですが、

スピーカーの軸上真正面で、よくよく聴いていくと、
些細なことも気になってくるものです(笑)



まずは、低音。
沈み込んでいるのは良いのですが、普段からバックロードホーンを聴いている私にとっては、ちょっとスピード感不足。
80Hzぐらいが「ぶぉっ!」と出てきたかと思えば、40Hzや150Hzがやや薄いかも?と感じる場面がありました。

ウッドベースだと低い部分の音階・音量は出せてるのですが、
ウッドベースを弾いたときの、空気が弾ける感じが出ていなかったり、
「くくぅ〜ん」と高い音を鳴らした時が薄かったり。

和太鼓も、「ズシーン」と凄い重低音で鳴っていて、浅生先生もドヤ顔だったのですが、(←失礼)
でも、本当の和太鼓って、もっと軽い音なんですよね。まあ、録音が特殊ではありましたが(汗


そして中高音。
(私が気にしすぎなのかもしれませんが)
ピアノやソプラノに「キンつき」が感じられるのです。

これは「ブナ合板」の功罪で、ラワン合板のようなモヤモヤが無いかわりに、
中高域に刺激的な音が乗ることがあるのです。


そして、最高域は癖が無い代わりに、やや「だら下がり」に感じました。

まあ13cmフルレンジに15kHz以上を期待すること自体、酷な話なので、
素直にスーパーツイーターを加えた使いこなしも視野に入れると良さそうです。



こんな粗探しをしたくなるほど、優れたスピーカーシステムだと思います。(強引だなw)

この辺の小さな差異は
たぶん好みの問題や、使いこなしで何とでもなるのだと思います。(たぶんw)


ちなみに、サランネット装着時はこんな感じ。


そして、お決まりの「バイオリンレッド」も用意されています!



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さて、ここからが後半。

このMG130HRには、取扱説明書に推奨エンクロージュアがあり、
それを聴くことができました!





容量は8.4L、ダクト内径は49mm、長さは90mm(試聴時)でした。
周波数特性は「実線」のようになり、先ほどの市販品と比べて低音の伸びは10Hzほど悪くなります。



試聴すると、柔らかい音で軽やかな鳴りっぷりだと感じました。
これは材料として使っていた「シナ合板」によるものだと思います。

低域は伸びが犠牲になり「ポンポン」と鳴る感じではあるものの、
バスレフ特有の不自然さは皆無で、軽やかな低音が好感触でした。


さらに、中高域の硬さが解消されたためか、
市販箱のYK130HRと比べると、最高域の伸びが自然に聞こえました。


知人は、「せっかくの純Mgなのに、シナ合板特有の付帯音が感じられる」「低音の沈み込みが悪い」といった理由から市販品のYK130HRを推していましたので、
その辺は視聴者の好みによる部分が大きいのかもしれません。

たしかにカマボコ型のサウンドなので、先ほどのYK130MGのワイドレンジ感には負けますが、
「フルレンジらしさ」を追求した音は、むしろこの自作verに分があるかな〜と思いました。

ちなみに、意外にも中音(1〜5kHz)が出やすい特性なので、
バスレフだけでなく、共鳴管などの他方式もいけるかもしれません!?



まあ、そんなこんなで試聴会は終了。
限定ユニットらしい力量を十分に感じることができた試聴会でした!
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