さて、12月10日の「ミューズの方舟自作スピーカーコンテスト2017」に向けて製作を開始しているカノン5Dです。
今回のレギュレーションは、「Scansperk 5F/8422T01 または 5F/8422T03(Stereo誌2013年8月号付録) 一発」ということで、
5cmフルレンジから、いかに低音を取り出すかがカギになると考えています。
さて、カノン5Dの低音再生といえば共鳴管ですね。
先日発表した「RF-1000」や「S-065」は、共鳴管型としてかなり完成度が高いものと思っています。
S-065
ただ、その一方で、
共鳴管方式の限界も感じていました。
共鳴管方式は、その名の通り、空気の共鳴を利用します。
いわゆる、「管の長さ」をベースにした共鳴です。
そこに倍音を適切に加えて、
好ましい低音質感を実現したのが、カノン5Dの「ハイブリッドレゾナンスチューブ」方式です。
よくある共鳴の模式図ですね。
バスレフ型とは異なり、複数の共鳴系をもたせることができる共鳴管型は、
(上手くコントロールできれば)より広帯域で高品位な低音再生が可能なのです。
【S-065の共鳴管開口部の特性】
(60Hz~400Hzまでを共鳴管で増幅し、8cm口径らしからぬ厚みのあるサウンドを獲得しました)
しかし、よく考えると、
最低音域での共振原理は、単一共振系のバスレフ型と同じなのです。
この最低音域の共振を低く、かつ強くするには、
管を長く、大きくするしかない。のです。
この基本原則で共鳴管を設計すれば、
低音は良いけど、デカすぎる・・・というカノン5Dの定番作例が出来上がります(笑)
一方で、コンパクトながら圧倒的な低音を出せるのが「ダブルバスレフ型」
この共鳴構造は、こんな感じですね。
ここで、ふと思ったのです。
この一段階目のダクト構造は、振動板への空気質量付加になっていないか?と。
もう少し説明すると、高い周波数では第一ダクト(図では中央の錘)が共鳴しますが、
それ以下の周波数帯域では、第一ダクトの空気は、振動板の動きと一緒に動き、
その動いた空気の質量が、振動板の質量に付加する働きとなり、
実質的なユニットのf0を下げるような働きをしているのでは?ということです。
ここで、S-045「スワンザバスレフ」のインピーダンス特性を見てみましょう。
本機は、いわゆる「バックロードバスレフ型」ですが、設計上はダブルバスレフ型と同等なものです。
バックロードバスレフ型も人により様々な設計方法があるようですが、
少なくともS-045の設計は、ダブルバスレフをベースに作成したものです。
黒い実線がS-045のインピーダンス特性です。
ダブルバスレフ型の特徴でもある3つ山をベースに、バックロードバスレフ型らしい中低域の共振(200Hzのディップ)も確認されます。
さて、ここでのポイントは、
第一ダクト負荷によるインピーダンスの変化です。
黒点線で示しているのが、ユニット(ScanSpeak付録9cm)の裸特性(実測)です。
赤丸(点線)の位置にある「f0」は、実測で130Hz程度でしょうか。
これがS-045エンクロージュアに入ることで、
第一ダクトの負荷により、赤丸で示した位置(85Hz)に新たなピークができます。
(先の図を再掲載します)
このピークこそが、第一ダクト共鳴周波数(赤領域)より下で起こる
【空気付加によるf0低下】と考えています。
(今までは箱に入ることでのf0上昇=f0cが注目されていましたが…)
つまり、ユニット単独での共振は130Hzだったのに対し、
この【空気付加によるf0低下】が起こることで、共振が85Hzに移動した、と解釈できるのでは?と考えています。
この80Hzに下がったf0を利用することで、
60Hzという重低音領域に、第二ダクトの共振周波数を設定できる・・・というのが、
ダブルバスレフ型の低域再生のミソなのではないでしょうか?
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さて、このダブルバスレフ型構造に由来する【空気付加によるf0低下】を、
実際の作例に組み込むには、少し考えないといけないことがあります。
まず、ダブルバスレフ型は2つしか共鳴点をもたないので、
上記のような設計方法だと、必ず中低域が中抜けになってしまいます。
また、バックロードバスレフ型も、必ず断面積の小さな1本のダクトから低音を放出するため、
ちょっと低音質感が私の好みには合いません。 (深く沈みこむような感じで、開放的に鳴る感じがないのです…)
多自由度バスレフ型は、複数の開口部から低音が出てくる点で、
低音の質感もなかなか良いのですが、コンテスト発表までの短納期でノウハウを貯めるのは難しそうです(汗)
というわけで、
今までの「共鳴管設計」の技術に、【空気付加によるf0低下】を組み込み、ダブルバスレフ並みの低音再生を狙う
というのが、今回のS-066の設計方針です!
S-066の実験結果は、次回の日記で。
今回のレギュレーションは、「Scansperk 5F/8422T01 または 5F/8422T03(Stereo誌2013年8月号付録) 一発」ということで、
5cmフルレンジから、いかに低音を取り出すかがカギになると考えています。
さて、カノン5Dの低音再生といえば共鳴管ですね。
先日発表した「RF-1000」や「S-065」は、共鳴管型としてかなり完成度が高いものと思っています。
S-065
ただ、その一方で、
共鳴管方式の限界も感じていました。
共鳴管方式は、その名の通り、空気の共鳴を利用します。
いわゆる、「管の長さ」をベースにした共鳴です。
そこに倍音を適切に加えて、
好ましい低音質感を実現したのが、カノン5Dの「ハイブリッドレゾナンスチューブ」方式です。
よくある共鳴の模式図ですね。
バスレフ型とは異なり、複数の共鳴系をもたせることができる共鳴管型は、
(上手くコントロールできれば)より広帯域で高品位な低音再生が可能なのです。
【S-065の共鳴管開口部の特性】
(60Hz~400Hzまでを共鳴管で増幅し、8cm口径らしからぬ厚みのあるサウンドを獲得しました)
しかし、よく考えると、
最低音域での共振原理は、単一共振系のバスレフ型と同じなのです。
この最低音域の共振を低く、かつ強くするには、
管を長く、大きくするしかない。のです。
この基本原則で共鳴管を設計すれば、
低音は良いけど、デカすぎる・・・というカノン5Dの定番作例が出来上がります(笑)
一方で、コンパクトながら圧倒的な低音を出せるのが「ダブルバスレフ型」
この共鳴構造は、こんな感じですね。
ここで、ふと思ったのです。
この一段階目のダクト構造は、振動板への空気質量付加になっていないか?と。
もう少し説明すると、高い周波数では第一ダクト(図では中央の錘)が共鳴しますが、
それ以下の周波数帯域では、第一ダクトの空気は、振動板の動きと一緒に動き、
その動いた空気の質量が、振動板の質量に付加する働きとなり、
実質的なユニットのf0を下げるような働きをしているのでは?ということです。
ここで、S-045「スワンザバスレフ」のインピーダンス特性を見てみましょう。
本機は、いわゆる「バックロードバスレフ型」ですが、設計上はダブルバスレフ型と同等なものです。
バックロードバスレフ型も人により様々な設計方法があるようですが、
少なくともS-045の設計は、ダブルバスレフをベースに作成したものです。
黒い実線がS-045のインピーダンス特性です。
ダブルバスレフ型の特徴でもある3つ山をベースに、バックロードバスレフ型らしい中低域の共振(200Hzのディップ)も確認されます。
さて、ここでのポイントは、
第一ダクト負荷によるインピーダンスの変化です。
黒点線で示しているのが、ユニット(ScanSpeak付録9cm)の裸特性(実測)です。
赤丸(点線)の位置にある「f0」は、実測で130Hz程度でしょうか。
これがS-045エンクロージュアに入ることで、
第一ダクトの負荷により、赤丸で示した位置(85Hz)に新たなピークができます。
(先の図を再掲載します)
このピークこそが、第一ダクト共鳴周波数(赤領域)より下で起こる
【空気付加によるf0低下】と考えています。
(今までは箱に入ることでのf0上昇=f0cが注目されていましたが…)
つまり、ユニット単独での共振は130Hzだったのに対し、
この【空気付加によるf0低下】が起こることで、共振が85Hzに移動した、と解釈できるのでは?と考えています。
この80Hzに下がったf0を利用することで、
60Hzという重低音領域に、第二ダクトの共振周波数を設定できる・・・というのが、
ダブルバスレフ型の低域再生のミソなのではないでしょうか?
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さて、このダブルバスレフ型構造に由来する【空気付加によるf0低下】を、
実際の作例に組み込むには、少し考えないといけないことがあります。
まず、ダブルバスレフ型は2つしか共鳴点をもたないので、
上記のような設計方法だと、必ず中低域が中抜けになってしまいます。
また、バックロードバスレフ型も、必ず断面積の小さな1本のダクトから低音を放出するため、
ちょっと低音質感が私の好みには合いません。 (深く沈みこむような感じで、開放的に鳴る感じがないのです…)
多自由度バスレフ型は、複数の開口部から低音が出てくる点で、
低音の質感もなかなか良いのですが、コンテスト発表までの短納期でノウハウを貯めるのは難しそうです(汗)
というわけで、
今までの「共鳴管設計」の技術に、【空気付加によるf0低下】を組み込み、ダブルバスレフ並みの低音再生を狙う
というのが、今回のS-066の設計方針です!
S-066の実験結果は、次回の日記で。